相隣関係とは?わかりやすく解説
相隣関係とは、民法という法律で定められた、お隣さんとの土地に関する取り決めであり、隣地とのトラブルを防ぐために是非知っておきたい不動産用語です。
相隣関係がわからないとお嘆きの方へ向けて、図解で意味をわかりやすくご説明しましょう。
目次
- 1. 相隣関係とは、お隣さんとの土地に関する取り決め
- 1-1. 道路に出られないときは、お隣さんの土地を通るべし
- 1-2. お隣さんから、自然に流れてくる水を妨げるべからず
- 1-3. お隣さんから飛び出す枝は「切ってくれ」と頼むべし
- 1-4. 境界線から50cm未満には、家を建てるべからず
- 1-5. 境界線から1m未満の窓には、目隠しを付けるべし
- 1-6. 境界線のすぐそばを派手に掘るべからず
- 1-7. 塀を建てるときは、お隣さんに土地の使用を請求すべし
- 1-8. 隣地との境界線には、境界杭などを設置できる
- 1-9. 隣地との境界線には、塀などを建てられる
- まとめ - ブロック塀の高さは建築基準法で定められている
1. 相隣関係とは、お隣さんとの土地に関する取り決め
それでは、相隣関係の意味をわかりやすくご説明しましょう。
その前に、民法について理解してください。
民法とは、市民の生活に関することを定めた、私たちに最も身近な法律です。
たとえば、現在の日本では20歳をもって成人と見なしますが、これは民法の第4条で定められています。(※ ちなみに、民法の第4条は平成30年6月に改正され、令和4年4月からは18歳をもって成人と見なすことが決定しています)
また、日本では複数の者と結婚することはできませんが、これは民法の第七百三十二条にて定められています。
このように民法とは、私たちに最も馴染み深い法律です。
つづいて、相隣関係をわかりやすくご説明しましょう。
相隣関係とは、民法の第二百九条から第二百三十八条で定めれた、お隣さんの土地との関係に関する取り決めです。
民法の第二百九条から第二百三十八条の相隣関係は「電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ 民法」にてご確認いただけ、その内容はお隣さんとの塀に関することや境界線に関することなど様々です。
以下に民法で定められた相隣関係に関する主な事柄をわかりやすく解説しましょう。
なお、民法では、お隣さんの土地のことを「隣地(りんち)」と呼びます。
1-1. 道路に出られないときは、お隣さんの土地を通るべし
所有する土地が道路に接していない場合は、民法の相隣関係「第二百十条」により、お隣さんの土地を通行できると定められています。
田舎暮らし向けの土地を探すと、稀に道路に接していない土地が売りに出されていますが、そのような土地を購入した場合は、勝手にお隣さんの土地を通行しても構わないというわけです。
ただし、お隣さんの土地を通行することにより、お隣さんに損害を与えることは望ましくないと第二百十一条に記されています。
1-2. お隣さんから、自然に流れてくる水を妨げるべからず
民法の相隣関係「第二百十四条」では、お隣さんの土地から雨水などの自然の水が流れてくる場合は、その流れを妨げてはならないと定めています。
たとえば、お隣さんの土地に溜まった雨水が自分の土地に流れやすい場合は、その流れを無理にせき止めてはならないというわけです。
これは、無理に雨水などをせき止めると、その一帯の地盤が緩くなり土砂崩れなどが起きやすくなることが理由です。
ただし、雨どいなどの工作物により人工的に雨水などが流れてくる場合は、これに該当しないと第二百十八条に記されています。
1-3. お隣さんから飛び出す枝は「切ってくれ」と頼むべし
民法の相隣関係「第二百三十三条」では、お隣さんの土地から、自らが所有する土地に木の枝がはみ出す場合は、その枝の切除をお隣さんに請求できると定めています。
また、お隣さんの土地から、自らが所有する土地に木の根がはみ出す場合は、お隣さんの許可がなくとも切り取ることができると第二百三十三条の2に記されています。
1-4. 境界線から50cm未満には、家を建てるべからず
民法の相隣関係「第二百三十四条」では、自らが所有する土地に建物を建てる場合は、境界線から50cm以上離す必要があると定めています。
また、お隣さんが境界線から50cm未満の位置に建物を建てる場合は、その工事を中止させたり、工事内容を変更させることができると第二百三十四条の2に記されています。
1-5. 境界線から1m未満の窓には、目隠しを付けるべし
民法の相隣関係「二百三十五条」では、お隣さんとの境界線から1m未満の位置に窓やベランダを設置するのであれば、目隠しを付けなければならないと定めています。
ただし、第二百三十六条では、その地域に目隠しを付ける習慣がない場合などは、その習慣に従いつつ付けなくても構わないとも記されています。
1-6. 境界線のすぐそばを派手に掘るべからず
土砂崩れなどを防ぐために、民法の相隣関係「第二百三十七条」では、自分の敷地に井戸を掘る場合は、隣地との境界線から2m以上の距離を取らなければならないと定めています。
また、お隣さんとの境界線のそばに水道管や下水管を埋設する場合は、埋設した深さの2分の1以上の距離を境界線から保つべきであると第二百三十七条の2に記されています。
さらに、民法の相隣関係「第二百三十八条」では、お隣さんとの境界線付近に井戸を掘ったり水道管を埋設する場合は、土砂崩れに細心の注意を払うべきと記されています。
以前、筆者が住んでいた田舎の住宅地で、以下のように派手に自分の土地を整地しつつお隣さんと裁判沙汰になっている方がいらっしゃいましたが、あれは民法の相隣関係に反しているのですね。
1-7. 塀を建てるときは、お隣さんに土地の使用を請求すべし
お隣さんとの境界線に塀を建てる際は、職人さんが隣地に足を踏み入れる必要があります。
そして、民法の相隣関係「第二百九条」では、お隣さんとの境界線、または境界線の近くに塀を建てる際は、お隣さんに対して土地に立ち入ることを請求できると定めています。
ただし、同条には、お隣さんの許可がなければ、お隣さんの住居に勝手に入ることはできないとも記されています。
1-8. 隣地との境界線には、境界杭などを設置できる
土地の所有者は、隣地との境界を明確にするために、境界杭などの目印を設置できると民法の相隣関係「第二百二十三条」により定められています。
その際に必要となる境界杭の設置費用や測量費用は、お隣さんと折半するなどして出し合って構いません。
ただし、測量に要する費用は、それぞれの土地の広さに応じて負担すべきと第二百二十四条に記されています。
1-9. 隣地との境界線には、塀などを建てられる
民法の相隣関係「第二百二十五条」では、お隣さんとの土地の間に使用していない空間がある場合は、その空間に塀などを建てられると定めています。
ただし、塀を建てたいもののお隣さんが納得しない場合は、境界線上に塀を建てることはできません。
その場合は自らが所有する土地に塀を建てることになりますが、その塀は木や竹で作られた簡易的な造りであり、なおかつ高さは2mに留めなければならないと第二百二十五条の2に記されています。
まとめ - ブロック塀の高さは建築基準法で定められている
相隣関係がわからないとお困りの方へ向けて、その意味をわかりやすく図解でご説明しました。
相隣関係とは、民法で定められたお隣さんの土地との関係に関する取り決めを意味します。
具体的には、お隣さんとの土地から流れてくる雨水に関すること、境界線上などに建てる塀のこと、境界線沿いに建物を建てる際の距離に関することなどの取り決めです。
なお、境界線上などに建てるブロック塀の高さは2.2メートル以下に留めなければならないなどとされますが、これは民法の相隣関係ではなく建築基準法施行令第62条の6、および令第62条の8にて定められています。
同令の内容は「国土交通省 建築物の既設の塀の安全点検について」の別紙2にて確認することが可能で、わかりやすく解説すると以下のとおりです。
建築基準法施行令第62条の6、および令第62条の8
- ブロック塀は、高さ2.2m以下でなくてはならない
- ブロック塀の厚みは、高さが2mを超える場合は15cm以上、高さが2m以下の場合は10cm以上でなくてはならない
- 各コンクリートブロックの内側にある空洞部には、モルタルやコンクリートを流し込まなければならない
- 各コンクリートブロックの内側にある空洞部などには、径9mm以上の鉄骨を通しつつ塀を補強しなければならない
- ブロック塀には高さが35cm以上の基礎を設け、うち30cm以上は埋設しなくてはならない
- ブロック塀は、幅4mの間隔ごとに縦の支え壁を設けなければならない
また、国土交通省が公開するブロック塀の点検チェックポイントは以下のとおりです。
出典:国土交通省
ご紹介した内容が皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年2月
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