減価償却とは?わかりやすく解説(不動産投資の減価償却)

減価償却とは?わかりやすく解説

不動産投資を志す方が知っておきたい不動産用語に、減価償却があります。

不動産投資における減価償却とは、不動産投資を行うために取得した賃貸マンションや賃貸アパートなどの購入代金を、毎年少しずつ経費として計上する処理であり、節税や減税効果があるといわれます。

しかし、減価償却には注意すべき点があり、必ず節税できるとは限りません。

不動産投資の減価償却をわかりやすく簡単にご説明しましょう。

目次

1. 減価償却とは、投資用不動産の購入代金を毎年経費に計上すること

それでは、不動産投資における減価償却をわかりやすく簡単にご説明しましょう。

不動産投資には様々な形態がありますが、最も多く活用されるのが、賃貸アパートや賃貸マンションなどの資用不動産を購入し、家賃を取りつつ貸し、入居者から支払われる賃料を収入とする形態です。

この形態は初期費用がかかるものの、さほどリスクが高くないとされ、多くの投資家の方に人気です。

しかし、家賃を受け取りつつ利益を得れば、得た利益に所得税が課され、納税しなくてはなりません。

その所得税の額は、以下のように計算します。

不動産投資により得た利益に課される所得税の計算式
不動産所得×所得税の税率=所得税

上記の式には「不動産所得」という言葉が含まれますが、不動産所得とは、不動産投資により得た1年間の家賃収入から、不動産投資を行うために支払った1年間の経費を差し引いた額であり、不動産所得を計算する式は以下のとおりです。

不動産所得の計算式
不動産投資により得た1年間の家賃収入-不動産投資を行うために支払った1年間の経費=不動産所得

不動産所得は上記の式で計算し、不動産投資を行いつつ不動産所得を得れば、不動産所得に所得税の税率を掛け算した額の所得税が課されます。

不動産投資により得た利益にかかる所得税の計算式と、不動産所得を計算する式をわかりやすく図解でまとめると以下のとおりです。

不動産投資により得た所得を不動産所得と呼び、不動産所得には所得税が課される

さて、ここで注目していただきたいのが、上記の図解に含まれる「不動産投資を行うために支払った1年間の経費」に含めることができる経費です。

不動産投資を行うために支払った1年間の経費に多くの額を含めることができれば、不動産所得が減り、不動産所得を基に計算する所得税が減額されます。

不動産投資を行うために支払った1年間の経費に含めることができる主な経費は、以下のとおりです。

  • 1. 固定資産税
  • 2. 損害保険料
  • 3. 修繕費
  • 4. 物件を購入するために借り入れたローンの返済にかかる利息
  • 5. 物件を購入する際に支払った建物部分の代金

1番目の固定資産税とはその投資用不動産を所有することにより市町村から課される税金であり、2番目の損害保険料とは地震保険料などを指します。

3番目の修繕費とは建物の修理費用であり、4番目の返済にかかった利息とは、金融機関から資金を借り入れつつ投資用不動産を購入した場合に支払う利息です。

以上の4つの経費は、一部例外を除き、1年間に支払った額の全てが経費となります。

しかし、5番目の「物件を購入する際に支払った建物部分の代金」は、一括ではなく、毎年少しずつ必要経費に含めることとなります。

たとえば、新築の鉄筋コンクリート造の賃貸用マンションを購入した場合は47年を掛けて、新築の木造アパートを購入した場合は22年を掛けてなど、建物部分の購入代金を分割しつつ毎年少しずつ経費として計上します。

この「物件を購入する際に支払った建物部分の代金」を、分割しつつ毎年経費に含めることが減価償却です。

不動産投資における減価償却とは、不動産所得を計算する際に家賃収入から差し引く経費に、投資用不動産を購入する際に支払った建物部分の代金を毎年少しずつ含めることを意味します。

不動産投資における減価償却とは、必要経費に投資用不動産の購入代金を毎年少しずつ含めること

減価償却により、物件を購入する際に支払った建物部分の代金を毎年少しずつ経費に含めれば、不動産投資により得た1年間の家賃収入から多くの額が差し引かれ、不動産所得が減額されます。

不動産所得が減れば、不動産所得に税率を掛け算しつつ計算する所得税の額も減ります。

場合によっては、赤字が出ていないにもかかわらず不動産所得がない状態にすることも可能であり、所得税が大幅に減額されます。

これにより、不動産投資は儲かりやすいといわれます。

ただし、減価償却しつつ減った所得税の額は、物件を売却する際に支払うこととなる場合があるため注意が必要です。

つづいて、投資用物件を売却する際に、減価償却が及ぼす影響をわかりやすくご紹介しましょう。

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2. 減価償却による減税額は、不動産売却後に支払う

不動産投資における減価償却とは、不動産所得を計算する際に、購入した投資用物件の建物部分の購入代金を毎年少しづつ経費に含めることであり、節税効果があるとされます。

しかし、減価償却は、購入した投資用物件を売却する際に影響を及ぼします。

投資用物件を購入しつつ売却し、利益が発生すると、発生した利益に所得税が課されます。

投資用物件を売却することにより得た利益を譲渡所得と呼び、譲渡所得を計算する式をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

譲渡所得の計算式
投資用物件の売却額-投資用物件の購入代金=譲渡所得

譲渡所得は上記の式で計算し、譲渡所得には所得税が課され、税額を計算する式を簡単にご紹介すると以下のようになります。

譲渡所得にかかる所得税の計算式
譲渡所得×所得税の税率=所得税

つまり、譲渡所得があれば所得税が課されるというわけですが、投資用物件の所有中に行った減価償却の額は、譲渡所得を計算する際に、物件の購入代金から差し引かなければなりません。

投資用物件の購入代金が減れば、譲渡所得の額が増えることとなり、それに伴い譲渡所得にかかる所得税も高くなります。

減価償却した額は、不動産の購入代金から差し引かなければならない

たとえば、建物部分の販売価格が2,500万円、土地部分の販売価格が2,500万円、合計5,000万円の投資用物件を購入したとしましょう。

その物件を所有中に2,500万円を減価償却し、最終的に4,000万円で売却しました。

その場合は以下のように計算し、購入額より売却額の方が少ないものの、1,500万円の譲渡所得が発生したとみなされます。

4,000万円(投資用物件の売却額)-2,500万円(減価償却した額を差し引いた投資用物件の購入代金)=1,500万円(譲渡所得)

譲渡所得が発生すれば、譲渡所得に対して所得税が課されます。

であれば、減価償却をしなければ良いと考えがちですが、個人事業者として不動産投資を行う場合は、必ず減価償却をしなくてはなりません。

必ず減価償却をしなくてはならないことを、強制償却などと呼びます。

減価償却すれば不動産所得を減らしつつ毎年支払う所得税を減額できますが、減額した所得税は、物件を売却した後に支払わなければならないことがあるため注意してください。

また、減価償却できる期間は、鉄骨鉄筋コンクリート造であれば47年、木造であれば22年などと決まっており、中古の投資用不動産を購入した場合は、それ以下となります。

減価償却の期間が終了すれば、経費に含めることができる額が減り、それまでと同額の家賃収入があれば所得税が急激に高くなります。

つづいて、減価償却される年数をわかりやすく簡単にご説明しましょう。

なお、譲渡所得にかかる所得税を計算する際に、投資用不動産の購入代金から減価償却した額を差し引く必要があることの根拠は、「国税庁タックスアンサーNo.3261 建物の取得費の計算」にてご確認いただけます。

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3. 減価償却には期間があり、期間終了後は所得税が高くなる

不動産投資における減価償却とは、不動産所得を計算する際の必要経費に、所有する投資用物件の建物部分の購入代金を毎年少しずつ含めることです。

減価償却により所有する投資用物件の建物部分の購入代金が経費に含まれることとなれば、必要経費の額が増えると共に不動産所得が減り、不動産所得に税率を掛け算しつつ計算する所得税の額が減ります。

しかし、減価償却は永久ではなく、建物部分の購入代金を必要経費に含めることができる期間が定められています。

減価償却しつつ投資用不動産の建物部分の購入代金を必要経費に含めることができる期間を「法定耐用年数」と呼び、法定耐用年数は建物の構造と用途によって異なり、以下のとおりです。

  • 木造の住宅や店舗は22年
  • 木造の飲食店用の建物は20年
  • 木造の車庫は17年
  • 鉄筋コンクリート造の住宅は47年
  • 鉄筋コンクリート造の店舗は39年
  • 鉄筋コンクリート造の車庫は38年

以上が、主な投資物件の法定耐用年数です。

たとえば、新築の木造の賃貸アパートを購入した場合は、22年間減価償却できます。

新築の鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを購入した場合は、減価償却の期間は47年です。

その期間を超えると減価償却できず、不動産所得が増えると共に所得税が高くなり、利益を出しにくくなります。

なお、中古の投資用物件を購入した場合は、法定耐用年数ではなく、「使用可能期間」という年数を用いて減価償却の期間が決定されます。

つづいて、中古の投資用物件が減価償却される期間をご紹介しましょう。

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4. 中古の投資用不動産の減価償却できる期間

中古の投資用物件を購入した場合は、法定耐用年数ではなく、使用可能期間という名称の年数を計算し、使用可能期間に限り減価償却されます。

ポイント
中古の投資用物件は法定耐用年数ではなく、使用可能期間により減価償却される期間が決定する

使用可能年数を計算する方法は、購入した中古の投資用物件が、法定耐用年数に達するか否かによって異なり、以下のとおりです。

法定耐用年数に達している場合
法定耐用年数を過ぎた中古の投資用物件は、法定耐用年数の20%に相当する年数が使用可能期間となり、その期間中において減価償却されます。

たとえば、法定耐用年数が22年である築25年の木造の賃貸アパートを購入した場合は「22年×20%=4年」と計算し、使用可能期間は4年です。
法定耐用年数に達していない場合
法定耐用年数を過ぎていない中古の投資用物件は、法定耐用年数から築年数を差し引いた年数に、築年数の20%に相当する年数を加えた年数が使用可能期間となり、その期間中に限り減価償却されます。

計算例を挙げると、法定耐用年数が47年である築25年の鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを購入した場合は「(47年-25年=22年)+(25年×20%=5年)=27年」と計算し、使用可能期間は27年です。

以上が、中古の投資用物件の使用可能期間を計算する方法です。

なお、中古の投資用物件を購入した際に修理や改良を施し、その費用が、その物件と同一の建物を新築するために必要となる費用の50%を超える場合は、使用可能期間ではなく、法定耐用年数が適用されるため留意してください。

つまり、その中古物件を購入しつつ不動産投資を行うために、あまりに高額な費用を要する修理や改良を施す必要があり、それらの修理や改良を実施した場合は、新築と同じ年数の減価償却期間が与えられるというわけです。

中古の投資用不動産が減価償却される期間

中古の投資用物件の使用可能期間を計算する方法の詳細は、「国税庁タックスアンサーNo.5404 中古資産の耐用年数」にて確認することが可能です。

また、中古の投資用不動産を購入し、投資用の不動産として利用するために支払った修理や改良の費用を「資本的支出」と呼び、資本的支出の詳細は「国税庁:資本的支出と修繕費」にてご確認いただけます。

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5. 減価償却により経費に計上できる額

減価償却により投資用物件の建物部分の購入代金を必要経費に含めれば、不動産所得が減り所得税が減額されます。

ここで気になるのが、毎年どの程度の額を必要経費に含めることができるかという点です。

ここからは、減価償却により毎年必要経費に含めることができる額を計算する方法をご紹介しましょう。

減価償却により必要経費に含めることができる額は、定額法、または定率法によって計算します。

定額法と定率法をわかりやすく簡単にご説明すると以下のとおりです。

定額法
定額法とは、毎年決まった額を減価償却する方法であり、減価償却の期間が完了するまで、毎年減価償却できる額が一定です。
定率法
定率法とは、減価償却の額が変動する方法です。

具体的には、年数が浅いうちは大きく減価償却され、年数が経過すると共に減価償却できる額が減ることとなります。

以上が、減価償却できる額を計算する定額法と定率法の詳細です。

そして、不動産投資における減価償却において、必要経費に含めることができる購入代金は、一部例外を除き、定額法により求めます。

定額法による減価償却できる率は、国税庁が公開する「減価償却資産の償却率等表」にて確認することが可能です。

以下が償却率表であり、投資用不動産の減価償却には赤い線で囲んだ部分の償却率が適用されます。

減価償却における定額法の償却率表

出典:国税庁

たとえば、法定耐用年数が22年の新築の木造の賃貸アパートを購入した場合の償却率は0.046、すなわち4.6%であり、毎年建物部分の購入代金の約4.6%の額が減価償却されます。

建物部分の販売価格が5,000万円である新築の木造の賃貸アパートを購入した場合は「5,000万円×0.046=230万円」と計算し、毎年約230万円が減価償却されるといった具合です。

また、使用可能期間が5年の中古の賃貸アパートを購入した場合の償却率は0.200、すなわち20%であり、毎年建物部分の購入代金の20%の額が減価償却されます。

なお、不動産投資の減価償却に定額法が適用されることの根拠は、「国税庁タックスアンサーNo.2100 減価償却のあらまし」にある以下の記述にてご確認いただけます。

平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、定額法で計算します。定率法への変更を希望する場合は、所轄の税務署に申請書を提出し、承認を得なければなりません。

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まとめ - 減価償却費とは、減価償却できる額

不動産投資における減価償却をわかりやすく解説しました。

不動産投資における減価償却とは、不動産所得を計算する際の経費に、所有する投資用物件の建物部分の購入代金を毎年少しずつ含めることです。

減価償却により物件の建物部分の購入代金が経費に含まれることとなれば、経費が増えると共に不動産所得が減り、不動産所得に税率を掛け算しつつ計算する所得税が減ります。

投資用の不動産を購入すると、その建物部分の購入代金は減価償却により、全額経費に含めることが可能です。

ただし、物件を売却する際は、減価償却した額を含めつつ譲渡所得を計算する必要があり、減価償却により減った所得税は、後に支払うこととなる場合があるため注意してください。

また、減価償却には、減価償却できる期間が定められています。

減価償却できる期間を法定耐用年数と呼び、新築の木造の賃貸アパートであれば22年、新築の鉄骨鉄筋コンクリート造の賃貸マンションであれば47年です。

中古の投資用物件を購入した場合は、法定耐用年数ではなく使用可能期間を計算し、一部例外を除き、その期間中に限り減価償却できます。

不動産投資における減価償却をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、減価償却費という言葉も見聞きしますが、減価償却費とは、減価償却した額や、減価償却できる額などを指します。

たとえば、減価償却しつつ経費から100万円を差し引いた場合は、100万円が減価償却費です。

加えて、減価償却しつつ経費から100万円を差し引ける場合は、100万円が減価償却費となります。

ご紹介した内容が、不動産投資を志す皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年5月
記事公開日:2018年7月

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