既存宅地とは?市街化調整区域の既存宅地を解説
既存宅地とは、建築や再建築ができない市街化調整区域にありながら、建築や再建築ができる宅地(建物を建てるための土地)であり、現在は消滅しています。
既存宅地をわかりやすく解説し、現在売買される既存宅地は建築できるか、再建築できる既存宅地の条件などをイラスト付きで解説しましょう。
目次
- 1. 既存宅地とは、開発が許された市街化調整区域
- 1-1. あらためて既存宅地をわかりやすく解説
- 2. 既存宅地が売買され続ける理由
- 3. 既存宅地は再建築できることもある
- まとめ - 既存宅地の経緯と年表
1. 既存宅地とは、開発が許された市街化調整区域
それでは、既存宅地をわかりやすくご説明しましょう。
その前に、既存宅地の末尾にある宅地の意味と、市街化区域と市街化調整区域という3つの不動産用語を理解してください。
まず、宅地とは、建物を建てるための土地です。
つぎに、市街化区域とは、既に市街地である区域や今後10年以内などに市街化が図られる区域です。
市街化区域は、住宅などを建築したり建て替えることができます。
最後に、市街化調整区域とは、市街化が抑制される区域です。
市街化調整区域では、一部例外を除き住宅を建築したり建て替えることはできません。
以上の3つをまとめると以下のとおりです。
既存宅地の前に理解しておきたい3つの不動産用語
- 1. 宅地 … 建物を建てるための土地
- 2. 市街化区域 … 既に市街地である区域や市街化が図られる区域であり、建築や再建築ができる
- 3. 市街化調整区域 … 市街化が抑制される区域であり、建築や再建築が制限される
以上が宅地、市街化区域、市街化調整区域の意味であり、特に難しくありません。
つづいて、既存宅地をわかりやすく解説しましょう。
1-1. あらためて既存宅地をわかりやすく解説
既存宅地とは、建築や再建築ができない市街化調整区域にありながら、建築や再建築ができる宅地(建物を建てるための土地)です。
この記事の「1. 既存宅地とは、開発が許された市街化調整区域」にてご紹介したとおり、市街化区域は建築や再建築ができる区域であり、市街化調整区域は建築や再建築ができない区域ですが、昭和45年ごろから各都道府県により区分けが開始されました。
市街化区域と市街化調整区域の区分けが開始された昭和45年ごろに、自己の所有する不動産が所在する場所が市街化区域に指定されれば問題ありません。
今後も住宅を建てたり、既に建てられた住宅などは建て替えることが可能です。
しかし、自己の所有する不動産が所在する場所が市街化調整区域に指定されればどうでしょう。
たとえば、自己が所有する宅地が所在する場所が市街化調整区域に指定されれば、住宅を建築できなくなってしまいます。
また、自己が所有する住宅が所在する場所が市街化調整区域に指定されれば、老朽化しても建て替えることができません。
建築できない宅地は売却もままならず、建て替えできない住宅に住み続けることはできません。
これにより、昭和45年ごろに、市街化調整区域に指定された場所に不動産を所有する方は大いに困りました。
そこで、昭和50年ごろに導入されたのが既存宅地制度です。
既存宅地制度とは、その宅地が市街化調整区域に指定される前から存在し、市街化区域に隣接することなどが都道府県知事により確認されれば、建築や再建築ができるという制度です。
既存宅地とは、この既存宅地制度で建築や再建築ができると確認された、市街化調整区域内に位置する宅地です。
この既存宅地制度によって、既存宅地を所有する方は、それまで通り建築や再建築ができるようになりました。
ただし、既存宅地制度は平成18年に終了し、市街化区域と市街化調整区域の区分けの開始から約50年が経過した現在では、当時既存宅地であると確認された宅地であっても建築や再建築ができないため注意してください。
とはいうものの、現在でも既存宅地は売買され続けています。
つづいて、既存宅地制度が終了した現在でも、既存宅地が売買される理由をご紹介しましょう。
2. 既存宅地が売買され続ける理由
既存宅地とは、建築や再建築が制限される市街化調整区域にありながら、建築や再建築ができる宅地(建物を建てるための土地)です。
しかし、この記事の「1-1. あらためて既存宅地をわかりやすく解説」にてご紹介したとおり、既存宅地制度が終了した平成18年に既存宅地は消滅しています。
よって、令和の現在では既存宅地は存在しないはずですが、稀に「市街化調整区域内ですが、既存宅地のため建築も再建築もできます」などと宣伝されつつ売りに出されている不動産を見かけます。
既存宅地が未だ売買されるのは、平成18年に既存宅地制度が消滅したものの、一部の都道府県では、平成18年までに既存宅地であると確認された宅地であれば、現在でも建築や再建築ができるためです。
たとえば、高知県は、平成18年までに既存宅地であると確認された一定の条件を満たす宅地であれば建築できると規定しています。
規定内容は、高知県が公式サイトで公開する資料「既存宅地の確認を受けている土地の取り扱いについて」にて確認することが可能です。
そのため、既存宅地のため建築や再建築ができると謳う不動産は、市街化調整区域内であっても建築や再建築ができると断言したいところですが、確実ではありません。
その根拠は、不動産業者が仲介する不動産売買の苦情解決などの業務を請け負う全日本不動産協会の公式サイト内に掲載されているトラブル事例「No.141 市街化調整区域と既存宅地」にてご確認いただけます。
同事例では、不動産業者から建築や再建築ができるとの説明を受けつつ既存宅地を購入したものの、建て替えできなかったというトラブルが報告されています。
よって、既存宅地のため建築や再建築ができると謳う不動産を購入する際は、それを鵜呑みにせず、その不動産が所在する地域を管轄する都道府県役場の建築課などに出向き、実際に建築や再建築ができるか担当者にご確認ください。
市街化調整区域内で建築や再建築を行う際は、一部例外を除き都道府県知事の許可が必要となるため、都道府県役場に直接問い合わせるのが確実です。
なお、誰でもわかる不動産売買では、市街化調整区域をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。
同コンテンツでは、市街化調整区域内に建築できる条件などもご紹介しています。
既存宅地など、市街化調整区域内での不動産の売買を検討される方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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3. 既存宅地は再建築できることもある
既存宅地とは、市街化調整区域にありながら建築や再建築ができる宅地ですが、平成18年に既存宅地制度が終了すると共に消滅しています。
よって、既存宅地は再建築できないと考えがちですが、絶対に建て替えできないというわけではありません。
たとえば、この記事の「2. 既存宅地が売買され続ける理由」にてご紹介していますが、高知県は一定の条件を満たせば、既存宅地であれば建築できると規定しています。
一定の条件は以下のとおりです。
高知県が規定する建築できる既存宅地の条件
- その土地が既存宅地と確認された以降に、既存宅地と確認されていない土地と合筆(複数の土地をひとまとめにすること)されていない
- その土地が既存宅地と確認された以降に、地目(その土地の使い道)が田や畑などに変更されていない
- その土地の現状が、田や畑ではない
※ 詳細は「高知県|既存宅地の確認を受けている土地の取り扱いについて」にて確認できる
上記の条件を満たせば、高知県であれば既存宅地に建築できます。
そのため、既存宅地に建つ住宅などを所有しつつ再建築を希望する場合は、諦めずにその不動産が所在する地域を管轄する都道府県役場に出向き、再建築できないかご確認ください。
状況によっては、再建築できる可能性があります。
まとめ - 既存宅地の経緯と年表
既存宅地をわかりやすく解説し、既存宅地に再建築できるか、既存宅地が未だ売買される理由などをご紹介しました。
既存宅地とは、建築や再建築ができない市街化調整区域にありながら、建築や再建築ができる宅地(建物を建てるための土地)です。
ただし、平成18年に既存宅地制度が終了し、現在は既存宅地は消滅しているため留意してください。
しかし、高知県など一部の都道府県では、一定の条件を満たせば現在でも既存宅地に建築が可能となっています。
そのため、既存宅地の売買や建築、再建築を希望する場合は、その不動産が所在する地域を管轄する都道府県役場に出向き詳細を確認するのが良いでしょう。
最後に、既存宅地の経緯を年表にまとめましょう。
既存宅地の経緯と年表
昭和45年ごろ | 各都道府県が市街化区域と市街化調整区域の区分け(指定)を開始する |
---|---|
昭和50年ごろ | 既存宅地制度が創設され、各都道府県で既存宅地の確認が開始される |
平成13年 | 既存宅地制度が廃止され、5年の猶予期間をおいて平成18年に既存宅地が消滅することが決定される |
平成18年 | 5年の猶予期間が終了し、既存宅地が消滅する |
※ 昭和45年ごろなど時期があいまいな理由は、都道府県によって異なるため
ご紹介した内容が、既存宅地をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年10月
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