原価法とは?わかりやすく解説

原価法とは?わかりやすく解説

原価法とは、不動産鑑定士が不動産の試算価格を求める際に用いる手法の一つであり、建物や、建物とその建物が建つ土地の価格を求める際に活用されます。

原価法をわかりやすく解説し、原価法を用いて不動産の価格を評価する流れを簡単にご紹介しましょう。

目次

1. 原価法とは、建物などの試算価格を求める手法

それでは、原価法をわかりやすく簡単に解説します。

ところで、皆さんは不動産鑑定士という資格をご存知でしょうか。

不動産鑑定士の資格とは、土地や建物などの不動産の価格を鑑定しつつ評価する資格であり、国土交通省が公開する資料によれば、平成29年の時点において約8,200名の有資格者がいらっしゃるとのことです。

不動産鑑定士の有資格者が鑑定しつつ評価した不動産の価格は、ときには売買価格の指標となり、ときには不動産を担保にしつつ資金を借り入れる際の借り入れ限度額の指標などとして活用されます。

その不動産鑑定士の有資格者が、建物、または建物とその建物が建つ土地の試算価格を求める際に用いる手法が原価法です。

原価法とは不動産鑑定士が建物などの試算価格を求める手法

不動産鑑定士の有資格者が原価法を用いて建物の試算価格を求める際は、第一にその建物と同等の建物を再調達するために必要となる費用を調査します。

再調達という言葉が難解ですが、「入手すること」などとお考えください。

そして、調査しつつ判明した再調達するために必要となる費用を再調達原価と呼びます。

再調達原価が算定できれば、第二にその建物の傷み具合などを調査し、再調達原価から傷み具合に応じた額を差し引きます。

再調達原価から傷み具合などに応じた額を差し引くことを減価修正と呼び、再調達原価に減価修正を行った額が、原価法により求めたその建物の試算価格です。

原価法を用いて求めた不動産の試算価格を積算価格と呼びます。

ポイント
原価法により求めた不動産の試算価格を積算価格と呼ぶ

また、不動産鑑定士の有資格者が原価法を用いて建物が建つ土地の試算価格を求める際は、第一にその土地を再調達原価を調査します。

再調達原価が判明すれば、その土地の現状や周辺状況などを調査し、好ましくない事情がある場合は、再調達原価から好ましくない事情に応じた額を差し引きつつ減価修正を行います。

再調達原価から減価修正を行った額が、原価法により求めた建物が建つ土地の試算価格であり、積算価格です。

原価法により不動産の試算価格を求める流れを図解でわかりやすくご説明すると以下のようになります。

原価法により不動産の価格を求める流れ

なお、原価法は、主に建物、または建物とその建物が建つ土地の試算価格を求める際の手法ですが、建物とは主に戸建てを指します。

また、原価法は、建物が建てられていない土地のみの試算価格を求める際にも活用されることがあるため留意してください。

原価法の詳細は、国土交通省が定めた不動産鑑定士の有資格者が不動産の価格を評価する際の基準「不動産鑑定評価基準」の「総論 第7章 鑑定評価の方式 第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅱ原価法」にてご確認いただけます。

不動産鑑定評価基準には、原価法や再調達原価、積算価格などの詳細が記されているため、ぜひご確認ください。

つづいて、不動産鑑定士の有資格者が原価法を用いて不動産の試算価格を求める流れをよりわかりやすく解説します。

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2. 原価法を用いて建物の試算価格を求める流れ

原価法とは、不動産鑑定士の有資格者が、建物や、建物とその建物が建つ土地の試算価格を求める手法です。

ここから、原価法を用いて、不動産鑑定士の有資格者が建物の試算価格を求める流れをわかりやすく簡単にご紹介しましょう。

2-1. 建物の再調達原価を調査する

まずは、建物の再調達原価を調査します。

建物の再調達原価とは、その建物と同等の建物を入手するために必要となる費用であり、具体的には、その建物と同等の建物を新築するために工事請負業者に支払う費用などを指します。

再調達原価は、直接法、または間接法を用いて求め、それぞれの詳細をわかりやすく簡単に解説すると以下のとおりです。

建物の再調達原価を求める二つの方法

直接法
建物の再調達原価を求める場合における直接法では、評価対象となる建物に使用されている資材の種類や量、用いられている工法などを調査します。

そして、それらの資材を再調達するために必要となる費用や、その工法を再現するために必要となる労働者に支払う賃金などを計算し、再調達原価を求めます。
間接法
建物の再調達原価を求める場合における間接法では、評価対象となる建物と条件が類似する建物を周辺で探し、類似する建物が見つかれば、類似する建物を再調達するために必要となる費用を調査します。

調査しつつ判明した費用が、評価対象となる建物の再調達原価となります。

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2-2. 減価修正を行いつつ積算価格を求める

建物の再調達原価が判明すれば、再調達原価から、その建物の劣化具合などに応じた額を差し引きます。

再調達原価から劣化具合などに応じた額を差し引くことを減価修正と呼び、差し引く額は「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」を併用しつつ求め、それぞれの方法をわかりやすく簡単に解説すると以下のとおりです。

耐用年数に基づく方法
耐用年数に基づく方法では、建物の築年数や耐用年数を調査し、その建物が建物として機能する残りの年数を鑑みつつ再調達原価から差し引く額を求めます。
観察減価法
観察減価法では、建物や設備の劣化具合、設計の不良、建物の需要などを鑑みつつ再調達原価から差し引く額を求めます。

再調達原価から、以上の2つの方法を併用しつつ求めた額を減価修正した額が、原価法により求めた建物の試算価格です。

原価法により求めた不動産の試算価格を積算価格と呼びます。

原価法で建物の試算価格を求める流れ

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3. 原価法を用いて建物と建物が建つ土地の試算価格を求める流れ

ここからは、原価法を用いて建物と建物が建つ土地の試算価格を求める流れをわかりやすく簡単にご紹介します。

3-1. 土地部分の再調達原価を求める

まずは、土地部分の再調達原価を算定します。

土地の再調達原価とは、その土地を入手するために必要となる費用です。

具体的には、土地の再調達原価は以下の3つなどの要素を合算しつつ算定します。

土地の再調達原価を求める3つの要素

  • その土地を取得するために必要となる費用
  • その土地と同等の地形を再現するために必要となる造成費用
  • 利便性から鑑みるその土地の価値

上記の3つなどを合算した額が、土地部分の再調達原価です。

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3-2. 建物部分の再調達原価を求める

つぎに、建物の再調達原価を求めます。

建物の再調達原価を求める方法は、この記事の「2-1. 建物の再調達原価を調査する」にてご紹介した建物のみの再調達原価を求める方法と同じです。

具体的には、その建物と同等の建物を入手するために必要となる費用を調査し、判明した費用が建物の再調達原価となります。

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3-3. 土地部分と建物部分の再調達原価を合計する

土地部分と建物部分の再調達原価の算定が完了すれば、それらを合計します。

合計額が、その建物と建物が建つ土地の再調達原価です。

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3-4. 減価修正を行いつつ積算価格を求める

最後に、建物と建物が建つ土地の再調達原価から、建物の劣化具合や土地の現状などに応じた額を差し引きます。

再調達原価から建物の劣化具合や土地の現状などに応じた額を差し引くことを減価修正と呼び、差し引く額は「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」を併用しつつ求めます。

それぞれの方法をわかりやすく簡単に解説すると以下のとおりです。

耐用年数に基づく方法
耐用年数に基づく方法では、建物の築年数や耐用年数から、その建物が建物として機能する残りの年数を予想し、建物の再調達原価から差し引く額を求めます。
観察減価法
観察減価法では、建物の設備の劣化具合、建物と土地の需要、建物と土地の整合性、土地の周辺にある好ましくない事情などを調査し、建物や土地の再調達原価から差し引く額を求めます。

再調達原価から、以上の2つの方法を併用しつつ求めた額を減価修正した額が、原価法により求めた建物と建物が建つ土地の試算価格となります。

原価法により求めた不動産の試算価格を積算価格と呼びます。

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まとめ - 原価法以外にも取引事例比較法や収益還元法がある

原価法をわかりやすく簡単に解説しました。

原価法とは、不動産鑑定士の有資格者が、建物、または建物とその建物が建つ土地の試算価格を求める際に用いる手法であり、原価法により求められた不動産の価格を積算価格と呼びます。

原価法の詳細は、不動産鑑定士の有資格者が不動産の価格を鑑定しつつ評価する際の基準「不動産鑑定評価基準」にて確認することが可能であり、不動産鑑定評価基準は国土交通省が定めています。

原価法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、不動産鑑定士の有資格者が不動産の価格を求める際は、今回ご紹介した原価法に加え、取引事例比較法収益還元法などを用います。

取引事例比較法とは、評価対象となる不動産と類似する不動産の売買価格などを調査し、その調査結果から評価対象となる不動産の試算価格を求める手法であり、主にマンションや土地のみの価格を求める際に活用されます。

収益還元法とは、評価対象となる不動産を所有することにより得ると予想される収益から、その不動産の試算価格を求める手法であり、主に賃貸用の不動産の価格を求める際に活用されます。

取引事例比較法と収益還元法の詳細も不動産鑑定評価基準に記され、原価法、取引事例比較法、収益還元法をわかりやすくまとめると以下のとおりです。

不動産鑑定の主な手法

  対象となる不動産 試算方法
原価法 主に戸建てなどの建物、または建物とその建物が建つ土地 対象となる不動産の再調達原価を調査しつつ試算価格を求め、求めた価格を積算価格と呼ぶ
取引事例比較法 主にマンション、または土地のみ 対象となる不動産と類似する不動産の売買価格などを調査しつつ試算価格を求め、求めた価格を比準価格と呼ぶ
収益還元法 主に賃貸用の不動産 対象となる不動産を所有することにより得ると予想される収益から試算価格を求め、求めた価格を収益価格と呼ぶ

ご紹介した内容が、原価法をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年1月
記事公開日:2019年12月

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