積算価格とは?

積算価格とは?

積算価格とは、不動産鑑定士が不動産の試算価格を求める際に用いる手法のひとつ「原価法」により求めた不動産の試算価格です。

積算価格をわかりやすく解説し、積算価格の求め方を簡単にご紹介しましょう。

目次

1. 積算価格とは、原価法により求めた不動産の試算価格

それでは、積算価格をわかりやすく簡単に解説します。

積算価格とは、不動産鑑定士が不動産の試算価格を求める際に用いる手法のひとつ「原価法」により求めた不動産の試算価格です。

不動産鑑定士とは、国家資格である不動産鑑定士の資格を有し、不動産の適正な価格を判定する職業に就く者を指します。

不動産鑑定士が判定した不動産の適正な価格は、ときには不動産が売買される際の価格の指標となり、ときには固定資産税を計算する基となります。

積算価格とは原価法により求めた不動産の試算価格

不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する際は、まずは、先にご紹介した原価法に加え、取引事例比較法、収益還元法と呼ばれる三つの手法などを用いて評価対象となる不動産の試算価格を求めます。

試算価格という言葉が聞きなれませんが、だいたいの価格などとお考えください。

試算価格の算定が完了すれば、つぎに、評価対象となる不動産の様々な要素を総合的に判断しつつ試算価格を再度吟味し、適正な価格を判定します。

不動産鑑定士が、不動産の適正な価格を判定する主な流れは以下のとおりです。

不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する主な流れ

  • 1. 原価法、取引事例比較法、収益還元法などを用いて不動産の試算価格(だいたいの価格)を求める
  • 2. 評価対象となる不動産の現状や状況などを再度鑑みつつ試算価格を吟味し、適正な価格を判定する

以上が、不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する主な流れであり、原価法により求めた不動産の試算価格が積算価格です。

ここで気になるのが、原価法とはどのような手法かという点です。

原価法とは、評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価を求め、求めた原価から、評価対象となる不動産の劣化具合などに相応する額を差し引きつつ試算価格を求める手法です。

原価とは「元値(もとね)」や「仕入れ値」などを意味し、原価法を用いて不動産の試算価格を求める主な流れは以下のとおりとなっています。

原価法を用いて不動産の試算価格を求める主な流れ

1. 評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価を調査する
まずは、評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価を調査します。

具体的には、評価対象となる不動産が建物であれば同等の建物を新築するために必要となる建設費などを、評価対象となる不動産が土地であればその土地を取得するために必要となる額などを調査します。

調査により判明した「評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価」を再調達原価と呼びます。
2. 評価対象となる不動産の現状や状況を調査する
ついで、評価対象となる不動産の現状や状況を調査します。

具体的には、評価対象となる不動産が建物であれば築年数や傷み具合などを、評価対象となる不動産が土地であれば立地条件や周辺状況などが調査対象となります。
3. 再調達原価から、不動産の現状や状況に相応する額を差し引く
最後に、再調達原価から不動産の現状や状況に相応する額を差し引きます。

具体的には、評価対象となる不動産が建物であれば築年数や傷み具合などにより目減りした価値の分の額を差し引きます。

評価対象となる不動産が土地であれば、芳しくない立地条件や好ましくない周辺状況に応じた額を差し引きます。

再調達原価から不動産の現状や状況に相応する額を差し引くことを減価修正と呼び、再調達原価に減価修正を行った額が積算価格です。

以上が、原価法を用いて不動産の試算価格を求める主な流れであり、原価法により求めた不動産の試算価格を積算価格と呼びます。

積算価格とは、原価法により求めた不動産の試算価格であり、再調達原価に減価修正を行った額です。

積算価格の定義は、「不動産鑑定評価基準」の「総論 第7章 鑑定評価の方式 第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅱ原価法 1.意義」に記され、その部分を抜粋すると以下のとおりです。

不動産鑑定評価基準による積算価格の定義
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という)

上記の文章に含まれる価格時点とは、不動産鑑定士が評価対象となる不動産の適正な価格を判定する日、もしくは判定した日を指します。

また、不動産鑑定評価基準とは、国土交通省が定めた不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する基準であり、原価法により積算価格を求める手順などが記されています。

そして、不動産鑑定士が原価法を用いて積算価格を求める際は、不動産鑑定評価基準に記されている手順を遵守します。

なお、原価法は、不動産鑑定士以外の者が用いることもあるため留意してください。

先にご紹介した「原価法を用いて不動産の試算価格を求める主な流れ」は、不動産鑑定評価基準に基づく内容であり、不動産鑑定士が積算価格を求める手順です。

これに対して、不動産鑑定士以外の者が原価法を用いて積算価格を求める際は、独自の方法を用いることがあり、それが間違っているというわけではありません。

たとえば、不動産を担保に入れつつ銀行から資金を借り入れる際は、銀行が算定した担保となる不動産の積算価格を基に融資限度額が決定されることがありますが、積算価格の求め方は銀行によって異なります。

加えて、不動産投資の本を読むと原価法を用いて積算価格を求める方法が記されていることがありますが、不動産鑑定評価基準に記されている方法とは違う場合があります。

つまり、積算価格とは原価法を用いて求めた不動産の試算価格であり、不動産鑑定士が積算価格を求める際は不動産鑑定評価基準という統一されたルールに則るものの、積算価格の求め方は多種多様というわけです。

積算価格の求め方は多種多様

つづいて、不動産鑑定評価基準に記された、原価法を用いて不動産の試算価格を求める方法の詳細を簡単にご紹介しましょう。

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2. 積算価格の求め方

ここからは、原価法を用いて不動産の試算価格を求める方法の詳細を簡単にご紹介します。

ご紹介するのは、不動産鑑定評価基準に記された原価法を用いて積算価格を求める方法を簡略にした内容であり、ご紹介する以外の方法を用いて積算価格を求めることもあるため留意してください。

原価法を用いて積算価格を求める式は、以下のようになります。

原価法を用いて積算価格を求める式
評価対象となる不動産の再調達原価-減価額=積算価格

以上が、原価法を用いて積算価格を求める式であり、再調達原価から減価額を差し引くことを減価修正と呼びます。

式に含まれる再調達原価とは、評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価です。

再調達原価の求め方は建物と土地で異なり、以下のとおりとなっています。

建物の再調達原価の求め方
建物の再調達原価は、評価対象となる建物に使用されている建材の種類や量、用いられている工法などを調査し、評価対象となる建物と同等の建物を新築するために必要となる材料費、労務費などを計算しつつ求めます。
土地の再調達原価の求め方
土地の再調達原価は、評価対象となる土地の立地条件、上下水道などのインフラの引き込み状況、実施されている造成に掛かる費用などを調査し、評価対象となる土地を取得するために必要となる原価を総合的に判断しつつ求めます。

積算価格を求める式に含まれる減価額とは、評価対象となる不動産の現状や状況に応じて再調達原価から差し引く額です。

減価額の求め方は建物と土地で異なり、以下のとおりとなっています。

建物の減価額の求め方
建物の減価額は、床面積、耐震性や耐火性、建物として機能する残りの年数、修繕具合、設置されている設備の能力の低下具合、法定耐用年数と残存年数などを調査し、総合的に判断しつつ求めます。

法定耐用年数は木造住宅であれば22年、鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅であれば47年であり、残存年数とは、法定耐用年数から評価対象となる建物の築年数を差し引いた年数です。

たとえば、築10年の木造住宅であれば「22年(法定耐用年数)-10年(築年数)=12年」と計算し、残存年数は12年となります。

その他の建物の法定耐用年数は、「国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表」にて確認することが可能です。
土地の減価額の求め方
土地の減価額は、評価対象となる土地の周辺の景気の良し悪し、周辺にある好ましくない状況、評価対象となる土地の需要などを調査しつつ求めます。

以上が原価法を用いて積算価格を求める式に含まれる「再調達原価」と「減価額」の求め方であり、積算価格は再調達原価から減価額を差し引く減価修正を行いつつ求めます。

なお、不動産鑑定評価基準における再調達原価の求め方は、不動産鑑定評価基準の「総論 第7章 鑑定評価の方式 第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅱ原価法 2.適用方法 (2)再調達原価を求める方法」にて、減価修正を行う方法は「総論 第7章 鑑定評価の方式 第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅱ原価法 3.原価修正」にて確認することが可能です。

不動産鑑定評価基準には、原価法を用いて積算価格を求める具体的な方法が記されています。

積算価格の詳細を確認されたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ不動産鑑定評価基準をご覧ください。

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まとめ - 積算価格以外にも比準価格と収益価格がある

積算価格をわかりやすく簡単にご紹介しました。

積算価格とは、原価法を用いて求めた不動産の試算価格です。

原価法とは、評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価を求め、求めた原価から、評価対象となる不動産の劣化具合などに相応する額を差し引きつつ試算価格を求める手法です。

「評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる原価」を再調達原価、「評価対象となる不動産の劣化具合などに相応する額」を減価額、再調達原価から減価額を差し引くことを減価修正と呼びます。

不動産鑑定士が原価法を用いて積算価格を求める際は、不動産鑑定評価基準に則りますが、不動産鑑定士以外の者が原価法を用いて積算価格を求める際は、独自の方法を用いることもあります。

また、積算評価などの不動産用語を見聞きすることがありますが、それは原価法を用いて不動産の価格を求めることを意味し、積算評価によって求めた不動産の価格も積算価格です。

積算価格をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する際は、この記事の「1. 積算価格とは、原価法により求めた不動産の試算価格」にてご紹介したとおり、原価法と共に取引事例比較法と収益還元法という手法を用います。

取引事例比較法とは、評価対象となる不動産と現状や状況が類似する不動産が売買された際の価格を事例として試算価格を求める手法であり、取引事例比較法により求めた不動産の試算価格を比準価格と呼びます。

収益還元法とは、評価対象となる不動産を所有することにより将来得ると期待される収益を基に不動産の試算価格を求める手法であり、収益還元法により求めた不動産の試算価格を収益価格と呼びます。

誰でもわかる不動産売買では、取引事例比較法と収益還元法をわかりやすく簡単に解説するコンテンツも公開中です。

不動産の価格を求める手法に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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ご紹介した内容が、積算価格をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年2月
記事公開日:2020年1月

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