筆界とは?わかりやすく解説
誤解を恐れずに説明すると、筆界とは登記簿から察する境界線です。
筆界の意味がわからないとお困りの方へ向けて、わかりやすく簡単に図解で解説しましょう。
なお、筆界の読み方は「ひっかい」となっています。
目次
- 1. 筆界とは、登記簿から察する土地の境界線
- 1-1. なぜ筆界と所有権界が一致しないことがある?
- 2. 本来の筆界の意味は、不動産登記法に記されている
- 3. 筆界の具体的な位置を確認する方法
- まとめ - 筆界特定制度を利用すれば、安く境界線を確認できる
1. 筆界とは、登記簿から察する土地の境界線
それでは、筆界がわからないとお嘆きの方へ向けて、意味をわかりやすくご説明しましょう。
その前に、登記について理解してください。
皆さんもご存じのとおり、日本中の土地は細かく区切られ、それぞれの土地に所有者が存在します。
そして、それぞれの土地は、登記簿という公の帳簿に、所有者名や面積などに関する情報が記されています。
登記簿にその不動産の情報を記すことを登記と呼び、はじめて土地の登記が行われたのは明治時代と古く、売買などにより土地の所有者や面積が変更された場合は、現状に沿って登記簿の内容を書き換えることが推奨されています。
そうすることにより現状と登記簿の内容が一致し、現時点での土地の所有者や面積、境界線などが明確になるためです。
なお、登記簿は法務局(法務省の地方支部局)に設置され、数百円の手数料を支払えば誰もが閲覧できます。
ここまでは皆さん、理解できましたでしょうか。
続いて、筆界の意味をわかりやすくご説明しましょう。
筆界とは、登記簿から察する、その土地と隣地との境界線を意味します。
筆界は、登記簿から察する土地と土地の境界線のため、現地で目視することはできません。
現地で目視できるのは、隣人同士の話し合いや売買で決定された事実上の境界線であり、事実上の境界線を「所有権界」などと呼びます。
筆界と所有権界は概ね一致しますが、一致しないこともあり、一致しない場合は境界線に関するトラブルが発生し、土地の所有者同士が裁判などで争うことになります。
1-1. なぜ筆界と所有権界が一致しないことがある?
誤解を恐れずにわかりやすくご説明すると、筆界とは登記簿から察する境界線です。
筆界は登記簿から察する境界線のため、現地で目視できません。
これに対して、隣人同士の話し合いや売買で決定された事実上の境界線を「所有権界」などと呼び、所有権界は現地で境界杭などにより目視できます。
筆界と所有権界は概ね一致しますが、一致しないこともあり、一致しない場合は境界線のトラブルが発生します。
なぜ、筆界と所有権界は一致しないことがあるのでしょうか。
そもそも筆界は、その土地がはじめて登記された明治時代などに、現場の境界線を元に設定されました。
よって、筆界と所有権界は必ず一致するはずなのですが、筆界が設定された後に土地の所有者同士が土地を売買しつつ所有権界を変更したものの、その結果を登記簿に反映しない場合などに、筆界と所有権界が一致しない事態が発生します。
たとえば、隣同士の土地を所有するAさんとBさんがいらっしゃったとします。
AさんとBさんの土地は歪に隣接していますが、筆界に則り土地を使用していました。
この時点の筆界は、所有権界と一致しています。
しかし、土地の使い勝手が悪く、その後AさんとBさんは土地の一部を売買しつつ、所有権界を以下のように変更しました。
この時点で、筆界と所有権界が異なる状況が生まれます。
所有権界を変更した後に、AさんとBさんが登記簿の内容を書き換えつつ筆界を変更すれば問題はありませんが、それを怠った場合、筆界と所有権界が異なる状況が続きます。
そして、AさんとBさんの土地が子に引き継がれたり、売買により持ち主が変わった際に問題が発覚します。
新たな土地の持ち主は、筆界と所有権界が異なることに戸惑い、どちらが正しいか隣人同士などで論争になるのです。
このような経緯などにより、筆界と所有権界が異なる事態が発生します。
2. 本来の筆界の意味は、不動産登記法に記されている
先に「誤解を恐れずに説明すると、筆界とは登記簿から察する境界線」とご説明しましたが、これは不動産を売買する際などにおける実務上の意味です。
本来の筆界の意義は、不動産登記法という法律の第百二十三条の一項に記されています。
同項の内容は以下のとおりです。
筆界:表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう
上記をわかりやすく訳すと以下のようになります。
筆界とは、その土地が登記された時点における、その土地と隣地との境界線をいう
誰でもわかる不動産売買は、不動産に関することをわかりやすく解説するのが趣旨です。
よって、「筆界とは登記簿から察する境界線」と簡単にご説明しましたが、正確には異なるため注意してください。
3. 筆界の具体的な位置を確認する方法
筆界とは「登記簿から察する境界線」であり、「その土地が登記された時点における、その土地と隣地との境界線」です。
筆界は登記簿上の境界線のため現地で目視することはできませんが、その土地が所在する地域を管轄する法務局(法務省の地方支部局)に設置されている以下の地図などにより、その具体的な位置を予想したり確認することが可能です。
14条地図(不動産登記法第14条に規定される図面)
14条地図とは、不動産登記法第14条により規定された、機械的な測量を元に各土地の区画や面積が明確に記された地図です。
14条地図は正確で信頼できますが、機械的な測量を元に作られるため制作に時間が掛かり、残念ながら日本全土の地図が未だ完成していません。
よって、14条地図が完成している地域に所在する土地の筆界を調べる場合に限り、14条地図を確認するのが良いでしょう。
公図(地図に準ずる図面)
公図とは、明治時代に初めて土地が登記された際に作成された地図です。
公図は明治時代に作られた地図のため正確さは期待できませんが、土地の位置関係などは確認することが可能で、古くから存在するだけに日本全土の地図が用意されています。
よって、14条地図の提供がない地域に所在する土地の筆界を調べる際は、公図を参考にするのが良いでしょう。
まとめ - 筆界特定制度を利用すれば、安く境界線を確認できる
筆界を調べる方へ向けて、その意味をわかりやすくご説明しました。
筆界とは「登記簿から察する境界線」であり、「その土地が登記された時点における、その土地と隣地との境界線」です。
不動産売買における筆界の意味は主に前者ですが、不動産登記法では後者のため留意してください。
筆界は登記簿上の境界線であり、必ずしも所有権界(事実上の境界線)と一致せず、どちらが正しいか土地を売買する際などにトラブルになることがあります。
よって、土地を売買する際は、筆界と所有権界の違いに注意してください。
なお、土地の境界線を確認するためには、十数万円などの費用を掛けつつ測量をしなくてはならないという印象がありますが、法務省では「筆界特定制度」を実施しています。
筆界特定制度とは、複数の専門家が公図などの資料を参考に筆界の位置を現地で特定する制度です。
筆界特定制度を利用すれば、安ければ数千円程度で筆界の位置を特定することが可能です。
ただし、筆界特定制度は、あくまで筆界(その土地が登記された時点における、その土地と隣地との境界線)を現地で特定する制度であり、その後の売買などで変更された所有権界の位置は特定されないため注意してください。
筆界特定制度は、現時点の登記簿に記されている筆界の位置を現場で特定する制度です。
ご紹介した内容が、皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年2月
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