都市計画法とは?わかりやすく解説
都市計画法とは、無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすく、コンパクトで行政サービスが行き届いた都市をつくることを目標とする法律です。
図解を用いて都市計画法をわかりやすく解説し、都市計画の意味も簡単にご説明しましょう。
目次
- 1. 都市計画法とは、無秩序な開発を抑制する法律
- 2. 都市計画法の具体的な内容
- 3. 都市計画とは?わかりやすく解説
- 4. 都市計画の構造
1. 都市計画法とは、無秩序な開発を抑制する法律
都市計画法とは、無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすく、コンパクトで行政サービスが行き届いた都市をつくることを目標とする法律です。
開発とは、建物を建てることや、建物を建てるために土地を造成(平らにならしつつ作り上げること)などを指します。
行政サービスとは、都道府県や市町村が行う上水道の供給や下水道の処理、ゴミ回収などのサービス、道路や学校、病院、消防、公園などを新設することや維持することなどを指します。
人々が好き勝手に方々で開発を行うと、人口が少ない市街地が点在することとなります。
人口が少ない市街地は、空き家や空き地、空き店舗などが多くなり、産業や商業が発展しづらく税収も少なく、市町村が質の高い行政サービスを提供し続けることができません。
よって、都市計画法では、各都道府県は都道府県内に都市計画区域を指定し、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分けできると定めています。
市街化区域とは、既に市街地である区域、または今後10年以内に市街化を図るべき区域であり、建物を建てる、土地を造成するなどの開発が許されます。
一方、市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき区域であり、一部例外を除き、建物を建てるなどの開発は許されません。
都道府県が都市計画域を指定し、市街化区域と市街化調整区域に区分けすれば、開発を抑制されるべき場所は抑制され、人口が集まるべき場所に人々が集まります。
そうすれば、人々が集まる場所は商工業が発展しやすくなり、税収も上がり、隅々まで行政サービスが行き届いた質の高いコンパクトな都市が完成します。
都市計画法は、その「質の高いコンパクトな都市」をつくることを目標とする法律です。
都道府県が都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分けすることを「区域区分」と呼び、区域区分がなされた都道府県のイメージを図解でわかりやすくご紹介すると以下のようになります。
さらに、都市計画法では、市町村は都市計画区域内に「住居専用地域」「商業地域」「工業地域」などの地域を定めることができるとも規定しています。
住居専用地域とは、住居の環境を保護することを目的とする地域であり、住宅などを建てることはできますが、大きな騒音を出す大規模な工場などは建てることができません。
商業地域とは、商業の利便性を高めることを目的とする地域であり、店舗や住宅などを建てることはできますが、引火性のある危険な薬品を製造する工場などは建てられません。
工業地域とは、工業の利便性を高めることを目的とする地域であり、工場を建てることはできますが、学校や病院などは建てることが許されず、場合よっては住居や店舗なども建てることができません。
市町村が市街化区域内に地域を定めれば、住居専用地域は人々が生活しやすい地域に、商業地域や工業地域は商工業が発展しやすい地域となり、都市が活性化しやすくなります。
市町村が市街化区域内に定める地域を「用途地域」と呼び、都市計画区域、市街化区域、市街化調整区域、用途地域のイメージを図解でわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。
つづいて、都市計画法で定められている具体的な内容をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。
2. 都市計画法の具体的な内容
都市計画法をわかりやすく解説すると、無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすい行政サービスが行き届いた都市をつくることを目標とする法律です。
そして、都市計画法では、具体的に以下の8つのことなどを定めています。
都市計画法の主な規定内容
- 都市計画に関すること(第4条など)
- 都市計画区域に関すること(第5条など)
- 区域区分に関すること(第7条など)
- 地域地区に関すること(第8条など)
- 都市施設に関すること(第11条など)
- 市街地開発事業に関すること(第12条など)
- 地区計画に関すること(第12条の4と5など)
- 開発許可に関すること(第29条など)
ここから、上記の8つをわかりやすく簡単に解説しましょう。
なお、都市計画法の全文は、「電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)都市計画法」にて確認することが可能です。
2-1. 都市計画に関すること(第4条など)
都市計画法とは、無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすい都市をつくることを目標とする法律ですが、理想の都市を完成させるためには綿密な計画が必要です。
よって、都道府県や市町村は、まずは理想の都市を完成させるための計画を立て、その計画に沿った都市づくりを行います。
そして、都市計画法の第4条では、都道府県や市町村が立てる都市づくりの計画を「都市計画」と呼ぶと規定しています。
また、都市計画法の第2条では、都市計画のあるべき姿についても規定し、第2条をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
都市計画法 第2条(都市計画の基本理念)
都市計画は、人々が健康で文化的な都市生活ができるように、制限すべき開発は制限し、土地が合理的に利用されることを基本理念として定めなければならない
2-2. 都市計画区域に関すること(第5条など)
この記事の「1. 都市計画法とは、無秩序な開発を抑制する法律」にてご紹介したとおり、都道府県は都道府県内に都市計画区域を指定できますが、それは都市計画法の第5条にて定められています。
都市計画法の第5条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第5条(都市計画区域)
都道府県は、人口の集中具合、働く人々の数、土地の利用状況、交通量、守るべき自然がある場所などを考慮しつつ、都市として総合的に開発する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする
上記で注目すべきは、「守るべき自然がある場所」です。
都市計画法は、人々が方々で好き勝手に開発を行うことを抑制する法律ですが、自然を守ることにも重点を置いています。
人々が山間部などの緑地を好き勝手に開発すれば、自然が失われると共に市街地に住む人たちが休日に安らぎを求める場所がなくなります。
よって、都市計画法は、自然を保護することも目標の一つとしています。
2-3. 区域区分に関すること(第7条など)
都市計画法の第5条では、都道府県は都市計画区域を指定できると定めていますが、さらに第7条では、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分けできる規定しています。
都市計画法の第7条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第7条(区域区分)
都道府県は、人々による無秩序な開発を抑制するために必要であるときは、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分けできる
その区分けを「区域区分」と呼び、市街化区域は既に市街地である区域、またはおおむね10年以内に市街化を図るべき区域とする
一方、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする
都道府県が都道府県内に都市計画区域を指定し、区域区分を行いつつ市街化区域と市街化調整区域に区分けすれば、無秩序な開発を抑制すると共に市街化区域に人口を集中させることができます。
市街化区域に人口が集中すれば、商工業が発展しやすい活気あふれる理想の都市が完成します。
なお、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、市街化区域と市街化調整区域をわかりやすく解説するコンテンツを公開中です。
より深く都市計画法を理解したいと希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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2-4. 地域地区に関すること(第8条など)
都市計画法の第8条では、都市計画には、都市計画区域に「住居専用地域」「商業地域」「工業地域」などの地域を定めることを含めることができると規定しています。
都市計画法の第8条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第8条(地域地区)
都市計画には、都市計画区域に次の地域を指定することを含めることができる
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域
それらの地域の総称を「用途地域」と呼ぶ
全ての地域を合計すると13になり、都市計画法の第9条では、各地域のあるべき姿を規定しています。
都市計画法の第9条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第9条
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域は、高さが低い住宅の住環境を保護する地域とする
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域は、高さが中程度の住宅の住環境を保護する地域とする
第一種住居地域、第二種住居地域は、高さを問わず様々な住宅の住環境を保護する地域とする
準住居地域は、大通りなどの道路を中心とした商業の利便性を図りつつ、その周辺の住宅の住環境を保護する地域とする
田園住居地域は、農業の利便性と、高さが低い住宅の住環境の保護の両立を図る地域とする
近隣商業地域、商業地域は、付近の住宅地への日用品の供給を目的とした商業などの利便性を高めるための地域とする
準工業地域、工業地域、工業専用地域は、工業の利便性を高めるための地域とする
なお、地域の指定は市町村が行うのが通例であり、一般には市街化区域のみに指定され、市街化調整区域には指定されません。
2-5. 都市施設に関すること(第11条など)
都市計画法とは、無秩序な開発を防ぎ、行政サービスが行き届きやすい都市をつくることを目標とする法律です。
行政サービスが行き届きやすい都市を完成させるためには、適切な場所に道路や浄水場、下水処理場、学校や病院などの公共施設を設置しなければなりません。
よって、都市計画法の第11条では、都市計画には、公共施設を設置することを盛り込むことができると規定しています。
都市計画法の第11条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第11条(都市施設)
都市計画には、都市計画区域に都市施設を設置することを盛り込むことができる
また、都市計画には、必要であれば都市計画区域外に都市施設を設置することを盛り込むこともできる
都市施設とは、道路や駐車場、公園、緑地、墓地などの施設、水道や電気、ガスを供給する施設、下水やゴミを処理する施設、学校や図書館などの教育文化施設、病院などの医療施設をいう
都市計画とは、理想の都市を完成させるための計画ですが、都市計画法では、都市施設を設置することを含めた都市計画を立てることができると規定しています。
2-6. 市街地開発事業に関すること(第12条など)
都市計画法とは、住み心地が良く商業や工業が発展しやすい都市をつくることを目標とする法律ですが、商業や工業が発展しやすい都市を完成させるためには、市街地の開発が欠かせません。
よって、都市計画法の第12条などでは、都市計画には、市街地を開発する事業を実施することを盛り込むことができると規定しています。
都市計画法の第12条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第12条(市街地開発事業)
都市計画には、市街地の土地を整備するなど、市街地の開発に関する事業を実施することを盛り込むことができる
どのような事業が計画されるかは都道府県や市町村によって異なりますが、土地区画整理事業などが挙げられます。
土地区画整理事業とは、細かく区分けされた複数の土地を都道府県や市町村がまとめて買い取り、一体化しつつ大きな公共施設を建てたり、一体化した土地を企業に売却する事業を指します。
一体化した土地を購入した企業は、大きなビルを建てるなどすることが可能になり、市街地を中心とした商工業の発展に繋がります。
2-7. 地区計画に関すること(第12条の4と5など)
都市計画法の第12条の4と5などでは、都市計画には、都市計画区域内の各地区に地区計画を制定することを盛り込むことができると規定しています。
地区計画とは小規模な都市計画であり、各地区の現状に応じた計画が立てられます。
たとえば、市街化区域に住宅を建てる際は、その地区に応じた容積率と建ぺい率を守る必要がありますが、その基準は地区計画によって定められます。
容積率とは、その土地に建つ建物の延べ床面積を敷地面積で割り算した値であり、100%や150%などの数値で表されます。
建ぺい率とは、その土地に建つ建物の最も広い水平面の面積を敷地面積で割り算した値であり、50%や60%などの数値で表されます。
都市計画法の第12条の4と5をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第12条の4(地区計画等)と5(地区計画)
都市計画には、都市計画区域に地区計画を定めることを盛り込むことができる
地区計画とは、建物の形状を制限するなどし、その地区にふさわしい良好な環境を整備するための計画である
なお、地区計画は、市町村が制定するのが通例となっています。
2-8. 開発許可に関すること(第29条など)
都市計画法とは、人々による無秩序な開発を抑制する法律ですが、「抑制する」と謳うだけでは抑制力がありません。
したがって、都市計画法の第29条などでは、都道府県知事や市町村長の許可がなければ、原則として都市計画区域で開発をすることはできないと規定しています。
これを「開発許可制度」などと呼び、開発を許可制にすることによって抑制力が生まれます。
都市計画法の第29条をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。
都市計画法 第29条(開発行為の許可)
都市計画区域において開発をしようとする者は、一部例外を除き、あらかじめ都道府県知事、または市町村長の許可を得なければならない
都市計画法における開発とは、建物を建築することや、建物を建築するために土地を加工することをいう
3. 都市計画とは?わかりやすく解説
都市計画とは、都市計画法に則って都道府県や市町村が立てる、理想の都市をつくるための計画です。
都市計画法とは、人々による無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすい都市をつくることを目指す法律ですが、理想の都市を完成させるためには計画が欠かせません。
その理想の都市をつくるための計画が都市計画です。
都市計画には、都道府県が定める都市計画、指定都市が定める都市計画、指定都市以外の市町村が定める都市計画があり、それぞれ立てる流れが異なります。
ここからは、都市計画が立てられる流れをわかりやすく解説しましょう。
3-1. 都道府県が都市計画を立てる流れ
都道府県が都市計画を立てる主な流れは、以下のとおりです。
都道府県が都市計画を立てる流れ
- 1. 都市計画の案を作成し、必要があれば公聴会を開催するなどして住民の意見を取り入れつつ修正する
- 2. 修正後の都市計画の案を関係市町村に公開し、意見を求めつつさらに修正する
- 3. 修正後の都市計画の案を2週間にわたり一般に公開する。住民や利害関係者は期間中に都道府県に意見書を提出できる
- 4. 都道府県で都市計画審議会を開き、都市計画の案が妥当であるか審議する
- 5. 都市計画の案が国の利害に影響を及ぼす場合は、都市計画の内容が妥当であるか国土交通省の同意を得る
- 6. 都市計画の内容が決定し、都道府県民に公表される
3-2. 指定都市が都市計画を立てる流れ
人口が50万人以上の市を「指定都市」や「政令指定都市」などと呼びます。
指定都市が都市計画を立てる主な流れは、以下のとおりです。
指定都市が都市計画を立てる流れ
- 1. 都市計画の案の作成し、必要があれば公聴会を開き、住民の意見を取り入れつつ修正する
- 2. 修正後の都市計画の案を関係市町村に公表し、意見を聴取する
- 3. 修正後の都市計画の案を2週間にわたり公表する。住民や利害関係者は期間中に市に意見書を提出できる
- 4. 都市計画の案が妥当であるか、市の都市計画審議会で審議する
- 5. 都市計画の案が国の利害に影響を及ぼす場合は、国土交通省の同意を得る。また、都市計画の案が他の市町村の利害に影響を及ぼす場合は、都道府県知事や他の市町村と協議する
- 6. 都市計画の内容が決定し、市民に公表される
なお、全国には20の指定都市があり、札幌市、さいたま市、横浜市、静岡市、名古屋市、京都市、大阪市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市などが該当します。
3-3. 指定都市以外の市町村が都市計画を立てる流れ
指定都市以外の市町村が都市計画を立てる主な流れは、以下のとおりです。
指定都市以外の市町村が都市計画を立てる流れ
- 1. 都市計画の案を作成し、必要がある場合は公聴会を開きつつ住民の意見を取り入れ修正する
- 2. 修正後の都市計画の案を2週間にわたり公表する。住民や利害関係者は期間中に市町村に意見書を提出できる
- 3. 公表期間が完了すれば、都市計画の案が妥当であるか市町村で都市計画審議会を開き審議する
- 4. 計画された都市計画の規模が大きい場合は都道府県知事と協議し、関係市町村の協力を仰ぐ
- 5. 都市計画の内容を決定し、ホームページなどで公表する
以下は国土交通省が公開する、都道府県、指定都市、指定都市以外の市町村が都市計画を立てる流れを解説した図解です。
※ 出典:国土交通省
4. 都市計画の構造
都市計画とは、都市計画法に則って都道府県や市町村が作成する理想の都市をつくるための計画ですが、都市計画はいくつもの要素で構成されます。
たとえば、私たちが土地を購入し、その土地に注文住宅を建てたいと希望しつつ「夢のマイホーム計画」を立てたとしましょう。
その計画は、以下のように複数の要素で構成され、それぞれを達成することによって希望が叶えられるはずです。
「夢のマイホーム計画」の構成要素
- 不動産売買に関することを勉強する
- 理想の条件を満たす土地を探しつつ購入する
- 住宅ローンに関することを勉強しつつ注文住宅を建てるための資金を借り入れる
- 家族と相談しつつ間取りを考える
- 建築会社を探して家を建てる
都市計画も同じであり、以下のように複数の要素で構成され、それぞれを達成することによって理想の都市が完成します。
都市計画の構成要素(都市計画の構造)
- 都道府県による都市計画区域の指定
- 都道府県と市町村によるマスタープランの作成
- 都道府県による市街化区域と市街化調整区域の区域区分
- 市町村による用途地域の指定
- 都道府県と市町村による都市施設の設置
- 都道府県と市町村による市街地開発事業の実施
- 市町村による地区計画の策定
ここからは、これまでにご紹介した内容と重複することもありますが、上記の都市計画を構成する要素「都市計画の構造」をわかりやすく簡単にご説明しましょう。
4-1. 都道府県による都市計画区域の指定
都市計画を構成する要素として、都道府県による都市計画区域の指定があります。
都道府県は、その都道府県内において、都市として総合的に整備や開発を行う必要がある区域を都市計画区域として指定し、主に都市計画区域内で理想の都市づくりを目指します。
なお、国土交通省の資料によれば、令和3年3月31日の時点において、全国の都市計画区域の面積を合計すると約1,027.6万ヘクタール(国土の約27%)であり、都市計画区域内に約1億1.965万人(全人口の約94%)が居住するとのことです。
4-2. 都道府県と市町村によるマスタープランの作成と公開
都市計画とは理想の都市を完成させるための計画ですが、理想の都市をつくる過程において、都道府県と市町村はそれぞれマスタープランを作成しつつ公開します。
この状況において作成するマスタープランとは、都市計画を達成するための具体的な道筋を記した計画書です。
都道府県が作成するマスタープランを「都市計画区域マスタープラン」と呼び、都市計画区域マスタープランには、都市計画の具体的な目標と方針などが掲載されます。
市町村が作成するマスタープランを「市町村マスタープラン」と呼び、市町村マスタープランには、理想とする市町村の在り方や、理想とする市町村を完成させるための構想などが掲載されます。
なお、国土交通省では、各都道府県が公開するマスタープランへのリンクを集めたページを公開中です。
マスタープランにご興味のある方がいらっしゃいましたらご覧ください。
関連リンク
国土交通省:都市計画マスタープランリンク集
4-3. 都道府県による市街化区域と市街化調整区域の区域区分
都市計画を構成する要素に、都道府県による、都市計画区域の市街化区域と市街化調整区域の区分けがあります。
この区分けを「区域区分」と呼び、市街化区域に指定された区域は開発が許可されますが、市街化調整区域に指定された区域は、原則として開発が許可されません。
区域区分によって市街化区域に人口が集中し、公共サービスが行き届きやすいコンパクトで利便性が高い都市が完成します。
なお、区域区分は、その時々の人口の集中具合などを鑑みつつ必要があれば見直されます。
4-4. 市町村による用途地域の指定
都市計画が達成される過程においては、市町村によって市街化区域内に以下の全13種類の用途地域が指定されます。
用途地域の一覧
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
それぞれの用途地域には、都市計画法によってあるべき姿が規定されていますが、建築基準法という法律によって建てることができる建物の種類が定められています。
たとえば、第一種低層住居専用地域には住宅や事務所、小学校、図書館、神社、老人ホーム、保育所、公衆浴場、診療所、派出所などを建てることはできますが、それ以外は建てることができないといった具合です。
用途地域の詳細は、当サイト「誰でもわかる不動産売買」にて公開するコンテンツにてよりわかりやすく解説しています。
同コンテンツでは、Googleのストリートビューを用いて各用途地域の様子もご紹介中です。
より深く都市計画法を理解されたい方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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4-5. 都道府県と市町村による都市施設の設置
都市計画を構成する要素として、都道府県や市町村による適切な箇所への公共施設の設置があります。
行政サービスが行き届いた都市を完成させるためには、適切な箇所に公共施設を設置しなければなりません。
設置される公共施設を都市計画法では「都市施設」と呼び、道路や駐車場、公園、緑地、広場、墓地、浄水場、下水処理場、ゴミ処理場、リサイクル施設、産業廃棄物処理場、病院、学校、保育所などが該当します。
4-6. 都道府県と市町村による市街地開発事業の実施
商工業が発展しやすい都市を完成させるためには、企業が活動しやすい市街地が必要です。
また、市街地を発展させるためには、市街地に勤務する人々が生活する住宅地が必要となります。
よって、都市計画には、都道府県と市町村によって行われる市街地、およびその周辺を開発する「市街地開発事業」を実施する要素が含まれます。
市街地開発事業は、土地区画整理事業、市街地再開発事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業などが挙げられ、それぞれの詳細をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
- 土地区画整理事業
- 土地区画整理事業とは、公共施設を新設するために必要となる土地を買い取る事業を指します。
- 市街地再開発事業
- 市街地再開発事業とは、市街地の土地や建物を買い取り、新たなビルを建てるなどして一帯を再開発する事業です。
- 新住宅市街地開発事業
- 新住宅市街地開発事業とは、市街地の周辺に新たな住宅地を開発する事業を指します。
- 工業団地造成事業
- 工業団地造成事業とは、首都圏に産業と人口が過度に集中することを防ぐために、首都圏近郊の市街地を整備する事業を指します。
4-7. 市町村による地区計画の策定
市町村が作成する都市計画には、地区計画の策定が含まれます。
地区計画とは、その市町村が理想とする地区を完成させるための計画であり、市町村は地区計画に則って各地区の適正な箇所に道路や公園などを設置します。
また、理想とする地区を完成させるために、その地区に建てることができる建物の形状などを制限することや、守るべき緑地があれば保全することも地区計画に含めます。
都道府県が立てる都市計画は都道府県という広い範囲を対象としますが、市町村が立てる地区計画は、市町村内の特定の地区という狭い範囲を対象とするのが特徴です。
まとめ
都市計画法をわかりやすく解説し、都市計画の意味も簡単にご説明しました。
都市計画法とは、無秩序な開発を抑制し、住み心地が良く商工業が発展しやすく、行政サービスが行き届きやすいコンパクトな都市をつくることを目標とする法律です。
人々が方々を無秩序に開発しつつ居を構えれば、人口が少ない市街地が点在することとなります。
人口が少ない市街地は商工業が発展せず、税収も少なく、都道府県や市町村は行政サービスを提供し続けることができません。
また、人口が少ない市街地が点在すれば、市街地であるべき区域に人が集まらず、全ての区域が衰退します。
よって、都市計画法では、都道府県は都市計画区域を指定し、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分けできると規定しています。
そうすれば、一定の範囲の開発を制限しつつ、特定の区域に人口を集中させることが可能です。
特定の区域に人口が集中すれば、その区域は発展しやすくなり、税収も多く、都道府県や市町村は質の高い行政サービスを提供し続けることができます。
都市計画法を調べる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
ちなみに、当サイトは不動産売買に関することをわかりやすく解説するサイトですが、不動産を売買する状況において、都市計画法の大きな影響を受けるのは市街化調整区域の物件です。
不動産検索サイトで不動産を探すと、注意書きに「市街化調整区域」と記されている物件がありますが、それは市街化調整区域に位置するため、原則として建築や建て替えができないことを意味します。
市街化調整区域の物件は安く売りに出されていますが、それが理由です。
ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2023年7月
記事公開日:2020年7月
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