セットバックとは?わかりやすく解説

セットバックとは?わかりやすく解説

セットバックとは、土地の一部を道路とし、その土地が接する道路の幅を広げることです。

セットバックは、50万円から100万円程度の費用がかかります。

セットバックをわかりやすく簡単に解説し、費用の目安、広告に「要セットバック」と記されている不動産の意味などご説明しましょう。

目次

1. セットバックとは、土地の一部を道路とすること

それでは、セットバックをわかりやすく簡単に解説します。

突然ですが、皆さんは建築基準法をご存知でしょうか。

建築基準法とは、市街地に建物を建てる際の基準を定めた法律です。

市街地に建物を建てる際は、建築基準法で定められた基準を満たしつつ新築しなければなりません。

たとえば、市街地に建物を建てる際は、建築基準法で定められた一定以上の耐震性や耐火性がある建物を新築する必要があるといった具合です。

Yahoo!ニュースなどで定期的に違法建築物に関する記事が掲載されますが、違法建築物とは、建築基準法が定めた基準を満たしていない建物などを指します。

そして、建築基準法の第四十三条では、市街地に位置する建物が建つ土地は、原則として幅が4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと定めています。

「幅が4メートル以上の道路に2メートル以上接する」をわかりやすく簡単に図解でご紹介すると、以下のとおりです。

建物が建つ土地は幅が4m以上の道路に2m以上接する必要がある

建築基準法で建物が建つ土地は幅が4メートル以上の道路に接していなければならないと定めているのには、理由があります。

その理由は、消防車や救急車などの緊急車両の到達や通行を妨げないようにするためです。

幅が4メートル未満の道路は消防車や救急車などが通りにくく、災害時にその道路と接する土地に緊急車両が到達できません。

また、幅が4メートル未満の道路は消防車や救急車などが通りにくく、災害時にその先にある土地に緊急車両が向かうことも困難となります。

よって、建築基準法では、市街地に位置する建物が建つ土地は、幅が4メートル以上の道路に接していなければならないと定めています。

しかし、市街地には、以下のような幅が4メートル未満の道路が多数存在し、その道路沿いには建物が建ち並びます。

市街地には幅4m未満の道路がたくさんある

幅が4メートル未満の道路に接する土地に建物があるのは、建築基準法が定められる前に建築されたことなどが理由ですが、先にご紹介したとおり、幅が4メートル未満の道路は緊急車両の通行が困難です。

そのため、幅が4メートル未満の道路に接する土地に新築する際や、既に存在する建物を建て替える際は、接する道路の幅を広くするために土地の一部を道路とする必要があります。

道路とする部分は、その土地が接する道路の中心線から2メートルまでの部分です。

この市街地に位置する幅が4メートルに満たない道路に接する土地に新築や建て替えをする際に、土地の一部を道路とすることがセットバックです。

セットバックをする前とした後の土地の状況を図解でわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のようになります。

セットバックとは土地の一部を道路とすること

以上でセットバックの意味の解説の完了です。

ただし、これまでに解説したセットバックの意味は概略であり、状況によっては道路の中心線から2メートル以上のセットバックを求められることがあります。

また、セットバックをするためには、費用がかかります。

つづいて、セットバックの留意点と費用の目安をご紹介しましょう。

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1-1. 川近くの土地などは、2m以上セットバックする必要がある

セットバックとは、市街地に位置する土地に新築する際や、既にある建物を建て替える際に、接する土地の幅を広くするために土地に一部を道路とすることです。

道路とするのは、接する土地の中心線から2メートルまでの部分です。

接する土地の中心線から2メートルまでの部分を道路とすれば、道路を挟む両側の土地がセットバックをすることにより幅が4メートルの道路が完成します。

その状況を図解でわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。

道路を挟む両方の土地が2メートルずつセットバックすれば、接する土地は4メートルになる

しかし、全ての道路が、両側に土地があるわけではありません。

片側だけが土地であり、もう片側は川や崖、線路などの場合があります。

そのように道路の片側だけが土地の場合は、道路の向こう側の端から4メートルまで部分を道路とする必要があります。

道路の向こう側の端から4メートルまでの位置までセットバックをすることとなれば、より多くの部分を道路としなければならない場合があります。

その状況をわかりやすく簡単に図解でご紹介すると、以下のとおりです。

向こう側が川や崖の土地は、道路の向こう側の端から4メートルまでの部分までセットバックをしなければならない

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1-2. セットバックは更地にすることもある

これまでにセットバックは、市街地に建物を新築する際や、既にある建物を建て替える際に行うとご説明しました。

しかし、新築をする予定がない更地をセットバックすることもあります。

たとえば、塀だけが建つ「土地A」があったとしましょう。

土地Aに接する道路の幅は4メートル未満であり、消防車や救急車などの緊急車両が通行できません。

であれば、新築をする予定がなくとも、塀を取り壊してセットバックをすることがあるといった具合です。

また、建て替えをする予定がない建物が建つ土地をセットバックすることもあります。

たとえば、建物が建つ「土地B」があったとしましょう。

土地Bに接する道路の幅は4メートル未満であり、消防車や救急車などの緊急車両が通行できません。

土地Bは広さに余裕があり、セットバックをすることが可能です。

であれば、建て替えをする予定がなくともセットバックをするといった具合です。

セットバックは、接する道路の幅を4メートル以上にして消防車や救急車などの緊急車両を通行しやすくするために行います。

よって、幅が4メートルに満たない道路に接する、新築をする予定がない更地や、建て替える予定がない建物が建つ土地に行われることもあります。

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1-3. セットバックは都市計画区域の土地に求められる

これまでにセットバックは、市街地に建物を新築する際や、市街地にある既に建てられた建物を建て替える際に求められるとご説明しました。

しかし、正確には市街地ではなく、都市計画区域と準都市計画区域に建物を新築や建て替えする際に求められます。

都市計画区域とは、都道府県が制定した計画に則って都市づくりが行われる区域であり、既に市街地である区域、または今後10年以内に市街化が図られる区域、もしくは市街化が抑制される区域です。

準都市計画区域とは、都市計画区域ではないものの、既に相当数の住宅が建ち並ぶなどしていることを理由に、都市計画区域と一体化した都市づくりが望まれる区域を指します。

都道府県内は都道府県によって都市計画区域と準都市計画区域、それ以外の区域に区分けされ、セットバックを求められるのは都市計画区域と準都市計画区域のみです。

都道府県内が都市計画区域と準都市計画区域、その他の区域に区分けされるイメージをわかりやすく簡単に図解でご紹介すると、以下のとおりです。

セットバックは、都市計画区域や準都市計画区域の土地に求められる

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1-4. セットバックには費用がかかる

セットバックとは、土地の一部を道路とし、その土地が接する道路の幅を広げることですが、それには費用がかかります。

費用の目安はセットバックをする前の土地の状況、セットバックをする広さなどによって異なりますが、安ければ50万円程度、高ければ100万円程度が目安です。

セットバックをするために必要な作業は多岐にわたり、主に以下のとおりです。

セットバックをするために必要な作業

  • セットバックをする部分の正確な測量
  • セットバックをする部分と隣地との境界の正確な測量
  • セットバックをする部分に建てられている塀などの工作物の撤去
  • セットバックをする部分に埋設されている水道管や下水道管の整備
  • セットバックをした部分の舗装
  • 敷地とセットバックをした部分の境界がわかるブロックなどの埋設

セットバックをするためには上記などの作業が必要となり、その費用の合計が50万円から100万円程度となります。

50万円から100万円というと高額ですが、市町村によっては補助金が支給されます。

補助金の有無は、セットバックをする予定の土地が所在する市町村のホームページなどで確認することが可能です。

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2. 不動産の広告で見る「要セットバック」とは?

セットバックをわかりやすく解説すると、土地の一部を道路とし、その土地が接する道路の幅を広げることです。

そして、土地や中古住宅などの不動産を購入しようと広告を見ると「要セットバック」などと書かれていることがありますが、その意味は以下のとおりとなっています。

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土地の要セットバックとは?

土地の広告に「要セットバック」と書かれている場合は、その土地に新築をする際は、土地の一部を道路とする必要があることを意味します。

具体的には、その土地が接する道路の中心線から2メートルまでの部分を道路としなければなりません。( 状況によっては、それ以上のセットバックを求められることもあります )

そして、セットバックをして道路となった部分には、緊急車両の通行を妨げないように塀や門などの工作物を設置することはできません。

また、市街地に建物を建てる際は、建ぺい率を守る必要があります。

建ぺい率とは、その土地に建てることができる建物の建築面積の制限であり、50%や60%などの割合で記され、市町村が指定します。

たとえば、165㎡(約50坪)の土地で守るべき建ぺい率が50%であれば、82.5㎡(約25坪)までの部分にしか建築できないといった具合です。

そして、要セットバックの土地を購入した場合は、セットバックをして小さくなった面積から建ぺい率を求め、指定された範囲に収まるように建物を建てなければなりません。

したがって、要セットバックの土地に新築をする際は、セットバック前より建てることができる建物の面積が狭くなります。

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中古住宅の要セットバックとは?

中古住宅の広告に「要セットバック」と書かれていることがあります。

中古住宅の「要セットバック」とは、その中古住宅を建て替える際は、土地の一部を道路とする必要があることを意味します。

具体的には、その中古住宅が建つ土地に接する道路の中心線から2メートルまでの部分を道路としなければなりません。( 状況によっては、それ以上のセットバックを求められることもあります )

セットバックをして道路となった部分には、門や塀などの私的な工作物を設置できません。

また、その中古住宅を建て替える際は、セットバックしつつ狭くなった土地の面積から建ぺい率を算出する必要があります。

よって、セットバックしつつ建て替えると、以前より狭くなった土地に住宅を新築することとなり、階数などが同じであれば建て替え前より小さな住宅しか新築できません。

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3. セットバックした部分の固定資産税はどうなる?

固定資産税とは、1月1日の時点で不動産などを所有することにより課される税金です。

土地や建物などの不動産を購入すると、その不動産を所有し続ける限り固定資産税が課され、毎年納税しなければなりません。

ここで気になるのが、セットバックをして道路となった部分に固定資産税が課されるかという点です。

セットバックをして道路となった部分には、塀や建物などの私的な工作物を設置できません。

したがって、セットバックをした部分に固定資産税が課されるのは不当と考えられますが、セットバック部分に固定資産税は課されるのでしょうか。

その答えは、セットバック後の状況によって異なります。

財政に余裕がある市町村では、セットバックをして道路となった部分の寄附を受けています。

セットバックをして道路となった部分を市町村に寄附すれば、セットバック部分に固定資産税が課されることはありません。

また、寄附せずとも、セットバック部分が「公共の道路」であれば、セットバック部分の固定資産税は非課税、または大幅に減額されます。

公共の道路とは、誰もが通行できる状態の道路であり、マイカーなどの私物が置かれていない道路を指します。

セットバックすると固定資産税はどうなる?

セットバックをして道路となった部分の固定資産税を非課税にする方法は、私が運営するもうひとつのサイト「固定資産税をパパッと解説」にてよりわかりやすく解説中です。

セットバックを予定しつつ固定資産税が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

関連コンテンツ
セットバック部分の固定資産税を非課税にする2つの方法とは?

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まとめ - 上部が後退した建物をセットバックと呼ぶこともある

セットバックをわかりやすく簡単に解説しました。

セットバックとは、土地の一部を道路とし、その土地が接する道路の幅を広げることです。

建築基準法により、市街地(正確には都市計画区域、および準都市計画区域)に位置する建物は、幅が4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと定められています。

しかし、市街地には、建築基準法が定められる前に新築された数多くの建物が存在し、その建物が建つ土地の一部は幅が4メートル以上の道路に接していません。

したがって、それに該当する土地に建てられた建物を建て替える際は、セットバックが求められます。

また、幅が4メートルに満たない土地に建物を新築する際も、セットバックが求められます。

セットバックをお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、セットバックの意味はこれまでにご紹介したとおりですが、以下のように上部が下部より後退している建物を「セットバックした建物」と呼ぶため留意してください。

セットバックには上部が下部より後退した建物という意味もある

余談ですが、セットバックと共に「2項道路(にこうどうろ)」や「みなし道路」「狭あい道路(きょうあいどうろ)」などの不動産用語を見聞きすることがあります。

2項道路やみなし道路、狭あい道路とは、今回ご紹介したセットバックが必要となる幅が4メートルに満たない道路です。

市街地に位置する不動産を売買する際は、セットバック、2項道路、みなし道路、狭あい道路などの不動産用語を理解しておけば役立ちます。

ご紹介した内容が、セットバックをお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2024年10月
記事公開日:2020年7月

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