不動産投資におけるキャピタルゲインとは?

不動産投資におけるキャピタルゲインとは?

不動産投資におけるキャピタルゲインとは、投資用物件を売却することにより得る利益です。

不動産投資におけるキャピタルゲインをわかりやすく解説し、キャピタルゲインを得る秘訣をご紹介しましょう。

目次

1. 不動産投資におけるキャピタルゲインとは、投資用物件の売却益

不動産投資におけるキャピタルゲインとは、所有する投資用物件を売却することにより得る利益です。

たとえば、1億円の賃貸アパートを購入し、1億1千万円で売却できれば「1億1,000万円(売却額)-1億円(購入額)=1,000万円(売却益)」と計算し、キャピタルゲインは1,000万円となります。

しかし、投資用物件は購入時より高く売れるとは限らず、多くの場合は安く売却せざるを得ません。

例を挙げると、1億円の賃貸アパートを購入したものの9,000万円でしか売却できず、キャピタルゲインが発生しないといった具合です。

では、キャピタルゲインがなければ、不動産投資は儲からないかというと、そうではありません。

不動産投資には、インカムゲインがあります。

不動産投資におけるインカムゲインとは、投資用物件を所有中に得る利益であり、主に家賃収入です。

不動産投資は、物件を所有する最中はインカムゲインを、売却する際はキャピタルゲインを狙うこととなり、所有中に十分なインカムゲインがあれば、キャピタルゲインがなくとも損にはなりません。

不動産投資のキャピタルゲインとは?

とはいうものの、キャピタルゲインは、あるに越したことはありません。

キャピタルゲインがあれば、次の投資用物件を購入するための資金となり、不動産投資を続けることが可能です。

また、キャピタルゲインがあれば銀行からの信頼が増し、より良い条件の融資を引き出しやすくなります。

つづいて、キャピタルゲインを得る秘訣をご紹介しましょう。

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2. 不動産投資でキャピタルゲインを得る秘訣

不動産投資におけるキャピタルゲインとは、投資用物件を売却することにより得る利益であり、キャピタルゲインがあれば、次の投資用物件を購入しやすくなります。

ここから、キャピタルゲインを得る秘訣をご紹介しましょう。

安く買って高く売る

キャピタルゲインを得るために最も有効なのは、安く物件を購入して高く売却することです。

安く買って高く売れば、単純にキャピタルゲインが発生しやすくなります。

不動産投資のキャピタルゲインは、物件を安く買って高く売れば発生しやすい

とはいうものの、投資用物件を安く買って高く売るのは簡単ではありません。

高く売れる物件を安く買うには、物件を見極める力が必要であり、物件を見極める力を養うためには、一棟、または一軒でも多くの物件を見学する、不動産投資家が集う会に参加しつつ投資仲間を増やし情報を共有するなどが有効です。

また、不動産業者とコネクションを築き、良い物件を紹介してもらうという方法もあります。

景気が悪い時に投資用物件を安く購入し、景気が良い時に高く売却するという方法もありますが、これは景気の先行きを見極める力が必要です。

さらに、物件を高く売却するためには、満室の状態で売りに出さなければなりません。

不動産投資は、空室からは一切のインカムゲインが発生せず、空室がある物件は高く売れないのが通例です。

加えて、家賃が低く設定された投資用物件も高く売却できません。

家賃が低ければ、買い手からインカムゲインが発生しづらい物件と判断され、買い叩かれる可能性があります。

キャピタルゲインを狙うためには、日頃から物件を高く売却できるように満室を心掛け、高速インターネットサービスに無料で接続できるなどの付加サービスを入居者に提供し、家賃を下げないように工夫する必要があります。

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残債を減らしてから売却する

キャピタルゲインを得るためには、物件を安く買って高く売ることが有効ですが、残債を減らして売却することも重要です。

投資用物件は、ローンを用いて購入するのが通例ですが、物件の売却時に残る借入残高は、売却額を以て返済しなくてはなりません。

残債が多い状態で売却すれば、売却額を以て多くの額を返済することとなり、キャピタルゲインが発生しづらくなります。

残債を少なくして売却するには、月々の返済額を多く設定するなどの方法がありますが、月々の返済額が多ければ、物件を所有中に得る利益が少なくなり、急な修繕などに対応できません。

よって、残債を少なくして売却するには、ローンの借り入れ額が少ない状態、すなわち、手持ちの資金が多い状態で不動産投資を始めるのが最も有効となります。

不動産投資向けローンには、フルローンやオーバーローンがありますが、手持ちの資金が少ない状態で不動産投資を開始すれば利益が出にくくなり、それに伴いキャピタルゲインも発生しづらくなります。

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所有期間が5年を超えてから売却する

投資用物件を売却することにより得た所得を譲渡所得と呼び、譲渡所得には、所得税と住民税が課されます。

譲渡所得を計算する式をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。

譲渡所得の計算式(簡略版)
収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

式に含まれる収入金額とは投資用物件の売却額であり、取得費とは売却した投資用物件の購入代金など、譲渡費用とは投資用物件を売却するために要した費用を指します。

たとえば、7,000万円で購入した投資用物件を1,000万円の費用をかけつつ1億円で売却した場合は「1億円-(7,000万円+1,000万円)=2,000万円」と計算し、譲渡所得は2,000万円です。

そして、譲渡所得があれば、譲渡所得に所得税と住民税が課されることとなります。

譲渡所得に課される所得税と住民税の計算式は、以下のとおりです。

譲渡所得にかかる所得税と住民税の計算式
譲渡所得×所得税、または住民税の税率=所得税と住民税

式に含まれる「所得税、または住民税の税率」は、投資用物件を所有していた期間によって異なります。

具体的には、所有期間が5年を超えてから投資用物件を売却した場合は長期譲渡所得の税率が、所有期間が5年以下で売却した場合は短期譲渡所得の税率が適用され、それぞれの税率は以下のとおりです。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率の違い

長期譲渡所得の税率 所得税15%、住民税5%
短期譲渡所得の税率 所得税30%、住民税9%

以上のように、譲渡所得に課される所得税と住民税の税率は、長期譲渡所得の方が低くなります。

よって、投資用物件は、所有期間が5年を超えてから売却した方が、キャピタルゲインが発生しやすくなります。

なお、不動産投資は、個人として行う方法と法人として行う方法がありますが、ご紹介した長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率が適用されるのは、個人として不動産投資を行う場合に限られるため留意してください。

正確な譲渡所得の計算式や、長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は、「国税庁タックスアンサーNo.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」にてご確認いただけます。

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減価償却が少ないうちに売却する

個人で不動産投資を行いつつ得る利益を不動産所得と呼び、不動産所得には所得税と住民税が課されます。

不動産所得は、以下の式で計算します。

不動産所得の計算式
1年間の家賃収入-1年間の必要経費=不動産所得

式に含まれる1年間の必要経費とは修繕費などですが、個人として不動産投資を行う場合は、必ず減価償却費を含めなくてはなりません。

減価償却費とは、減価償却される額です。

不動産投資における減価償却とは、所有する投資用物件の建物部分の購入代金を毎年少しずつ必要経費に含めることです。

たとえば、建物部分の価格が1億円の新築の木造アパートを購入した場合は、1億円を22回に分割した約455万円を、減価償却費として22年間にわたり、1年間の必要経費に含めることとなります。

建物部分の価格が3億円の鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションを購入した場合は、3億円を47回に分割した約638万円を、減価償却費として47年間にわたり、1年間の必要経費に含めます。

22年や47年など、減価償却される期間を法定耐用年数と呼び、木造の投資用物件の法定耐用年数は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造の投資用物件の法定耐用年数は47年です。

そして、この記事の「所有期間が5年を超えてから売却する」でご紹介した譲渡所得を計算する際は、減価償却した額を、取得費から差し引かなければなりません。

譲渡所得を計算する式をおさらいすると、以下のとおりです。

譲渡所得の計算式(簡略版)
収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

式に含まれる取得費とは、売却した投資用物件の購入代金ですが、減価償却した額は、取得額から差し引くこととなります。

取得費から減価償却した額が差し引かれれば、譲渡所得が発生しやすくなり、減価償却した額が多いほど、多くの譲渡所得が発生します。

多くの譲渡所得が発生すれば、多くの所得税と住民税が課されることとなり、キャピタルゲインを出しにくくなります。

よって、キャピタルゲインを得ることを目標として不動産投資を行う場合は、法定耐用年数の残りが多いうち、すなわち減価償却した額が少ないうちに売却することが有効です。

ただし、あまりに早く売却しつつ譲渡所得が発生すると、短期譲渡所得の税率が課されることとなり、譲渡所得にかかる所得税と住民税が増え、やはりキャピタルゲインを出しにくくなるため注意してください。

十分なキャピタルゲインを得るためには、所有期間が5年を超えた時点で、減価償却の額が少ないうちに物件を売却する必要があります。

なお、先に木造の法定耐用年数は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年とご紹介しましたが、中古の投資用物件を購入した場合は異なるため注意してください。

法定耐用年数を過ぎた中古の投資用物件を購入した場合における減価償却の期間は、以下のように計算します。

法定耐用年数×20%=減価償却の期間

法定耐用年数の途中である中古の投資用物件を購入した場合は、以下のように計算しつつ減価償却される期間が決定します。

(法定耐用年数-築年数)+(築年数×20%)=減価償却される期間

以上が、中古の投資用物件を購入した場合における、減価償却される期間を計算する方法です。

たとえば、建物部分の価格が5,000万円の中古の投資用物件を購入し、減価償却される期間が5年であれば「5,000万円÷5=1,000万円」と計算し、購入から5年間にわたり、毎年1,000万円が減価償却されます。

毎年1,000万円もが減価償却されれば、あっという間に減価償却されてしまい、譲渡所得が発生しやすくなりキャピタルゲインを出しにくくなります。

よって、キャピタルゲインを狙いつつ中古の投資用物件を購入する場合は、予算が許す限り築年数が新しい物件を購入しなくてはなりません。

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まとめ - キャピタルゲインを狙えば、キャッシュフローが悪くなる

不動産投資におけるキャピタルゲインをわかりやすく解説しました。

不動産投資には、キャピタルゲインとインカムゲインがあります。

不動産投資におけるキャピタルゲインとは、購入した投資用物件を売却することにより得る利益です。

一方、不動産投資のインカムゲインとは、投資用不動産を所有中に得る利益を表し、主に家賃収入を意味します。

キャピタルゲインを得るためには、投資用物件を安く買って高く売る、残債が少ない状態で売却する、5年を超える所有期間を経てから売却する、法定耐用年数が完了する前に売却するなどが有効です。

不動産投資におけるキャピタルゲインをお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、不動産投資には、キャッシュフローという言葉もあります。

不動産投資におけるキャッシュフローとは、不動産投資を行う最中に手元に残るお金であり、不動産投資はキャッシュフローがなければ赤字となり、行き詰まることとなります。

よって、不動産投資は、キャッシュフローを得ることが重要となりますが、キャッシュフローは、インカムゲインを含めた以下の式で計算します。

キャッシュフローの計算式
家賃収入(インカムゲイン)-諸経費-ローンの返済額と支払う利息の額-税金=キャッシュフロー

そして、この記事の「安く買って高く売る」でご紹介したように、キャピタルゲインを得るためには、投資用物件を高く売却するのが有効ですが、高く売るためには、物件の価値を高めねばなりません。

物件を価値を高めるためには、リフォームをする、付加サービスを追加するなどが効果的ですが、それらを実施するためには費用がかかり、その費用はキャッシュフローから賄うこととなります。

また、この記事の「残債を減らしてから売却する」でご紹介したとおり、残債を減らしつつ投資用物件を売却すればキャピタルゲインが発生しやすくなりますが、かといって無理な繰り上げ返済をするなどすれば、キャッシュフローが少なくなる可能性があります。

この記事の「減価償却が少ないうちに売却する」でご紹介した減価償却も同じです。

減価償却が少ないうちに売却すればキャピタルゲインが発生しやすくなりますが、一般に不動産投資は、減価償却によりキャッシュフローが発生しやすく、儲かりやすい投資とされます。

つまり、不動産投資は、キャピタルゲインを狙えばキャッシュフローが少なくなる局面があり、キャピタルゲインとキャッシュフローの両立は難しい場合があるというわけです。

不動産投資においてキャピタルゲインとキャッシュフローは相反することがある

そのため、不動産投資は、キャピタルゲインとキャッシュフローのどちらを狙うか目標を定め、目標に沿った戦略を練りつつ開始しなければなりません。

目標が定まっていない状態で不動産投資を始めれば、後追いで戦略を付け足す必要があり、儲かりにくくなります。

ご紹介した内容が、不動産投資のキャピタルゲインをお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年4月
記事公開日:2018年7月

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