登記簿とは?不動産の購入前に確認すべき記載内容を解説
不動産の売買を検討していて、初めて「登記簿」という言葉を耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
登記簿とは、不動産の所在地・面積・所有者・権利関係などを記録した公的な台帳です。意味を把握しないまま売買の手続きを進めると、思わぬ失敗につながる恐れがあります。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、初めて不動産を売買する方へ向けて、登記簿をわかりやすく解説します。
目次
- 1. 登記簿とは何か?役割と目的をわかりやすく解説
- 2. 登記簿の構造:表題部・甲区・乙区の違い
- 3. 不動産購入前に登記簿で確認すべき3つのポイント
- 4. 登記簿謄本・登記事項証明書との違い
- 5. 登記事項証明書の種類と取得方法
- 6. 相続登記の義務化(2024年4月)と登記簿の関係
- まとめ - よくある質問
1. 登記簿とは何か?役割と目的をわかりやすく解説
はじめに、登記簿の基本的な役割と、なぜ不動産取引において欠かせない存在なのかを解説します。
それらを理解すれば、不動産を売買する際に「登記簿を確認する」という行動が、自分の権利を守るための大切なステップであることがわかります。
売買後のトラブルを未然に防ぐためにも、まずは登記簿の基本から押さえておきましょう。
1-1. 登記簿は「不動産の公的な身分証明書」
登記簿とは、日本国内のほぼすべての不動産について、その所在地・面積・所有者・権利関係などを記録した公的な台帳です。
人間には戸籍や住民票という「身分を証明する公的な書類」がありますが、不動産にはそれに相当するものがありません。土地や建物は品物のように名前を書くことができないため、「誰の所有物か」を公的に証明する手段として登記簿が存在します。登記簿は、いわば不動産のための公的な身分証明書といえます。
登記簿はかつて紙の帳簿として管理されていましたが、現在は磁気ディスクを用いてコンピュータ上で電子管理されています。1筆(1区画)の土地ごと、または1個の建物ごとに1つの登記記録が作成されており、土地と建物はそれぞれ別の登記記録として管理されています。
一戸建てを購入すると、一部例外を除き建物と土地をセットで購入することとなりますが、建物と土地には、それぞれに登記記録が存在します。
マンションを購入すると、一部例外を除き建物である一戸部分と、土地である敷地権(そのマンションが建つ土地を利用する権利)をセットで購入することとなりますが、それらが一つにまとめられた登記記録が存在します。
登記簿は公的な台帳であるため、身分証明書などを提示しなくても、誰でも内容を確認できます。自分が所有する不動産だけでなく、他人が所有する不動産の登記記録も確認できるといった具合です。
1-2. 誰が管理しているのか(法務局の役割)
登記簿は、法務省の地方支分部局である法務局が管理しており、法務局は「登記所」とも呼ばれます。2026年時点では、本局(法務局・地方法務局)、支局、出張所をすべて合わせると、全国に合計410箇所の法務局が存在します。
法務局には「登記官」と呼ばれる国家公務員が在籍しています。登記官は、登記簿の変更を希望する申請者から提出された内容を専門的な見地から審査し、問題がなければ登記記録に記録します。申請書の内容に不備があれば補正を求めるなど、登記記録の正確性を担保する重要な役割を担っています。
登記官は、いわば「不動産の番人」ともいえる存在です。筆者も不動産業を営む中でずいぶんお世話になっており、登記官には嫌われないようにするのが一番だと実感しています。
登記簿の内容を変更する手続きは、対象となる不動産が所在する地域を管轄する法務局で行います。また、法務局では登記事項証明書の交付も行っています。
登記事項証明書とは、登記簿の内容を写した書面です。全国どこの法務局でも交付を請求でき、たとえば大阪にある不動産の登記事項証明書を、東京の法務局で請求することも可能です。
以下は、法務省が公開している建物の登記事項証明書の見本です。「登記簿の内容を写した書面」というイメージでご参照ください。
※ 出典:法務省
なお、登記事項証明書はインターネットを利用したオンライン申請や、登記情報提供サービスを通じて請求することもできます。
1-3. なぜ登記簿が必要なのか(登記しないと起こるリスク)
不動産の所在地・面積・所有者・権利関係などを登記簿に記録することを「登記」と呼びます。
- ポイント
- 登記簿に、不動産の所在地・面積・所有者・権利関係などを記録することを「登記」と呼ぶ
そして、不動産を購入すると、その不動産の所有権を取得しますが、所有権を誰かに主張するためには、購入したうえで取得したことを登記する必要があります。
不動産の所有権とは、その不動産を自由に使用して、売却するなどして処分できる権利です。
極端な例ですが、土地の所有者であるAさんが、同じ土地をBさんとCさんに売却することを約束したとしましょう。これは「二重売買」などと呼ばれるおこないであり、信じられませんが法律上成立する行為です。
その後、Bさんは、Cさんより先にAさんと売買契約を結び、代金も支払いましたが、登記手続きを先延ばししていました。一方のCさんは、後から契約を結んだものの、すぐに登記を済ませました。
この状況では、後から契約したCさんであっても、先に登記を済ませたため所有権を主張できるのです。先に契約を結んだBさんは、登記を済ませていなかったため所有権を主張できず、Aさんに対して損害賠償を請求するしか手段がありません。
このように、不動産取引においては「代金を支払った」「先に契約した」という事実だけでは所有権を主張することができません。売買が成立したら、速やかに登記手続きを行うことが重要です。
なお、先に「後から契約したCさんであっても、先に登記を済ませたため所有権を主張できる」とご紹介しましたが、もしCさんが「Bさんを困らせてやろう」といった強い悪意(背信的悪意者)でこの行為を行った場合は、例外となる可能性があるため留意してください。
また、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、登記をわかりやすく解説する記事「登記とは?費用・義務化・手続きを図解でわかりやすく解説」も公開中です。登記がよくわからないという方は、ぜひご覧ください。
2. 登記簿の構造:表題部・甲区・乙区の違い
ここからは、登記簿には「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」という構造があり、それぞれに異なる情報が記録されていることを解説します。それぞれに記録されている主な内容は、以下のとおりです。
| 区分 | 役割 | 主な記載内容 | 主な登記の種類 |
|---|---|---|---|
| 表題部 | 不動産の物理的情報を公示する | 所在・地番・地目・地積(土地)、所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物) | 表示に関する登記 |
| 権利部(甲区) | 所有権に関する情報を公示する | 所有者の氏名・住所・取得原因・取得日 | 所有権移転登記・保存登記・差押えなど |
| 権利部(乙区) | 所有権以外の権利を公示する | 抵当権・地上権・地役権・根抵当権など | 抵当権設定登記・地上権設定登記など |
上記には「所有権移転登記」など難しい言葉が並びますが、ここはひとまず読み流してください。つづいて、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」に記録されていることの詳細を解説します。
2-1. 表題部に記載されていること(所在・面積・地目など)
表題部とは、その不動産の物理的な状況を記録した部分です。ここに記録される内容は「表示に関する登記」と呼ばれ、土地と建物では記録内容が異なります。
土地の登記簿の表題部には、以下の情報が記録されています。
- 所在:その土地がある市区町村・字(あざ)の名称
- 地番:土地登記のために割り振られた番号(住居表示の住所とは異なります)
- 地目:土地の現況・利用状況を示す区分(宅地・田・畑・山林など23種類)
- 地積:土地の面積(単位:㎡)
建物の登記簿の表題部には、以下の情報が記録されています。
- 所在・地番:建物が建っている土地の所在と地番
- 家屋番号:建物ごとに割り振られた番号
- 種類:建物の用途(居宅・共同住宅・事務所など)
- 構造:建物の主な建築材料と屋根の種類・階数(例:木造瓦葺2階建)
- 床面積:各階の面積(単位:㎡)
ちなみに、表題部に建物や土地の情報を記録することを「表題登記」と呼びます。不動産を売買する際に「表題登記」という言葉を見聞きした場合は、「表題部に不動産の情報を記録すること」などと思い出してください。
2-2|権利部(甲区)に記載されていること(所有権)
権利部の甲区には、過去から現在までに行われた、その不動産の所有権に関する登記の情報がすべて記されています。
甲区を見ることで、「いつ・誰が・どのような原因で」その不動産の所有権を取得したかがわかります。「売買」「相続」「贈与」「競売」など取得した原因も記録され、その不動産の所有者の移り変わりを確認できます。
甲区には、所有権保存登記、所有権移転登記、仮登記、差押え、仮処分などの名目で所有者の移り変わりに関する情報が記され、それぞれの詳細は以下のとおりです。
- 所有権保存登記:新築建物などについて、初めて所有権を登記したことの情報
- 所有権移転登記:売買・相続・贈与などにより所有者が変わったことを登記したことの情報
- 仮登記:売買などにより所有権を有する者が変更になったものの、なにかしらの原因によりそれを登記できなかったが、原因が解消され次第、所有権を有する者が変更になることを登記したことの情報
- 差押え:裁判所や税務署などがその不動産を差押えしたことの情報
- 仮処分:権利関係に争いがある場合に現状を保全するための処分が行われたことの情報
不動産の現在の所有者が誰であるかは、甲区の記録を見ることにより確認できます。もし、個人売買など不動産業者を介さずに不動産を売買する機会があった場合は、必ず甲区を見て売主と所有者が一致しているか確認してください。
2-3. 権利部(乙区)に記載されていること(抵当権など)
権利部の乙区には、所有権以外の権利を有する者、または過去に有した者に関する情報が記録されています。
乙区に最も多く記録されるのが「抵当権」です。抵当権とは、資金の貸主が、資金の借主からの返済が滞った場合に、その不動産を競売にかけ、競落人(落札者)から支払われた物件代金を受け取る権利です。
抵当権は、主に住宅ローンを利用して購入した不動産に設定されます。資金を貸し出した金融機関は、その物件を担保(借金のカタ)に取り、抵当権を設定し、利用者からの返済が滞った場合の保証として活用します。
抵当権の記載には、債権者、債務者、債権額、設定日に関することが記され、それらの詳細は以下のとおりです。
- 債権者(金融機関名):どの金融機関が抵当権を持っているか
- 債務者:債権者から資金を借り入れた者の名前と住所
- 債権額:いくら借り入れたことにより抵当権が設定されたか
- 設定日:抵当権が設定された日付
乙区には抵当権のほか、地上権・地役権・賃借権・根抵当権なども記録されます。地上権は土地を貸し借りする際に、地役権は他人に土地を使わせる際に、賃借権は不動産を貸し借りする際に、根抵当権も抵当権と同じく資金を借り入れる際に設定されます。
根抵当権は、一定の範囲内で繰り返し借入を行うことを前提として設定される担保権であり、事業用不動産によく見られます。
2-4. マンションの登記簿に記載される「敷地権」とは
マンションなど、一棟の中に区分された部分があり、その各区分に所有者が存在する建物を「区分所有建物」と呼びます。
そして、区分所有建物の登記簿には、「敷地権」と呼ばれる権利が記載されていることがあります。以下は、法務省が公開する区分所有建物の登記事項証明書の見本であり、赤い線で囲まれた箇所にそれが記されています。
※ 出典:法務省
敷地権とは、区分所有建物の一部を所有するために、建物が建つ敷地を利用する権利です。マンションなどの区分所有建物は、一戸部分を所有するために、その建物が建つ土地を利用しなければなりませんが、利用できる権利が敷地権というわけです。
敷地権がある区分所有建物は、原則として、建物と敷地権を分離して売買することはできません。これを「分離処分の禁止」と呼びます。
ちなみに、マンションの登記簿にも表題部があり、「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」などが記載され、それぞれの詳細は以下のとおりです。
- 一棟の建物の表示: 建物全体の所在・構造・床面積など
- 専有部分の建物の表示: 各居室の家屋番号・種類・構造・床面積
- 敷地権の表示: 敷地の地番・地目・地積、およびその区分の所有者が所有する敷地権の割合
なお、「専有部分の建物の表示」に記されている床面積は「内法面積(壁の内側で計測した面積)」です。一方、マンションの広告に記されている床面積は「壁芯面積(壁の中心線で計測した面積)」で表示されるのが通例です。
すなわち、登記簿に記されている床面積より、広告に記されている床面積の方が広いというわけですが、住宅ローン控除の床面積の要件は、登記簿上の内法面積を基準とするため注意してください。
3. 不動産購入前に登記簿で確認すべき3つのポイント
不動産は高額なため、購入する際は失敗をするリスクをできる限り減らしておきたいものです。リスクを減らす方法は様々ですが、登記簿を見ることも手段の一つです。
具体的には、甲区、乙区、表題部の3箇所を見て、所有者、抵当権・差押えの有無、建物の面積を確認します。
つづいて、チェックすべき3つの箇所の詳細を解説します。
3-1. 所有者と売主が一致しているか確認する
不動産を購入する前に登記簿で確認すべき1つめのポイントは、甲区に記載されている「登記名義人(現在の所有者)」と、物件の売主が一致しているかどうかです。
なぜこの確認が必要かというと、登記名義人と売主が異なる場合、その取引は正規の売主との契約ではない可能性があるからです。
個人間売買であれば詐欺的な取引に巻き込まれるリスクがあり、不動産業者を仲介して売買する場合であっても後に問題になる可能性があります。
登記名義人と物件の売主が一致しない主な要因は、以下のとおりです。
- 相続が未了:所有者がすでに亡くなっているにもかかわらず、相続登記が行われておらず、被相続人(亡くなった方)の名義のまま売りに出されている。この場合は相続人全員の同意を得たうえでの売却手続きが必要となります。
- 共有名義で他の所有者の承認を取っていない:土地や建物の所有者が複数人存在することにより「共有名義」となっているが、そのうち一人だけが売却を希望し、売主となっている。共有名義となっている場合、共有者全員の同意がなければ物件を売却することはできません。
- 離婚後に名義変更が未了:離婚後に不動産の所有権を譲り受けたが、名義を変える手続きを怠っている。この場合は名義を変更したうえで売却をする必要があります。
登記名義人と売主が一致していない場合は、個人間売買であれば避けた方が無難です。不動産業者を仲介して売買する場合は、その物件を取り扱う不動産業者に詳細を確認し、安全性を確かめたうえで取引を進めてください。
3-2. 抵当権・差押えが残っていないかを確認する
不動産を購入する前に登記簿で確認すべき2つめのポイントは、乙区に抵当権の記載があるか、および甲区に差押えや仮処分の記載がないかです。
築年数が新しい中古住宅を購入しようと取引を進めつつ登記簿の乙区を見ると、抵当権に関することが記録されている場合があります。これは、主に住宅ローンを利用してその物件が購入されたことを意味します。そして、売主は、完済の前にその物件を売りに出しています。
抵当権が設定されている不動産が売買される際は、買主が支払った物件代金をもって、売主がローンを完済します。続いて、当日中に抵当権を抹消する登記と、所有権を売主から買主に移す登記を行うのが通例です。
この手続きは複雑であり、不慣れな者では完遂できません。よって、乙区に抵当権の記録がある不動産を購入する際は、事前に不動産業者や司法書士に確認を取っておくことが重要です。
抵当権が抹消されないまま所有権だけが移転してしまうと、場合によっては買主がローンを完済する必要があります。その他にも、差押え、仮処分、根抵当権設定に関する記録にも注意する必要があり、詳細は以下のとおりです。
- 差押え(甲区に記載):この記載がある不動産は、裁判所や税務署などに差し押さえられた状態です。その状態の不動産は、原則として自由に売買することができません。差押えが解除されないまま取引が進んでいる場合は、取引自体の適法性を慎重に確認する必要があります。
- 仮処分(甲区に記載):この記載がある不動産は、権利関係に何らかの争いがあり、現状が保全された状態にあります。その状態の不動産を購入すると後に所有権を失う可能性があります。
- 根抵当権(乙区に記載):この記載がある不動産は、抵当権と同じく抵当(借金のカタ)に入っています。おそらく売主は事業者だと考えられ、根抵当権も抵当権と同じく抹消できますが、抹消方法が複雑なため注意が必要です。
不動産を売買する際に登記簿を確認し、乙区に抵当権の記録が、甲区に差押えや仮処分などの記載がある場合は、事前に不動産業者に詳細を確認し、納得できる場合に限り取引を進めてください。
3-3. 登記簿の面積と実際の広さが一致するか確認する
不動産を購入する前に登記簿で確認すべき3つめのポイントは、表題部に記載されている面積(土地であれば地積・建物であれば床面積)と、実際の広さが一致しているかどうかです。
登記簿に記載されている面積と実際の面積が異なるケースは、決して珍しくありません。特に古い土地では、明治時代の地租改正時に行われた測量の数値がそのまま登記されているケースがあり、現在の実測値とかけ離れている場合があります。
土地の売買契約には、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- 公簿売買:登記簿に記載されている面積(地積)を基準として売買価格を決める方法。実測との差異があっても原則として価格の調整は行いません。
- 実測売買:実際に測量を行い、その実測面積を基準として売買価格を決める方法。公簿と実測に差がある場合は、その差分を価格に反映させます。
どちらの方法で契約するかは売買契約書に明記されますが、重要なのは「登記簿の面積をそのまま信頼しない」という姿勢を持つことです。面積に疑義がある場合は、売主に測量図の提示を求めるか、土地家屋調査士に依頼して実測を行うことを検討してください。
また、建物(特にマンション)については面積の表示方法に注意が必要です。登記簿に記載される床面積は「内法面積(壁の内側で計測した面積)」ですが、不動産広告に記載されている専有面積は「壁芯面積(壁の中心線で計測した面積)」で表示されることが一般的です。
この違いにより、マンションの場合、登記簿上の床面積は不動産広告の専有面積より小さくなります。住宅ローン控除の適用を受ける際は登記簿上の内法面積が基準となるため、事前に確認しておいてください。
4. 登記簿謄本・登記事項証明書との違い
登記簿という言葉とともに見聞きすることが多いのが「登記簿謄本」と「登記事項証明書」です。それらの言葉は不動産に関する手続きの中で混在して使われることが多く、混乱される方も少なくありません。
よって、ここからは、登記簿謄本、登記事項証明書の意味を解説すると共に、登記簿との違いと関係性を整理します。それらを正確に把握すれば、法務局で証明書などの交付を請求する際に役立ちます。
4-1. 登記簿謄本とは(紙の時代の名称)
登記簿謄本(とうほん)とは、かつて登記簿が紙の帳簿として管理されていたころに発行されていた、原本の内容をすべて書き写した(謄写した)書面のことです。
現在、登記情報は磁気ディスク上で電子管理されていますが、1988年(昭和63年)の法改正前は、各法務局に紙の登記用紙がバインダーに綴じられた状態で保管されていました。この紙の原本を複写し、登記官が認証したものが「登記簿謄本」です。
現在でも、法務局の窓口で「登記簿謄本をください」と言えば、慣習的にそのまま通じます。ただし、実際に交付されるのは、電子化されたデータを印刷した「登記事項証明書」となります。
ちなみに、登記簿抄本(しょうほん)という言葉もありますが、これは登記簿の一部(特定の共有者の持分のみなど)を抜き出して写した書面を指します。現在の「一部事項証明書」に該当するものです。
4-2. 登記事項証明書とは(現在の正式名称)
登記事項証明書とは、コンピュータ上で管理されている登記記録のデータを印刷し、登記官が認証した書面のことです。現在の法律上の正式名称であり、実務において最も多く用いられています。
登記事項証明書と登記簿謄本は、内容としては実質的に同じものです。違いは「登記情報の保存方法と出力方法」にあります。
下の図解は、登記簿謄本から登記事項証明書への変化の流れを示しています。
また、登記情報を確認する方法として「登記情報提供サービス」もあります。これは一般財団法人民事法務協会が運営するインターネット上の有料閲覧サービスで、1件330円で登記情報を確認できます。
ただし、このサービスで取得したデータは公的な証明書としての効力を持ちません。銀行や役所などに提出する正式な書類としては使用できないため、用途に応じて使い分けることが重要です。
4-3. 地番と住居表示は異なる場合がある
登記事項証明書を請求する際には、土地の「地番」または建物の「家屋番号」が必要です。日常生活で使っている「住所(住居表示)」とは異なる場合があるため、注意が必要です。
地番とは、土地登記のために割り振られた番号であり、法務局が管理しています。一方、住居表示(日常的に使う住所)は市区町村が「住居表示に関する法律」に基づいて定めたものであり、管理する機関が異なります。
下の図解は、地番と住居表示が異なる場合のイメージを示しています。
住居表示が実施されている市街地では、地番と住所(住居表示)が一致しないことがほとんどです。一方、住居表示が実施されていない地方の地域では、地番と住所が同じになる場合もあります。筆者は三重県の山間部に居住していますが、住所(住居表示)と地番が一致しています。
| 項目 | 地番 | 住居表示(住所) |
|---|---|---|
| 定義 | 土地登記のために割り振られた番号 | 郵便物の配達などに使われる日常的な住所 |
| 管理 | 法務局(登記制度) | 市区町村(住居表示法) |
| 主な使用場面 | 登記事項証明書の請求時 | 郵便・住民票・契約書の住所欄など |
| 確認方法 | 固定資産税の納税通知書・法務局への問い合わせ | 住民票・免許証など |
| 一致するか | 地域によって一致しない場合が多い | ― |
所有する土地や建物の地番がわからない場合は、以下の方法で確認できます。
- 固定資産税の納税通知書(課税明細書):土地・建物ごとに地番が記載されています。手元にある場合は最も手軽な確認方法です。
- 法務局への問い合わせ:住所を伝えることで、対応する地番を調べてもらえます。
- 登記情報提供サービス:インターネット上で地図からおおよその地番を検索する機能「地番検索サービス」があります。
- 固定資産課税台帳(名寄帳):市区町村の窓口で取得できる台帳にも地番が記載されています。
5. 登記事項証明書の種類と取得方法
登記事項証明書には多くの種類があり、取得方法も「窓口・郵送・オンライン」と多岐にわたるため、複雑に感じられるかもしれません。
そこで、ここからは、目的に応じた証明書の選び方や、最適な取得方法をわかりやすく解説します。あらかじめ仕組みを理解しておくことで、いざという時に迷わず手続きを進められるだけでなく、手数料の節約にもつながります。
5-1. 4種類の証明書とその使い分け(全部・現在・一部・閉鎖)
登記事項証明書には、記載される情報の範囲によって全部事項証明書、現在事項証明書、一部事項証明書、閉鎖事項証明書の4種類があります。
不動産売買、相続・住宅ローン申請など、一般的な場面では「全部事項証明書」を取得すれば問題ありません。どれを選べばよいか迷った場合も、まず全部事項証明書を選択するのが最も確実です。
| 種類 | 記載内容 | 主な利用場面 |
|---|---|---|
| 全部事項証明書 | 現在・過去の全登記情報(閉鎖登記簿を除く) | 不動産売買・相続・住宅ローン申請(迷ったらこれ) |
| 現在事項証明書 | 現在有効な登記情報のみ(抹消済みの記録は非表示) | 現在の権利関係だけを手軽に確認したい場合 |
| 一部事項証明書 | 甲区または乙区など特定の区のみ | 記録が多く書類が膨大になる物件の一部確認 |
| 閉鎖事項証明書 | 合筆・滅失・分筆などで閉鎖された過去の登記記録 | 旧登記情報の調査・過去の権利関係の確認 |
各証明書の種類の特徴を順を追って補足します。
全部事項証明書は、その不動産の現在の状態だけでなく、過去の所有者の変遷や抹消された抵当権の記録も含めたすべての登記情報が記載されます。不動産の取引履歴を把握したい場合や、提出先から書類を求められた際にどれを用意すればよいかわからない場合は、全部事項証明書を選択してください。
現在事項証明書は、請求日時点で有効な登記情報のみが記載されます。過去に抹消された抵当権や過去の所有者の情報は表示されないため、現在の権利関係だけを確認したい場合に適しています。
一部事項証明書は、甲区または乙区のいずれか一方のみを指定して取得する証明書です。過去に多くの権利変動があった物件では、全部事項証明書が数十枚に及ぶ場合があります。特定の情報だけ確認できれば十分な場合に利用します。
閉鎖事項証明書は、合筆(複数の土地を1筆にまとめること)・滅失(建物が取り壊されたこと)・分筆(1筆の土地を複数に分けること)などの理由で閉鎖された登記記録を確認するための証明書です。旧来の登記情報を調べたい場合や、相続に伴う調査で過去の権利関係を確認したい場合に利用します。
5-2. 法務局の窓口・郵送・オンラインで取得できる
登記事項証明書は、窓口・郵送・オンラインの3つの方法で取得できます。それぞれに特徴があるため、状況に応じて使い分けてください。
窓口申請は、最寄りの法務局(管轄外でも可)に直接出向き、申請書を提出して取得する方法です。申請したその場で受け取ることができ、書き方がわからない場合は法務局の職員に相談しながら手続きを進められます。
初めて取得する方や、急いで取得したい場合に適しています。なお、申請書は法務局の窓口に備え付けられているほか、法務省のウェブサイトからもダウンロードできます。
郵送申請は、申請書・収入印紙・返信用封筒(切手貼付済み)を法務局に郵送することで、登記事項証明書を郵送してもらえる方法です。法務局に足を運ぶ時間が取れない場合に便利ですが、取得まで数日から1週間程度かかるため、急ぎの場合は窓口またはオンラインを利用してください。
オンライン申請は、法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で取得申請を行う方法です。自宅や職場から申請でき、手数料も窓口申請より安くなります。受け取り方法は「指定の法務局での窓口受取」または「郵送受取」の2種類から選択できます。
また、証明書としての効力は不要で内容確認だけで十分な場合は、登記情報提供サービスの利用が便利です。一般財団法人民事法務協会が運営するインターネット上の有料閲覧サービスで、登録後すぐに利用でき、1件330円で登記情報を閲覧できます。
ただし、このサービスで取得したデータは公的な証明書ではないため、銀行・役所などへの提出書類としては使用できません。
5-3. 取得にかかる費用(窓口600円・オンライン490円〜)
登記事項証明書の取得にかかる手数料は、取得方法によって異なります。最も手数料が安いのはオンライン申請(窓口受取)の490円です。
| 取得方法 | 費用 | 証明力 | 所要時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 法務局窓口 | 600円 | あり | 即日 | その場で取得可能。書き方がわからなければ職員に相談できる |
| 郵送申請 | 600円+切手代 | あり | 数日〜1週間 | 法務局に行けない場合に便利。返信用封筒が必要 |
| オンライン(窓口受取) | 490円 | あり | 数日 | 手数料が最安。PCから申請し法務局で受取 |
| オンライン(郵送受取) | 520円 | あり | 数日〜1週間 | 手数料が安く自宅受取も可能 |
| 登記情報提供サービス | 330円 | なし | 即時(閲覧のみ) | 証明書としては使えないが内容確認に最適 |
手数料の支払い方法は取得方法によって異なります。窓口申請および郵送申請では収入印紙で納付します。オンライン申請ではインターネットバンキング・モバイルバンキング・ATMを利用した電子納付が可能です。
なお、登記事項証明書には法律上の有効期限は定められていません。ただし、提出先(金融機関・役所など)によっては「発行後3か月以内のもの」を求められることが多いため、実際に使用する時期に合わせて取得するようにしてください。
6. 相続登記の義務化(2024年4月)と登記簿の関係
2024年4月1日より、不動産の相続登記が法律で義務化されました。相続登記とは、亡くなった方が所有していた不動産の名義を、相続人へ書き換える登記のことです。
ここからは、この義務化の具体的な内容や、登記簿が果たす役割について詳しく解説します。将来、不動産を相続する予定がある方は、いざという時に落ち着いて対応できるよう、制度の仕組みを今のうちに正しく理解しておきましょう。
6-1. 相続登記が義務化された背景と内容
2024年(令和6年)4月1日に不動産登記法が改正され、相続登記が義務化されました。
それまで相続登記は任意であり、相続が発生しても登記手続きを行わないまま放置されるケースが多くありました。その結果、登記簿上の所有者が何十年も前に亡くなった方のままになっている不動産が全国に大量に発生し、社会問題となっています。
義務化の主な内容は、以下のとおりです。
- 申請期限:相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
- 過料:正当な理由なく申請をしなかった場合、10万円以下の過料が科される場合があります。
- 遡及適用:義務化以前(2024年4月1日より前)に発生した相続についても対象となります。その場合の申請期限は2027年(令和9年)3月31日です。
下の図解は、相続登記義務化のスケジュールと手続きの流れを示しています。
また、義務化と同時に「相続人申告登記」という新しい制度も設けられました。相続人申告登記とは、相続登記の本手続きを行う前の暫定的な措置として、相続人であることを法務局に申告することで申請義務を一時的に履行したとみなされる制度です。遺産分割協議がまとまらずに相続登記の本手続きが3年以内にできない場合の選択肢となります。
なお、相続登記は司法書士に依頼することが一般的です。費用は相続した不動産の数・時価・相続の複雑さによって異なりますが、司法書士報酬として数万円〜十数万円程度が目安となります。
6-2. 登記簿で所有者不明土地が発生するしくみ
相続が発生しても登記が行われないまま放置されると、登記簿上の所有者が亡くなった方のままとなり、「所有者不明土地」が生じます。所有者不明土地とは、登記簿を調べても所有者がわからない、あるいは所有者はわかっても連絡が取れない土地のことです。
所有者不明土地問題研究会(一般財団法人国土計画協会)が国土交通省の地籍調査データをもとに行った試算によると、2016年時点の日本全国の所有者不明土地の面積は約410万ヘクタールに上り、九州本土の面積(約367万ヘクタール)を超えるとされています。
所有者不明土地が発生する主な流れは、以下のとおりです。
- 相続が発生するが、相続登記が行われない(義務化以前は任意だったため)
- 登記簿上の所有者が亡くなった方のまま残り続ける
- さらに次の相続が発生し、権利関係がより複雑になる
- 数十年後には相続人が何十人にも増え、権利関係がさらに複雑になる
所有者不明土地は、公共事業・災害復旧・都市開発・隣地との境界確定などに支障をきたすことから、深刻な社会問題となっており、今回の相続登記義務化の主要な背景のひとつとなっています。
不動産を相続した場合はもちろん、購入を検討している物件が相続を経た物件である場合も、登記簿の甲区を確認して所有者が現在の売主名義に適切に変更されているかを必ずチェックしてください。
登記名義人が亡くなった方のまま売りに出されている物件は、相続人全員の同意を得たうえでの売却手続きが必要であり、取引が複雑になる可能性があります。
まとめ - よくある質問
本記事では、登記簿の構造(表題部・甲区・乙区)、不動産購入前に確認すべき3つのポイント、登記事項証明書の種類と取得方法、そして2024年4月に施行された相続登記の義務化について解説しました。
本記事の重要なポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 登記簿とは、不動産の所在・面積・所有者・権利関係などを記録した公的な台帳であり、法務局がコンピュータ上で管理しています。登記を備えることで、初めて第三者に所有権を主張できます。
- 登記簿は3つの区分(表題部・甲区・乙区)に分かれており、それぞれに異なる情報が記録されています。物理的な情報は表題部、所有権は甲区、抵当権などの権利は乙区で確認できます。
- 不動産購入前には、①所有者と売主が一致しているか(甲区)、②抵当権・差押えが残っていないか(乙区)、③登記簿の面積と実際の広さが一致するか(表題部)の3点を必ず確認してください。
- 登記事項証明書は、登記簿謄本と実質的に同じものです。法務局の窓口・郵送・オンラインで取得でき、手数料は490円〜600円です。取得には住所ではなく「地番」が必要な点に注意してください。
- 相続登記は2024年4月1日から義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記申請が必要であり、義務化以前の相続も2027年3月31日までに申請が必要です。
登記簿は、不動産取引において自分の権利を守るための重要な情報源です。購入前・相続時・売却時など、不動産に関わるあらゆる場面で登記簿を確認する習慣を身につけておくことをおすすめします。
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。最後に、登記簿に関するよくある質問とその答えをまとめましょう。
- 登記簿はどこで取得できますか?費用はいくらかかりますか?
- 登記簿(登記事項証明書)は、全国の法務局窓口・郵送・オンラインの3つの方法で取得できます。費用は、法務局窓口や郵送申請の場合は1通600円です。オンライン申請を利用すると安くなり、窓口受取なら490円、郵送受取なら520円です。内容確認だけであれば「登記情報提供サービス」を330円で利用できますが、公的な証明書としては使用できない点に注意してください。
- 登記簿謄本と登記事項証明書は何が違いますか?
- 実質的な内容は同じです。「登記簿謄本」は紙で管理されていた時代の呼び名で、「登記事項証明書」はコンピュータ化された現在の正式名称です。1988年(昭和63年)から順次電子化が進み、現在は磁気ディスクで管理されています。窓口で「謄本をください」と伝えても、現在の「登記事項証明書」が発行されるので手続き上の問題はありません。
- 不動産購入前に登記簿で確認すべきことは何ですか?
- 主に3つのポイントを確認しましょう。①「甲区」で登記名義人と売主が一致しているか。②「乙区」などに抵当権、差押え、仮処分などの権利制限が残っていないか。③「表題部」の面積と実際の広さに大きな差異がないか。特に所有者の確認は重要で、名義人と契約相手が異なる場合は詐欺等のリスクがあるため注意が必要です。
- 相続登記をしないとどうなりますか?
- 2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく期限(取得を知ってから3年以内)を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年4月より前に発生した相続も対象で、その場合は2027年3月31日が申請期限となります。放置すると権利関係が複雑になり、将来の売却や活用が困難になるリスクもあります。
- 登記簿に抵当権が残っている不動産を購入しても大丈夫ですか?
- 売主がローン返済中の場合、抵当権がついているのは一般的です。通常は、代金の支払いと同時に売主がローンを完済し、抵当権抹消と所有権移転の登記を同時に行います。ただし、この手続きが確実に行われるよう、司法書士が立ち会って確認するのが通例です。抹消されないまま購入すると、不動産を失うリスクがあるため、専門家への確認が不可欠です。
- 著者・監修情報
- 誰でもわかる不動産売買(fudousan-wakaru.net)編集部。不動産の購入・売却・活用に関する情報を、初めて不動産を検討する方にもわかりやすく伝えることを目的として運営しています。記事の作成にあたっては、国土交通省・法務省・法務局などの公的機関の情報を参照しています。
- 本記事を作成するにあたり参照したサイト・およびページ
- 法務局・不動産登記の申請書等の様式について / 法務局・登記手数料について / 登記・供託オンライン申請システム / 登記情報提供サービス / 登記情報提供サービス 登記情報提供サービスの利用料金の改定について / 法務省・不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう / 国土交通省・所有者不明土地法制度及び対応事例等について
- 注意点
- 本記事の内容は2026年4月時点のものです。登記に関する手続きを行う際は、その時点の最新の情報をご確認ください。
こちらの記事もオススメです
