宅地造成工事規制区域とは?注意すべき点などわかりやすく解説

土地や一戸建て、マンションなどの資料を確認すると、宅地造成工事規制区域に位置すると記されていることがあります。
宅地造成工事規制区域とは、土砂崩れを防ぐために、一定の範囲を超える宅地造成(地ならしをする工事)が規制される区域です。
また、既存する住宅を購入した場合、土砂崩れが懸念されれば都道府県知事などから改善命令を受けることもあります。
イラスト付きで宅地造成工事規制区域を解説し、同区域内で許可が必要となる宅地造成や届出が必要となる事項、同区域内の不動産を購入する際の注意点をご紹介しましょう。
目次
- 1. 宅地造成工事規制区域とは、地ならしが規制される区域
- 1-1. 区域内で許可が必要となる宅地造成
- 2. 区域内で届出を要する事項
- まとめ - 宅地造成工事規制区域は、豪雨による土砂災害に注意
1. 宅地造成工事規制区域とは、地ならしが規制される区域
冒頭でご説明したとおり宅地造成工事規制区域とは、土砂崩れを防ぐために、一定の範囲を超える宅地造成が規制される区域です。

宅地造成工事規制区域内における宅地造成とは、主に以下の2つを意味します。
- 建物を建てたり、駐車場や資材置き場などを設置するために、森林や農地、採草放牧地(家畜を育てるための土地)、道路、河川、公園などを地ならしする工事
- 既に建物が建てられている土地や、駐車場や資材置き場などとして使用中の土地を改めて地ならしをする工事
以上の2つが、宅地造成工事規制区域内における主な宅地造成です。
そして、宅地造成工事規制区域内で一定の範囲を超える宅地造成を実施する際は、都道府県知事や市長の許可が必要となります。
一定の範囲を超える宅地造成とは、以下のとおりです。
1-1. 区域内で許可が必要となる宅地造成
- 切土により高さが2mを超える崖を生ずる宅地造成
- 切土(斜面を削る工事)を行うことにより、高さが2mを超える、水平面との角度が30度を越える硬岩盤(花崗岩、または結晶片岩など)以外の崖ができあがる宅地造成
- 盛土により高さが1mを超える崖を生ずる宅地造成
- 盛土(土を盛って地面を高くする工事)を行うことにより、高さが1mを超える、水平面との角度が30度を越える硬岩盤以外の崖ができあがる宅地造成
- 切土と盛土により2mを超える崖を生ずる宅地造成
- 切土と盛土を同時に行うことにより、高さが2mを超える、水平面との角度が30度を越える硬岩盤以外の崖ができあがる宅地造成
- 500㎡を超える宅地造成
- 切土や盛土の有無にかかわらず、工事面積が500㎡を超える宅地造成
※ 一定の範囲を超える宅地造成の詳細は、宅地造成等規制法施行令の第三条にて確認できる
以上の宅地造成を宅地造成工事規制区域内で実施する際は、都道府県知事などの許可が必要です。
許可を得つつ宅地造成を行えば、工事完了後に検査が実施され、安全性が確認されれば検査済証が発行されます。
工事が不完全であり、がけ崩れなどが起きると判断されれば、やり直しを請求されます。
また、宅地造成工事規制区域内で不動産を所有すれば、土砂崩れが起きることがないように常日頃から点検し、異常が確認されれば改善する義務を負います。
そのため、宅地造成工事規制区域内に位置する地盤が緩い土地や、軟弱地盤の上に建つ中古住宅などを購入しつつ所有すると、都道府県知事から改善命令が発せられることがあるため留意してください。
2. 区域内で届出を要する事項
宅地造成工事規制区域とは、一定の範囲を超える宅地造成(地ならし)が規制される区域であり、この記事の「1-1. 区域内で許可が必要となる宅地造成」にてご紹介した宅地造成を実施する場合は、都道府県知事などの許可が必要です。
また、宅地造成工事規制区域内で以下の事項を行う際は、許可は不要でありつつも、都道府県知事や市長などへの届出が必要となるため留意してください。
宅地造成工事規制区域内で届出を要する事項
- その区域が宅地造成工事規制区域に指定された際に施工中の宅地造成
- その区域が宅地造成工事規制区域に指定された際に施工中である宅地造成は、許可を得る必要はありませんが、その場所が同区域に指定された日から21日以内に届出をしなければなりません。
- 擁壁や排水施設を除去する工事
- 宅地造成工事規制区域内に既存する高さが2mを超える擁壁や、その土地に溜まる雨水を排水する施設を除去する工事を行う際は、着工する日の14日前までに届出が必要です。
- 宅地以外の土地を宅地に転用したとき
- 宅地造成工事規制区域内に位置する宅地(建物を建てるための土地)以外の土地を宅地に転用したときは、転用した日から14日以内に届出をしなければなりません。
※ 届出を要する事項は、宅地造成等規制法の第十五条(工事等の届出)により規定されている
以上の事項を宅地造成工事規制区域内で行う際は、許可は不要でありつつも、都道府県知事や市長への届出が必要です。
宅地造成工事規制区域内で届出が必要となる事項の詳細は、各都道府県のホームページ内に設置されている検索窓に「宅地造成等規制法 届出」などと入力しつつ検索することによりご確認いただけます。
まとめ - 宅地造成工事規制区域は、豪雨による土砂災害に注意
宅地造成工事規制区域をわかりやすく解説し、同区域内で許可が必要となる宅地造成や、届出を要する事項などをご紹介しました。
宅地造成工事規制区域とは、一定の範囲を超える宅地造成(地ならし)が規制される区域であり、切土や盛土により高さが1m以上などの崖ができあがる工事を行う際は、都道府県知事などの許可が必要となります。
また、宅地造成工事規制区域内に位置する土地や建物を所有すれば、常に土砂崩れが起きないように点検する義務を負い、がけ崩れが懸念される場合は、都道府県知事などから改善命令が出されることもあるため留意してください。
なお、宅地造成工事規制区域は、宅地造成等規制法という法律に則り都道府県知事や市長が位置を指定していますが、同法律は土砂災害から人命を守るために制定されました。
そのため、絶対ではありませんが、宅地造成工事規制区域は大雨による土砂災害が懸念される場所の可能性があります。
よって、宅地造成工事規制区域内に位置する不動産を購入する場合は、集中豪雨による土砂災害に巻き込まれることがないか、周辺状況を注意深くご確認ください。
都道府県や市区町村のホームページが公開するハザードマップや、国土交通省のサイト「ハザードマップポータルサイト」を併用すれば、より確実に危険性を確認できます。
その宅地造成工事規制区域が、ハザードマップ上で土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域などに指定されている場合は、危険である可能性があるといえるでしょう。
ご紹介した内容が、宅地造成工事規制区域をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年11月
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