サラリーマンの不動産投資が節税になるってホント!?

サラリーマンの不動産投資が節税になるってホント!?

サラリーマンの方が不動産投資を行えば、所得税や住民税が節税になることがあります。

ただし、節税になれば職場に不動産投資が知れる可能性があり、節税した額の一部を物件の売却後に支払うこととなる場合もあります。

サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより所得税と住民税が節税になる状況をわかりやすく解説し、節税になることによる注意点をご紹介しましょう。

なお、ご紹介するのは、サラリーマンの方が個人事業者として不動産投資を行う場合に節税になる状況であり、法人として不動産投資を行う場合には該当しないため留意してください。

目次

1. サラリーマンが不動産投資により所得税を節税できる状況

まずは、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより、所得税を節税になる状況をご紹介しましょう。

そもそもサラリーマンの方は給与所得を得て、給与所得にかかる所得税を納税しています。

この状況でサラリーマンの方が不動産投資を始めれば、給与所得に加え、不動産所得も得ることとなります。

不動産所得とは、不動産を貸付けするなどにより得た所得であり、給与所得と不動産所得があれば、その総額に所得税が課されます。

不動産投資を行わないサラリーマンの方と、行うサラリーマンの方に課される所得税を図解でわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

不動産投資を行うサラリーマンと行わないサラリーマンの所得の違い

ところで、サラリーマンである以上、給与所得が赤字になることはありませんが、不動産所得は頻繁に会計上の赤字になります。

不動産所得が会計上の赤字になる理由は、主に減価償却です。

減価償却の意味はさておき、不動産所得は「1年間の総収入金額-1年間の必要経費」と計算し、具体的な計算式は以下のとおりです。

不動産所得の計算式
1年間の総収入金額-1年間の必要経費=不動産所得

式に含まれる「1年間の総収入金額」とは、主に1年間の家賃収入の総額であり、「1年間の必要経費」とは、主に固定資産税、損害保険料、修繕費、減価償却費です。

減価償却費とは、先にお話しした減価償却した額を意味します。

減価償却とは、不動産所得を計算する式に含まれる「1年間の必要経費」に、購入した物件の建物部分の代金の一部を毎年少しずつ含めることです。

たとえば、建物部分の価格が5,000万円、土地部分の価格が5,000万円、合計1億円の新築の木造アパートを購入した場合は、建物部分の購入代金である5,000万円が22分割され、取得から22年にわたり毎年約227万円を減価償却費として必要経費に含めることとなります。

これらを踏まえて不動産所得を計算する式を図解でご紹介すると以下のようになり、不動産投資は、家賃収入があったとしても、減価償却により頻繁に会計上の赤字になります。

不動産投資により得る不動産所得の計算式

そして、給与所得と不動産所得の両方があるサラリーマンの方は、その総額に所得税が課されることとなりますが、不動産所得に赤字があれば、その赤字は給与所得から差し引かれます。

計算例を挙げると、給与所得が500万円であり、不動産所得がマイナス50万円であれば「500万円-50万円=450万円」と計算し、給与所得が450万円に減額されます。

不動産所得の赤字が給与所得から差し引かれれば、給与所得と不動産所得の総額が減り、給与所得と不動産所得の総額に課される所得税の額も減ります。

この状況が、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより所得税が節税になる状況です。

サラリーマンは不動産所得が赤字になれば給与所得が減り、節税になる

なお、サラリーマンの方が得る給与所得に課される所得税は、一年間の給与所得の総額を予想しつつ、その年のうちに源泉徴収されます。

よって、どのように節税されるか気になりますが、具体的には、前年の源泉徴収により納付した所得税の一部が、翌年の2月ごろに確定申告を行うことにより還付されることとなります。

サラリーマンの方が給与所得を得つつ源泉徴収により所得税を納付し、不動産投資を行いつつ不動産所得が赤字の状況における、所得税が還付される主な流れは以下のとおりです。

サラリーマンの所得税が還付される流れ

1. 今年の給与所得にかかる所得税を今年中に源泉徴収により支払う
まずは、今年の給与所得にかかる所得税が、今年中の毎月の給与から源泉徴収されます。
2. 翌年の2月ごろに確定申告を行う
つぎに、翌年の2月ごろに確定申告を行います。

確定申告では、前年の給与所得の額、前年に源泉徴収された所得税の額、自らが計算した前年の不動産所得の額、自らが計算した還付される所得税の額などを申告します。

前年の給与所得と源泉徴収された所得税の額は源泉徴収票を基に申告し、不動産所得や還付される所得税の額は、収支内訳書を作成しつつ申告することとなりますが、e-Taxを用いれば比較的簡単に作成できます。

なお、減価償却の額も、自らが計算しつつ収支内訳書に記載することとなるため留意してください。

個人事業者として不動産投資を行う場合は、必ず減価償却をしなくてはなりません。
3. 確定申告後に所得税が還付される
確定申告後1ヵ月から1ヵ月半程度が経過すれば、前年中に源泉徴収により支払った所得税の一部が還付されます。

振り込みによる還付を希望する場合は、確定申告書に口座番号を記載すればその口座に振り込まれ、確定申告書に口座番号を記載していない場合は、郵便局にて受け取ることが可能です。

還付方法の詳細は、「国税庁:税金の還付」にてご確認いただけます。

以上がサラリーマンの方が不動産投資を行い、不動産所得が赤字になることにより所得税が還付される流れです。

ちなみに、不動産所得が赤字であれば確定申告により払いすぎた所得税が還付されつつ節税になりますが、不動産所得が黒字の場合は、確定申告により足りない額の所得税を納税することとなるため留意してください。

不動産投資は開始直後は会計上の赤字になりがちですが、順調であれば次第に黒字になり、それに伴い確定申告により源泉徴収で支払いきれなかった額の所得税を納付することとなります。

つづいて、サラリーマンの方が不動産投資を行い、住民税が節税になる状況をご紹介しましょう。

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2. サラリーマンが不動産投資により住民税を節税できる状況

サラリーマンの方が不動産投資を行えば、給与所得と不動産所得を得ることとなり、その総額に所得税が課されます。

給与所得が赤字になることはありませんが、不動産所得は減価償却により会計上の赤字になることがあり、不動産所得が赤字になれば、その赤字の額は給与所得から差し引かれ、給与所得と不動産所得の総額が減ります。

給与所得と不動産所得の総額が減れば、給与所得と不動産所得の総額を基に計算する所得税も減ります。

これが、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより所得税が節税になる状況です。

そして、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより所得税が減額されれば、住民税も減額されます。

住民税とは市町村が徴収する地方税であり、不動産投資を行わないサラリーマンの方であれば、給与所得を基に税額が計算されます。

一方、不動産投資を行いつつ不動産所得があるサラリーマンの方は、給与所得と不動産所得の総額を基に税額が計算され、課税の対象となる額が所得税と同じです。

不動産投資を行わないサラリーマンの方と、不動産投資を行いつつ不動産所得があるサラリーマンの方に課される住民税が計算される仕組みを図解でご紹介すると以下のとおりです。

不動産投資を行うサラリーマンに住民税が課される状況

上記のように、不動産投資を行うサラリーマンの方は、所得税と同じく、給与所得と不動産所得の総額を基に住民税が計算されます。

そのため、減価償却などを理由に不動産所得が赤字であり、その赤字が給与所得から差し引かれる状況であれば、所得税に加え住民税も減額されます。

この状況が、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより住民税が節税になる状況です。

不動産投資を行うサラリーマンの住民税が節税になる状況

ただし、住民税は所得税のように還付されることはありません。

確定申告を行いつつ所得税が還付された年の6月ごろから、給与から天引きされる住民税の額が減ることとなります。

その理由は、サラリーマンの方は昨年の所得にかかる住民税を、今年の6月ごろから天引きにより納税するためです。

サラリーマンの方は、その年の給与所得にかかる所得税は、その年のうちに源泉徴収により支払い、その年の給与所得にかかる住民税は、翌年の6月ごろから天引きにより支払います。

よって、サラリーマンの方が不動産投資を行いつつ住民税が減額される状況においては、その税額が還付されることはなく、天引きされる住民税が減額されます。

サラリーマンの方の所得税と住民税の納付スケジュールをわかりやすく図解でご紹介すると以下のとおりです。

サラリーマンの所得税と住民税の納税スケジュール

なお、住民税が減額されれば、不動産投資などの副業を行っていることが職場に知れる可能性があるため注意してください。

不動産所得が黒字であれば、不動産所得にかかる住民税の納税通知書を自宅に届くように希望することが可能であり、人知れず不動産所得にかかる住民税を納付できます。

具体的には、確定申告を行う際に、確定申告書Bの第二表の「住民税・事業税に関する事項」の「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という項目にある選択肢に、「自分で納付」を選択することにより、自宅に不動産所得にかかる住民税の納税通知書が届きます。

以下が、確定申告書Bの第二表の「住民税・事業税に関する事項」の「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」の欄です。

不動産所得にかかる住民税は、自宅に納税通知書が届くように希望できる

ところが、給与所得にかかる住民税は、一部例外を除き、給与から天引きされます。

確定申告で選択できるのは、不動産所得にかかる住民税のみの納付方法であり、給与所得にかかる住民税の選択ではありません。

給与所得にかかる住民税は、地方税法の第三百二十一条の三により、給与所得から天引きされます。

地方税法とは、住民税や固定資産税などの地方税に関することを定めた法律であり、第三百二十一条の三をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

地方税法 第三百二十一条の三(給与所得に係る個人の市町村民税の特別徴収)
住民税の納税義務者が前年に給与の支払いを受け、なおかつ今年も支払いを受けているのであれば、市町村は給与所得にかかる住民税を給与からの天引きにより徴収するものとする

このため、不動産所得が赤字であり、その赤字の額が給与所得から差し引かれることとなれば、天引きされる住民税の額が減り、何かしらの副業を行っていることが職場に知れる可能性があります。

したがって、副業を禁止する会社で勤務するサラリーマンの方が不動産投資を始めたいと希望する場合は、事前に職場と相談しておくのが良いでしょう。

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まとめ - 節税分は、物件売却後に支払う場合がある

サラリーマンの方が不動産投資を行いつつ節税できる状況をわかりやすくご紹介しました。

サラリーマンの方が不動産投資を行えば、給与所得と不動産所得を得ることとなり、その総額に所得税と住民税が課されます。

サラリーマンの方がサラリーマンとして働く限り給与所得が赤字になることはありませんが、不動産所得は減価償却により会計上の赤字になることがあります。

不動産所得が赤字になれば、その赤字の額は給与所得から差し引かれることとなり、それに伴い給与所得と不動産所得が減ることとなります。

これを損益通算と呼び、給与所得と不動産所得の総額が減れば、その総額にかかる所得税が減額されます。

また、給与所得と不動産所得が減れば、その総額にかかる住民税も減額されます。

この状況が、サラリーマンの方が不動産投資を行うことにより節税になる状況です。

ただし、不動産所得が赤字になりつつ給与所得が減額されれば、給与から天引きされる住民税の額が減ることとなり、職場に不動産投資などの副業を行っていることが知れる可能性があるため注意が必要です。

不動産投資が節税になる理由をお調べのサラリーマンの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、この記事でご紹介したとおり、減価償却により不動産所得が赤字になれば、給与所得と不動産所得の総額に課される所得税や住民税を節税できます。

ここまでは、不動産投資の入門書に書かれている内容です。

しかし、この話には続きがあります。

減価償却により減額された所得税や住民税の額は、全額とは限りませんが、少なくともその一部を投資用物件を売却した後に支払わなければならない可能性があります。

その理由は、譲渡所得を計算する仕組みにあります。

譲渡所得とは、土地や建物などを売却することにより得る利益です。

不動産投資のために購入した物件は、いつかは売却するのが通例ですが、購入額より高く売るなどして利益を得れば、譲渡所得が発生したとみなされ、譲渡所得に所得税と住民税が課されます。

譲渡所得に課される所得税と住民税は、給与所得と不動産所得にかかる所得税や住民税と分離しつつ計算する分離課税です。

譲渡所得に課される所得税と住民税の計算式は、以下のとおりです。

譲渡所得にかかる所得税と住民税の計算式
譲渡所得×所得税、または住民税の税率=譲渡所得にかかる所得税、または住民税

上記の式に含まれる譲渡所得を計算する式を簡単にご紹介すると、以下のようになります。

投資用物件の売却額-投資用物件の購入額=譲渡所得

式に含まれる「投資用物件の売却額」とは所有する投資用物件を売却した額であり、「投資用物件の購入額」とは投資用物件の購入代金から、その物件を所有中に減価償却した額を差し引いた額です。

たとえば、5,000万円の投資用物件を購入し、3,000万円を減価償却しつつ3,000万円で売却したとしましょう。

この状況においては、「5,000万円-3,000万円=2,000万円」と計算し、投資用物件の購入額は2,000万円となります。

であれば、「2,000万円(投資用物件の購入額)-3,000万円(投資用物件の売却額)=1,000万円」と計算し、現実には5,000万円で購入した物件を3,000万円で売却しつつ利益を得ていないものの、1,000万円の譲渡所得が発生したとみなされます。

譲渡所得が発生すれば、譲渡所得にかかる所得税と住民税も発生します。

投資用物件を所有中は、減価償却により不動産所得が会計上の赤字になるなどして所得税や住民税を節税できるものの、減額された税額は、全額とは限らないものの、投資用物件を売却した後に支払うこととなる場合があるため注意してください。

ご紹介した内容が、不動産投資が節税になる理由をお調べになるサラリーマンの方に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年5月
記事公開日:2018年8月

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