不動産投資の借入可能額が決まる3つの要素

不動産投資の借入可能額が決まる3つの要素

不動産投資のための資金の借入可能額は、購入する投資用物件の評価額によって上限が決まり、投資家の属性により融資額が判断され、銀行の種類によって実際に貸し出される額が決まります。

資金を借入れつつ不動産投資をはじめたいと希望する方へ向けて、いくらまで借りられるか、銀行の借入可能額を決定する3つの要素をご紹介しましょう。

目次

1. 借入可能額の上限は、積算評価によって決まる

借入可能額の上限を決定する一つめの要素は、銀行によって査定された、資金を借入れつつ購入する投資用物件の評価額です。

査定方法は銀行によって異なるものの、主に積算評価と呼ばれる方法が用いられ、積算評価によって査定された建物と土地の評価額の合計が、借入可能額の上限となります。

不動産投資の借入可能額の上限は、積算評価によって決まる

積算評価の方法は銀行によって異なり、場合によっては同じ銀行であっても支店によって評価方法が異なります。

よって、積算評価による正確な査定方法をご紹介することはできませんが、建物は再調達価格などを基に、土地は相続税路線価を基に評価されるといわれます。

ここから、再調達価格や相続税路線価を用いた、積算評価による建物と土地の査定方法をご紹介しましょう。

なお、積算評価によって査定された投資用物件の評価額は、その投資用物件の時価と大きく乖離していることがあるため留意してください。

積算評価によって査定された評価額は、その投資用物件の実勢価格や時価を表すわけではなく、あくまで銀行が査定した評価額であり、借入可能額の目安となる額です。

また、地方銀行や信用金庫、信用組合では、積算評価によって査定した評価額を超える資金を貸し出すことがありますが、評価額を超えた資金を借入れつつ返済を滞らせれば、債務超過に陥る虞があるため注意してください。

積算評価によって査定された評価額は、その物件の実勢価格や時価ではありませんが、評価額を超える資金の借入れは禁物です。

積算評価による建物の査定方法

積算評価による物件の査定方法は銀行によって異なり、統一された評価方法はありませんが、一般には以下の式を用いて査定するといわれます。

再調達価格×延べ床面積÷法定耐用年数×残存耐用年数=建物の評価額

式に含まれる再調達価格とは、その建物と同等の建物を新築するために必要となる建築費の目安であり、構造によって異なり、おおむね以下のとおりとされます。

再調達価格

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 … 20万円程度
  • 鉄骨材の肉厚が4mm超の鉄骨造 … 17万円から18万円程度
  • 鉄骨材の肉厚が3mm超4mm以下の鉄骨造 … 13万円から15万円程度
  • 木造 … 13万円から15万円程度

式に含まれる法定耐用年数とは、減価償却される期間であり、財務省令にて定められた期間です。

減価償却とは、投資用物件の購入代金の一部を毎年必要経費に計上することであり、減価償却できる期間を法定耐用年数と呼びます。

法定耐用年数は建物の構造によって異なり、以下のとおりです。

法定耐用年数

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 … 47年
  • 鉄骨材の肉厚が4mm超の鉄骨造 … 34年
  • 鉄骨材の肉厚が3mm超4mm以下の鉄骨造 … 27年
  • 鉄骨材の肉厚が3mm以下の鉄骨造 … 19年
  • 木造 … 22年

式に含まれる残存耐用年数とは、法定耐用年数から築年数を差し引いた年数です。

たとえば、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、築20年の鉄筋コンクリート造の建物であれば「47年-20年=27年」と計算し、残存耐用年数は27年となります。

残存耐用年数が0の場合は、建物の評価額は0円となるのが通例です。

そして、鉄骨コンクリート造、延べ床面積が700平方メートル、法定耐用年数が47年、築年数が10年、残存耐用年数が37年の建物は以下のように計算し、評価額は6,999万円程度となります。

20万円(鉄筋コンクリート造の再調達価格)×700㎡(延べ床面積)÷47年(鉄筋コンクリート造の法定耐用年数)×37年(残存耐用年数)=6,999万円

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不動産投資を志し、減価償却の意味がよくわからないとお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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積算評価による土地の査定方法

積算評価による土地の査定方法は、相続税路線価を基に評価されるといわれます。

相続税路線価とは、土地を相続したり贈与を受けた者が、その相続税や贈与税の額を計算しやすいように国税庁が公開する、日本全国各地の市街地に位置する道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価額です。

不動産投資の借入可能額を決定する要因のひとつである相続税路線価とは

価額とは「品物の値打ちに相当する額」などの意味があり、土地を相続したり贈与を受けた者は、相続税路線価を基に土地の相続税額や贈与税額を計算し、税務署に申告しつつ納税しなければなりません。

日本全国各地の宅地の相続税路線価は、国税庁のサイト「路線価図・評価倍率表」にて調べることが可能です。

たとえば、購入を希望する投資用物件の敷地面積が700平方メートルであり、その土地の相続税路線価が5万円であれば「700平方メートル×5万円=3,500万円」と計算し、評価額は3,500万円となります。

そして、建物の評価額と土地の評価額を合計した額が、銀行が積算評価によって査定した投資用物件の評価額であり、借入可能額の上限となります。

なお、誰でもわかる不動産売買では、相続税路線価をわかりやすく解説するコンテンツを公開中です。

同コンテンツでは、国税庁のサイトを用いて、全国各地の宅地の相続税路線価を調べる方法をご紹介しています。

相続税路線価から土地の評価額を計算したいと希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひ同コンテンツをご覧ください。

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2. 投資家の属性により、融資額が判断される

借入可能額の上限を決定する二つめの要素は、借入れを希望する投資家の属性です。

投資家の属性とは、資金の借入れを希望する投資家の職業、勤務先、年収、自己資金の額などであり、詳細は以下のとおりです。

職業
投資家の職業は、借入可能額に最も大きな影響を与えます。

医師などの高い収入を得られる職業に就く方や、安定した収入を得ることができる公務員の方は、積算評価によって査定された物件の評価額まで借入れできる可能性が高くなります。
勤務先
投資家の勤務先は、借入可能額に大きな影響を与え、東証一部上場企業や知名度が高い企業に勤める方は、借入可能額が高くなります。

また、勤務先と共に勤務期間も借入可能額に影響を与え、2年より3年の方が、3年より4年の方が多くの資金を借入れることが可能です。
年収
一般に、年収が高い方ほど多くの額を借入れできます。

ただし、年収よりも収入の安定性を重視し、安定した収入があるほど多くの資金を貸し出す銀行も存在するため留意してください。

たとえば、年収が高くありつつも収入が不安定な職業に就く方より、年収が低くとも安定した収入が得られる職業に就く方が、年収が高い中小企業の経営者より、年収が低くとも安定した収入があるサラリーマンの方が、多くの資金を借入れできることがあります。
自己資金
一般に、銀行から資金を借入れつつ投資用物件を購入する際は、物件価格の5%程度の頭金と、物件価格の7%程度の諸費用を用意しておく必要があるといわれます。

つまり、不動産投資をはじめたいと希望する場合は、物件価格の12%程度の自己資金が必要になるというわけですが、自己資金の額は、借入可能額に大きな影響を与えます。

たとえば、高収入でありつつも自己資金が少ない投資家より、収入が低くとも自己資金の多い投資家の方が、多くの資金を借入れできるといった具合です。

以上が、借入可能額の上限を決定する二つめの要素である投資家の属性です。

借入可能額は、購入を希望する投資用物件の評価額が上限ですが、属性が良ければ上限まで借入れできる可能性が高くなり、レバレッジを効かせつつ高額な利益を得やすくなります。

なお、投資家の属税は、はじめて不動産投資を行うための資金を借入れる際は重視されますが、2回目や3回目以降は、さほど重視されません。

2回目や3回目以降は、これまでの不動産投資が成功したか否かが重視されます。

よって、自らの属性が芳しくないと感じる場合は、まずは少額を借入れつつ安価な投資用物件を購入し、1回目の不動産投資の成功を目指すのが良いでしょう。

そうすれば、2回目や3回目は、借入可能額が上がる可能性があります。

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3. 実際に貸し出される額は、銀行の種類によって変わる

借入可能額を決定する三つめの要素は、資金を貸し出す銀行の種類です。

不動産投資の資金の借入可能額は、投資用物件の評価額によって上限が決定し、投資家の属性によって融資額が判断され、銀行の種類によって実際に貸し出される額が決まります。

銀行の種類とは、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ノンバンクなどであり、それぞれの銀行の借入可能額の目安は以下のとおりです。

都市銀行
みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行の計4行の都市銀行の借入可能額は、一般に年収の10倍から15倍程度といわれます。
地方銀行、信用金庫、信用組合
地方銀行や信用金庫、信用組合の借入可能額は、年収の15倍から20倍程度といわれます。
ノンバンク
ノンバンクとは、預金を受け入れず、資金の貸出しに特化した金融機関であり、いわゆる貸金業です。

ノンバンクは金利が高く、はじめて不動産投資を行う際は利用すべきではありませんが、年収の20倍から30倍程度の資金を借入れできます。

以上が銀行の種類による借入可能額の目安であり、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ノンバンクの順で融資額が多くなります。

なお、地方銀行や信用金庫、信用組合、ノンバンクは、属性が良ければ物件の評価額を大きく超える額を貸し出すことがあるため注意してください。

資金を借入れつつ投資用物件を購入する際は、資金を貸出す銀行が、購入する物件を担保に取ります。

そして、投資家が返済を滞らせれば、銀行は担保に取った物件を売却しつつ返済金に充当しますが、評価額を大きく超えた額を借り入れた場合は、物件の売却額が残債に及びません。

物件の売却額が残債に及ばなければ、自己資金を投じて返済することとなり、所有する他の金融資産などを売却せざるを得ない場合があります。

資金を借入れつつ投資用物件を購入する際は、物件の評価額を大きく超えた額の借入れは避けなければなりません。

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まとめ - 具体的な借入可能額は、銀行の担当者に聞く

資金を借入れつつ不動産投資を始めたいと希望する方へ向けて、いくらまで借りられるか、借入可能額が決まる3つの要素をご紹介しました。

借入可能額は、以下の3つの要素で決定します。

  • 1. 購入を希望する投資用物件の評価額
  • 2. 資金の借入れを希望する投資家の属性
  • 3. 資金を貸出す銀行の種類

具体的には、投資用物件の評価額によって借入可能額の上限が決定し、投資家の属性によって融資額が判断され、資金を貸出す銀行の種類によって実際の融資額が決定します。

ただし、属性が高い方が地方銀行や信用金庫、信用組合で融資を希望すると、購入する投資用物件の評価額を大きく上回る額が貸出されることがあるため注意してください。

物件の評価額を大きく上回る額を借入れつつ不動産投資を行い、赤字になれば債務超過に陥る虞があります。

資金の借入れを希望しつつ不動産投資を始めたいと希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、本記事でご紹介したとおり、借入可能額は3つの要素で決定しますが、いくら借りられるか確実な額を把握したいときは、銀行に電話しつつアポイントメントを取り、担当者と面談して直接確認するのが理想です。

面談の際は、購入を希望する物件の詳細が記された資料、過去3年間の収入を証明できる源泉徴収票、自らが作成した事業計画書などを持参しつつ担当者に手渡し、どれくらい借入れできるか、それとなく伺ってください。

ご紹介した内容が、不動産投資の資金の借入可能額をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2022年6月

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