法定地上権とは?わかりやすく解説

法定地上権とは、自己が所有する不動産の土地部分が他者の手に渡った際に与えられる、その土地を借りつつ利用できる権利です。
しかし、これではわかりにくいため、イラストを用いて法定地上権を図解でわかりやすくご説明しましょう。
目次
- 1. 法定地上権とは、他者の手に渡った土地を利用できる権利
- 1-1. あらためて法定地上権をわかりやすく解説
- 2. 税金を滞納した場合なども法定地上権が発生する
- まとめ - 法定地上権は、地代を支払う必要がある
1. 法定地上権とは、他者の手に渡った土地を利用できる権利
それでは、法定地上権の意味をわかりやすくご説明しましょう。
その前に、法定地上権という言葉に含まれる地上権という不動産用語を理解してください。
地上権とは、土地を借りつつ、借りた土地を利用できる権利です。
たとえば、土地を貸したいと希望する地主のAさんがいらっしゃったとします。
Aさんは、借り主は、土地に建物や工作物を建てるなどして利用して構わないという条件を提示しています。
そこに、土地を借りつつ利用したいと希望するBさんが現れました。

AさんとBさんは契約し、BさんはAさんから土地を借りることになりました。
ようするに、土地を借りたBさんは、借りた土地を利用できる権利を手に入れたというわけです。
この手に入れた権利が地上権です。

以上が法定地上権という不動産用語に含まれる地上権の意味です。
つづいて、法定地上権をわかりやすくご説明しましょう。
1-1. あらためて法定地上権をわかりやすく解説
法定地上権とは、自分が所有する建物と土地の土地部分が他者の手に渡った際に与えられる地上権です。
たとえば、住宅ローンを利用しつつ銀行から資金を借り、土地と建物がセットになった一戸建てを購入したCさんがいらっしゃったとします。
Cさんは一生懸命働いたものの仕事が上手く行かず、住宅ローンを返済できなくなり、購入した一戸建ての土地部分だけが他者に売却されてしまいました。
わかりやすく言い換えると、Cさんは借金のかたとして土地だけが売却されてしまったというわけです。
この時点で建物部分は売却されず、未だCさんの所有物ですが、土地部分は他者の手に渡っているため、事実上建物を利用できません。

ここでCさんに与えられる権利が法定地上権です。
Cさんには、民法という法律の第三百八十八条に則って法定地上権が発生し、他者の手に渡った土地を借りつつ利用できる権利が自動的に与えられます。
つまり、法定地上権とは、自己が所有する不動産の土地部分が他者の手に渡った際に与えられる地上権(その土地を借りつつ利用できる権利)というわけです。

以上が法定地上権の意味です。
なお、民法の第三百八十八条の内容をわかりやすくまとめると以下のようになります。
民法第三百八十八条 法定地上権
とある土地と建物があり、その土地と建物が同一人物である状況において、その土地と建物の所有者が借り入れ金を返済できないなどの理由により、土地、または建物の一方が他者の手に渡った場合、地上権が発生したものとみなす
2. 税金を滞納した場合なども法定地上権が発生する
法定地上権とは、自己が所有する建物と土地の土地部分が他者の手に渡った際に与えられる、その土地を借りつつ利用できる権利です。
そして、この記事の「1-1. あらためて法定地上権をわかりやすく解説」では、たとえ話として住宅ローンを返済できなくなったCさんが、土地部分だけを他者に売却され、法定地上権が与えられる例をご紹介しましたが、以下の場合も法定地上権は発生します。
借り入れ金が返済できなくなった場合
事業を起こすなどの理由で、銀行からまとまった資金を借り入れる際は、自己が所有する不動産などの資産を担保に入れる必要があります。
そして、借り主が返済できない場合、資金を貸し出した銀行は、担保に取った不動産などの資産を売却しつつ返済金に充当します。
このような状況において、土地部分だけが売却されつつ他者の手にわたり、利用できなくなった建物がある場合は、法定地上権が与えられ建物を利用できるようになります。

この取り決めは、民事執行法という法律の第八十一条で定められ、同条をわかりやすく解説すると以下のようになります。
民事執行法 第八十一条 法定地上権
所有者が同じである土地と建物が一箇所にあった場合、土地や建物が差し押さえられるなどして、土地、または建物の一方だけが他者の手に渡った場合、地上権が発生したものとみなす
税金を滞納し続けた場合
日本では、一定の所得があると税金を支払わなければなりません。
そして、不動産を所有しつつ税金を滞納し続けると、税務署などに所有する不動産を強制的に売却されることがあります。
税金を滞納しつつ所有する土地を売却され、その土地に所在する利用できなくなった建物がある場合は、法定地上権が与えられ建物を使えるようになります。
この取り決めは、国税徴収法という法律の第百二十七条に記され、同条の内容をわかりやすく解説すると以下のとおりです。
国税徴収法 第百二十七条 法定地上権等の設定
滞納者が所有する土地と建物が一箇所にあった場合、滞納を理由として土地や建物が差し押さえられるなどして、土地、または建物の一方が他者の手に渡った場合、滞納者には地上権が与えられたものとみなす
まとめ - 法定地上権は、地代を支払う必要がある
法定地上権を調べる方へ向けて、その意味を図解でわかりやすくご説明しました。
法定地上権とは、自己が所有する建物と土地の土地部分が他者の手に渡った際に与えられる地上権(その土地を借りつつ利用できる権利)です。
土地と建物が一対となった不動産を所有し、借り入れ金を返済できないなどの理由により土地だけが他者の手に渡るなどして建物を利用できなくなった際は、自動的に地上権が与えられます。
住宅ローンを利用しつつ一戸建てを購入する予定がある方は、ぜひ覚えておいてください。
なお、法定地上権は自動的に与えられますが、その土地を借りつつ利用するためには、あらたな所有者に定期的に地代(借り賃)を支払わなければなりません。
地代は、以前の土地の所有者と、あらたな土地の所有者の要求を鑑みつつ裁判所が決定しますが、1年あたりの相場は固定資産税の3倍から5倍などとなっています。
ご紹介した内容が、皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年5月
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