中古住宅を購入すると雨漏り発見!誰が修理費用を負担する?

中古住宅に雨漏りが発見された場合、誰から中古住宅を購入したか、どのような売買契約で購入したかによって修理費用の負担者が異なります。
これから中古住宅を購入する方や、既に中古住宅を購入した方へ向けて、購入後に発見された雨漏りの修理代は誰が負担すべきか、修理をする場合の費用の目安、火災保険で修理費用を賄えるかなどを解説しましょう。
目次
- 1. 雨漏りの修理費用の負担者は、売買状況により異なる
- 2. 中古住宅の雨漏りの修理費用は、3万円~30万円程度
- 3. 火災保険では、中古住宅の雨漏りの修理費用は賄えない
- 4. 購入前の中古住宅の雨漏りを確認する方法
- 5. 複雑な形状の屋根は、雨漏りしやすい
- 6. 中古住宅に雨漏り発見!これって値引きできる?
- まとめ - 雨漏りは、原因を特定するのが難しい
1. 雨漏りの修理費用の負担者は、売買状況により異なる
売りに出されている中古住宅は、以下の3つに大きく分類されます。
- 1. 個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す中古住宅
- 2. 売り主の契約不適合責任が免責される特約(瑕疵担保責任免責の特約)が付く中古住宅
- 3. 不動産業者が直接売りに出す中古住宅
そして、引き渡し後の中古住宅に雨漏りが発見された場合、その修理費用の負担者は、上記の3つのどの中古住宅を購入したかによって異なります。

ここから、それぞれの中古住宅を購入した場合における、雨漏りの修理費用の負担者をご説明しましょう。
1-1. 個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す中古住宅を購入した場合
売りに出されている多くの中古住宅は、不動産業者を仲介させつつ個人が売りに出す物件です。
それに該当する中古住宅を購入しつつ引き渡しを受け、雨漏りが発見された場合、売り主が修理費用を負担します。
よって、不動産業者を仲介させつつ個人が売りに出す中古住宅を購入し、雨漏りを発見した場合は、速やかに不動産業者を通しつつ売り主にその旨を報告してください。
売り主が雨漏りの修理費用の負担を渋る場合は、民法の第五百四十一条(催告による解除)に則って売買契約を解除したり、民法の第五百六十三条(買主の代金減額請求権)に則って売買代金の減額を請求することが可能です。
民法の第五百四十一条(催告による解除)をわかりやすく解説
売り主が責務を果たさない場合において、買い主が期間を定めてその履行を催促し、売り主がその期間内に責務を果たさない場合は、買い主は売買契約を解除できる
民法の第五百六十三条(買主の代金減額請求権)をわかりやすく解説
引き渡された中古住宅の品質が売買契約の内容に適合しない場合は、買い主は売り主に修理を請求できる。売り主が修理に応じない場合は、買い主は売り主に修理費用相応の売買代金の減額を請求できる
ただし、売り主が雨漏りの修理費用を永久に負担するというわけではありません。
売り主が雨漏りの修理費用を負担する期間は売買契約に取り決めが盛り込まれ、長い場合は中古住宅の引き渡し後1年、短い場合は1ヵ月などとなっています。
そのため、すでに購入した中古住宅に雨漏りが発見された場合は、売買契約書の内容を確認し、売り主が修理費用を負担する期間をご確認ください。
また、これから購入する中古住宅の雨漏りを心配する場合は、その物件を仲介する不動産業者に売り主が修理費用を負担する期間をお問い合わせください。
1-2. 売り主の契約不適合責任が免責される特約付きの中古住宅を購入した場合
先にご紹介したとおり、個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す中古住宅を購入し、雨漏りが発見された場合は、売り主が修理費用を負担します。
ただし、売買契約に売り主の契約不適合責任が免責される特約が付く中古住宅を購入した場合は、買い主が雨漏りの修理費用を負担しなければなりません。
売り主の契約不適合責任が免責される特約とは、引き渡された中古住宅に雨漏りなどの欠陥が発見されても、売り主はその修理費用を負担する責任を免れる約束です。
購入した中古住宅に売り主の契約不適合責任が免責される特約が付く場合は、売買契約書にその旨が明記されています。
また、これから購入する中古住宅に売り主の契約不適合責任が免責される特約が付くか否かは、その物件を仲介する不動産業者に問い合わせることにより確認することが可能です。
なお、売り主の契約不適合責任が免責される特約のことを以前は瑕疵担保責任免責の特約などと呼んでいたため留意してください。
1-3. 不動産業者が直接売りに出す中古住宅を購入した場合
大規模なリフォームが実施された物件やリノベーション中古マンションなどは、主に不動産業者が直接販売する中古住宅です。
そして、不動産業者が直接販売する中古住宅を購入しつつ雨漏りが発見された場合、売り主である不動産業者が修理費用を負担します。
ただし、売り主である不動産業者が雨漏りの修理費用を負担するのは永久ではありません。
中古住宅の引き渡し後2年間などであり、詳細は売買契約書に記載されています。
なお、売り主が不動産業者である中古住宅に、この記事の「1-2. 売り主の契約不適合責任が免責される特約付きの中古住宅を購入した場合」でご紹介した売り主の契約不適合責任が免責される特約が付くことはないため留意してください。
2. 中古住宅の雨漏りの修理費用は、3万円~30万円程度
売り主の契約不適合責任が免責される特約が付いた中古住宅などを購入しつつ雨漏りが発見された場合、買い主が修理費用を負担することになります。
そこで気になるのが修理費用の相場ですが、雨水が侵入している箇所や、修理を依頼するリフォーム店などにより異なり、安く済む場合は3万円程度、高く付く場合は場合は30万円程度です。

ここから、雨水が侵入する箇所別に修理費用の相場をご紹介しましょう。
2-1. 屋根からの雨漏り
屋根からの雨漏りは、主に屋根材の破損が原因です。
屋根から雨漏りがある場合は、破損している屋根材を新しいものと交換するなどの修理が必要であり、費用はおおむね5~15万円程度です。
ただし、3階建ての中古住宅などの場合は、梯子で職人が屋根に上がるのが難しく、足場の設置が必要になることがあります。
足場の設置が必要になる場合は足場代が発生し、修理費用と合わせて15~30万円程度の費用がかかるため留意してください。
なお、中古マンションの最上階を購入し、天井から雨漏りがある場合は屋上の修理が必要であり、屋上の修理費用はマンションの管理組合が負担します。
2-2. 外壁からの雨漏り
外壁に亀裂があると壁から雨水が侵入し、台風で横風が強いときなどに雨漏りします。
外壁からの雨漏りは、外壁の亀裂を塞ぐなどの修繕が必要があり、修理費用の相場は5万円程度です。
ただし、木造の中古住宅で外壁からの雨漏りが長期間続いていた場合は、壁内の柱などが腐朽している虞があります。
壁内の柱などが腐朽している場合は、室内の壁を撤去しつつ建材を交換する必要があり、外壁の修理費用と合わせて15~30万円程度の費用が必要となるため留意してください。
雨漏りの虞がある亀裂が入った外壁

2-3. 窓からの雨漏り
窓は窓枠を用いて建物に埋め込まれていますが、コーキング材という粘着性のある充填材で外壁と窓枠の隙間を埋めつつ雨水の侵入を防いでいます。
コーキング材の寿命は10年程度で、古くなると剥がれ、それにより窓枠と外壁の間に隙間ができてしまい、その隙間から雨水が侵入しつつ雨漏りすることがあります。
これに該当する場合はコーキング材の打ち換えが必要であり、3~5万円の費用がかかります。
雨漏りの虞があるコーキング材が劣化した窓

3. 火災保険では、中古住宅の雨漏りの修理費用は賄えない
火災保険に入っていれば、雨漏りによる損害も補償されるという情報をネットで見かけますが、中古住宅を購入し、購入後に雨漏りが発見された場合は残念ながら火災保険では修理費用を賄えません。

理由は、火災保険で雨漏りの修理費用が補償されるのは、風災や水災などによる損害補償を付けつつ火災保険に加入し、風災や水災により屋根が破損するなどして雨漏りが起きた場合に限られるためです。
中古住宅を購入し、購入後に雨漏りが見付かった場合は、おそらく原因は建物の劣化によるものです。
よって、中古住宅を購入し、購入後に雨漏りが見付かった場合は、残念ながら火災保険で修理費用を賄うことはできません。
ただし、中古住宅を購入すると同時に風災や水災の特約を付けつつ火災保険に加入し、引き渡し後に台風や洪水により屋根などが破損して雨漏りが起きた場合は修理費用が補償されます。
4. 購入前の中古住宅の雨漏りを確認する方法
契約不適合責任が免責される特約(瑕疵担保責任免責の特約)がない中古住宅や、不動産業者が直接販売する中古住宅を購入しつつ雨漏りが見付かった場合は、売り主が修理費用を負担します。
しかし、修理には手間が掛かるため、雨漏りがない中古住宅を購入する、または雨漏りがあっても引き渡し前に売り主に修理を済ませてもらうのが理想です。
そこで、中古住宅を購入する前に、雨漏りの有無を確認する方法をご紹介しましょう。
4-1. 自分で確認する
過去に雨漏りがあった箇所や現在雨漏りがある箇所は、シミなどの跡が残っています。
よって、中古住宅を見学する際に、天井や室内の壁を隅々まで確認すれば、雨漏りの有無を判断することが可能です。
また、破損している瓦や、劣化により白茶けた屋根材などは雨漏りの原因となる可能性があります。
そのため、中古住宅を見学する際は望遠鏡を持参し、屋根材の傷み具合も確認することが大切です。
室内の天井にある雨漏りの跡

4-2. ホームインスペクションで確認する
ホームインスペクションとは、建築士などの専門家が住宅の不具合を検査する住宅診断であり、雨漏りを含めた中古住宅の欠陥を確認できます。
ホームインスペクションは5~8万円の費用がかかり、購入前の中古住宅に実施するためには売り主の承諾が必要ですが、専門家が雨漏りの有無を診断してくれます。
また、ホームインスペクションには保証が付くため、調査で雨漏りがないと判断されたにもかかわらず購入後に雨漏りが見付かった場合は、修理費用が補償されるため安心です。
ホームインスペクションについて詳しくは、当サイトのコンテンツである「インスペクションとは? 費用の目安や、賢い業者の選び方を解説」をご覧ください。
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4-3. フラット35の物件検査で確認する
フラット35は優良な住宅を購入する場合に限り融資が実行され、フラット35を利用しつつ中古住宅を購入する際は物件検査が必要です。
物件検査とは、その住宅の構造や耐震性、劣化状況などを確認する検査であり、融資希望者(中古住宅の購入希望者)が専門機関に依頼しつつ実施し、オプションで雨漏り調査を追加できます。
そのため、フラット35を利用しつつ中古住宅を購入する際は、雨漏り調査のオプションを追加しつつ物件検査を実施することにより、雨漏りの有無を確認することが可能です。
なお、物件検査には7~8万円程度の費用が必要で、雨漏り調査のオプション料は2~3万円程度となっています。
4-4. 中古住宅を仲介する不動産業者が確認する
「三井のリハウス」や「東急リバブル」「野村不動産」などの大手不動産業者は、中古住宅を仲介する際に、雨漏りの確認を含めた独自の物件調査を有料にて実施中です。
よって、中古住宅の購入を希望するものの雨漏りが心配な場合は、独自の物件調査を実施する大手不動産業者が仲介する中古住宅を購入すれば、不安を解消できます。
なお、物件調査の費用は、不動産業者により異なり5~6万円程度です。
また、不動産業者によっては、物件調査で雨漏りがないと判断された場合は保証を付けることがあり、保証付きの中古住宅を購入し、引き渡し後に雨漏りが見付かった場合は修理費用が補償されます。
5. 複雑な形状の屋根は、雨漏りしやすい
中古住宅は、屋根材の傷みや外壁の亀裂、コーキング材の劣化などにより雨漏りが起きます。
それらを起因とする雨漏りは、原因となる箇所を修理すれば解消されます。
しかし、屋根には雨漏りしやすい形状があり、雨漏りしやすい形状の屋根の中古住宅は定期的に雨漏りが起きる可能性があるため注意してください。
たとえば「切妻(きりづま)」と呼ばれる屋根がありますが、切妻は形状がシンプルなため樋に雨水がスムーズに流れやすく、雨漏りしにくいのが特徴です。

反対に、複雑な形状の屋根は雨水がスムーズに樋に流れにくく、雨漏りしやすいのが特徴です。

よって、中古住宅の購入を希望するものの雨漏りが心配な場合は、現在の雨漏りの有無と共に屋根の形状を確認し、できるかぎりシンプルな屋根の中古住宅を選ぶことが大切です。
なお、中古住宅には、屋根に太陽光パネルが乗った物件や、天窓がある物件を見かけますが、それらも施工状態などにより雨漏りしやすくなっていることがあるため注意してください。
6. 中古住宅に雨漏り発見!これって値引きできる?
中古住宅は、雨漏りの有無にかかわらず値引き交渉が可能です。
そして、売買契約を締結する前に雨漏りが発見された場合は、雨漏りがあることを値引き交渉の材料にできます。
たとえば、中古住宅は主に以下の流れで購入します。
- 1. 購入したい中古住宅をネットなどで探す
- 2. 理想の中古住宅が見付かり次第、不動産業者に連絡しつつ見学する
- 3. 購入を希望する場合は、不動産業者を介して売り主に購入申し込みを行う
- 4. 売り主が購入申し込みに納得すれば、売買契約を締結する
- 5. 住宅ローンを利用するなどして売り主に物件代金を支払う
- 6. 中古住宅が引き渡される
上記は一般的な流れですが、上記の流れで中古住宅を購入する場合は「2」の見学のタイミングで雨漏りを発見し、雨漏りがあることをその場で不動産業者に知らせます。
そして「3」のタイミングで売り主に購入申し込みを行う際に値引き交渉が可能です。
購入申し込みとは、その中古住宅を購入する意思があることを売り主に伝える申し込みであり、購入申込書という書面に必要事項を記入し、不動産業者を介して売主に提出することにより完了します。
購入申込書には、代金の支払い方法、決済日などと共に購入希望価格を記入するため、その購入希望価格に「雨漏りが発見されたため○,○○○万円での購入を希望する」などと記載すれば良いでしょう。
値引きできる具体的な額は状況により異なりますが、雨漏りがあることを理由に値引きを迫る場合は、雨漏りの修理費用程度の額(3万円~30万円程度)が理想といえます。
なお、築年数が古く雨漏りがある中古住宅は、建物全体が老朽化している可能性があります。
よって、雨漏りがある築年数が古い中古住宅の購入を希望する場合は、床下の腐朽や給排水管の漏水など、他の不具合も慎重に確認するように心掛けてください。
ちなみに、誰でもわかる不動産売買では、値引きしやすい中古住宅の特徴をご紹介中です。 お時間のある方は、ぜひご覧ください。
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まとめ - 雨漏りは、原因を特定するのが難しい
中古住宅の購入を希望する方や、既に購入した方へ向けて、引き渡し後の中古住宅に雨漏りが発見された場合、誰が修理費用を負担すべきかご紹介しました。
まとめると以下のとおりです。
中古住宅の雨漏りの費用負担者
中古住宅の状況 | 修理費用の負担者 |
---|---|
売り主が個人である一般的な中古住宅 | 売り主(ただし、中古住宅の引き渡しから1年や1ヵ月などの期間が定められている) |
売り主が個人である契約不適合責任が免責される特約(瑕疵担保責任免責の特約)が付いた中古住宅 | 買い主 |
売り主が不動産業者である中古住宅 | 不動産業者(ただし、中古住宅の引き渡しから2年などの期間が定められている) |
皆さん、ぜひご参考になさってください。
なお、住宅の雨漏りは、どこから雨水が侵入しているか原因の特定が難しいという特徴があります。
たとえば、壁に雨漏りの跡があっても、雨水が侵入しているのは離れた箇所にある屋根材の破損であるなど、原因の特定は専門家でも困難を極めます。
原因が特定できない場合は、何度も調査と修理を繰り返さなければなりません。
そのため、購入した中古住宅に雨漏りが発見された場合は、焦らず落ち着いて修理に取り組んでください。
ご紹介した内容が、中古住宅の雨漏りを心配する皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2020年6月
記事公開日:2019年5月
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