品確法とは?イラスト付きで解説

品確法とは?

品確法とは、住宅の購入者を保護するための法律です。

イラストを用いて品確法をわかりやすく解説しましょう。

なお、品確法の読み方は「ひんかくほう」であり、正式名称は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」となっています。

目次

1. 品確法とは、住宅の購入者を保護するための法律

それでは、品確法をわかりやすく解説しましょう。

突然ですが、筆者がこの記事を作成する2020年8月現在、パナソニックは「エオリア」というブランドで全7機種のエアコンを販売中です。

そして、パナソニックは、自社が販売する全7機種のエアコンの性能が一目で判断できるように、カタログに以下のような比較表を掲載しています。

家電製品のカタログで見かける比較表

上記のような比較表は、どのメーカーのカタログにも掲載されているため、皆さんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。

比較表があることにより、エアコンを購入したいと希望する消費者は、どのエアコンにどのような性能があるか一目で判断できます。

また、他のメーカーのカタログにも同じような比較表が掲載されているため、他社の表と見比べつつ、どのメーカーのエアコンを購入すべきか考慮することも可能です。

さらに、カタログに掲載されている性能を目当てにエアコンを購入したものの、その性能がない場合は、それを苦情として訴えつつ返品を希望したり、無償での修理を請求できます。

つまり、エアコンなどの家電製品は、他の商品との具体的な性能の差を比べつつ購入することが可能であり、カタログに掲載されている性能に偽りがある場合は、根拠のあるクレームをつけることができるというわけです。

これにより消費者は、より良い商品を安全に購入できます。

しかし、住宅はどうでしょう。

住宅は家電製品より遥かに高価であるにもかかわらず、数値による明確な性能が記載されたカタログなどは存在しません。

住宅にはカタログがない

数値による明確な性能が記されたカタログがなければ、他の住宅との性能を比較できず、消費者がより良い住宅を安全に購入することなど不可能です。

そのような背景を元に制定されたのが、この記事のテーマである品確法です。

品確法では、消費者が具体的な性能を把握し、他の住宅と比較しつつ住宅を購入できるように、住宅の性能が表示されたカタログの作成ルールに関することを規定しています。

また、品確法では、具体的な性能が表示されたカタログが付く住宅を購入し、その性能が現状と異なる場合における消費者の保護や、販売された新築に欠陥が発見された際の保証に関することなども規定しています。

品確法で定められているのは、主に以下の3つです。

品確法の主な3つの規定

  • 1. 住宅の性能の表示に関するルール
  • 2. 紛争の処理に関すること
  • 3. 新築の欠陥に関すること

なお、品確法の全文は「電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)住宅の品質確保の促進等に関する法律」にてご覧いただけます。

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2. 品確法で規定される3つのこと

先にご紹介したとおり、品確法では、主に以下の3つのことが規定されています。

品確法の主な3つの規定

  • 1. 住宅の性能の表示に関するルール
  • 2. 紛争の処理に関すること
  • 3. 新築の欠陥に関すること

ここから、上記の3つをわかりやすく解説しましょう。

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2-1. 住宅の性能の表示に関するルール

まずは、品確法による主な3つの規定の1つ目である「住宅の性能の表示に関するルール」をわかりやすく解説しましょう。

この記事の「1. 品確法とは、住宅の購入者を保護するための法律」で解説したとおり、住宅は家電製品のような具体的な性能が数値で示されたカタログや比較表などが存在しません。

そこで、品確法では、住宅のカタログを作成するルールに関することを規定しています。

品確法では、住宅のカタログを「住宅性能評価書」と呼び、住宅性能評価書は、国土交通大臣から指定を受けた専門機関のみが作成できると定めています。

国土交通大臣から指定を受けた専門機関のみが住宅性能評価書を作成できるのは、信頼できる評価が期待できるためです。

住宅性能評価書とは?

また、住宅によって住宅性能評価書に記される性能の項目が異なっては、消費者が他の住宅との性能を比較できません。

そのため、住宅性能評価書に記される住宅の性能の項目は、新築や中古住宅によって異なるものの、主に以下の10項目に統一されます。

住宅性能評価書に記される主な性能

  • 1. 地震や強風、積雪などにどの程度耐え得るかなど、耐力性に関すること
  • 2. 火災報知器や避難路の有無など、火災時の安全性や避難のしやすさに関すること
  • 3. 丈夫な建材が使用されているかなど、耐久性に関すること
  • 4. 給排水管やガス管の交換のしやすさなど、維持管理の容易さに関すること
  • 5. 断熱性や太陽光発電機の有無など、省エネに関すること
  • 6. シックハウス症候群対策など、換気性に関すること
  • 7. 窓の位置や広さなど、採光性に関すること
  • 8. 遮音対策など、防音性に関すること
  • 9. 手すりの有無や車いすの通りやすさなど、バリアフリー性に関すること
  • 10. 格子の有無やバルコニーの高さなど、防犯性に関すること

購入を希望する住宅に住宅性能評価書があり、上記の性能が記されていれば、消費者は、その住宅の性能を判断しつつ、他の住宅と比較しながら吟味できます。

国土交通省が公開する、新築住宅の住宅性能評価書の見本は以下のとおりです。

新築の住宅性能評価書の見本

住宅性能評価書の見本(新築)

出典:国土交通省 住宅の品質確保の促進等に関する法律

また、国土交通省が公開する、中古住宅の住宅性能評価書の見本は以下のとおりとなっています。

中古住宅の住宅性能評価書の見本

住宅性能評価書の見本(中古住宅)

出典:国土交通省 住宅の品質確保の促進等に関する法律

なお、国土交通省では、品確法により住宅性能評価書を作成することを「住宅性能表示制度」と呼ぶため留意してください。

また、住宅性能評価書は、品確法により全ての住宅に作成されることが義務付けられているわけではありません。

販売する住宅に住宅性能評価書を付けるか否かは、その住宅の売り主が任意で選択することが可能です。

以下は、国土交通省が公開する住宅性能表示制度のガイドです。

住宅性能表示制度のガイド

住宅性能評価書のガイド

出典:国土交通省 住宅の品質確保の促進等に関する法律

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2-2. 紛争の処理に関すること

つぎに、品確法による主な3つの規定の2つ目である「紛争の処理に関すること」をわかりやすく解説しましょう。

この記事の「1. 品確法とは、住宅の購入者を保護するための法律」でご紹介したとおり、家電製品を購入したもののカタログ通りの性能がないのであれば、返品や交換、無償の修理を請求できます。

これは、住宅性能評価書が作成され、その内容と現状が合致することを売り主が認めつつ売買が行われたものの、同評価書通りの性能がない場合も同じであり、住宅の買い主はクレームを付けたり、無償の修繕などを請求できます。

しかし、場合によっては売り主がその請求を無視するなどし、紛争になるかもしれません。

売り主と買い主が紛争になれば、住宅に関する知識を持たない買い主は不利です。

そのため、品確法では、住宅の売り主と買い主が紛争になった場合における、その処理に関することを規定しています。

具体的には、国土交通大臣が指定した機関に所属する弁護士などが、紛争の処理にあたると定められています。

弁護士が紛争を解決すると聞くと高額な費用を要するという印象を受けますが、原則として料金は1万円のみです。

ただし、品確法で規定されている紛争の処理に関することは、住宅性能評価書が作成された住宅を購入し、その評価書の内容に偽りがあった場合に限られるため留意してください。

なお、品確法では、国土交通大臣が指定した紛争の処理にあたる機関を「指定住宅紛争処理機関」と呼ぶと規定しています。

筆者がこの記事を作成する2020年8月現在、全国に52の指定住宅紛争処理機関が存在し、その一覧は「住宅リフォーム・紛争処理支援センター 住宅紛争審査会(指定住宅紛争処理機関)一覧」より確認することが可能です。

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2-3. 新築の欠陥に関すること

最後に、品確法による主な3つの規定の3つ目である「新築の欠陥に関すること」をわかりやすく解説しましょう。

新築を購入する際は欠陥住宅ではないかと心配になりますが、品確法では、新築の売り主は、買い主に引き渡し後10年以内に発見された欠陥に対して、無償で修繕する責任を負うと規定しています。

この規定により、新築の買い主は、欠陥住宅を購入したとしても費用を負担することなく修繕されます。

ただし、新築の売り主が無償で修繕する責任を負うのは、引き渡された新築に重大な欠陥が発見された場合に限られるため留意してください。

重大な欠陥とは、フローリングの傷や壁紙の剥がれなどではなく、建物の傾きや耐力性の欠如、雨漏りなどに関する欠陥です。

なお、品確法では、住宅性能評価書の有無にかかわらず、新築の売り主は無償で修繕する責任を負うと規定しています。

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まとめ - 品確法を補うために「住宅瑕疵担保履行法」がある

イラストや図を用いて品確法をわかりやすく解説しました。

品確法とは、住宅の購入者の保護を目的とする法律であり、主に以下の3つのことを定めています。

品確法の主な3つの規定

  • 1. 住宅の性能の表示に関するルール
  • 2. 紛争の処理に関すること
  • 3. 新築の欠陥に関すること

1の「住宅の性能の表示に関するルール」では、住宅性能評価書を作成する際のルールが定められています。

住宅性能評価書とは、その住宅の具体的な性能が掲載された住宅用のカタログであり、すまい給付金や住宅ローン控除の必要書類、フラット35の審査書類などとしても活用することが可能です。

ただし、品確法により、売りに出される全ての住宅に住宅性能評価書の作成が義務付けられるわけではないため留意してください。

2の「紛争の処理に関すること」では、購入した住宅の性能が住宅性能評価書に記されている内容と異なる場合に発生した、売り主と買い主の紛争の解決に関することが規定されています。

住宅性能評価書が付き、なおかつ売り主が同評価書と現状が合致することを認める住宅を購入し、同評価書と現状が異なり売り主と買い主が紛争になれば、原則として1万円の費用で弁護士が解決にあたります。

そして、3の「新築の欠陥に関すること」では、新築の引き渡し後10年以内に発見された重大な欠陥に対して、売り主は無償で修繕する責任を負うと規定しています。

売り主が負う無償で欠陥を修繕する責任は、住宅性能評価書の有無は問われません。

品確法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、3の「新築の欠陥に関すること」により、新築の売り主は欠陥を無償で修繕する責任を負いますが、平成17年に発生した「構造計算書偽造問題」では、倒産するなどして修繕を免れる販売業者が表れ、社会問題となりました。

そこで、新築の売り主が無償での修繕を免れることがないように「住宅瑕疵担保履行法」が制定され、同法律は品確法を補う内容となっています。

誰でもわかる不動産売買では、品確法を補う法律である「住宅瑕疵担保履行法」をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。

お時間のある方は、ぜひご覧ください。

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ご紹介した内容が、品確法をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2020年8月

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