不動産取得税の金額の目安はいくら?

不動産取得税の金額の目安は、3,500万円の建売であれば37万5,900円程度、3,000万円の新築マンションであれば32万2,500円程度、2,000万円の土地であれば21万円程度です。
しかし、上手に軽減措置を適用させれば、不動産取得税はかからないこともあります。
建売と新築マンション、土地のみの不動産取得税の金額の目安を解説し、税額を試算する方法をご紹介しましょう。
目次
- 1. 不動産取得税とは?
- 2. 建売の不動産取得税の金額の目安
- 3. 新築マンションの不動産取得税の金額の目安
- 4. 土地のみの不動産取得税の金額の目安
- 5. 不動産取得税はいつ払う?
- 6. 不動産取得税の支払い方法
- 7. 不動産取得税の申告の必要性
- 8. 不動産取得税を払わなくてよい状況
1. 不動産取得税とは?
冒頭でご紹介したとおり、不動産取得税の金額の目安は、3,500万円の建売であれば37万5,900円程度、3,000万円の新築マンションであれば32万2,500円程度、2,000万円の土地であれば21万円程度です。
不動産取得税の金額の目安建売 | 消費税別3,500万円、うち建物の価格が2,800万円、土地の価格が700万円であれば37万5,900円程度 |
新築マンション | 消費税別3,000万円、うち一戸部分の価格が2,500万円、土地の持ち分の価格が500万円であれば32万2,500円程度 |
土地のみ | 都市部に位置する3,000万円の宅地であれば31万5,000円程度、2,000万円の宅地であれば21万円程度、1,000万円の宅地であれば10万5,000円程度 |
そして、不動産取得税の金額の目安の詳細と試算方法を解説する前に、不動産取得税のあらましと計算方法、軽減措置を簡単にご紹介しましょう。
それらを知れば、上手に軽減措置を適用させつつ不動産取得税を節税できる可能性があるため、ぜひお読みください。
不動産取得税とは、不動産を取得することにより課される税金であり、取得した不動産が所在する都道府県に納める地方税です。
不動産取得税が課される対象となる不動産とは「建物」と「土地」であり、建物を取得した場合は建物を取得したことに対して、土地を取得した場合は土地を取得したことに対して不動産取得税が課されます。
多くの一戸建ては建物と土地が一対で、マンションは一戸部分と土地の持ち分が一対で販売されていますが、建物と土地が一対になった不動産を取得した場合は、それぞれに不動産取得税が課されます。

つづいて、不動産取得税の計算方法と税率をご紹介しましょう。
1-1. 不動産取得税の計算方法と税率
不動産取得税は、以下のように計算します。
不動産取得税の計算式
課税標準額×不動産取得税の税率=不動産取得税
式に含まれる「課税標準額」とは、なにかしらの税金が課される状況において、税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。
不動産取得税の計算式に含まれる課税標準額は、取得した建物や土地の固定資産税評価額です。
建物や土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された建物や土地の適正な時価であり、売買価格より低くなるのが通例となっています。
たとえば、売買価格が1,000万円の土地であれば固定資産税評価額は700万円程度、建築費が3,000万円の新築の建物であれば固定資産税評価額は1,800万円程度になるといった具合です。
式に含まれる税率は4%ですが、令和6年3月31日までに住宅である建物、または土地を取得すれば3%に軽減されます。
総じて、不動産取得税は以下のように計算します。
不動産取得税の計算方法(詳細版)
課税標準額(取得した建物や土地の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までに住宅である建物、または土地を取得すれば3%、それ以外は4%)=不動産取得税
つづいて、不動産取得税を節税できる軽減措置をご紹介しましょう。
1-2. 不動産取得税の軽減措置
不動産取得税には多くの軽減措置が設けられ、上手に適用させれば支払いを楽にできます。
主に適用される軽減措置は、以下の3つです。
宅地評価土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の特例
令和6年3月31日までに宅地(建物を建てるための土地、または既存の建物を維持するために必要な土地)を取得すれば、「宅地評価土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の特例」が適用されます。
同特例が適用されれば、土地の不動産取得税を計算する際の課税標準額が、「土地の固定資産税評価額」から「土地の固定資産税評価額の2分の1」に減額され、不動産取得税が大きく軽減されます。
特例適用前と適用後の不動産取得税の計算式を比較すると、以下のとおりです。
特例適用前
課税標準額(取得した土地の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率=土地の不動産取得税
特例適用後
課税標準額(取得した土地の固定資産税評価額の2分の1)×不動産取得税の税率=土地の不動産取得税
特例が適用されることにより課税標準額が「土地の固定資産税評価額の2分の1」に減額されれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する不動産取得税が大きく軽減されます。
なお、同特例は、申告をせずとも適用されます。
不動産取得税の課税標準の特例
一定の条件を満たす住宅である建物を取得すれば、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されます。
同特例が適用されれば、建物の不動産取得税を計算する際の課税標準額が、「建物の固定資産税評価額」から「建物の固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額」に減額されます。
課税標準額が減額されれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する建物の不動産取得税が軽減されます。
特例適用前と適用後の計算式を比較すると、以下のとおりです。
特例適用前
課税標準額(取得した建物の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率=建物の不動産取得税
特例適用後
課税標準額(取得した建物の固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額)×不動産取得税の税率=建物の不動産取得税
建物を取得しつつ「不動産取得税の課税標準の特例」が適用される条件は新築と中古住宅によって異なり、主に以下のとおりです。
- 一戸建てであれば、床面積が50㎡以上240㎡以下の建物を取得した
- マンションであれば、戸内の床面積が50㎡以上200㎡程度以下の一般的なファミリー向けマンションを取得した
- 建物を取得した日から30日以内などに、特例が適用される条件を満たすことを税事務所へ申告した
- 一戸建て、マンションを問わず、昭和57年1月1日以降に新築された、床面積が50㎡以上200㎡程度以下の建物を取得した
- 一戸建て、マンションを問わず、昭和57年1月1日より前に新築された建物を取得した場合は、耐震リフォームを施すなどして現行の耐震基準を満たす、床面積が50㎡以上200㎡程度以下の建物を取得した
- 建物を取得した日から30日以内などに、特例が適用される条件を満たすことを税事務所へ申告した
課税標準額から差し引かれる額も新築と中古住宅によって異なり、以下のとおりです。
住宅の種類 | 差し引かれる額 |
---|---|
新築 | 1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円) |
平成9年4月1日以降に新築された中古住宅 | 1,200万円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日に新築された中古住宅 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日に新築された中古住宅 | 450万円 |
昭和57年1月1日~昭和60年6月30日に新築された中古住宅 | 420万円 |
なお、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されることにより課税標準額が減りつつ0円となれば、建物の不動産取得税はかかりません。
たとえば、取得した建物の固定資産税評価額が1,200万円、差し引かれる額が1,200万円であれば課税標準額が0円となり、不動産取得税がかからないといった具合です。

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住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額
先にご紹介した、「不動産取得税の課税標準の特例」が適用される建物を「特例適用住宅」と呼びます。
そして、一定の条件を満たしつつ特例適用住宅が建つ土地を取得すれば、その土地には「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されます。
同軽減措置が適用されれば、その土地を取得したことに対して課される不動産取得税から、一定の額が差し引かれます。

「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用される主な条件は、以下のとおりです。
- 建売や新築マンションなど、建物と土地が一対になった新築を取得した場合は、新築された日から1年以内の物件を取得した
- 新築された日から1年を超える建売や新築マンションを取得した場合は、建物と土地を同時に取得した
- 土地を先行して取得しつつ住宅を新築した場合は、令和6年3月3日までに土地を取得し、土地を取得した日から3年以内に新築した
- 一戸建ての中古住宅や中古マンションを取得した場合は、建物と土地を同時に取得した
減額される不動産取得税の額は、以下の2つのうちの多い方の額です。
- 1. 45,000円
- 2. (取得した土地の1㎡あたりの固定資産税評価額÷2)×(200㎡を上限とする取得した特例適用住宅の床面積の2倍)×3%
2番目は、たとえば固定資産税評価額が700万円、敷地面積が99平方メートル(約30坪)、床面積が82.5平方メートル(約25坪)の特例適用住宅が建つ土地であれば以下のように計算し、その答えは17万4,997円です。
計算例
(700万円÷99㎡÷2=7万707円)×(66㎡×2=165)×3%=17万4,997円
課される不動産取得税より差し引かれる額が多ければ、土地の不動産取得税はかかりません。
なお、土地を取得し、後からその土地に特例適用住宅を新築した場合は、「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用される前に、土地を取得したことに対して、いったん不動産取得税が課されることがあります。
しかし、特例適用住宅が完成し、その土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されれば、いったん納付した不動産取得税から、先にご紹介した額の2つのうちの多い方の額が還付されます。
以上で不動産取得税のあらまし、計算方法と税率、軽減措置の解説の完了です。
前置きが長くなりましたが、引き続き建売、新築マンション、土地のみの不動産取得税の金額の目安をご紹介し、税額を試算する方法をご紹介しましょう。
2. 建売の不動産取得税の金額の目安
建売の不動産取得税の金額の目安は、消費税抜き3,500万円、そのうち建物の価格が2,800万円、土地の価格が700万円であれば、37万5,900円程度です。
しかし、軽減措置が適用されるのであれば、不動産取得税は大幅に軽減され、場合によってはかかりません。

つづいて、売り出し中の建売の不動産取得税がいくらになるか、金額の目安を試算する方法をご紹介しましょう。
試算方法を知れば、販売価格を問わず、様々な建売の不動産取得税をシミュレーションできます。
2-1. 建物と土地の価格を区分する
はじめに、売り出し中の建売の販売価格に占める、建物と土地の価格を区分します。
区分する方法は簡単であり、消費税を用います。
たとえば、消費税込みの販売価格が3,780万円、そのうち消費税が280万円であれば、消費税の10倍である2,800万円が建物の価格です。
そして、消費税抜きの販売価格である3,500万円から、建物の価格である2,800万円を差し引いた答えの700万円が、土地の価格となります。
- 280万円(消費税)×10=2,800万円(建物の価格)
- 3,500万円(消費税抜きの販売価格)-2,800万円(建物の価格)=700万円(土地の価格)
建売を含め、不動産は建物には10%の消費税が課されますが、土地には課されません。
よって、消費税の10倍が建物の価格であり、消費税抜きの販売価格から建物の価格を差し引いた額が、土地の価格となります。
2-2. 建物の固定資産税評価額を想定する
建売の販売価格に占める、建物と土地の価格の区分が完了すれば、区分した建物の価格から、建物の固定資産税評価額を想定します。
建物の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その建物の適正な時価です。
建物の不動産取得税は、以下のように「建物の固定資産税評価額」を課税標準額として計算します。
建物の不動産取得税の計算式
課税標準額(建物の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までに住宅である建物を取得すれば3%)=不動産取得税
よって、建売の建物の不動産取得税の金額の目安を試算するためには、建物の固定資産税評価額を想定しなくてはなりません。
建物の固定資産税評価額は様々な方法で想定できますが、ここでは、建物の価格から建築費を想定し、建築費の60%程度と想定することとします。
たとえば、建物の価格が2,800万円であれば以下のように計算し、固定資産税評価額は1,008万円です。
想定例
2,800万円(建物の価格)×60%×60%=1,008万円(建物の固定資産税評価額)
新築の建物の固定資産税評価額は、正確な根拠はないものの、建築費の60%程度といわれます。
また、新築の建物の建築費は、同じく正確な根拠はないものの、建物の価格の60%程度といわれます。
そのため、以下のように計算すれば、建売の建物の固定資産税評価額を想定することが可能です。
建物の固定資産税評価額を想定する式
建物の価格×60%(建物の価格に占める建築費の目安)×60%(建築費に占める固定資産税評価額の目安)=固定資産税評価額
「建物の価格」と「建物の建築費」は同一であると感じますが、ここでいう建築費は価格ではありません。
ここでいう建築費は、「その建物と同一の建物を同一の場所に新築するために必要となる材料費と労務費、建築会社が得る利益の合計」を指します。
建物の価格は、建築費に、建築に携わっていない不動産業者などが得る利益が上乗せされた額です。
そして、新築の建物の価格に占める建築費の割合は60%程度といわれ、新築の建物の建築費に占める固定資産税評価額の割合は60%程度といわれます。
従って「建物の価格×60%×60%」などと計算すれば、建物の固定資産税評価額を想定することが可能です。

なお、「建物の価格×60%×60%」と計算することにより、全ての建売の建物の固定資産税評価額を正確に計算できるわけではないため留意してください。
建物の価格に占める建築費の割合は物件によって大きく異なり、ご紹介したのは、あくまで想定方法です。
2-3. 建物の不動産取得税の金額の目安を計算する
建売の建物の固定資産税評価額が想定できれば、想定した固定資産税評価額を課税標準額として、建物の不動産取得税の金額の目安を計算します。
たとえば、想定した建物の固定資産税評価額が1,008万円であれば以下のように計算し、建物の不動産取得税の金額の目安は30万2,400円です。
計算例
課税標準額(想定した建物の固定資産税評価額である1,008万円)×不動産取得税の税率(3%)=30万2,400円(建物の不動産取得税の金額の目安)
以上で建売の建物の不動産取得税の金額の目安が計算できました。
ただし、不動産取得税には「不動産取得税の課税標準の特例」が設けられています。
建売の建物に同特例が適用されれば、課税標準額が「建物の固定資産税評価額」から「建物の固定資産税評価額から1,200万円(認定長期優良住宅を取得した場合は1,300万円)が差し引かれた額」に減額されます。
従って、同特例が適用されるのであれば、それを加味して建物の不動産取得税の金額の目安を計算してください。
たとえば、建物の固定資産税評価額が1,008万円の建売に同特例が適用されれば課税標準額が0円となり、建物の不動産取得税はかかりません。
特例適用後の不動産取得税の計算例
課税標準額(想定した建物の固定資産税評価額である1,008万円-1,200万円=0円)×不動産取得税の税率(3%)=0円(建物の不動産取得税)
「不動産取得税の課税標準の特例」の詳細は、この記事の「不動産取得税の課税標準の特例」にてご確認いただけます。
2-4. 建売が建つ土地の固定資産税評価額を想定する
建物の不動産取得税が計算できれば、建売が建つ土地の不動産取得税の金額の目安を計算するために、建売が建つ土地の固定資産税評価額を想定します。
土地の不動産取得税は、「宅地評価土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の特例」が適用されることにより、以下のように「土地の固定資産税評価額の2分の1」を課税標準額として計算します。
土地の不動産取得税の計算式
課税標準額(土地の固定資産税評価額の2分の1)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までに土地を取得すれば3%)=不動産取得税
従って、建売が建つ土地の不動産取得税の金額の目安を計算するためには、土地の固定資産税評価額を想定しなくてはなりません。
土地の固定資産税評価額は様々な方法で想定できますが、ここでは、土地の価格の70%と想定することとします。
たとえば、土地の価格が700万円であれば以下のように計算し、固定資産税評価額は490万円です。
想定例
700万円(土地の価格)×70%=490万円(土地の固定資産税評価額)
「地価公示法」という法律により、都市部、およびその周辺で土地を売買するものは、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価を指標として取り引きをするように努めなくてはならないと規定されています。
注釈
公示地価とは、毎年3月に国土交通省が公示する、日本全国各地に点在する約2万6,000ヵ所の「標準地」と呼ばれる地点の1平方メートルあたりの正常な価格です。
正常な価格とは通常取り引きされると考えられる価格であり、買い主の買い進みや売り主の売り急ぎなどを加味しない価格を指します。
そのため、建売が建つ土地の価格は、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価と同程度に設定されていると考えられます。
そして、土地の固定資産税評価額は、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価を指標として70%程度に設定されます。
つまり、土地の価格は公示地価と同程度であり、土地の固定資産税評価額は公示地価、または土地の価格の70%と考えられるというわけです。

よって、「土地の価格×70%」と計算すれば、建売が建つ土地の固定資産税評価額を想定できると考えることができます。
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2-5. 土地の不動産取得税の金額の目安を計算する
建売が建つ土地の固定資産税評価額が想定できれば、想定した固定資産税評価額の2分の1を課税標準額として、土地の不動産取得税の金額の目安を計算します。
たとえば、想定した土地の固定資産税評価額が490万円であれば以下のように計算し、土地の不動産取得税の金額の目安は7万3,500円です。
計算例
課税標準額(想定した土地の固定資産税評価額である490万円の2分の1の245万円)×不動産取得税の税率(3%)=7万3,500円(土地の不動産取得税の金額の目安)
ただし、不動産取得税には、この記事の「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」にてご紹介した軽減措置が設けられています。
同軽減措置が適用されるのであれば、本来の税額から一定の額が差し引かれた額が、土地の不動産取得税の金額の目安となります。
差し引かれる額は、以下の2つのうちの多い方の額です。
- 1. 45,000円
- 2. (取得した建売が建つ土地の1㎡あたりの固定資産税評価額÷2)×(200㎡を上限とする建売の床面積の2倍)×3%
2番目の額は、建売が建つ土地の固定資産税評価額が490万円、敷地面積が82.5平方メートル(約25坪)、建物の床面積が99平方メートル(約30坪)であれば以下のように計算し、17万6,394円です。
計算例
(490万円÷82.5㎡÷2=2万9,696円)×(99㎡×2=198)×3%=17万6,394円
本来の不動産取得税が7万3,500円であり、軽減措置が適用されることにより差し引かれる金額が17万6,394円であれば、土地の不動産取得税はかかりません。
以上で建売が建つ土地の不動産取得税の金額の目安が計算できました。
最後に、これまでに計算した建物と土地の不動産取得税を合計します。
その答えが、売り出し中の建売の不動産取得税の金額の目安です。
計算例を挙げると、建物の不動産取得税が30万2,400円、土地の不動産取得税が7万3,500円であれば以下のように計算し、その建売の不動産取得税の金額の目安は37万5,900円です。
計算例
30万2,400円(建物の不動産取得税)+7万3,500円(土地の不動産取得税)=37万5,900円(建売の不動産取得税の金額の目安)
しかし、建物に「不動産取得税の課税標準の特例」が、土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されるのであれば、不動産取得税は大きく軽減される、またはかからないこととなります。
3. 新築マンションの不動産取得税の金額の目安
新築マンションの不動産取得税の金額の目安は、販売価格が消費税別3,000万円、うち一戸部分の価格が2,500万円、土地の持ち分の価格が500万円であれば、32万2,500円程度です。
しかし、軽減措置が適用されれば、不動産取得税はかからないこともあります。

つづいて、新築マンションの不動産取得税の金額の目安を試算する方法をご紹介しましょう。
ご紹介する方法を用いて、売り出し中の新築マンションの不動産取得税をシミュレーションしてください。
ただし、ご紹介する方法はあくまで試算方法であり、不動産取得税を正確に計算する方法ではないため留意してください。
不動産取得税は物件によって大きく異なり、金額の目安を正確に計算することは難しく、試算方法をご紹介します。
3-1. 一戸部分と土地の持ち分の価格を区分する
まずは、新築マンションの販売価格に占める、一戸部分と土地の持ち分の価格を区分します。
新築マンションの販売価格に占める一戸部分の価格は、消費税の10倍です。
たとえば、消費税が250万円の新築マンションであれば「250万円×10=2,500万円」と計算し、一戸部分の価格は2,500万円になるといった具合です。
そして、消費税抜きの販売価格から、一戸部分の価格を差し引いた額が土地の持ち分の価格となります。
計算例を挙げると、消費税抜きの販売価格が3,000万円、一戸部分の価格が2,500万円であれば「3,000万円-2,500万円=500万円」と計算し、500万円が土地の持ち分の価格になるといった具合です。
- 250万円(消費税)×10=2,500万円(一戸部分の価格)
- 3,000万円(消費税別の販売価格)-2,500万円(一戸部分の価格)=500万円(土地の持ち分の価格)
マンションの一戸部分と土地の持ち分を含め、不動産は建物のみに10%の消費税が課され、土地には課されません。
よって、消費税を用いれば、その新築マンションの一戸部分と土地の持ち分の価格を区分できます。
3-2. 一戸部分の固定資産税評価額を想定する
新築マンションの販売価格に占める、一戸部分と土地の持ち分の価格の区分が完了すれば、一戸部分の固定資産税評価額を想定します。
一戸部分の不動産取得税は、以下のように「一戸部分の固定資産税評価額」を課税標準額として計算します。
一戸部分の不動産取得税の計算式
課税標準額(一戸部分の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までにマンションを取得すれば3%)=不動産取得税
よって、一戸部分の不動産取得税の金額の目安を計算するために、一戸部分の固定資産税評価額を想定しなければなりません。
しかし、一戸部分の固定資産税評価額は物件によって大きく異なり、全てのマンションの一戸部分の固定資産税評価額を正確に想定するのは困難です。
そのため、ここでは以下のように計算し、先に区分した一戸部分の価格の60%の60%を一戸部分の固定資産税評価額と想定することとします。
一戸部分の固定資産税評価額の想定式
一戸部分の価格×60%×60%=一戸部分の固定資産税評価額
たとえば、区分した一戸部分の価格が2,500万円であれば以下のように計算し、一戸部分の固定資産税評価額は900万円です。
計算例
2,500万円(一戸部分の価格)×60%×60%=900万円(一戸部分の固定資産税評価額)
正確な根拠はないものの、新築マンションの一戸部分を含め、新築の建物の固定資産税評価額は建築費の60%程度といわれ、新築の建物の建築費は価格の60%程度といわれます。

従って、ここでは「一戸部分の価格×60%×60%」と計算し、一戸部分の固定資産税評価額を想定することとします。
新築マンションの一戸部分の正確な固定資産税評価額は、物件の完成後間もなく行われる、市町村役場の調査によって決定します。
3-3. 一戸部分の不動産取得税の金額の目安を計算する
一戸部分の固定資産税評価額が想定できれば、一戸部分の固定資産税評価額から、一戸部分の不動産取得税の金額の目安を計算します。
たとえば、想定した一戸部分の固定資産税評価額が900万円であれば以下のように計算し、一戸部分の不動産取得税の金額の目安は27万円です。
計算例
課税標準額(想定した一戸部分の固定資産税評価額である900万円)×不動産取得税の税率(3%)=27万円(一戸部分の不動産取得税の金額の目安)
以上で、新築マンションの一戸部分の不動産取得税の金額の目安が計算できました。
しかし、不動産取得税には、「不動産取得税の課税標準の特例」が設けられています。
新築マンションに同特例が適用されれば、課税標準額が「一戸部分の固定資産税評価額から1,200万円(認定長期優良住宅を取得した場合は1,300万円)が差し引かれた額」に減額されます。
よって、同特例が適用されるのであれば、課税標準額を「一戸部分の固定資産税評価額から1,200万円、または1300万円が差し引かれた額」に変更しつつ不動産取得税の金額の目安を計算してください。
同特例が適用されることにより課税標準額が0円となる場合は、一戸部分の不動産取得税はかかりません。
3-4. 土地の持ち分の固定資産税評価額を想定する
一戸部分の不動産取得税の金額の目安が計算できれば、土地の持ち分の金額の目安を計算するために、土地の持ち分の固定資産税評価額を想定します。
マンションの土地の持ち分には「宅地評価土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の特例」が適用され、以下のように「土地の持ち分の固定資産税評価額の2分の1」を課税標準額として不動産取得税を計算します。
土地の持ち分の不動産取得税の計算式
課税標準額(土地の持ち分の固定資産税評価額の2分の1)×不動産取得税の税率(令和6年3月31日までにマンションを取得すれば3%)=不動産取得税
従って、土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安を計算するためには、土地の持ち分の固定資産税評価額を想定しなくてはなりません。
土地の持ち分の固定資産税評価額は様々な方法で想定できますが、一戸部分と同じく、販売価格から区分した「土地の持ち分の価格」から想定しましょう。
具体的には、以下のように「土地の持ち分の価格×70%」と計算しつつ想定します。
土地の持ち分の固定資産税評価額を想定する式
土地の持ち分の価格×70%=固定資産税評価額
たとえば、区分した土地の持ち分の価格が500万円であれば以下のように計算し、土地の持ち分の固定資産税評価額は350万円です。
計算例
500万円(土地の持ち分の価格)×70%=350万円(土地の持ち分の固定資産税評価額)
「地価公示法」という法律により、都市部、およびその周辺で土地を売買する者は、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価を指標として、取り引きをするように努めなければならないと規定されています。
また、新築マンションの土地の持ち分を含め、土地の固定資産税評価額は、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価の70%程度と評価されます。
これを理由に、土地の持ち分の価格は公示地価と同程度であり、土地の持ち分の固定資産税評価額は公示地価と同程度である土地の持ち分の価格の70%程度と考えることが可能です。

3-5. 土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安を計算する
土地の持ち分の固定資産税評価額が想定できれば、想定した固定資産税評価額から、土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安を計算します。
たとえば、想定した土地の持ち分の固定資産税評価額が350万円であれば以下のように計算し、土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安は5万2,500円です。
計算例
課税標準額(想定した土地の持ち分の固定資産税評価額である350万円÷2=175万円)×不動産取得税の税率(3%)=5万2,500円(土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安)
以上で土地の持ち分の不動産取得税の金額の目安が計算できました。
しかし、不動産取得税には、「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が設けられています。
同軽減措置が適用されれば、課されることとなる土地の持ち分の不動産取得税そのものから、一定の額が差し引かれます。
従って、同軽減措置が適用されるのであれば、それを加味しつつ土地の持ち分の不動産取得税を計算してください。
差し引かれる額は、以下の2つのうちの多い方の額です。
- 1. 45,000円
- 2. (取得した土地の持ち分の1㎡あたりの固定資産税評価額÷2)×(200㎡を上限とする一戸部分の床面積の2倍)×3%
2番目の額は、土地の持ち分の固定資産税評価額が350万円、土地の持ち分の面積が10平方メートル、一戸部分の床面積が70平方メートルであれば以下のように計算し、73万5,000円です。
計算例
(350万円÷10㎡÷2=17万5,000円)×(70㎡×2=140㎡)×3%=73万5,000円
本来の土地の持ち分の不動産取得税が5万2,500円であり、軽減措置が適用されることにより差し引かれる金額が73万5,000円であれば、土地の持ち分の不動産取得税はかかりません。
最後に、これまでに計算した一戸部分と土地の持ち分の不動産取得税を合計します。
その答えが、新築マンションの不動産取得税の金額の目安です。
計算例を挙げると、一戸部分の不動産取得税が27万円、土地の持ち分の不動産取得税が5万2,500円であれば以下のように計算し、その建売の不動産取得税の金額の目安は32万2,500円となります。
計算例
27万円(一戸部分の不動産取得税)+5万2,500円(土地の持ち分の不動産取得税)=32万2,500円(新築マンションの不動産取得税の金額の目安)
しかし、一戸部分と土地の持ち分に特例や軽減措置が適用されるのであれば、不動産取得税が大きく軽減される、またはかからないこととなります。
4. 土地のみの不動産取得税の金額の目安
土地のみの不動産取得税の金額の目安は、都市部に位置する3,000万円の宅地であれば31万5,000円程度、2,000万円の宅地であれば21万円程度、1,000万円の宅地であれば10万5,000円程度です。

つづいて、土地のみの不動産取得税の金額の目安を試算する方法をご紹介しましょう。
なお、ご紹介するのは、都市部、およびその周辺に位置する宅地(建物を建てるための土地、または既存の建物を維持するために必要となる土地)の不動産取得税の金額の目安を試算する方法のため留意してください。
山奥の傾斜地など、宅地ではない土地の不動産取得税の金額の目安は、ご紹介する方法では上手く試算できません。
4-1. 固定資産税評価額を想定する
令和6年3月31日までに宅地である土地を取得すると、以下のように「固定資産税評価額の2分の1」を課税標準額として不動産取得税を計算します。
土地のみの不動産取得税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額の2分の1)×不動産取得税の税率(3%)=土地のみの不動産取得税
従って、土地のみの不動産取得税の金額の目安を計算するためには、その土地の固定資産税評価額を想定しなくてはなりません。
土地のみの固定資産税評価額は様々な方法で想定できますが、ここでは以下のように「販売価格×70%」と計算しつつ想定します。
土地のみの固定資産税評価額の想定式
販売価格×70%=固定資産税評価額
たとえば、販売価格が3,000万円の土地であれば以下のように計算し、固定資産税評価額は2,100万円になるといった具合です。
計算例
3,000万円(販売価格)×70%=2,100万円(固定資産税評価額)
地価公示法の規定により、都市部、およびその周辺で土地を売買する者は、その土地と立地条件が類似する標準地の公示地価を指標として取り引きをするように努めなくてはならないと規定されています。
よって、都市部、およびその周辺の土地の販売価格は、公示地価と同程度と考えられます。
また、土地の固定資産税評価額は、立地条件が類似する標準地の公示地価を指標として、70%程度と評価されます。
これを理由に、都市部、およびその周辺の土地の固定資産税評価額は販売価格の70%程度と考えられ、「販売価格×70%」と計算すれば、大まかな固定資産税評価額を想定できます。

4-2. 不動産取得税の金額の目安を計算する
固定資産税評価額が想定できれば、その2分の1を課税標準額として、不動産取得税の金額の目安を計算します。
たとえば、想定した固定資産税評価額が2,100万円であれば以下のように計算し、不動産取得税の金額の目安は31万5,000円になるといった具合です。
計算例
課税標準額(2,100万円÷2=1,050万円)×不動産取得税の税率(3%)=31万5,000円
なお、土地を先行して取得し、後から住宅を新築するのであれば、いったんは土地のみの不動産取得税を納める必要があるものの、後に還付される可能性があります。
土地を先行して取得し、いったん納めた不動産取得税が還付される主な流れは、以下のとおりです。
土地の不動産取得税が還付される主な流れ
- 1. 令和6年3月31日までに土地を取得し、いったんその土地の不動産取得税を納める
- 2. 土地を取得した日から3年以内に、その土地に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用される住宅を新築する
- 3. 新築した住宅に「不動産取得税の課税標準の特例」が適用されれば、先行して取得した土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用される
- 4. 先行して取得した土地に「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」が適用されれば、いったん納めた土地の不動産取得税が還付される
上記に含まれる「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」とは、不動産取得税の軽減措置です。
それぞれの軽減措置の詳細は、この記事の「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」にてご確認いただけます。
5. 不動産取得税はいつ払う?
不動産取得税は高くなりがちであり、金額の目安と共にいつ払うか気になります。
不動産取得税をいつ払うかは取得した不動産によって異なり、新築であれば取得した年の翌年の4月以降など、中古住宅や土地であれば取得した日から2~3ヶ月後などです。
ここから、不動産取得税はいつ払うか、納税通知書が届く時期をご紹介しましょう。
なお、不動産取得税は都道府県が徴収する地方税であり、都道府県によって納税通知書が届く時期が異なります。
よって、ここでは、納税通知書が届く一般的な時期をご紹介します。
5-1. 新築の不動産取得税はいつ払う?
新築の建物の不動産取得税は、新築を取得した年の翌年の4月以降に払います。
たとえば、令和5年6月に新築の建物を取得した場合は、令和6年4月に納税通知書が届き、同封されている納付書を以て不動産取得税を払うといった具合です。
納付書に記されている納付期限は、主に納付書が届いた月の月末となっています。
なお、都道府県によっては、納税通知書が届く前に「不動産取得税の課税のお知らせ」などの名称のハガキが届くことがありますが、そのハガキでは納税できないため留意してください。
そのハガキは、不動産取得税が課されることの事前通知です。
また、軽減措置が適用されるなどして不動産取得税がかからない場合は、ハガキも納税通知書も届きません。
5-2. 中古住宅や土地の不動産取得税はいつ払う?
中古住宅や土地の不動産取得税は、早ければ不動産を取得した日から2~3ヶ月後、遅ければ数ヶ月後などに払います。
たとえば、令和5年6月に中古住宅や土地を取得した場合は、令和5年中に納税通知書が届き、同封されている納付書を以て不動産取得税を払うといった具合です。
納付書には納付期限が記され、その期限は主に納付書が届いた月の月末となっています。
6. 不動産取得税の支払い方法
不動産取得税は、不動産を取得後に届く納付書を以て金融機関で払うのが通例ですが、最近ではPayPayなどのスマホアプリやクレジットカードでも納付できます。
ここからは、不動産取得税の支払い方法をご紹介しましょう。
6-1. 金融機関やコンビニで不動産取得税を支払う
不動産取得税には様々な支払い方法がありますが、最も利用されるのが金融機関や郵便局、コンビニなどでの納付です。
不動産取得税が課される不動産を取得すると、都道府県役場や税事務所から納付書が同封された納税通知書が届きます。
そして、納付書を以て、金融機関や郵便局、コンビニなどで不動産取得税を払います。
納付期限は、主に納付書が届いた月の月末であり、金融機関や郵便局、コンビニで不動産取得税を払う場合は、一括で納付することとなり分納はできません。
6-2. PayPayなどのスマホアプリで不動産取得税を支払う
導入されて間もない不動産取得税の支払い方法に、PayPayなどのスマホアプリで納付するという方法があります。
PayPayなどで不動産取得税を支払えば、場合によってはポイントが貯まってお得で、クレジットカードで引き落とすのであれば、カード会社によっては分納することもできます。
以下は、私がこの記事を作成する2023年6月の時点において、PayPayで不動産取得税を支払える都道府県です。
- PayPayで不動産取得税を払える都道府県
- 北海道、青森県、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、熊本県、鹿児島県、沖縄県
※ 2023年6月時点の情報
6-3. クレジットカードで不動産取得税を支払う
栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、山梨県、静岡県、愛知県、京都府、熊本県、沖縄県などの都道府県では、VISAやJCBなどのクレジットカードで不動産取得税を支払えます。
ただし、いずれの都道府県も金融機関の窓口でクレジットカードを提示しつつ支払うわけではなく、「地方税お支払サイト」を経由しつつ納付するため注意してください。
「地方税お支払サイト」とは、2023年5月にオープンした、スマートフォンやパソコンで不動産取得税や固定資産税などの地方税を支払えるサイトです。
地方税お支払サイトを経由しつつクレジットカードで不動産取得税を支払う際は、納税額5万円あたりにつき350円程度の手数料が必要ですが、カード会社によっては任意の回数で納付できます。
7. 不動産取得税の申告の必要性
不動産取得税は、不動産を取得後30日以内などに登記をするのであれば、多くの都道府県では申告は不要です。
申告をせずとも都道府県役場から納税通知書が届き、同封されている納付書を以て不動産取得税を支払うこととなります。
登記とは、法務省の地方支部局である「法務局」に設置されている登記簿という帳簿に、不動産の権利に関する情報を記す行為です。
不動産を購入するなどして取得すると、その不動産の所有権を取得したこととなりますが、登記をすることによって第三者に所有権を主張できるようになります。
よって、不動産を取得すると登記をするのが通例ですが、登記をすると法務局から都道府県や税事務所にその情報が伝わり、伝わった情報をもとに不動産取得税が課されることとなります。
従って、不動産を取得後30日以内などに登記をするのであれば、多くの都道府県では、不動産取得税の申告は不要となっています。
ただし、軽減措置の適用を受けるためには、申告が必要になる場合があります。
たとえば、この記事の「1-2. 不動産取得税の軽減措置」でご紹介した「不動産取得税の課税標準の特例」や「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」の適用を受けるためには、不動産を取得した日から30日以内などに税事務所へ申告しなければなりません。
申告は、軽減措置が適用される条件を満たすことを証明できる公的な書面(床面積が記された登記事項証明書など)を添付した申告書を提出することにより完了します。
申告書は、都道府県役場のホームページなどからダウンロードすることが可能です。
8. 不動産取得税を払わなくてよい状況
不動産取得税の金額の目安は高額ですが、軽減措置が適用される、免税点未満であるなどすれば課税されず、払わなくてよいこととなります。
ここからは、不動産取得税を払わなくてよい状況をご紹介しましょう。
8-1. 軽減措置が適用され、不動産取得税がかからない場合
不動産取得税にはいくつかの軽減措置が設けられ、適用されつつ税額が0円になる場合は、不動産取得税を払わなくてよいこととなります。
不動産取得税の主な軽減措置は「不動産取得税の課税標準の特例」と「住宅の用に供する土地の取得に対する不動産取得税の減額」であり、詳細はこの記事の「1-2. 不動産取得税の軽減措置」にてご確認いただけます。
8-2. 不動産を相続した場合
不動産を相続しつつ取得した場合は不動産取得税が課されず、払わなくてよいこととなります。
ただし、相続時精算課税制度を利用しつつ不動産を取得した場合は、不動産取得税が課されるため注意してください。
相続時精算課税制度とは、生前贈与を受けたことにより課される贈与税を相続税に置き換える制度です。
不動産などの財産の贈与を受けると贈与税が課されますが、贈与税の税率は高くおいそれと納税できません。
そこで利用されるのが相続時精算課税制度であり、同制度を利用すれば、財産の生前贈与を受けたことにより課される贈与税を、贈与者(生前贈与を行った者)が亡くなった後に課される相続税に置き換えることができます。
相続税の税率は贈与税より低く節税になり、納税する時期も先延ばしすることが可能です。
しかし、相続時精算課税制度を利用しつつ不動産の贈与を受ければ相続したとはみなされず、贈与を受けた直後に不動産取得税が課されます。
8-3. 免税点未満の不動産を取得した場合
不動産を取得しつつも免税点に満たない場合は不動産取得税が課されず、払わなくてよいこととなります。
不動産取得税の免税点とは、課税標準額が一定の額に満たなければ、不動産取得税が課されないという制度です。
不動産取得税は、以下のように「取得した不動産の固定資産税評価額」を課税標準額として計算します。
不動産取得税の計算式
課税標準額(取得した不動産の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率=不動産取得税
取得した不動産の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、取得した建物や土地の適正な時価です。
そして、土地を取得した場合は10万円未満、新築の建物を取得した場合は一戸につき23万円未満、中古住宅である建物を取得した場合は一戸につき12万円に課税標準額が満たなければ免税点未満となり、不動産取得税が課されません。
免税点未満で不動産取得税が課されない場合は納税通知書が届かず、不動産取得税を払わなくてよいこととなります。
山奥の土地などを取得すると不動産取得税の納税通知書が届かないことがありますが、それは免税点未満で不動産取得税が課されず、払わなくてよいことが理由です。
まとめ
不動産取得税の金額の目安と、税額を試算する方法をご紹介しました。
建売の不動産取得税の金額の目安は、消費税抜き3,500万円、うち建物の価格が2,800万円、土地の価格が700万円であれば、37万5,900円程度です。
新築マンションの不動産取得税の金額の目安は、消費税抜き3,000万円、うち一戸部分の価格が2,500万円、土地の持ち分の価格が500万円であれば、32万2,500円程度となります。
土地のみの不動産取得税の金額の目安は、都市部に位置する3,000万円の宅地であれば31万5,000円程度、2,000万円の宅地であれば21万円程度、1,000万円の宅地であれば10万5,000円程度です。
ただし、軽減措置が適用されるのであれば、それらの不動産取得税は大きく軽減され、場合によってはかからないこともあります。
ご紹介した内容が、不動産取得税がいくらになるかお調べの皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2023年5月
記事公開日:2018年8月
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