市街化調整区域とは?わかりやすく解説

市街化調整区域とは?わかりやすく解説

市街化調整区域とは、都市計画法により都道府県が市街化を抑制すると区分けした区域であり、一部例外を除き、住宅を建てたり建て替えるなどの開発は制限されます。

市街化調整区域をわかりやすく簡単に解説しましょう。

目次

1. 市街化調整区域とは、市街化が抑制される区域

それでは、市街化調整区域をわかりやすく解説しましょう。

市街化調整区域とは、都市計画法という法律により都道府県から市街化を抑制すると区分けされた区域です。

都道府県が市街化調整区域と区分けした区域内では、一部例外を除き、住宅を新築したり建て替えるなどの開発は制限されます。

市街化調整区域とは都道府県から市街化を抑制すると区分けされた区域

ここで気になるのが都市計画法という法律ですが、都市計画法とは、秩序のある都市開発と公共の福祉の充実を促進することを目的とする法律です。

衛星写真で日本を見下ろすと人里離れた所など方々に住宅が点在しますが、あまりに自由な場所に人々が居を構えると福祉が行き届きません。

たとえば、市街地から遠く離れた場所で住宅が火事になったとしても、消防車や救急車が到着するのに時間が掛かります。

かといって、市街地から遠く離れた人口が少ない場所に消防署や病院を設置するのは財政的な理由で困難です。

また、市街地から離れた場所が開発される際は、その地域の守るべき自然が少なからず失われることとなります。

よって、都市計画法の第五条では、都道府県は人口の密集具合などを調査し、開発、または開発を抑制する区域を定め、それらの区域をひとまとめとする「都市計画区域」を指定することを規定しています。

都市計画法の第五条をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

都市計画法 第五条(都市計画区域)
都道府県は、人口や就業者数、交通量などが多い区域と、守るべき自然がある区域を把握し、それらをひとつの都市として総合的に整備しつつ開発や保全する必要がある区域を都市計画区域と指定するものとする

そして、都市計画法の第七条では、都市計画区域内において無秩序な市街化を抑制すべき区域がある場合は、都道府県は都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分けできると規定しています。

都市計画法の第七条をわかりやすく解説すると以下のとおりです。

都市計画法 第七条(区域区分)
都道府県が指定した都市計画区域内に無秩序な市街化を抑制すべき区域があると判断した場合は、都市計画区域内を市街化区域と市街化調整区域に区分けできる

市街化区域とは既に市街地である区域、または概ね十年以内に市街化を図るべき区域であり、市街化調整区域とは市街化を抑制すべき区域である

つまり、市街化調整区域とは、都市計画法により都道府県が都市計画区域と指定した区域内において、市街化を抑制すると区分けされた区域というわけです。

難解ですが、図解を見れば簡単です。

市街化調整区域を図解でわかりやすく解説すると以下のようになります。

市街化調整区域は都市計画区域内に位置する

このように市街化調整区域とは、都市計画法により、都市計画区域内において市街化が抑制されると都道府県から区分けされた区域です。

そもそも都市計画法では、都市計画区域内において開発を希望する者は、都道府県知事の許可を受けなくてはならないと規定しています。

しかし、市街化調整区域は市街化を抑制するために都道府県が区分けした区域だけに開発許可が下りず、住宅を建てたり、既に建てられている住宅を建て替えるなどの行為が制限されることとなります。

アットホームなどの不動産検索サイトで土地や中古住宅を探すと、「市街化調整区域に位置する」などの注意書きがある相場より大幅に安い不動産を見かけますが、住宅を建てるなどの開発行為は制限されるため注意してください。

ただし、都市計画法では、特定の条件を満たすのであれば、市街化調整区域であっても都道府県知事の許可を必要とせず開発ができるとも規定しています。

加えて、都市計画法では、特定の条件を満たすのであれば、都道府県知事は市街化調整区域であっても開発を許可できるとも規定しています。

ようするに、市街化調整区域であっても特定の条件を満たすのであれば、住宅を建てるなどの開発ができる可能性があるというわけです。

つづいて、都市計画法により規定された、市街化調整区域内において許される可能性がある開発行為をご紹介しましょう。

なお、都市計画法における開発とは、主に建築物の建築を意味するため留意してください。

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2. 市街化調整区域で新築や建て替えできる条件

市街化調整区域をわかりやすく解説すると、都道府県が都市計画法により都市計画区域と指定した区域内において、市街化を抑制すると区分けされた区域であり、開発行為が制限されます。

よって、市街化調整区域では住宅を建てたり建て替えるなどの行為は制限されますが、以下の条件を満たせば許される可能性があります。

なお、ご紹介する条件を満たしたとしても、確実に新築や建て替えができるわけではないため注意してください。

ご紹介するのは満たすべき条件の一部であり、市街化調整区域で新築や建て替えを希望する場合は、その他にもたくさんの条件を満たさなければなりません。

2-1. 農業や林業、漁業を営む方の住宅を建てる

市街化調整区域は住宅を建てるなどの開発は制限されますが、農業や林業、漁業を営む方がお住まいになる住宅であれば、都市計画法の第二十九条の第一項の第二号により新築や改築できる可能性があります。

都市計画法の第二十九条の第一項の第二号をわかりやすく解説すると以下のとおりです。

都市計画法 第二十九条(開発行為の許可)第一項の第二号
都市計画区域内で開発行為を希望する者は都道府県知事の許可を得なければならないが、農業や林業、漁業を営む者の住宅を新築や改築する場合は、市街化調整区域であってもこの限りではない。

市街化調整区域であっても農林漁業従事者であれば新築できる

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2-2. 地区計画などで開発が許可されると規定された区域での新築

市街化調整区域に位置する地区や集落において開発の計画があり、その計画に適合する住宅を建てるのであれば、都市計画法の第三十四条の第十号により市街化調整区域であっても住宅を新築したり建て替えできる可能性があります。

都市計画法の第三十四条の第十号をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

都市計画法 第三十四条 第十号
地区計画、または集落地区計画がある区域において、それらの計画に定められた内容に適合する建築物であれば、市街化調整区域であっても都道府県知事は開発を許可できる

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2-3. 市街化区域に隣接する市街化調整区域での新築や建て替え

市街化区域と隣接や近接する市街化調整区域であり、なおかつ都道府県が条例で開発できると定めているのであれば、都市計画法の第三十四条の第十一号により市街化調整区域であっても住宅を新築したり建て替えできる可能性があります。

都市計画法の第三十四条の第十一号をわかりやすく解説すると以下のとおりです。

都市計画法 第三十四条 第十一号
50以上の建物が連なりつつ隣接や近接する市街化区域と市街化調整区域であり、なおかつ都道府県が条例で定めるのであれば、都道府県知事は市街化調整区域であっても開発を許可できる

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2-4. 市街化調整区域の区分け以前から所有する土地への新築

都道府県が市街化調整区域と区分けした時点において既に土地を所有し、なおかつ市街化調整区域と区分けされた日から6ヵ月以内に都道府県知事に開発することを届け出れば、都市計画法の第三十四条の第十三号により市街化調整区域であっても住宅を新築できる可能性があります。

都市計画法の第三十四条の第十三号をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

都市計画法 第三十四条 第十三号
都道府県が市街化調整区域に区分けした時点において土地を所有する者が、市街化調整区域に区分けされた日から6ヵ月以内に申請した場合は、市街化調整区域であっても都道府県知事は開発を許可できる

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3. 既存宅地も新築や建て替えができる可能性がある

市街化調整区域とは、都道府県が都市計画法により都市計画区域と指定した区域内において、市街化を抑制すると区分けされた区域であり、開発行為が制限されます。

市街化調整区域では、特定の条件を満たさない限り住宅を新築したり中古住宅を建て替えるなどはできません。

しかし、不動産検索サイトで不動産を探すと、稀に「市街化調整区域ですが既存宅地につき新築や建て替えできます」などと書かれた物件を見かけます。

既存宅地とは、昭和50年ごろに導入され平成18年ごろに終了した「既存宅地制度」の実施中に、都道府県知事の許可を必要とせず新築や建て替えが可能であった市街化調整区域に位置する宅地です。

宅地とは建物を建てるための土地、または既存する建物を継続させるための土地であり、既存宅地であれば市街化調整区域であっても新築や建て替えができる可能性があります。

市街化調整区域であっても既存宅地であれば新築できる可能性がある

とはいうものの、先にご紹介したとおり、既存宅地制度は平成18年ごろに終了しています。

では、なぜ未だ既存宅地が売りに出され、なおかつ新築や建て替えができる可能性があるのでしょうか。

その理由は、既存宅地制度が終了した現在においても、一部の都道府県では、既存宅地制度の実施中に既存宅地であった宅地であれば、新築や建て替えができると規定していることが理由です。

そのため、既存宅地への新築や建て替えができる規定がある都道府県に位置する既存宅地であれば、市街化調整区域であっても開発ができる可能性があります。

ただし、既存宅地への新築や建て替えができる規定がある都道府県であっても、たくさんの条件を満たすことにより開発が許されるのが通例です。

よって、既存宅地の購入を希望する場合は、必ず売買契約を結ぶ前に都道府県役場に出向き、新築や建て替えができるかご確認ください。

既存宅地の詳細は、誰でもわかる不動産売買にて公開中のコンテンツにてわかりやすく解説中です。

市街化調整区域の既存宅地の詳細にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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まとめ - 市街化調整区域での不動産の購入は慎重に

市街化調整区域をわかりやすく解説しました。

市街化調整区域とは、都市計画法により都道府県が都市計画区域と指定した区域内において、開発を抑制すると区分けされた区域であり、住宅を新築したり建て替えるなどの行為は制限されます。

不動産検索サイトで相場より大幅に安く売りに出されている市街化調整区域の物件を見かけますが、一部例外を除き新築や建て替えができないため注意してください。

なお、この記事では、市街化調整区域に新築や建て替えができる条件もご紹介しましたが、ご紹介した条件を満たしたとしても絶対に新築や建て替えができるとは限らないため注意してください。

ご紹介した市街化調整区域に新築や建て替えができる条件は、満たすべき条件の一部であり、その他にもたくさんの条件を満たさなければ開発できません。

また、満たすべき条件は、都道府県によって詳細が異なります。

よって、住宅の新築や、中古住宅の建て替えを目的として市街化調整区域に位置する不動産の購入を希望する場合は、売買契約を結ぶ前に都道府県役場の開発課に出向き、新築や建て替えができるか必ずご確認ください。

その不動産を取り扱う不動産業者が新築できる、または建て替えできると謳う場合であっても、必ず都道府県役場の開発課に出向き、新築や建て替えができるか確認しなければなりません。

市街化調整区域内で住宅を新築したり建て替える際は、一部例外を除き許可を受ける必要があり、許可を下ろすのは不動産業者ではなく都道府県知事です。

よって、新築や建て替えを目的として市街化調整区域に位置する不動産の購入を希望する場合は、売買契約を結ぶ前に都道府県役場に出向き、許可が下りるか確認する必要があります。

稀に家を建てられると自己判断しつつ市街化調整区域に位置する格安の土地を購入する方がいらっしゃいますが、その行為には大きなリスクが伴います。

ご紹介した内容が、市街化調整区域をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2021年10月
記事公開日:2019年12月

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