土地を先に購入して不動産取得税が還付される流れ

土地を先に購入して不動産取得税の還付を受ける流れ

土地を先に購入して、一定の条件を満たしつつ住宅を新築すれば、家屋の不動産取得税が軽減されると共に、土地の不動産取得税が還付されます。

土地を先行取得して住宅を新築し、家屋の不動産取得税が軽減され、土地の不動産取得税の還付を受ける流れをご紹介しましょう。

目次

1. 土地を先に購入し、不動産取得税の還付を受ける流れ

はじめに、土地を購入して住宅を新築すると、土地と家屋を取得することとなり、それぞれに不動産取得税が課されることを理解してください。

土地を先に購入して住宅を新築すると、土地と家屋を取得したこととなり、それぞれに不動産取得税が課される

そして、土地を先に購入し、一定の条件を満たしつつ住宅を新築すれば、家屋の不動産取得税が軽減され、土地の不動産取得税が還付されます。

その主な流れは、以下のとおりです。

土地を先行取得して不動産取得税が軽減や還付される流れ

  1. 土地を先に購入して、その土地の不動産取得税をいったん納める
  2. 土地を購入した日から3年以内(または2年以内)に、その土地に「特例適用住宅」を新築する
  3. 特例適用住宅が完成すれば、特例適用住宅を新築したことを都道府県の税事務所に申告をする
  4. 申告が受理されれば、家屋には「不動産取得税の課税標準の特例」が適用され、これから納めることとなる家屋の不動産取得税が軽減されることが決定する
  5. 申告が受理されれば、土地には「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用され、いったん納めた土地の不動産取得税が還付されることが決定する
  6. 軽減された家屋の不動産取得税を納めれば、土地の不動産取得税が還付される

上記には「特例適用住宅」など聞き慣れない言葉が含まれますが、特に難しくはありません。

つづいて、土地を先に購入して新築をすることにより、不動産取得税が軽減や還付される流れの詳細をご紹介しましょう。

なお、ご紹介するのは、私がこの記事を作成する令和6年2月の時点における一般的な流れです。

不動産取得税は定期的に軽減や還付される条件が見直される上に、地方税のため都道府県によって多少ルールが異なります。

よって、これから土地を購入して新築しようとする方がいらっしゃいましたら、必ず事前に税事務所に電話で問い合わせ、その時点における最新の規定、不動産取得税が軽減や還付される条件などを確認してください。

土地を先に購入して、その土地の不動産取得税をいったん納める

まずは、土地を先に購入し、その土地の不動産取得税をいったん納めます。

この不動産取得税は後に還付されますが、「床面積が50㎡以上240㎡以下」の住宅である家屋を新築できる土地を購入してください。

ちなみに、土地の不動産取得税は、以下のように計算します。

土地の不動産取得税の計算方法
課税標準額×不動産取得税の税率=不動産取得税

式に含まれる課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。

土地の不動産取得税の計算式に含まれる課税標準額は、令和6年3月31日までに宅地(宅地とは建物を建てるための土地、または、既存の建物を維持するために必要な土地を指します)を取得したのであれば、「その土地の固定資産税評価額の2分の1」です。 

「その土地の固定資産税評価額」とは、市町村によって評価されたその土地の「適正な時価」であり、都市部に位置する宅地であれば、売買価格の70%程度になるのが通例となっています。

また、式に含まれる不動産取得税の税率は、令和6年3月31日までに宅地を取得したのであれば3%、令和6年4月1日以降は4%です。

総じて、土地の不動産取得税は、以下のように計算します。

土地の不動産取得税の計算方法(詳細版)
課税標準額(令和6年3月31日までに宅地を取得すれば固定資産税評価額の2分の1、令和6年4月1日以降は固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までに宅地を取得すれば3%、令和6年4月1日以降は4%)=不動産取得税

たとえば、住宅を新築するために、令和6年3月31日までに1,500万円の土地を先に購入したのであれば、以下のように計算して不動産取得税は15万7,500円程度です。

不動産取得税の計算例
課税標準額(売買価格である1,500万円の70%の2分の1である525万円)×3%=15万7,500円

なお、土地を先に購入した後は、その土地を30日以内などに登記をするのであれば、税事務所への申告は不要です。

この状況における登記とは、その土地の所有権を取得したことを、法務局に設置されている「登記簿」という帳簿に記す行為を指します。

不動産業者を仲介させつつ土地を購入した場合は、その直後に司法書士に代行させつつ登記を行うのが通例です。

したがって、不動産業者を仲介させつつ土地を先に購入するのであれば、税事務所への申告は不要といえるでしょう。

ただし、東京都など一部の都道府県では、その土地に不動産取得税が軽減や還付される条件を満たす住宅を新築するのであれば、申告をするのが望ましい場合があるため注意してください。

申告をするのが望ましい場合は、その土地に不動産取得税が軽減や還付される条件を満たす住宅を新築することを証明できる書類を添付した申告書を税事務所に提出します。

申告書は、都道府県のホームページなどからダウンロードでき、建築確認済証や工事請負契約書のコピーなどが添付すべき必要書類となります。

詳細は「東京都主税局|土地を取得して、3年以内に新築をする予定の場合」などにて確認することが可能です。

▲ 目次に戻る

先行して購入した土地に特例適用住宅を新築する

土地を先に購入すれば、土地を取得した日から3年以内に、その土地に「特例適用住宅」を新築します。

特例適用住宅とは、「不動産取得税の課税標準の特例」という軽減措置が適用される家屋を指し、新築の一戸建てであれば、床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅である家屋です。

土地を先に購入して不動産取得税の還付を受けるためには、特例適用住宅を新築する必要がある

なお、特例適用住宅は、土地を取得してから3年以内に新築をする必要があるとご紹介しました。

この3年という期限は、令和6年4月1日以降に土地を取得した場合は、2年となるため注意してください。

余談ですが、私が運営するもう一つのサイト「固定資産税をパパッと解説」では、新築の固定資産税が軽減や減額される条件などを解説するコンテンツを公開中です。

土地を先に購入し、これから住宅を新築する方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

関連コンテンツ
固定資産税は還付される?新築の固定資産税の還付条件を解説

▲ 目次に戻る

特例適用住宅が完成すれば、税事務所に申告をする

土地を先に購入し、その土地に特例適用住宅を新築すれば、特例適用住宅を取得したことを速やかに(可能であれば30日以内などに)税事務所に申告をします。

申告は、必要書類を添付した申告書を提出することによって完了します。

申告書は都道府県のホームページからダウンロードでき、添付すべき必要書類は都道府県によって異なるものの、主に以下のとおりです。

申告書に添付すべき主な必要書類

書類名 どこで入手する?
家屋の登記事項証明書 特例適用住宅の完成後に登記をすれば、法務局で発行を請求できる
土地の登記事項証明書 土地を購入後に登記をすれば、法務局で発行を請求できる
長期優良住宅を新築した場合は、長期優良住宅の認定通知書 市町村役場などの所管行政庁
土地を先に購入して、いったん納めた土地の不動産取得税の納税通知書や領収書 土地を取得後に都道府県役場から届く
土地の不動産取得税の還付を受ける口座番号が記された通帳のコピーなど 自分で用意する

そして、申告書を提出して受理されれば、まずは家屋に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されます。

同軽減措置が適用されれば、家屋を取得したことにより課される不動産取得税が軽減され、納めるべき家屋の不動産取得税が減額されます。

そもそも住宅である家屋の不動産取得税は、以下のように計算します。

住宅である家屋の不動産取得税の計算方法
課税標準額×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までは3%、令和6年4月1日以降は4%)=不動産取得税

式には、土地の不動産取得税の計算式と同じく「課税標準額」が含まれます。

家屋の不動産取得税の計算式に含まれる課税標準額は、その家屋の固定資産税評価額です。

家屋の固定資産税評価額とは、市町村によって評価されたその家屋の適正な時価であり、新築の家屋であれば、建築費の60%程度になるのが通例となっています。

たとえば、建築費が2,500万円の新築の家屋であれば以下のように計算し、固定資産税評価額は1,500万円程度です。

新築の家屋の固定資産税評価額の計算例
2,500万円(建築費)×60%(建築費に占める固定資産税評価額の割合)=1,500万円(固定資産税評価額)

固定資産税評価額が1,500万円であれば課税標準額は1,500万円となり、税率が3%であれば以下のように計算し、家屋の不動産取得税は45万円です。

家屋の不動産取得税の計算例
課税標準額(固定資産税評価額である1,500万円)×3%=45万円(不動産取得税)

一方、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば、「固定資産税評価額から1,200万円(長期優良住宅を新築した場合は1,300万円)」が差し引かれた額が課税標準額となります。

具体的には、以下のように不動産取得税を計算します。

「不動産取得税の課税標準の特例」適用後の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額から1,200万円、または1,300万円が差し引かれた額)×不動産取得税の税率(3%、もしくは4%)=不動産取得税

課税標準額が「固定資産税評価額」から、「固定資産税評価額から1,200万円が差し引かれた額」となれば、課税標準額が減ると共に、課税標準額に税率を掛け算して計算する不動産取得税が軽減されます。

計算例を挙げると、先に不動産取得税が45万円と計算した、固定資産税評価額が1,500万円の家屋に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば以下のように計算し、不動産取得税は9万円まで軽減されます。

「不動産取得税の課税標準の特例」適用後の計算例
課税標準額(固定資産税評価額である1,500万円から1,200万円が差し引かれた300万円)×3%=9万円

なお、復唱になりますが、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば、固定資産税評価額から1,200万円や1,300万円が差し引かれた額が課税標準額となります。

つまり、固定資産税評価額が1,200万円や1,300万円以下の家屋を新築すれば課税標準額が0円となり、家屋の不動産取得税はかからないというわけです。

固定資産税評価額が1,200万円や1,300万円の新築の家屋とは、おおむね建築費が2,000万円以下の家屋を指します。

建築費が2,000万円程度以下の家屋を新築すれば、不動産取得税はかからない

ちなみに、おおむね建築費が2,000万円以下の家屋は「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されることにより不動産取得税がかかりませんが、この建築費とは、物件購入価格を指すわけではないため留意してください。

この状況における建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる資材費、労務費、設計費用、建築会社が得る利益の合計であり、再建築費や再建築価格と呼ばれる額を指します。

これに対して物件購入価格は、建築費に、建築に携わっていない不動産業者などが得る利益が上乗せされた額となっています。

ようするに、物件購入価格が2,000万円を超える家屋を新築したとしても、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されることにより、不動産取得税がかからない可能性があるというわけです。

土地を先に購入して不動産取得税の軽減や還付を希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

▲ 目次に戻る

家屋の不動産取得税を納め、土地の不動産取得税の還付を受ける

申告をして家屋に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば、土地には「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」という軽減措置が適用されます。

土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されれば、土地を購入後に納めた、土地の不動産取得税が還付されることが決定します。

土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されれば、土地の不動産取得税が還付されることが決定する

そして、「不動産取得税の課税標準の特例」適用後の税額が記された家屋の不動産取得税の納税通知書が都道府県役場から届きます。

それを納めれば、土地を購入後に納めた土地の不動産取得税が口座振り込みなどで還付されます。

申告から土地の不動産取得税が還付されるまでの流れ

  1. 税事務所に申告をする
  2. 申告が受理されれば家屋には「不動産取得税の課税標準の特例」が適用され、家屋の不動産取得税が軽減されることが決定する
  3. 申告が受理されれば土地には「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用され、土地を購入後に納めた土地の不動産取得税が還付されることが決定する
  4. 都道府県役場から「不動産取得税の課税標準の特例」適用後の家屋の不動産取得税の納税通知書が届く
  5. 家屋の不動産取得税を納めれば、土地を購入後に納めた、土地の不動産取得税が口座振り込みなどで還付される

「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されることにより還付される不動産取得税の額は、土地を先に購入して納めた不動産取得税の額を上限とする、以下の2つのうちの多い方の額です。

  • 45,000円
  • 土地の1㎡あたりの固定資産税評価額の2分の1(令和6年4月1日以降に土地を取得した場合は「土地の1㎡あたりの固定資産税評価額」)×200㎡を上限とする、新築した特例適用住宅の床面積の2倍×3%(令和6年4月1日以降に土地を取得した場合は4%)

2番目が難解ですが、令和6年3月31日までに土地を取得し、その土地が99㎡(約30坪)、土地全体の固定資産税評価額が1,050万円、新築した特例適用住宅の床面積が100㎡であれば以下のように計算し、答えは31万8,180円となります。

計算例
  • 1,050万円÷99㎡÷2=5万3,030円(土地の1㎡あたりの固定資産税評価額の2分の1)
  • 100㎡×2=200㎡(200㎡を上限とする、新築した特例適用住宅の床面積の2倍)
  • 5万3,030円×200㎡×3%=31万8,180円(還付される額)

たとえば、土地を先に購入して納めた不動産取得税が15万7,500円、2番目の答えが31万8,180円であれば、全額が還付されます。

場合によっては、土地を先に購入して納めた不動産取得税の全額が還付される

ちなみに、土地の固定資産税評価額は、土地を先に購入した直後に納めた、土地の不動産取得税の納税通知書に添付されている課税明細書に記されています。

課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されている額が、土地の固定資産税評価額です。

また、土地の不動産取得税が還付される時期は都道府県によって異なりますが、早ければ家屋の不動産取得税を納めた日から1~2ヶ月後、遅ければ3~4ヶ月後などとなります。

なお、特例適用住宅を取得したことを税事務所に申告する際は、その申告で「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」の両方が適用されるか必ず確認してください。

多くの都道府県は、ひとつの申告で両方の軽減措置が適用されますが、都道府県によっては、個別の申告を求められる場合があります。

申告をする際の注意点
特例適用住宅を取得したことを税事務所に申告する際は、その申告で「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」の両方が適用されるか確認する

▲ 目次に戻る

2. すでに納めた新築の不動産取得税の還付を受ける方法

ここからは、土地を先に購入し、軽減措置の適用条件を満たす住宅を新築したものの、適用を受けずに土地と家屋の不動産取得税を納めてしまった方へ向けて、還付を受ける方法をご紹介しましょう。

土地を購入して住宅を新築すると、土地と家屋を取得したこととなり、それぞれに不動産取得税が課されます。

そして、すでに土地と家屋の不動産取得税を納めた場合は、土地を取得した日の翌日から5年が経過していなければ、土地の不動産取得税が還付されます。

また、家屋を取得した日の翌日から5年が経過していなければ、家屋の不動産取得税も還付されることとなります。

すでに納めた土地の不動産取得税は、軽減措置が適用されることにより還付される

それでは、すでに納めた土地と、その土地に建てた新築の家屋の不動産取得税の還付を受ける方法をご紹介しましょう。

その都道府県で軽減措置の申告期限があるか確認する

土地を先に購入して住宅を新築し、納めてしまった不動産取得税の還付を受けるためには、土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」という軽減措置が適用される必要があります。

同じく、家屋には「不動産取得税の課税標準の特例」という軽減措置が適用されなければなりません。

それらの2つの軽減措置は、土地を先に購入し、後から住宅を新築した場合は、以下の条件を満たすことにより適用されます。

土地を先に購入して住宅を新築し、2つの軽減措置が適用される条件
  • 土地を取得した日から3年以内(令和6年4月1日以降に土地を取得した場合は2年以内)に、その土地に床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅である家屋を新築した
  • 新築を取得後に、軽減措置が適用される条件を満たす家屋を新築したことを税事務所に申告した

上記には「税事務所に申告した」という条件が含まれますが、都道府県によって申告の期限が定められている場合と、定められていない場合があります。

たとえば、東京都や愛知県などでは、新築を取得した日から60日以内が期限と条例によって定められています。

一方、大阪府や神奈川県、北海道、福岡県、その他の多くの都道府県では、期限はありません。

申告方法は、期限の有無によって異なります。

したがって、申告をする際は、事前にその都道府県で期限が定められているか確認しなければなりません。

確認方法は、以下のとおりです。

申告期限の有無を確認する方法
  • 税事務所に電話で問い合わせる(最も簡単に正確に確認できる)
  • 都道府県役場のホームページで調べる(期限に関する記述がなければ、期限が定められていない可能性が大きい)
  • 都道府県のホームページなどで、税に関する条例を読む(面倒だが正確に確認できる)

期限の有無を確認できれば、次の流れに進みます。

▲ 目次に戻る

都道府県の税事務所に申告をする

申告期限の有無が確認できれば、その有無にかかわらず、税事務所に「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」の適用を希望することの申告を行います。

ただし、期限が定められている都道府県において、期限後の申告となる場合は、多くの場合はやむを得ない理由によって遅れたことを伝えつつ申告をしなければなりません。

そのやむを得ない理由が正当であると知事が認める場合に限り、申告が受理されるためです。

一方、期限が定められていない都道府県においては、なにも気にせず申告をします。

軽減措置適用のための申告のポイント
  • 申告の期限が定められている都道府県において期限後に申告をする場合は、多くの場合は、やむを得ない理由により遅れたことを伝えつつ申告をしなければならない。その理由が妥当であると知事が認めれば、申告が受理される。
  • 申告の期限がない都道府県においては、なにも気にせず申告をする。

申告は、必要書類を添付した申告書を税事務所に提出することによって完了します。

申告書は、都道府県のホームページなどからダウンロードでき、東京都であれば「東京主税局|不動産取得税 申請様式」が申告書の配布ページです。

リンク先には複数の申告書が並びますが、「不動産取得税申告書(取得に係る申告/減額・課税標準の特例適用申告)」が提出すべき申告書です。

また、愛知県であれば「愛知県|不動産取得税申告書(兼不動産取得税減額等申請書)」にて、神奈川県であれば「神奈川県|不動産取得税減額(還付)申告(申請)書」にてダウンロードすることが可能です。

申告書に添付すべき必要書類は都道府県によって異なりますが、主に以下のとおりです。

申告書に添付すべき主な必要書類

書類名 どこで入手する?
家屋の登記事項証明書 法務局で発行を請求する
土地の登記事項証明書
家屋の工事請負契約書や建築確認済書のコピー 家屋を新築時に建築業者から手渡される
すでに納めた土地と家屋の不動産取得税の納税通知書や領収書 土地、または家屋を取得後に都道府県役場から届く
不動産取得税の還付を希望する口座番号が記された書面など 自分で用意する
長期優良住宅を新築した場合は、長期優良住宅の認定通知書のコピー 市町村役場などの所管行政庁から発行された認定通知書をコピーする

必要書類は多岐にわたりますが、要は「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」と、「不動産取得税の課税標準の特例」の適用条件を満たす土地や家屋を取得したことが証明できる書面を揃えれば良いのです。

土地を先に購入して、後から「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」の適用を受けるためには、土地を取得した日から3年以内や2年以内に家屋を新築する必要があります。

土地を取得した日は「土地の登記事項証明書」に記され、同書類を提出することによって証明することが可能です。

また、「不動産取得税の課税標準の特例」の適用を受けるためには、床面積が50㎡以上240㎡以下の家屋を新築する必要があります。

新築した家屋の床面積は「家屋の登記事項証明書」に記され、同書類を提出することによって証明できます。

▲ 目次に戻る

納め過ぎた土地や家屋の不動産取得税が還付される

申告が完了すれば、早ければ1ヶ月から2ヶ月程度で、遅ければ3~4ヶ月程度などで、納め過ぎた不動産取得税が指定した口座に振り込まれるなどして還付されます。

なお、「土地を取得した日の翌日や、家屋を取得した日の翌日から5年が経過していなければ、不動産取得税は還付される」と先述しました。

その根拠は、地方税法の第十七条の五の第十七条の五にあります。

地方税法とは、不動産取得税や固定資産税などの地方税に関することを定めた法律であり、同法律のその部分をわかりやすく要約すると以下のとおりです。

地方税法 第十七条の五
不動産取得税は、課すことが決定した日の翌日から5年を経過する日まで税額を更正できる

都道府県は、不動産の取得者に不動産取得税を課しますが、それは地方税法の規定に則り課税しています。

▲ 目次に戻る

3. 不動産取得税の還付を受けるための手続き

ここからは、土地を先に購入して住宅を新築することにより、家屋の不動産取得税が軽減され、土地の不動産取得税が還付される手続きの詳細をご紹介しましょう。

これまでにご紹介した内容と一部重複しますが、ぜひご参考になさってください。

不動産取得税の還付を受けるための手続き方法

不動産取得税の軽減や還付の手続きは、税事務所に必要書類を添付した申告書を提出することによって完了します。

申告書は、税事務所の窓口にて入手できますが、多くの場合は、都道府県のホームページからダウンロードすることが可能です。

ダウンロードページには、「不動産取得税申告書、および減額申告書」「不動産取得税非課税申告書」「不動産取得税減免申請書」など、いくつもの申告書が並んでいることがあります。

いくつもの申告書が並んでいる場合は、「減額」や「軽減」などの文言が含まれた申告書をお選びください。

申告書に記載すべき必要事項は、都道府県によって異なりますが、主に以下のとおりです。

申告書に記載すべき主な必要事項
  • 土地や家屋を取得した者の住所、氏名、電話番号
  • 土地の所在地、地目、地積
  • 土地を取得した日、取得原因
  • 家屋の所在地、用途、構造
  • 家屋を取得した日、取得原因
  • 既に納めた土地の不動産取得税の額
  • 還付金の振り込みを希望する口座の番号

申告書に添付すべき必要書類は、同じく都道府県によって異なりますが、主に以下のとおりです。

申告書に添付すべき主な必要書類
  • 土地の登記事項証明書
  • 家屋の登記事項証明書
  • 土地を先に購入して、後から長期優良住宅を新築した場合は、「長期優良住宅の認定通知書」のコピー
  • 建築確認済証や工事請負契約書のコピー

上記には、「土地の登記事項証明書」と「家屋の登記事項証明書」という必要書類が含まれます。

登記事項証明書とは、登記簿を写した書面であり、法務局などで発行を請求することが可能です。

以下は、法務省が公開する土地と家屋の登記事項証明書の見本です。

土地の登記事項証明書

不動産取得税の還付を受けるために必要となる土地の登記事項証明書の見本

出典:法務省

家屋の登記事項証明書

不動産取得税の還付を受けるために必要となる家屋の登記事項証明書の見本

出典:法務省

ひょっとすると、登記事項証明書に見覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

それは、土地や家屋を取得後に登記を司法書士に依頼すると、登記完了後に登記事項証明書が手渡される(または郵送で届く)ためです。

もし、その登記事項証明書が手元にあるのであれば、それを提出しても構いません。

必要事項を記載して必要書類を添付した申告書を税事務所に提出すれば、不動産取得税が軽減や還付される手続きの完了です。

なお、家屋の登記事項証明書は、家屋が完成し、登記が完了した後のみ入手できるため注意してください。

家屋の登記事項証明書とは、家屋の登記簿を写した書面ですから、家屋の登記が完了していなければ発行されません。

▲ 目次に戻る

不動産取得税の還付を受ける手続きのタイミング

土地を先に購入して住宅を新築する、または既に新築をしたのであれば、その新築の登記が完了した直後に手続きを行うのが理想です。

そうすれば、その後に課されることとなる家屋の不動産取得税が軽減され、すでに土地の不動産取得税を納めたのであれば還付されます。

そのタイミングを逃し、すでに土地と家屋の両方の不動産取得税を納めたのであれば、土地を取得した日の翌日から5年が経過していなければ、追って手続きをすれば土地の不動産取得税が還付されます。

また、家屋を取得した日の翌日から5年が経過していなければ、家屋の不動産取得税も還付されることとなります。

ただし、東京都や愛知県など一部の都道府県では、土地や家屋を取得した日から60日より後に手続きを行う場合は、やむを得ない理由によって遅れたことを税事務所に伝える必要があるため注意してください。

一部の都道府県は条例によって、土地や家屋を取得した日から60日以内に手続きが行われた場合に限り、不動産取得税を軽減や減額すると規定しています。

しかし、期限を設けている場合であっても、多くの都道府県では、やむを得ない理由により遅れたと知事が認めるのであれば、期限後の申告を受け付けるとも条例で規定しています。

したがって、東京都や愛知県などで、土地や家屋を取得した日から60日より後に手続きを行う場合は、やむを得ない理由によって遅れたことを伝えつつ申告をしてください。

その都道府県で申告の期限があるかわからない場合は、なにはともあれ、やむを得ない理由により遅れたことを伝えつつ手続きをするのが良いでしょう。

▲ 目次に戻る

4. そもそも不動産取得税とは?なぜ払う?

ここからは、そもそも不動産取得税とはどのような税金なのか、なぜ払うのか、わかりやすく解説しましょう。

不動産取得税とは、土地や家屋を取得することにより課される地方税であり、取得した土地や家屋が所在する都道府県が徴収する地方税です。

不動産取得税は、土地や家屋を取得した際に一度だけ課されます。

ただし、土地や家屋を相続した場合は、一部例外を除き不動産取得税は課されません。

不動産取得税と同様に、不動産に関する税金に固定資産税があります。

固定資産税とは、1月1日の時点で土地や家屋などを所有することにより課される税金であり、所有する土地や家屋が所在する市町村が徴収する地方税となっています。

固定資産税は1月1日の時点で土地や家屋などを所有することによって課されるため、不動産を所有する限り、毎年課税されることとなります。

不動産取得税とは、不動産を取得することにより課される地方税

不動産取得税は、不動産を取得した者の担税力に期待して課されるといわれます。

担税力は「たんぜいりょく」と読み、税を払う能力を指します。

つまり、不動産取得税は、「不動産を購入する余力があるのだから、不動産取得税も払えるだろう」という、なんとも安易な理由によって課されるというわけです。

なお、不動産取得税と固定資産税は、どちらも使い道が決まっていない普通税であり、その税収は、公共施設を維持新設するためや福祉サービスを充実するためなど、幅広く使用されます。

したがって、不動産取得税や固定資産税を納めることはある種の無念ですが、私たちの生活を支えるために払うと考えれば、多少は納め甲斐があるかもしれません。

不動産取得税の計算方法

不動産取得税は、以下の式で計算します。

不動産取得税の計算方法
課税標準額×不動産取得税の税率=不動産取得税

式に含まれる課税標準額は、土地の不動産取得税を計算する際は、「その土地の固定資産税評価額」です。

家屋の不動産取得税を計算する際の課税標準額は、「その家屋の固定資産税評価額」となります。

土地や家屋の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地や家屋の「適正な時価」を指します。

土地や家屋には売買価格がありますが、売買価格は売り主や買い主の希望によって決定し、本来の価値より高く、または低く設定されることがあります。

そのように売り主や買い主の希望によって設定される売買価格を、 税率を掛け算する基となる課税標準額としては、税の公平性が保たれません。

よって、不動産取得税を計算する際の課税標準額は、市町村によって評価された、その土地や家屋の適正な時価である固定資産税評価額となります。

市町村は、その市町村に所在する土地や家屋の固定資産税評価額を、総務大臣が定めた方法を用いて平等に評価します。

したがって、固定資産税評価額は、税率を掛け算する基となる課税標準額にふさわしいといえるでしょう。

ただし、課税標準額は、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となる場合もあります。

それは、主に軽減措置が適用される場面です。

たとえば、本記事では、土地を先に購入して、一定の条件を満たしつつ住宅を新築すれば、その家屋には「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されるとご紹介していますが、それなどが最たる例です。

同軽減措置が適用されれば、固定資産税評価額から1,200万円や1,300万円が差し引かれた額が課税標準額となります。

課税標準額が減れば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する不動産取得税が軽減されます。

不動産取得税の計算式に含まれる税率は4%ですが、令和6年3月31日までに土地や住宅である家屋を取得した場合は3%です。

しかし、それは私がこの記事を作成する令和6年2月時点の規定であり、期限の延長が予想されます。

総じて、土地や家屋の不動産取得税は、以下のように計算します。

不動産取得税の計算方法(詳細版)
課税標準額(原則として、取得した土地や家屋の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(4%、または3%)=不動産取得税

▲ 目次に戻る

まとめ

土地を先に購入して住宅を新築し、家屋の不動産取得税が軽減され、土地の不動産取得税が還付される流れをご紹介しました。

先行して土地を購入し、後から住宅を新築する場合は、多くの場合は、土地を購入した直後に、土地の不動産取得税をいったん納めることとなります。

そして、土地を購入後3年以内や2年以内に「特例適用住宅」を新築して速やかに税事務所に申告をすれば、その家屋には「不動産取得税の課税標準の特例」が適用され、これから納めることとなる家屋の不動産取得税が軽減されます。

特例適用住宅とは、床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅である新築の家屋です。

そして、家屋に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば、一部例外を除き、土地には「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されます。

「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されれば、土地を購入後にいったん納めた土地の不動産取得税が還付されることとなります。

申告が遅れるなどし、すでに土地と家屋の不動産取得税を納めた場合は、申告をすることによって「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用され、土地と家屋の不動産取得税が還付されます。

ただし、土地、または家屋を取得した日の翌日から5年が経過しているのであれば、地方税法の第十七条の五の規定によって申告は受け付けられません。

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2024年2月

▲ 目次に戻る

こちらの記事もオススメです