用途地域とは?わかりやすく解説

用途地域とは?わかりやすく解説

不動産の購入を希望しつつ資料を確認すると「用途地域」という項目があります。

用途地域とは、市町村が区分けしつつ定めた地域の総称であり、全13に区分され、用途地域によって建築できる建物の種類や容積率、建ぺい率などが制限されます。

用途地域をわかりやすく簡単に解説し、Googleのストリートビューを用いて東京都における各用途地域の様子をご紹介しましょう。

目次

1. 用途地域とは、市町村が区分けした地域の総称

それでは、用途地域をわかりやすく簡単に解説します。

用途地域とは、市町村が区分けした地域の総称であり、全13に区分され、用途地域によって建築できる建物の種類や容積率、建ぺい率などが制限されます。

容積率とは建物の延べ面積の敷地面積に対する割合であり、建ぺい率とは建物の建築面積の敷地面積に対する割合です。

容積率と建ぺい率を図解でわかりやすく解説すると以下のようになります。

用途地域によって制限される容積率と建ぺい率とは

先にご紹介したとおり、用途地域は全13に区分され、用途地域によって建築できる建物の種類や容積率、建ぺい率が制限されます。

よって、新築するために土地を購入する際や、一戸建ての中古住宅を購入しつつ建て替えたいと希望する場合は、用途地域を確認しなければなりません。

用途地域とは市町村が区分けした地域の総称

全13の用途地域と、各用途地域の建築に関する制限、容積率や建ぺい率に関する制限は以下のとおりです。

全13の用途地域

1. 第一種低層住居専用地域
第一種低層住居専用地域には、住宅、事務所、小学校、図書館、神社、老人ホーム、保育所、公衆浴場、診療所、派出所、公衆電話など以外は建築できません。

第一種低層住居専用地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%、100%、150%、200%のいずれかです。

また、第一種低層住居専用地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。
2. 第二種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域には、第一種低層住居専用地域に建築できる建物に加え、床面積が150平方メートル以内の店舗や飲食店など以外は建築できません。

第二種低層住居専用地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%、100%、150%、200%のいずれかです。

また、第二種低層住居専用地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。
3. 第一種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域には、第一種低層住居専用地域に建築できる建物に加え、大学、高等専門学校、病院、床面積が500平方メートル以内の店舗や飲食店など以外は建築できません。

第一種中高層住居専用地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、第一種中高層住居専用地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。
4. 第二種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域には、マージャン店、パチンコ店、射的場、カラオケボックス、工場、ボーリング場、スケート場、ホテル、旅館、自動車教習所、大規模な畜舎などは建築できません。

第二種中高層住居専用地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、第二種中高層住居専用地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。
5. 第一種住居地域
第一種住居地域には、作業場の床面積が50平方メートルを超える原動機を使用する工場、劇場、映画館、演芸場、ナイトクラブ、マージャン店、パチンコ店、カラオケボックスなどは建築できません。

第一種住居地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、第一種住居地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%のいずれかとなります。
6. 第二種住居地域
第二種住居地域には、アセチレンガス発生機を用いる金属の加工場、合成樹脂の粉砕工場、キャバレー、個室付浴場業、劇場、映画館、演芸場、床面積が300平方メートルを超える自動車車庫、店舗、飲食店、展示場、遊技場などは建築できません。

第二種住居地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、第二種住居地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%のいずれかとなります。
7. 準住居地域
準住居地域には、キャバレー、料理店、個室付浴場業、作業場の床面積が50平方メートルを超える原動機を使用する工場、アセチレンガス発生機を用いる金属の加工場、魚肉の練製品の製造工場、原動機を使用する金属の乾燥研磨工場、客席の床面積の合計が200平方メートル以上の劇場、映画館、演芸場などは建築できません。

準住居地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、準住居地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%のいずれかとなります。
8. 田園住居地域
田園住居地域には、農業の生産や農産物の集荷に必要となる建物、その地域で生産された農産物を販売するための店舗や飲食店、住宅、学校、神社、寺院、教会、老人ホーム、保育所、診療所、巡査派出所、公衆電話など以外は建築できません。

田園住居地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%、100%、150%、200%のいずれかです。

また、田園住居地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。
9. 近隣商業地域
近隣商業地域には、作業場の床面積の合計が150平方メートルを超える原動機を使用する工場、花火の製造工場、石鹸の製造工場、瓦や煉瓦の製造工場、危険物を貯蔵する建物、キャバレー、料理店、個室付浴場業などは建築できません。

近隣商業地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかです。

また、近隣商業地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として60%と80%のいずれかとなります。
10. 商業地域
商業地域には、火薬やマッチの製造工場、花火の製造工場、塗料の吹き付け場、原動機を使用するアスファルトやコンクリートの製造工場、ドラム缶の洗浄工場などは建築できません。

商業地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1200%、1300%のいずれかです。

また、商業地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として80%となっています。
11. 準工業地域
準工業地域には、火薬類の製造工場、石炭ガスやコークスの製造工場、塩素や臭素の製造工場、肥料の製造工場、アスファルトやセメントの精製工場、鍛造機械を使用する金属の鍛造工場、危険物を貯蔵する建物、個室付浴場業などは建築できません。

準工業地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、450%、500%のいずれかです。

また、準工業地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%、60%、80%のいずれかとなります。
12. 工業地域
工業地域には、個室付浴場、ホテル、旅館、キャバレー、料理店、劇場、映画館、演芸場、ナイトクラブ、学校、病院、床面積が1万平方メートルを超える場外場外勝馬投票券発売所や場外車券売場などは建築できません。

工業地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%のいずれかです。

また、工業地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として50%と60%のいずれかとなります。
13. 工業専用地域
工業専用地域には、工業地域に建築できない建物に加え、住宅、マンションやアパート、老人ホーム、物品を販売する店舗や飲食店、図書館や博物館、ボーリング場、スケート場、水泳場、マージャン店、パチンコ店、射的場、場外場外勝馬投票券発売所や場外車券売場などは建築できません。

工業専用地域における容積率の制限は市町村によって異なるものの、原則として100%、150%、200%、300%、400%のいずれかです。

また、工業専用地域における建ぺい率の制限は市町村によって異なるものの、原則として30%、40%、50%、60%のいずれかとなります。

以上が全13の用途地域と、各用途地域の建築に関する制限、容積率と建ぺい率に関する制限となっています。

市町村は、都市計画法の第八条の第一項の第一号に基づいて市町村内に用途地域を定めます。

都市計画法とは、秩序のある都市の開発と発展を促すための法律であり、同法律の第八条の第一項の第一号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

都市計画法 第八条(地域地区)第一項 第一号
市町村は、市町村内に第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域を定めることが可能であり、それらの地域を用途地域と総称する

また、ご紹介した各用途地域における建築できる建物の制限は建築基準法の第四十八条にて、容積率の制限は建築基準法の第五十二条にて、建ぺい率の制限は建築基準法の第五十三条にて規定されています。

建築基準法とは、建物の構造に関することや、建物が建つ敷地に関する最低限の基準を定めた法律です。

市町村は用途地域を定めることにより、市町村内を住宅地区、商業地区、工業地区などに区分けできます。

そして、用途地域によって建築できる建物が制限されれば、住宅地区で暮らす人々の生活環境は保護され、商業地区に出店する店舗は繁盛しやすくなり、工業地区は輸送コストなどを省きつつ効率の良い生産が可能です。

都市計画法と建築基準法は、デジタル庁が運営するサイト「電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ」の「都市計画法」と「建築基準法」にて全文を確認できます。

用途地域における建築できる建物の種類、容積率、建ぺい率の制限の根拠をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひイーガブをご覧ください。

なお、都市計画法の第九条では、全13の用途地域の趣旨を規定しています。

つづいて、都市計画法の第九条で規定される各用途地域の趣旨を交えつつ、東京都における各用途地域の様子をGoogleのストリートビューを用いてご紹介しましょう。

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2. 用途地域の様子をGoogleストリートビューで紹介

用途地域をわかりやすく簡単に解説すると、市町村が区分けしつつ定めた地域の総称であり、全13に区分され、用途地域によって建築できる建物の種類や容積率、建ぺい率などが制限されます。

ここから、Googleのストリートビューを用いて、東京都における各用途地域の様子をご紹介しましょう。

なお、東京23区の用途地域は、東京都が定めています。

2-1. 第一種低層住居専用地域

第一種低層住居専用地域は、都市計画法の第九条において「低層住宅の良好な住居環境を保護するための地域」と規定されています。

第一種低層住居専用地域には、住宅や事務所などを建築することが可能であり、東京都内の第一種低層住居専用地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第一種低層住居専用地域の様子

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2-2. 第二種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域は、都市計画法の第九条において「主として低層住宅の良好な住居環境を保護するための地域」と規定されています。

第二種低層住居専用地域には、住宅や事務所、床面積が150平方メートル以内の店舗や飲食店などを建築することが可能であり、東京都内の第二種低層住居専用地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第二種低層住居専用地域の様子

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2-3. 第一種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域は、都市計画法の第九条において「中高層住宅の良好な住居環境を保護するための地域」と規定されています。

第一種中高層住居専用地域には、住宅や事務所、大学、病院、床面積が500平方メートル以内の店舗や飲食店などを建築することが可能であり、東京都内の第一種中高層住居専用地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第一種中高層住居専用地域の様子

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2-4. 第二種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域は、都市計画法の第九条において「主として中高層住宅の良好な住居環境を保護するための地域」と規定されています。

第二種中高層住居専用地域は住宅は建築できますが、マージャン店やパチンコ店などは建築できず、東京都内の第二種中高層住居専用地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第二種中高層住居専用地域の様子

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2-5. 第一種住居地域

第一種住居地域は、都市計画法の第九条において「住居の環境を保護するための地域」と規定されています。

第一種住居地域には、原動機を使用する作業場の床面積が50平方メートルを超える工場、劇場、映画館などは建築できず、東京都内の第一種住居地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第一種住居地域の様子

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2-6. 第二種住居地域

第二種住居地域は、都市計画法の第九条において「主として住居の環境を保護するための地域」と規定されています。

第二種住居地域には、キャバレーや劇場、映画館、床面積が300平方メートルを超える店舗などは建築できず、東京都内の第二種住居地域の様子は以下のとおりです。

東京都の第二種住居地域の様子

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2-7. 準住居地域

準住居地域は、都市計画法の第九条において「道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域」と規定されています。

準住居地域には、飲食店や原動機を使用する床面積が50平方メートルを超える工場などは建築できず、東京都内の準住居地域の様子は以下のとおりです。

東京都の準住居地域の様子

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2-8. 田園住居地域

田園住居地域は、都市計画法の第九条において「農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅の良好な住居環境を保護するための地域」と規定されています。

田園住居地域には、農業の生産や農産物の集荷に必要となる建物などを建築することが可能です。

田園住居地域は2018年に新設された用途地域であり、筆者がこの記事を作成する2021年12月現在、東京都に田園住居地域はありません。

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2-9. 近隣商業地域

近隣商業地域は、都市計画法の第九条において「近隣住民に対する日用品の供給を行うことを目的とする商業のための地域、または他の業務の利便を増進するための地域」と規定されています。

近隣商業地域には、花火や石鹸、瓦や煉瓦の製造工場、危険物を貯蔵する建物などは建築できず、東京都内の近隣商業地域の様子は以下のとおりです。

東京都の近隣商業地域の様子

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2-10. 商業地域


商業地域は、都市計画法の第九条において「主として商業、その他の業務の利便を増進するための地域」と規定されています。

商業地域には、原動機を使用するアスファルトやコンクリートの製造工場などは建築できず、東京都内の商業地域の様子は以下のとおりです。

東京都の商業地域の様子

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2-11. 準工業地域

準工業地域は、都市計画法の第九条において「主として公害の発生源となる虞のない工業の利便を増進するための地域」と規定されています。

準工業地域には、塩素や臭素の製造工場などは建築できず、東京都内の準工業地域の様子は以下のとおりです。

東京都の準工業地域の様子

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2-12. 工業地域

工業地域は、都市計画法の第九条において「主として工業の利便を増進するための地域」と規定されています。

工業地域には、ホテルや病院などは建築できず、東京都内の工業地域の様子は以下のとおりです。

東京都の工業地域の様子

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2-13. 工業専用地域

工業専用地域は、都市計画法の第九条において「工業の利便を増進するための地域」と規定されています。

工業専用地域には、住宅やマンションなどは建築できず、東京都内の工業専用地域の様子は以下のとおりです。

東京都の工業専用地域の様子

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まとめ - 用途地域は市町村のホームページなどで確認できる

用途地域をわかりやすく簡単に解説しました。

用途地域とは、市町村が区分けしつつ定めた地域の総称です。

市町村は都市計画法に則って市町村内を13の用途地域に区分けし、建築基準法によって各用途地域に建築できる建物の種類、容積率、建ぺい率などが制限されます。

よって、土地を購入しつつ新築を希望する際や、中古住宅を購入しつつ建て替えを希望する場合は、用途地域を必ず確認しなければなりません。

用途地域をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、各市町村の用途地域の区分け状況は様々な方法で調べることができますが、最も確実な方法は各市町村のホームページにて確認したり、市町村役場に直接問い合わせることです。

市町村のホームページに設置されている検索窓に「都市計画図」や「用途地域」などと入力しつつ検索すれば、その市町村内の用途地域に関する情報が記されたページをお探しいただけます。

東京都の用途地域の区分け状況は、「都市計画情報等インターネット提供サービス」に掲載されている「都市計画情報」という地図にて確認することが可能です。

また、不動産の購入を希望するエリアがあるものの、その周辺の用途地域がわからない場合は、市町村役場に電話やメールで問い合わせれば確認できます。( 市町村によっては電話やメールでは問い合わせできず、窓口で直接問い合わせる必要があるため注意してください )

ちなみに、用途地域は、都市計画区域内のみに指定されています。

都市計画区域とは、都道府県によって指定された、秩序のある都市の開発が計画される区域であり、主に人口が多い区域に指定されます。

よって、市街地から遠く離れた場所には、用途地域は定められていません。

用途地域が定められているのは、既に市街地である区域や、今後10年以内に市街化が図られる区域などのみであり、いわゆる田舎には指定されていないため留意してください。

ご紹介した内容が、用途地域をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2021年12月
記事公開日:2020年1月

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