中古住宅 頭金なしで買える。「今すぐ vs 貯めてから」徹底比較

中古住宅 頭金なしで買える。「今すぐ vs 貯めてから」徹底比較

頭金がなくても、中古住宅は購入できます。

「頭金を貯めてからでないと無理」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし現実には、フルローン(物件価格の全額を住宅ローンで借りる方法)を使って中古住宅を購入する人は、確実に存在します。

ただし、一点だけ注意が必要です。手付金(てつけきん)だけは現金で用意しなければなりません。

手付金とは、売買契約を結ぶ際に売主へ渡す保証金のことです。住宅ローンの融資が実行されるよりも前に支払うため、ローンで賄えません。「頭金なし=現金ゼロで買える」という理解は誤りであり、この点を最初に押さえておくことが大切です。

では、手付金以外の費用はどうすればよいのでしょうか。

フラット35(住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローン)や一部の民間銀行では、仲介手数料・登記費用といった諸費用もローンに含めて借りられる場合があります。

つまり、用意できる現金が手付金だけであっても、中古住宅を購入できるケースがあるのです。

そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、中古住宅を「今すぐ頭金なしで買う場合」と「頭金を貯めてから買う場合」を総コストで比較しながら、あなたにとってどちらが有利かを判断するための情報をまとめます。

フルローンのメリット・デメリット、審査を通過するための対策、そして現金をいくら用意すれば中古住宅を購入できるかの目安まで、順を追って解説しましょう。

目次

1. 頭金なしでも中古住宅は購入できる

頭金なしでの中古住宅購入は、結論からいえば可能です。ただし「頭金なし」と「現金ゼロで買える」は別の話です。この違いを最初に整理しておかないと、購入の直前で資金不足という事態を招くことになります。

ここでは、読者が混同しやすい4つの用語を整理したうえで、実際に頭金なしで中古住宅を購入している人の割合をデータで確認します。

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フルローン・頭金・手付金・オーバーローンの違いを整理する

「頭金なし=現金ゼロで買える」という誤解は、住宅購入で最も危険な思い込みのひとつです。

頭金(あたまきん)とは、物件価格のうち住宅ローンを借りる前に自分で支払う自己資金のことです。頭金なし、つまりフルローンとは「物件価格の全額を住宅ローンで賄う」ことを意味します。

そして、フルローンを選んだとしても、手付金(てつけきん)だけは現金で用意しなければなりません。

手付金とは、売買契約を結ぶ際に売主へ渡す保証金のことです。融資が実行されるよりも前に、現金で売主へ直接支払います。住宅ローンは融資実行後に効力を持つため、契約締結のタイミングには間に合いません。

手付金の相場は物件価格の5〜10%で、2,500万円の物件なら125〜250万円が目安です。

一方、オーバーローンとは、物件価格に加えて仲介手数料や登記費用などの諸費用もローンで賄うことをいいます。フラット35(住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローン)や一部の民間銀行では、諸費用も含めて住宅購入資金を借り入れできる場合があります。

フルローンとオーバーローンは異なる概念であり、混同しないよう注意が必要です。

中古住宅購入における手付金・融資実行・残金決済のタイミングと資金の流れを示した図解
頭金・手付金・フルローン・オーバーローン 4つの用語比較
用語 意味 支払先 支払タイミング 住宅ローンで賄える? 現金の必要性
頭金 借入額を減らすために先払いする自己資金の一部 売主(残金決済時) 融資実行後 ×(任意で払う額) 任意
手付金 売買契約成立の証拠として売主に渡す保証金 売主 売買契約締結時(融資実行前) × ローン不可 必須・現金(目安:物件価格の5〜10%/2,500万円なら125〜250万円)
フルローン 物件価格の全額を住宅ローンで調達すること 手付金のみ必要
オーバーローン 物件価格に加え諸費用もローンで賄うこと 金融機関・商品次第 一部不要にできる

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頭金なしで中古住宅を買う人は実際にどれくらいいるか

「頭金なしで中古住宅を買うのは自分だけではないか」と不安に感じる方は少なくありません。しかし、実態のデータを見ると、少ない自己資金で購入する人は決して例外ではないことがわかります。

住宅金融支援機構の「2024年度フラット35利用者調査」によると、中古戸建購入者の平均手持金(頭金)は約232万円で、購入価額2,573万円に対する割合は約9%です。中古マンション購入者の平均手持金は約524万円、購入価額3,033万円に対する割合は約17%となっています。

フルローンに近い形で購入している人がかなりの割合を占めることは、同調査の手持金分布からも確認できます。中古戸建購入者のうち手持金ゼロが約39%、100万円未満が約24%であり、手持金ゼロまたは100万円未満の合計が63%を占めるという実態があります。

フラット35利用者の資金調達内訳(2024年度・中古住宅・全国平均)
区分 購入価額(平均) 手持金(平均) 手持金の割合 融資金(平均) 融資金の割合
中古戸建 2,573万円 232万円 約9% 2,208万円 約86%
中古マンション 3,033万円 524万円 約17% 2,365万円 約78%

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2. 中古住宅でフルローンが「新築より難しい」構造的な理由

中古住宅のフルローンは「審査が厳しい」とよく言われますが、その本質的な原因は信用力ではなく、担保評価(たんぽひょうか)の仕組みにあります。

担保評価とは、金融機関が「この物件の価値をいくらとして扱うか」を独自に査定した金額のことです。この評価額が借入希望額を下回るとき、フルローンに壁が生じます。

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金融機関が物件の担保価値をどう評価するか

住宅ローンは、物件を担保にして金融機関がお金を貸す仕組みです。

万が一、借主がローンを返済できなくなった場合、金融機関は担保として設定した物件を競売(けいばい)にかけて、貸したお金を回収します。だからこそ、「この物件を売れば、貸した分を回収できるか」という視点で担保価値を評価するわけです。

新築物件の場合、物件価格と担保評価額はほぼ一致します。建物が新しく、市場で売買が成立した価格そのものが担保の裏付けになるからです。

一方で、中古住宅は築年数・建物の状態・立地の需要・耐震性能などによって、金融機関が独自に査定した担保評価額が、実際の売買価格を下回ることがあります。

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「希望額が借りられない」ケースが起きる理由

購入したい物件の担保評価額が借入希望額を下回る場合、金融機関は原則として担保評価額を超える融資を行いません。

たとえば、2,500万円の中古一戸建てを購入するケースを考えてみましょう。物件価格は2,500万円でも、金融機関による担保評価が2,000万円だった場合、融資額は最大でも2,000万円までとなります。不足する500万円は自己資金で準備しなければならず、用意できなければ購入は難しくなります。

この不足分の500万円は、信用情報や返済能力が原因で融資審査に落ちたわけではありません。あくまで担保評価額が借入希望額に達しなかったことによるものです。原因を正しく理解しないと適切な対策を取れなくなるため、両者の違いを把握しておきましょう。

新築住宅と中古住宅の担保評価額の違いを示す図解。中古はフルローンで希望額が借りられないケースがある

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フルローンが組みやすい物件・組みにくい物件の特徴

フルローンを希望する場合は、物件を探す段階から担保評価の付きやすさを意識することが有効です。

金融機関は、「その物件に十分な資産価値があり、必要になれば換金できるか」を基準のひとつとして担保評価を行います。築浅物件や耐震性能が確保された物件、都市部の駅近物件などは評価が高くなりやすい傾向があります。

反対に、いわゆる「掘り出し物」と呼ばれるような割安な物件は、安くなっている要因が評価額の低さにつながることがあります。そのため、借入希望額と担保評価額の間にギャップが発生しやすくなります。

フルローンが組みやすい物件・組みにくい物件の特徴比較
比較軸 組みやすい物件の特徴 組みにくい物件の特徴
築年数 築浅(概ね築15年以内)。担保評価が高く維持されやすい 築年数が古い(特に1981年以前の旧耐震基準物件)
耐震性 新耐震基準適合・耐震等級を取得済み 旧耐震基準・耐震改修未実施・耐震性能不明
立地 都市部・駅近・人口増加エリア。換金性が高い 地方・郊外・人口減少地域。担保としての流動性が低い
物件の状態 インスペクション(住宅診断)済み・瑕疵保険付き 雨漏り・シロアリ等の欠陥あり・修繕歴が不明
担保評価の傾向 売値と金融機関評価額の乖離が小さい 「掘り出し物」的な安値物件ほど担保評価との乖離が生じやすい

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3. 頭金なしで中古住宅を購入するメリット

中古住宅を頭金なしで購入する場合、手元資金を温存できるだけでなく、購入タイミングの自由度が高まることや、税制上のメリットを受けられる可能性があることも大きな利点です。

頭金なしで中古住宅を購入する方法は、自己資金が少ない人だけでなく、資金を手元に残しておきたい人からも注目されています。特にフルローンを利用する場合は、「なぜメリットが生まれるのか」を理解しておくことが重要です。

ここからは、頭金なしで中古住宅を購入する主なメリットを4つの視点から詳しく解説します。どのメリットが自分に当てはまるのかを確認しながら読み進めてください。

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手元資金を生活費・リフォーム費・緊急資金に残せる

頭金なしで中古住宅を購入する最大のメリットは、まとまったお金を手元に残せることです。

中古住宅では、購入後にリフォームが必要になるケースが少なくありません。また、引越し費用や家具・家電の購入費、カーテンや照明などの生活用品の費用も入居前後に集中します。

もし頭金に貯蓄を使い切ってしまうと、こうした出費に対応できず、一時的に家計が苦しくなる可能性があります。

そのため、ファイナンシャルプランナーの間では、住宅購入後も生活費の6か月分程度を手元に残しておくことが望ましいとされています。たとえば毎月の生活費が25万円なら、約150万円を緊急時のための資金として確保しておくのが理想です。

頭金なしで中古住宅を購入することは、この大切な予備資金を維持することにもつながります。

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好条件の物件が出たとき即座に購入できる

頭金を貯めるために数年間待つという選択は、理想の物件を買い逃すリスクと表裏一体です。

不動産は同じ物件が二つと存在しない「一物一価(いちぶついちか)」の商品です。特に人気エリアの中古住宅は、市場に出てから数週間以内に成約するケースが目立ちます。

「あと2年貯めてから買おう」と計画していた間に、価格・立地・間取りのすべてが揃った物件を他の買主に先を越されることは、決して珍しくありません。

たとえば、希望エリアの駅徒歩5分・築10年・リフォーム済みの中古マンションが2,400万円で売り出されたとします。事前審査を済ませていた別の買主がすでに購入申込みを入れており、頭金を貯めながら様子見をしていた方は検討する間もなく機会を失った——こうしたケースは実際の取引で起きています。

中古住宅の人気物件は、「見てから考える」では間に合わないことが多いのです。

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住宅ローン控除を最大限に活用できる

借入額が大きいほど、住宅ローン控除(じゅうたくローンこうじょ)から受け取れる還付額が大きくなります。

住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税・住民税から差し引ける制度です。頭金を入れて借入額を減らすと、その分だけ控除の恩恵も小さくなります。

中古住宅に適用される住宅ローン控除の現行要件(令和6年以降)

中古住宅の住宅ローン控除は、物件の省エネ性能・耐震性能によって借入限度額が異なります。また、控除期間は新築の13年に対して中古は10年です。

なお、適用の大前提として「昭和57年1月1日以降に建築された住宅」であること(または耐震基準適合証明書等を取得していること)が必須のため留意してください。

中古住宅の住宅ローン控除:借入限度額・控除率・控除期間の一覧(令和6年1月1日〜令和7年12月31日入居分)
物件の種別・性能 借入限度額 控除率 控除期間 年間最大控除額
長期優良住宅・低炭素住宅 3,000万円 0.7% 10年 21万円
ZEH水準省エネ住宅 3,000万円 0.7% 10年 21万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 0.7% 10年 21万円
その他の住宅(一般中古) 2,000万円 0.7% 10年 14万円
注意
令和8年以降入居分については、国土交通省「令和8年度税制改正概要」に記載の制度変更が予定されています。住宅ローン控除は購入・入居のタイミングにより適用要件が変わるため、最新情報を国税庁または税務署で確認してください。

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頭金あり・なしで住宅ローン控除の恩恵はどれくらい変わるか

頭金の有無によって借入額が変わると、住宅ローン控除で受けられる金額にも違いが生じる場合があります。ここでは、一般中古住宅(借入限度額2,000万円・控除率0.7%)を例に見てみましょう。

物件価格が2,500万円の場合、頭金なしなら借入額は2,500万円です。ただし、控除の対象となる借入額の上限は2,000万円のため、年間の控除額は最大14万円、10年間では最大140万円となります。

一方、頭金500万円を用意して借入額が2,000万円になった場合も、年間最大14万円、10年間で最大140万円です。このケースでは、頭金の有無による控除額の差はありません。

では、省エネ基準適合住宅(借入限度額3,000万円)の場合はどうでしょうか。頭金なしで3,000万円を借りると、年間最大21万円、10年間で最大210万円の控除を受けられます。これに対し、頭金500万円を入れて借入額が2,500万円になると、年間最大17.5万円、10年間で最大175万円です。

つまり、この例では頭金なしの方が、10年間で最大35万円多く控除を受けられる計算になります。

注意
実際の控除額は毎年の年末ローン残高を基準に計算されます。また、所得税や住民税の納税額によっては、上限額まで控除を受けられない場合があります。購入前にファイナンシャルプランナーや税務署へ確認しておくと安心です。

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頭金を貯める期間の家賃負担がゼロになる

フルローンで早めに中古住宅を購入すると、頭金を貯めている間に支払うはずだった家賃をなくせる点が大きなメリットです。

頭金を準備するために賃貸住宅へ住み続ける場合でも、家賃は毎月発生します。たとえば家賃が月7万円なら、3年間で252万円、5年間では420万円もの支出になります。

しかも、この家賃は支払っても資産として残りません。一方で、住宅ローンの返済には借入元本を減らす部分が含まれているため、将来的に住宅を売却した際に回収できる可能性があります。

もちろん、「頭金なしで今すぐ購入した場合の利息負担」と「頭金を貯める間の家賃負担」のどちらが有利かは、物件価格や金利などの条件によって異なります。この点については、本記事の「5.「今すぐ頭金なしで買う」vs「頭金を貯めてから買う」どちらが得か」で具体的な数字を使って比較します。

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4. 頭金なしで中古住宅を購入するデメリットとリスク

頭金なしで中古住宅を購入することには多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットやリスクも存在します。

ただし、「フルローンは危険」といった漠然としたイメージだけで判断する必要はありません。大切なのは、どのようなリスクがあり、それが自分にどの程度影響するのかを具体的に理解することです。

また、多くのリスクには事前の対策方法があります。ここからは、頭金なしで中古住宅を購入する際に知っておきたい主なリスクと、その考え方について解説します。

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月々の返済額と利息総額が増える

頭金なしで中古住宅を購入すると、その分だけ借入額が増えるため、毎月の返済額と将来支払う利息の総額も大きくなる傾向があります。これは、フルローンを利用する際の代表的なデメリットです。

そのデメリットを具体的にイメージするには、「頭金を100万円増やすと毎月の返済額がどれだけ減るのか」を確認するのが有効です。以下では、物件価格2,500万円、金利1.5%、返済期間35年、元利均等返済という条件で試算した結果をご紹介します。

頭金の額 借入額 月々の返済額(概算) 総返済額(概算) 利息総額(概算)
0円(フルローン) 2,500万円 約7万6,000円 約3,215万円 約715万円
100万円 2,400万円 約7万3,000円 約3,086万円 約686万円
300万円 2,200万円 約6万7,000円 約2,829万円 約629万円
500万円 2,000万円 約6万1,000円 約2,572万円 約572万円

頭金100万円を入れるごとに、月返済額は約3,000円・利息総額は約29万円の削減効果があります。ただし、このコストと「頭金100万円を手元に残しておく価値」を比較して総合的に判断することが重要です。

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審査ハードルが上がり希望額を借りられない可能性がある

フルローンの審査リスクは「落ちる」よりも「融資額が借入希望額に届かない」という形で現れやすい点に注意が必要です。

本記事の「2.中古住宅でフルローンが「新築より難しい」構造的な理由」で解説したとおり、中古住宅特有の担保評価問題が借入可能額の上限を決めます。

「審査に落ちた=信用力の問題」と即断するのは誤りです。それは、「担保評価が借入希望額に届かなかった=物件の問題」というケースが少なくないためです。

担保評価が低い物件であっても、予算を引き下げて別の物件に切り替えることで解決できる場合があります。対処法は本記事の「物件の担保評価が低い場合」で詳しく解説します。

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担保割れリスク——住み替え・売却が難しくなる

担保割れ(たんぽわれ)とは、住宅ローンの残債(ざんさい)が物件の資産価値を上回っている状態のことです。この状態では、物件を売却してもローンを完済できません。

フルローンは元本の減りが遅いため、担保割れが生じやすい構造にあります。元利均等返済(がんりきんとうへんさい)では、返済初期の大部分が利息に充てられ、元本の減少が遅れるからです。

たとえば、2,500万円・金利1.5%・35年返済の場合、10年後の残債はまだ約2,000万円前後残ります。その間に建物の経年劣化で資産価値が1,500万円まで下がれば、約500万円の担保割れが生じます。

注意
担保割れの状態で売却するには、差額を現金で補填(ほてん)しなければ金融機関が抵当権を外してくれません。「5〜10年以内の住み替えを検討している」という方は、フルローンのリスクとして特に重視してください。
フルローンで中古住宅を購入した場合の住宅ローン残債と資産価値の推移と担保割れリスクを示したグラフ

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2024年以降の金利上昇局面での変動金利リスク

変動金利型のローンを選ぶ場合、日銀の政策金利動向が返済額に直接影響します。この点は2024年以降、無視できないリスクになっています。

日本銀行は2024年3月に17年ぶりとなる利上げを実施してゼロ金利を解除し、同年7月、2025年1月と追加利上げを重ねてきました。

さらに、2025年12月には政策金利を0.75%程度へ引き上げ、1995年以来30年ぶりの高水準となりました。日銀は2026年以降も経済・物価情勢をみながら利上げを継続する方針を示しています。

すでに変動金利で借りている方は、2025年12月の利上げを受けて2026年4月(一部銀行は5月)から借入先銀行の基準金利が年0.25〜0.35%上がり、2026年7月以降の返済に反映される見通しです。

借入額が大きいほど、同じ金利上昇幅でも返済額の増加は大きくなります。

たとえば、残債2,500万円で金利が0.5%上昇した場合、月返済額は約3,000〜4,000円増加します。残債1,500万円なら同じ上昇幅でも増加は約2,000〜2,500円程度にとどまります。

フルローンとは、この金利上昇リスクを最大化した状態で出発することでもあるのです。

対処法は2つです。ひとつは変動金利を選ばず、固定金利またはフラット35で借りること。もうひとつは変動金利を選ぶ場合でも、繰上返済(くりあげへんさい)の計画を立てて元本を早期に減らすことです。

金利の先行きを断言できる専門家はいませんが、「金利が上がっても対応できる家計の余裕があるか」を事前に確認しておくことが最低限必要な備えです(出典・参考:日本銀行 金融政策)。

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5. 「今すぐ頭金なしで買う」vs「頭金を貯めてから買う」どちらが得か

「フルローンは利息が増えるので損」と考えられがちですが、それだけで判断することはできません。

なぜなら、頭金を貯めるために購入を先延ばしにすると、その間は家賃を払い続ける必要があるからです。つまり、本当に比較すべきなのは「フルローンによって増える利息」と「購入を待つ間に支払う家賃」のどちらが大きいかです。

どちらが得になるかは、家賃や購入時期、金利などの条件によって変わります。この章では、具体的な数字を使いながら、それぞれのケースを比較します。

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比較の前提条件の設定

シミュレーションの前提を以下のとおりに設定します。中古住宅の購入を検討する際にご自身の状況へ応用するときは、各数値を置き換えてください。

  • 物件価格:2,500万円
  • 住宅ローン金利:年1.5%(固定)・35年元利均等返済
  • 現在の家賃:月7万円
  • 毎月の貯蓄額:月5万円
  • 3年間で貯まる頭金:180万円(5万円×12か月×3年)
  • 5年間で貯まる頭金:300万円(5万円×12か月×5年)

比較の軸は「家賃+利息の合計コスト」です。元本は将来の資産として残るため、コストとしてカウントしません。

なお、金利年1.5%は比較検討のための仮定値であり、2026年6月時点のフラット35実際の金利(90%以下で年3.21%等)とは異なるため留意してください。

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総コスト比較シミュレーション

「今すぐ買う」と「待ってから買う」で、家賃と利息を合わせたコストがどう変わるかを計算します。

パターンA:今すぐフルローンで購入

借入額2,500万円・利息総額は約715万円。家賃負担はゼロ。購入後すぐにローン返済が始まります。

パターンB:3年間賃貸に住みながら頭金を貯めてから購入

3年間の家賃合計は252万円。頭金180万円が貯まり、借入額は2,320万円に減ります。利息総額は約664万円。家賃と利息を合わせた合計コストは約916万円です。

パターンC:5年間賃貸に住みながら頭金を貯めてから購入

5年間の家賃合計は420万円。頭金300万円が貯まり、借入額は2,200万円に減ります。利息総額は約629万円。家賃と利息を合わせた合計コストは約1,049万円です。

総コスト比較シミュレーション一覧
パターン 待機期間 家賃の合計 頭金 借入額 利息総額 家賃+利息の合計 今すぐ購入との差
A:今すぐ購入 0年 0万円 0万円 2,500万円 約715万円 約715万円
B:3年待ち 3年 252万円 180万円 2,320万円 約664万円 約916万円 +約201万円
C:5年待ち 5年 420万円 300万円 2,200万円 約629万円 約1,049万円 +約334万円
頭金なしで今すぐ中古住宅を購入する場合と頭金を貯めてから購入する場合の総コスト比較グラフ

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損益分岐点——頭金をいくら貯めてから買うのが最もお得か

「今すぐ頭金なしで買う」vs「頭金を貯めてから買う」のどちらが得かのシミュレーションの結論は明確です。

家賃月7万円・毎月5万円貯蓄という前提では、待てば待つほど総コストは増え続け、損益分岐点(今すぐ購入のコストに追いつく年数)は存在しません。

その理由は数字を見れば明らかです。毎年の利息節約額と毎年の家賃負担を比べると、1年待つごとに利息が約17万円節約できる一方、家賃は84万円かかります。差し引き約67万円のコスト超過が毎年積み上がっていきます。

ただし、これは「家賃月7万円・貯蓄月5万円・金利1.5%固定」という特定の条件での結果です。以下のように条件が変わると損益分岐点も変わるため留意してください。

  • 家賃が低い場合(月4〜5万円以下): 待機コストが小さくなり、頭金効果が相対的に大きくなる
  • 貯蓄ペースが速い場合(月15万円以上): 短期間で大きな頭金が貯まり、利息節約効果が高まる
  • 借入金利が高い場合: 頭金による利息節約効果が大きくなる

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物価・金利環境が与える影響

本記事の「5-2.総コスト比較シミュレーション」と「5-3.損益分岐点——頭金をいくら貯めてから買うのが最もお得か」のシミュレーションは「金利固定・物件価格一定」という前提で計算しています。

しかし現実には、2つの変数が結果を変えます。

ひとつは金利の動向です。日銀は2024年以降、段階的な利上げを実施しており、変動金利型ローンを選んだ場合、待機している間に適用金利が上昇するリスクがあります。「今の金利水準で借りられる」という確実性は、今すぐ購入する場合にのみ存在します。

もうひとつは物件価格の変動です。人気エリアや都市部では、待機している間に物件価格が上昇し、同じ物件が買えなくなるケースがあります。価格が上がれば、せっかく貯めた頭金の効果が薄れることになります。

これらの変数は予測が困難なため、断言は避けます。ただ、「今すぐ買う理由」として金利・価格の上昇リスクが存在することは、意思決定の材料として加味する価値があります。

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6. あなたはどちらを選ぶべきか——判断チェックリスト

フルローンに向いているかどうかは、収入や貯蓄だけでは判断できません。住み替えの時期、金利の選択、現在の家賃水準、手元資金の厚さという複数の条件を組み合わせて判断する必要があります。

この章では、「フルローンを安全に選べる条件」「頭金を用意した方がよい条件」「その中間の第三の選択肢」の3つを整理します。

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フルローン(頭金なし)に向いている人の条件

フルローンは、安定した家計基盤があり、購入した住宅に長く住む予定の人ほど活用しやすい方法です。次の条件に多く当てはまる場合は、頭金なしで中古住宅を購入しても大きな問題が生じにくいと考えられます。

  • 手元に生活費6か月分以上の貯蓄がある リフォーム費用や医療費、失業などの予想外の出費が発生しても対応しやすいためです。月の生活費が25万円なら、150万円以上の貯蓄がひとつの目安になります。
  • 勤続3年以上・収入が安定している 住宅ローン審査で評価されやすく、購入後も無理なく返済を続けられる可能性が高くなります。
  • 現在の家賃が月7万円以上 本記事の「5.「今すぐ頭金なしで買う」vs「頭金を貯めてから買う」どちらが得か」のシミュレーションが示すとおり、家賃が高いほど、購入を先延ばしにした場合の負担も大きくなります。そのため、早めに購入するメリットが大きくなりやすい傾向があります。
  • 住み替えは10年以上先を想定している 長期間住むことで住宅ローン残高が減り、担保割れのリスクを抑えやすくなります。
  • 固定金利を選ぶ、または金利上昇への備えがある 将来的な金利上昇による返済額の増加リスクを軽減しやすくなります。

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頭金を用意してから購入した方がよい人の条件

頭金なしで中古住宅を購入できるからといって、すべての人にフルローンが向いているわけではありません。状況によっては、頭金を準備してから購入した方が安心できるケースもあります。

次のような条件に当てはまる場合は、頭金の確保を優先した方がよいでしょう。

  • 5年以内に住み替えや売却を予定している 住宅ローン残高が物件の売却価格を上回る「担保割れ」の状態で売却すると、不足分を現金で補う必要があります。近いうちに住み替える予定があるなら、頭金を入れて借入額を抑えておく方が安全です。
  • 変動金利を選ぶ予定で、金利上昇への備えが薄い 金利が上昇すると毎月の返済額も増える可能性があります。借入額が大きいほど影響も大きくなるため、家計に余裕がない場合は注意が必要です。
  • 手元の貯蓄が少なく、万が一の出費に対応できない 住宅購入後は、設備の故障や追加のリフォームなどで予想外の出費が発生することがあります。そのような場合に備えられる現金を確保しておくことが大切です。
  • 自営業・転職直後など収入が不安定 住宅ローン審査に通ったとしても、収入の変動が大きいと返済負担が重くなる可能性があります。頭金を入れて借入額を減らした方がリスクを抑えやすくなります。

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一部頭金(部分的な自己資金)という現実的な第三の選択肢

住宅購入では、「頭金なし」と「できるだけ多く頭金を入れる」のどちらかを選ばなければならないわけではありません。その中間となる「一部だけ頭金を入れる」という方法もあります。

実践しやすい方法のひとつが、フラット35の融資率を90%以下に抑えることです。融資率とは、購入費用に対して借り入れる金額の割合を指します。

たとえば、2,500万円の物件なら借入額を2,250万円以下にすると融資率は90%以下になります。フラット35では、融資率が90%以下になると低い金利が適用されます(参考:フラット35 金利情報)。

2026年6月時点では、融資率90%以下と90%超で0.11%の金利差があり、250万円の頭金を入れることで、35年間の利息負担を数十万円抑えられる可能性があります。

また、手付金と頭金を組み合わせる方法もあります。たとえば、物件価格の5%にあたる125万円を手付金として支払い、残金決済時に手付金125万円は物件代金に充当されます。別途125万円を頭金として追加拠出することで、合計250万円の自己資金投入となり、借入額を2,250万円に抑えられます。

このように、一部だけ頭金を入れる方法なら、金利面のメリットを受けながら、手元資金もある程度確保できます。

中古住宅購入で頭金なしのフルローンか頭金ありかを判断するフローチャート図解

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7. フルローンで住宅ローン審査を通過するための実践的対策

フルローンの審査対策は「信用力を上げる」だけでは不十分です。中古住宅×フルローンという組み合わせでは、信用力・物件の担保評価・返済負担率という3つの軸を同時に整える必要があります。

審査に落ちる理由をあらかじめ把握し、各原因に対して手を打っておくことが、審査通過の最短ルートです。

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審査に落ちる3大原因と対処法

審査落ちの理由は「返済負担率」「信用情報」「担保評価」の3つに集約されます。それぞれに「自分に当てはまるかを事前に確認する方法」と「対処法」があります。

返済負担率が高すぎる場合

返済負担率とは、年収に対して年間のローン返済額がどのくらいの割合を占めるかを示す指標です。計算式は「年間返済額 ÷ 年収 × 100」です。

多くの金融機関では、この割合が30〜35%程度以内に収まっていることを融資審査の目安としています。

フルローンは借入額が大きくなるため、返済負担率も高くなりやすい傾向があります。また、見落としやすいポイントとして、住宅ローン以外の借入れも返済負担率に含まれることが挙げられます。

対象となるのは、自動車ローンやカードローンだけではありません。スマートフォンの分割払い、奨学金の返済なども含めて計算されます。

たとえば年収500万円の場合、返済負担率35%を上限とすると、年間返済額は175万円、月額では約14万6,000円が目安です。しかし、自動車ローンを毎月3万円返済している場合、その分が差し引かれ、住宅ローンに充てられる金額は月約11万6,000円まで減ってしまいます。

この条件で、金利1.5%・35年返済の住宅ローンを組むと、借入可能額は約3,790万円です。もし自動車ローンがなければ約4,760万円まで借りられるため、借入可能額には約970万円もの差が生じます。

対策としては、次の2つが有効です。

  • 物件価格を下げる、または一部頭金を入れて借入額を減らす
  • 住宅ローンを申し込む前に、自動車ローンなどの借入れを完済する

特に後者は効果が大きく、カーローンを完済したことで審査結果が改善するケースも少なくありません。

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信用情報に問題がある場合

個人信用情報とは、クレジットカードや各種ローンの利用状況、返済履歴などが記録された情報です。

返済の遅れや長期間の滞納があると、「異動」という情報が登録されます。この異動情報があると、住宅ローンを含む金融機関の審査で不利になりやすく、一般的には登録から約5年間影響が続くとされています。

そのため、フルローンを申し込む前に、自分の信用情報を確認しておくことが大切です。信用情報は、CIC(株式会社シー・アイ・シー)JICC(日本信用情報機構)に開示請求することで確認できます。

もし異動情報が登録されていた場合は、記録が消えるまで待ってから申し込むことが現実的な対応策となります。

注意
信用情報に異動がなくても安心とは限りません。短期間に複数の金融機関へ住宅ローンを申し込むと、「多重申込み」として記録されることがあります。これが審査にマイナスに働く場合もあるため、申込みは1〜2行ずつ順番に進める方が無難です。

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物件の担保評価が低い場合

本記事の「2.中古住宅でフルローンが「新築より難しい」構造的な理由」で解説した担保評価の問題は、物件選びの段階で手を打つことが最も効果的な対処法です。

インスペクション(住宅診断)を実施して建物の状態を明確にし、既存住宅売買瑕疵保険(きぞんじゅうたくばいばいかしほけん)を取得することで、金融機関が担保価値をより高く評価するケースがあります。

既存住宅売買瑕疵保険とは、購入後に発見された雨漏りや構造上の欠陥に対して保険金が支払われる仕組みで、物件の品質を第三者が保証する効果があります。

ただし、担保評価が借入希望額に届かない場合の最も確実な対処法は、予算を引き下げて別の物件を選ぶことです。この点は特に留意してください。「気に入った物件への執着」が、資金計画を歪める最大のリスクといえます。

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事前審査(仮審査)を必ず行うべき理由と手順

事前審査(じぜんしんさ)とは、売買契約を締結する前に、金融機関から借入可能かどうかの大まかな判定を受けることです。フルローン×中古住宅の組み合わせでは、この事前審査が特に重要な意味を持ちます。

売買契約を先に締結してしまうと、手付金を支払った後に本審査で「希望額に届かない」という問題が発覚します。

ローン特約(詳細は本記事の「7-5.審査に落ちても手付金が戻る——ローン特約の仕組み」で解説します)があれば手付金は戻りますが、その手続きには時間と手間がかかります。

事前審査で借入可能額のおおよその上限を把握してから物件を探すのが、フルローンで中古住宅を購入する正しいステップです。

注意
事前審査の承認は本審査を保証するものではありません。事前審査後に収入や信用情報に変化があった場合、本審査で結果が変わることがあります。事前審査から本審査の間に、新たな借入れや転職は避けることが重要です。

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複数の金融機関に当たるべき理由

ひとつの金融機関で住宅ローン審査に落ちたとしても、他の金融機関なら通過できる可能性があります。なぜなら、住宅ローンの審査基準は金融機関ごとに異なるためです。

特に、中古住宅をフルローンで購入するケースでは、金融機関によって評価の考え方に大きな違いがあります。たとえば、物件の担保評価を重視する金融機関もあれば、年収や勤務先など申込者の属性を重視する金融機関もあります。

また、都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行、フラット35を取り扱う金融機関では、担保評価の方法や収入の見方、融資条件がそれぞれ異なります。

そのため、「1行で審査に通らなかったからフルローンは無理」と判断する必要はありません。実際には、別の金融機関で条件付き承認や満額承認を受けられるケースもあります。

フルローンを希望する場合は、少なくとも3〜5行程度の金融機関に相談し、自分に合った融資先を探すことが大切です。

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フラット35を使う場合の融資率と金利の関係

フラット35を利用する際は、「融資率」が金利に影響する点を理解しておくことが大切です。融資率とは、物件の取得費用に対して借入額がどれくらいの割合を占めるかを示す数値です。

頭金なしで中古住宅を購入する場合、物件価格の全額を借りることになるため、融資率は100%以上となります(諸費用もフラット35で借りる場合はさらに高くなります)。この場合、フラット35では「融資率90%超」の金利区分が適用されます。

2026年6月時点の最低金利(借入期間21〜35年)は、融資率90%以下で年3.21%、融資率90%超で年3.32%です。一見すると差は0.11%しかありませんが、2,500万円を35年間借りるケースでは、支払う利息総額に約50万円の差が生じます。

そのため、少額でも頭金を入れて融資率を90%以下に抑えられる場合は、長期的な利息負担を軽減できる可能性があります。

なお、フラット35では仲介手数料や登記費用、火災保険料などの諸費用も借入対象として認められています。これらの費用をローンに含めることで、借入額が物件価格を上回り、融資率が100%を超えることがあります。

ただし、これは民間銀行で問題視されることがある「オーバーローン」とは性質が異なります。フラット35の制度で認められた正規の借入方法であり、仕組み上想定されている取扱いです。

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審査に落ちても手付金が戻る——ローン特約の仕組み

「フルローンの審査に落ちたら、支払った手付金は戻ってこないのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。しかし、中古住宅の売買契約ではローン特約が付いていることが一般的であり、その場合は審査に通らなくても手付金が返還されます。

ローン特約とは、住宅ローンの本審査が否決されたときに、売買契約を無条件で解除できる制度です。すでに支払った手付金も原則として全額返還されるため、買主にとって重要な保護措置といえます。

筆者自身も、売主として中古住宅を売却した際に、購入希望者から手付金の減額を求められた経験があります。不動産会社から「信頼できる方です」と説明を受けていたこともあり了承しましたが、この経験を通じて、手付金の金額や契約内容が取引に大きく影響することを実感しました。

そのため、住宅ローンを利用して中古住宅を購入する場合は、手付金の金額だけでなく、ローン特約の内容まで必ず確認しておくことが大切です。売主・買主のどちらの立場であっても、契約前にしっかりチェックしておきましょう。

ローン特約を活用する際には、以下の2点を必ず売買契約書で確認してください。

  • ローン特約が契約書に明記されているか 口頭での約束は効力を持ちません。
  • ローン特約の期限が設定されているか 本審査の申込み期限・否決の通知期限が定められており、期限を過ぎると特約の効力が失われます。
注意
ローン特約は「本審査の否決」が条件です。「借入額が希望より少なかった(減額承認)」という場合は、契約書の記載によっては特約が適用されないケースもあります。契約締結前に、取引を担当する不動産会社の宅地建物取引士、または弁護士に特約の適用範囲を必ず確認してください。
住宅ローン審査に落ちた場合にローン特約(ローン解除条件)を使って手付金が戻ってくる手続きの流れ

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8. フルローンで中古住宅を購入する際の資金計画の立て方

「フルローンで買う」と決めたあとに多くの方が直面するのが、「現金はいくら用意すればよいか」という疑問です。フラット35の諸費用借入を活用すれば、現金負担を最小限に抑えられますが、それでも手付金を中心に一定の現金は必ず必要です。

この章では、何が現金必須で、何がローンで賄えるのかを整理します。

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フルローンとオーバーローン——資金計画での使い分け

フルローンとオーバーローンは似た言葉ですが、意味は異なります。

  • フルローン:物件価格の全額をローンで借りること
  • オーバーローン:物件価格に加えて、仲介手数料や登記費用などの諸費用もローンで借りること

頭金なしで中古住宅を購入する場合は、「物件価格だけでなく諸費用も借りられるか」が重要なポイントになります。

民間銀行では、諸費用分の借入れを住宅ローンとは別の「諸費用ローン」として扱うことがあります。その場合、通常の住宅ローンより審査が厳しくなったり、金利が高くなったりするケースがあります。

一方、フラット35では、仲介手数料・登記費用・火災保険料などの所定の諸費用を正式な借入対象として認めています。そのため、民間銀行で使われる「オーバーローン」という考え方は基本的に当てはまりません。

このように、諸費用をローンに含められるかどうかは、利用する金融機関や商品によって異なります。諸費用も含めて借りたい場合は、フラット35も有力な選択肢のひとつです。ただし、実際の取扱条件は金融機関によって異なるため、申込み前に詳細を確認しておきましょう。

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フラット35で諸費用を借り入れる方法

フラット35では、住宅の購入代金だけでなく、一定の諸費用も借入対象に含められます。そのため、頭金や諸費用の自己資金を十分に用意できない場合でも、住宅購入を進めやすくなります。

対象となる諸費用には、通常のフラット35で借りられるものと、リフォーム費用を住宅ローンとまとめて借りる「フラット35リノベ(リフォーム一体タイプ)」でのみ借りられるものがあります。

ただし、実際に借りられる費用の範囲や必要書類は取扱金融機関によって異なる場合があります。フラット35の利用を検討する際は、希望する費用が借入対象になるかどうかを事前に確認しておきましょう。

フラット35(住宅を購入する場合)の借入対象となる主な諸費用
費用項目 備考
住宅購入に係る仲介手数料
融資手数料
登記費用(司法書士報酬・土地家屋調査士報酬)
登記費用(登録免許税)
火災保険料・地震保険料 積立型火災保険商品を除く
売買契約書・金銭消費貸借契約証書の印紙代(買主負担分)
固定資産税・都市計画税の清算金
ホームインスペクション(住宅診断)・耐震診断に係る費用
既存住宅売買瑕疵保険の付保に係る費用
リフォーム瑕疵保険の付保に係る費用 フラット35リノベ(リフォーム一体タイプ)のみ
マンション修繕積立基金・管理準備金(引渡時一括分) マンション購入のみ

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頭金なしで購入する場合に現金で用意すべき費用の目安

フルローン+フラット35の諸費用借入を最大限活用した場合でも、現金でなければ対応できない費用が存在します。

最も重要なのは手付金です。手付金は売買契約締結時に売主へ現金で支払うものであり、融資実行前のため住宅ローンで賄えません。

不動産取得税については、物件取得後3〜6か月後に都道府県から納税通知書が届きます。融資実行後の支出であり、忘れた頃に届くため、購入時に現金を残しておく必要があります。

頭金なし(フルローン)で購入する際に現金で用意すべき費用の目安(物件2,500万円の場合)
費用項目 金額の目安 支払タイミング ローンで賄える? 備考
手付金 125〜250万円(物件価格の5〜10%) 売買契約時(融資実行前) × 現金必須 フルローンでも例外なく現金で必要
仲介手数料 約89万1,000円(税込上限額) 売買契約時・残金決済時 フラット35で可 分割払いが慣例(半額ずつ)。速算式:物件価格×3%+6万円+消費税
登記費用 20〜50万円程度 融資実行後 フラット35で可 物件・ローン額により変動
融資手数料 金融機関による 融資実行時 フラット35で可
火災保険料 10〜30万円程度 融資実行前後 フラット35で可 積立型を除く
不動産取得税 軽減措置が適用される場合:概ね10〜30万円程度。軽減措置が適用されない場合(旧耐震基準など):50万円前後になることもある 取得後3〜6か月後 × 届く頃には忘れがちなため要注意
現金の最低必要額目安 手付金+不動産取得税程度(約135〜300万円) フラット35活用の場合。軽減措置あり下限135万円〜軽減措置なし上限300万円

ちなみに、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、中古マンションの不動産取得税がゼロになる条件を解説する記事を公開中です。ぜひご覧ください。

お役立ち記事
中古マンションの不動産取得税|税額ゼロになる条件と計算方法

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リフォーム費用の調達方法——フラット35リノベの活用

中古住宅を購入してリフォームを予定している場合、「フラット35リノベ(リフォーム一体タイプ)」を活用することで、物件購入費用とリフォーム費用を一本のローンで借りられる可能性があります。

フラット35リノベとは、一定の性能基準を満たすリフォームと一体でフラット35を利用する制度です。通常のフラット35では借入対象外となるリフォームの設計費用・工事監理費用・リフォーム瑕疵保険の付保費用なども、フラット35リノベ(リフォーム一体タイプ)では借入対象に含められます。

中古住宅の購入と同時にリフォームを計画している方にとっては、資金調達の選択肢として検討する価値があります(参考:住宅金融支援機構 フラット35リノベ)。

注意
フラット35リノベを利用するには、リフォーム工事によって住宅が一定の性能基準を満たしたことを証明する「適合証明」が必要です。また、利用条件や必要書類、手続きの流れは取扱金融機関によって異なる場合があります。申込みを検討する際は、住宅金融支援機構の公式サイトや取扱金融機関で最新情報を確認しましょう。

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まとめ——「中古住宅×頭金なし」を成功させる5つのポイント

頭金なしで中古住宅を購入する方法・メリット・リスク・審査対策・資金計画を順を追って解説しました。購入を成功させるために押さえるべき5つのポイントと、読者が次に取るべき行動をまとめます。

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記事で解説した5つのポイントの整理

中古住宅を頭金なしで購入するうえで、見落としが大きな損失につながるポイントを5つに絞ります。

① 手付金だけは現金で必要——最重要

フルローンを選んでも、売買契約時に売主へ支払う手付金は現金で用意しなければなりません。物件価格の5〜10%が目安で、2,500万円の物件なら125〜250万円です。「頭金なし=現金ゼロで買える」という誤解に注意してください。

② フラット35の諸費用借入で現金負担を最小化できる

仲介手数料・登記費用・火災保険料などの諸費用は、フラット35を活用することで借入対象に含められます。手付金と不動産取得税(軽減措置が適用される場合:概ね10〜30万円程度。軽減措置が適用されない場合(旧耐震基準など):50万円前後になることもある)を除けば、現金負担を大幅に圧縮できます。

一部の民間銀行も諸費用ローンに対応していますが、対応範囲は金融機関ごとに異なります。

③ 中古住宅は物件選びが審査に直結する

中古住宅特有の担保評価問題により、物件の築年数・耐震性・立地・インスペクションの実施有無が審査結果を左右します。「気に入った物件への執着」が資金計画を歪める最大のリスクです。

担保評価が借入希望額に届かない場合の最も確実な解決策は、購入を希望する物件の価格帯を引き下げることです。

④ フルローン×変動金利のダブルリスクには備えが必要

日銀は2024年以降、段階的な利上げを実施しており、2025年12月時点で政策金利は0.75%に達しています。借入額が大きいほど金利上昇の影響は大きくなります。

変動金利を選ぶ場合は、繰上返済の計画を立てるか、固定金利・フラット35への切り替えを検討してください。

⑤ ローン特約を確認してから契約に臨む

住宅ローンの本審査が否決された場合に手付金が全額返還される「ローン特約」が、売買契約書に明記されているかを必ず確認してください。期限内の申請が条件であり、口頭での約束は効力を持ちません。

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次のアクション——相談先と事前確認リスト

本記事をお読みになったあとに取るべき行動を、優先順位の高い順にまとめます。

  • 信用情報を自分で確認する CIC(株式会社シー・アイ・シー)またはJICC(日本信用情報機構)のウェブサイトから開示請求できます。申込み前に「異動」の有無を把握することが審査対策の第一歩です。
  • 住宅ローンの事前審査を申し込む 物件を決める前に複数の金融機関へ事前審査を申し込み、借入可能額の上限を把握してください。フラット35の取扱金融機関は「住宅金融支援機構 金融機関のお問い合わせ窓口」から探せます。
  • 気になる物件のインスペクションを依頼する インスペクション(住宅診断)の実施は担保評価の改善につながるだけでなく、購入後のリフォーム費用の見通しを立てる材料にもなります。
  • 売買契約書のローン特約の内容を確認する 契約締結前に、取引を担当する不動産会社の宅地建物取引士に特約の適用範囲・期限を確認してください。

頭金なしでの中古住宅購入は、正しい知識と準備があれば現実的な選択肢となります。本記事の内容が、皆さんの判断と行動の一助となれば幸いです。

最後に、頭金なしで中古住宅を購入することに関するよくある質問とその答えをまとめます。

頭金なしでも中古住宅は購入できますか?
購入できます。物件価格の全額を住宅ローンで賄う「フルローン」を利用する方法があります。ただし、売買契約時に売主へ現金で支払う手付金(物件価格の5〜10%が目安)は別途必要です。「現金ゼロで買える」という理解は誤りです。
頭金なしで中古住宅を買う場合、現金はいくら必要ですか?
最低でも手付金(物件価格の5〜10%)と不動産取得税(軽減措置が適用される場合:概ね10〜30万円程度。軽減措置が適用されない場合(旧耐震基準など):50万円前後になることもある)が現金で必要です。フラット35を活用すれば仲介手数料・登記費用・火災保険料などの諸費用はローンに含められるため、現金負担を抑えられます。
中古住宅のフルローンは新築より審査が厳しいですか?
厳しくなる場合があります。金融機関が物件を独自査定した担保評価額が売買価格を下回ると、差額分は融資できません。築浅・新耐震基準適合・インスペクション済みの物件は担保評価が高くなりやすく、フルローンが組みやすい傾向があります。
住宅ローン審査に落ちたら手付金は戻りますか?
売買契約書にローン特約(ローン解除条件)が明記されていれば、本審査が否決された場合に手付金は全額返還されます。ただし特約の期限内に解除通知を行うことが条件です。契約締結前に特約の有無と期限を必ず確認してください。
頭金を貯めてから買う場合と今すぐ買う場合、どちらが総コストは低いですか?
家賃月7万円・毎月5万円貯蓄の前提では、待つほど家賃コストが積み上がり、今すぐフルローンで購入する方が総コストは低くなります。ただし家賃が低い・貯蓄ペースが速い・金利が高いといった条件では結果が変わるため、個別に試算することを推奨します。
フラット35で諸費用もローンに含められますか?
含められます。フラット35では仲介手数料・登記費用・融資手数料・火災保険料・印紙代・固定資産税清算金・ホームインスペクション費用・既存住宅売買瑕疵保険料などが正規の借入対象です。詳細は取扱金融機関に事前確認してください。
著者・監修情報
誰でもわかる不動産売買(fudousan-wakaru.net)編集部。不動産の購入・売却・活用に関する情報を、はじめて不動産を検討する方にもわかりやすく伝えることを目的として運営しています。記事の作成にあたっては、国土交通省、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会などの公的機関の情報、および極めて信頼性が高い専門サイトの情報を参照しています。
参考資料・参考サイト
住宅金融支援機構 フラット35日本銀行国土交通省 令和8年度税制改正概要国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額東京主税局 不動産取得税の軽減制度について
注意点
本記事の内容は令和8年6月時点のものです。最新の情報はフラット35の公式サイトなどにてご確認ください。

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