消費税還付の対象となる不動産とは?わかりやすく解説
消費税といえば「払う」という印象がありますが、不動産の中には、購入することにより「還付」される物件があります。
不動産を購入しつつ消費税が還付される状況をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。
目次
1. 事業用の建物を購入すれば、消費税が還付されることがある
不動産を購入しつつ消費税が還付されるのは、賃料を取りつつ事業者に貸す建物や事業者に向けて売却する建物、自らの事業のために使用する建物などを購入した場合です。
それらの不動産を購入する際は、消費税がかかります。
そして、それらの不動産を購入しつつ消費税が課税される売り上げを得るなどすれば、消費税が還付される場合があります。
不動産を購入しつつ消費税が還付される状況と流れを、わかりやすくご紹介すると以下のとおりです。
不動産を購入しつつ消費税が還付される状況と流れ
- 1. 物件価格に消費税が上乗せされた、事業のために使用する建物を購入する
- まずは、購入する際に消費税がかかり、なおかつ、その不動産を利用して消費税が課税された売り上げを得ることができる建物を購入します。
具体的には、事業者に貸すための店舗や事務所、倉庫、自らの事業のために使用する工場などの建物が該当します。
事業者に貸す店舗を購入する際は消費税がかかり、なおかつ、借り主から支払われる賃料にも消費税が上乗せされ、消費税が課税された売り上げを得ることが可能です。
また、自らの事業のために使用する工場を購入する際は消費税がかかり、なおかつ、その工場を利用して商品を作り、消費税を上乗せしつつ販売すれば、消費税が課税された売り上げを得ることができます。 - 2. 購入した建物を用いて消費税が課される対象となる売り上げを得る
- つぎに、流れの「1」で購入した建物を用いて、消費税が課税された売り上げを得ます。
たとえば、「1」で事業者に貸すための店舗を購入した場合は、事業者に貸しつつ消費税が上乗せされた家賃の支払いを受けるといった具合です。
また、「1」で自らの事業のために使用する工場を購入した場合は、その工場で品物を作り、消費税を上乗せしつつ販売するなどします。
ちなみに、消費税を上乗せしつつ商品を売るなどして得た売り上げを課税売上と呼びます。 - 3. 流れの「1」で建物を購入する際に支払った消費税が、「2」で受け取った消費税の額より多ければ、その差額が還付される
- たとえば、「1」で100万円の消費税が上乗せされた店舗を購入し、「2」で消費税を上乗せした額の賃料を取りつつ1年間賃貸するものの40万円の消費税しか受け取れなかった場合は、「100万円(支払った消費税-40万円(受け取った消費税)=60万円)」と計算し、60万円の還付を受けることが可能です。
また、「1」で100万円の消費税が上乗せされた工場を購入し、「2」でその工場で品物を製造しつつ消費税を上乗せして販売したものの30万円の消費税しか受け取れなかった場合は、「100万円(支払った消費税)-30万円(受け取った消費税)=70万円」と計算し、足りない額である70万円が還付されます。
以上が、不動産を購入しつつ消費税が還付される状況と流れです。
消費税は、主に事業者から品物を購入した消費者や、事業者が行うサービスを受けた消費者が負担する税金です。
これを理由に、事業者が事業のために購入した品物には、一部例外を除き消費税が課されません。
よって、事業者が事業用の建物を購入する際は、事業用の建物には消費税が課されるため、一旦は売り手に消費税を預けることとなるものの、その消費税は後に還付されます。
事業者に消費税が還付される方法は、大きく2つに分かれ、以下のとおりです。
事業者に消費税が還付される2つの方法
- 1. 消費税を受け取ることにより還付される
- 支払った消費税より受け取った消費税が少ない場合は、受け取った消費税を手元に残すことにより還付されます。
たとえば、消費税を上乗せしつつ貸店舗を購入し、消費税が上乗せされた家賃を受け取った場合は、物件の購入時に支払った消費税より、家賃に上乗せされた消費税が少なければ、受け取った消費税を還付という形で手元に残すことができます。
具体的には、100万円の消費税を上乗せしつつ貸店舗を購入し賃貸したものの、30万円の消費税しか受け取れなかった場合は、その30万円を手元に残すことにより消費税が還付されます。 - 2. 消費税の確定申告を行うことにより還付される
- 支払った消費税より受け取った消費税が少ない場合は、受け取った消費税を手元に残すことによ消費税が還付されますが、十分に還付されないこともあります。
たとえば、100万円の消費税が上乗せされた事業用の建物を購入し、80万円の消費税を上乗せしつつ売却した場合は「100万円(支払った消費税)-80万円(手元に残すことにより還付された消費税)=20万円(還付を受けていない消費税)」と計算し、20万円が還付されていません。
このように消費税が十分に還付されていない場合は、消費税の確定申告を行うことにより、足りない額が還付されます。
以上の2つのいずれかの方法で、不動産を購入することにより支払った消費税は還付されます。
なお、先に「事業者が事業のために購入した品物には、消費税が課されません」とご紹介しましたが、事業者が私用として使うために購入した品物や、個人として受けたサービスには消費税が課されるため留意してください。
また、不動産を購入しつつ消費税の還付を受けるためには、いくつかの満たすべき条件があります。
つづいて、不動産を購入しつつ消費税の還付を受けるための条件をわかりやすくご紹介しましょう。
2. 不動産を購入しつつ消費税が還付される条件
事業用の建物を購入する際は、消費税がかかります。
そして、事業者が事業用の建物を消費税を上乗せしつつ購入し、支払った消費税よりその後に受け取った消費税の額が少なければ、その差額は還付されます。
これが、不動産を購入しつつ消費税が還付される状況ですが、消費税の還付を受けるためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
ここから、不動産を購入しつつ消費税が還付される条件をわかりやすくご紹介しましょう。
事業のために使用する、居住用ではない不動産を購入する
不動産を購入しつつ消費税の還付を受けるためには、消費税がかかる事業用の不動産を購入しなければなりません。
そして、賃貸アパートや賃貸マンション、賃貸用の一戸建てなどの事業用の不動産を購入する際も、建物部分の価格に消費税が課されます。
よって、賃貸アパートや賃貸マンション、賃貸用の一戸建てなどを購入した場合も、消費税が還付されると考えがちですが、それらの建物を購入した場合は、消費税は還付されないため注意してください。
不動産を購入しつつ消費税の還付を受けるためには、購入時に消費税を支払う必要があり、なおかつ、消費税が課される対象となる売り上げを得ることができる物件を購入する必要があります。
しかし、賃貸アパートや賃貸マンション、賃貸用の一戸建てなどの居住用の賃貸不動産の入居者から支払われる家賃には、そもそも消費税がかかりません。
つまり、居住用の不動産は、購入する際は消費税を支払う必要があるものの、消費税が課される対象となる売り上げを得ることはできないというわけです。
これを理由に、居住用の建物を購入しつつ賃貸する場合は、消費税が還付されません。
また、不動産を購入しつつ消費税の還付を受けるためには、土地ではなく建物を購入する必要があるため留意してください。
土地を売買する際は、一部例外を除き消費税が課されないため、土地を売買することでは消費税は還付されません。
なお、居住用の不動産を購入することにより消費税が還付されないことの詳細は、国税庁が令和2年4月に発行した以下の「消費税法改正のお知らせ」の「Ⅱ 居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化」にてご確認いただけます。
消費税法改正のお知らせ
※ 出典:国税庁
消費税の課税事業者になる
事業者は、大きく「課税事業者」と「免税事業者」に分かれます。
課税事業者とは、前々年、または前年の1月1日から6月30日における消費税が課される対象となる売り上げが1,000万円を超える事業者であり、消費税の確定申告を必要とする事業者です。
一方、免税事業者とは、前々年、または前年の1月1日から6月30日における消費税が課される対象となる売り上げが1,000万円に満たない事業者であり、消費税の確定申告を行う必要がない事業者を指します。
そして、不動産を購入しつつ還付しきれなかった消費税の還付を受けることができるのは、課税事業者のみです。
たとえば、100万円が上乗せされた不動産を購入し、その不動産を用いて事業活動を行い、80万円の消費税を受け取った場合は、20万円の消費税が還付されていないこととなります。
この状況において、足りない20万円分の消費税の還付を受けることができるのは、課税事業者のみです。
ただし、課税事業者の条件を満たさない免税事業者であっても、「消費税課税事業者選択届出書」という届け出を税務署に提出することにより課税事業者になることが可能です。
しかし、免税事業者の方が課税事業者になれば消費税に関する確定申告が必要となり、最低でも課税事業者となった日から2年を超える日まで課税業者であり続ける必要があります。
十分に還付されなかった消費税の還付を受けるためには、消費税の確定申告が必要となる課税事業者になり、なおかつ必要事項を記載した確定申告を行わなければなりません。
まとめ - 消費税が還付される制度を「仕入税額控除」と呼ぶ
不動産を購入しつつ消費税が還付される状況をわかりやすく解説しました。
店舗や倉庫、事務所、工場など、事業用の建物を購入する際は消費税がかかります。
そして、消費税がかかる事業用の不動産を購入し、購入した不動産を用いて消費税が課される対象となる売り上げを得る、または売り上げを得る予定があり、不動産の購入時に支払った消費税より、顧客から受け取った消費税が少なければ、その差額が還付されます。
還付される方法は大きく2つに分かれ、ひとつは、売り上げに上乗せされた消費税を手元に残すことです。
もうひとつは、消費税の確定申告を行うことにより還付されます。
消費税が還付される不動産についてお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、消費税が還付される制度を仕入税額控除と呼び、記事の本文中でご紹介したとおり、同控除を受けるためには、消費税がかかる物件を購入するなどの消費税が課される対象となる仕入を行い、消費税が課される対象となる売り上げを得る、または得る予定がなければなりません。
これを理由に、賃貸アパートや賃貸マンションなど、入居者から支払われる家賃に消費税が上乗せされない居住用の不動産を購入した場合は、仕入税額控除が適用されないこととなります。
ところが、以前は「自販機スキーム」などと呼ばれる方法を用いて、不動産投資を行うために賃貸アパートや賃貸マンションを購入した方も消費税の還付を受けていました。
自販機スキームとは、賃貸アパートや賃貸マンションを購入し、そこに自動販売機を設置しつつ消費税が課される対象となる売り上げを得て、その差額の還付を受けるという手法です。
たとえば、500万円の消費税が上乗せされた賃貸アパートを購入し、敷地内に自販機を設置しつつ10円の消費税を受け取り、その差額である499万9,900円の還付を受けます。
また、投資用の不動産と金を同時に購入し、金の売買を繰り返しつつ消費税の還付を受ける「金地金スキーム」などと呼ばれる手法も流行りました。
しかし、それらのスキームは、消費税法が改正されることにより現在は使用できないこととなっています。
ご紹介した内容が、消費税が還付される不動産の詳細をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2022年5月
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