中古マンションの雨漏りの対処法

購入した中古マンションに雨漏りが見付かれば、売買契約書と重要事項説明書の内容を確認しつつ対処する必要があります。
引き渡しを受けた中古マンションに雨漏りを発見しつつ戸惑う方へ向けて、その対処方法をご紹介しましょう。
なお、今回ご紹介するのは2020年4月に改正された民法を基にする対処方法であり、2020年4月以降に売買契約を結びつつ購入した中古マンションに限り適用できるため注意してください。
目次
- 1. 売買契約書と重要事項説明書を用意する
- 2. 売り主を確認する
- 3. 個人が売主の場合の対処法
- 4. 不動産業者が売主の場合の対処法
- まとめ - 負担すべき修繕費用はさほど高くはない
1. 売買契約書と重要事項説明書を用意する
購入した中古マンションに雨漏りが見つかれば、まずは売買契約書と重要事項説明書をご用意ください。
売買契約書とは、中古マンションを購入する際に売り主と交わした売買契約の内容が記された書面であり、売り主と買い主の署名捺印があります。
重要事項説明書とは、中古マンションの売り主と売買契約を結ぶ前に、その物件を取り扱う不動産業者から受けた重要事項説明の内容をまとめた書面です。
中古マンションを購入する際に不動産業者から受ける重要事項説明とは、そのマンションの現状などに関する説明であり、公に営業する不動産業者が取り扱う不動産を購入する際は必ず同説明を受け、重要事項説明書には買い主の方による署名捺印が入っています。
国土交通省が公開する重要事項説明書の見本は以下のとおりです。
国土交通省が公開する重要事項説明書の見本

購入した中古マンションに雨漏りが見つかった場合は、焦らず売買契約書と重要事項説明書を用意してください。
2. 売り主を確認する
つぎに、売買契約書をご覧になり、購入した中古マンションの売り主をご確認ください。
中古マンションは、個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す物件と、不動産業者が直接売りに出す物件に大きく分類され、それぞれで売り主が異なります。
個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す中古マンションの売り主は個人です。
一方、不動産業者が直接売りに出す中古マンションの売り主は不動産業者です。
個人が売り主である中古マンションを不動産業者を仲介させつつ購入した場合は、物件代金の決済時などに不動産業者に仲介手数料を支払っています。
不動産業者が売り主である中古マンションを購入した場合は仲介手数料を支払わず、建物部分の購入価格に課せられた消費税を不動産業者に支払っています。

購入した中古マンションに雨漏りが見付かった場合の対処方法は、その物件の売り主が個人である場合と、不動産業者である場合によって異なります。
よって、中古マンションを購入しつつ雨漏りが見付かれば、売買契約書をご覧になりつつ売り主が個人であるか不動産業者であるか確認してください。
つづいて、個人が売り主である中古マンションを購入した場合と、不動産業者が売り主である中古マンションを購入した場合における、それぞれの対処方法をご紹介しましょう。
3. 個人が売主の場合の対処法
個人が売り主である中古マンションを不動産業者を仲介させつつ購入した場合は、売買契約書、または重要事項説明書に記されている以下のことを確認してください。
雨漏りに関する記述
まずは、重要事項説明書に雨漏りに関する記述がないかご確認ください。
重要事項説明書に雨漏りがあるとの記述がある場合は、雨漏りがあることを了承しつつ中古マンションを購入したこととなります。
この場合は、残念ながらご自身で雨漏りに対応しなくてはなりません。
具体的には、購入した中古マンションの管理組合に雨漏りがあることを報告します。
報告を受けた管理組合は雨水が侵入する箇所を調査し、雨漏りの原因が専有部分にある場合は中古マンションの買い主が修繕費用を負担しつつ修補することとなります。
雨漏りの原因が共用部分にある場合は、管理組合が修繕費用を負担しつつ修補されます。
専有部分とは、主に各戸の所有者が所有する住戸部分です。
一方、共用部分とは専有部分以外の部分であり、屋上や外壁、廊下、階段、各戸のバルコニー、各戸の窓枠や窓ガラスなどが該当します。
ただし、専有部分と共用部分の定義は、購入した中古マンションによって異なるため注意してください。
購入した中古マンションの専有部分と共用部分の正確な定義は、そのマンションの管理規約に記されています。
規約書を受け取っていないなどの理由で管理規約の内容を見ることができない場合は、購入した中古マンションの理事長に問い合わせることにより確認することが可能です。
契約不適合責任に関する記述
重要事項説明書に雨漏りがあるとの記述がない場合は、売買契約書に記されている契約不適合責任に関する記述をご確認ください。
中古マンションの売買契約における契約不適合責任とは、中古マンションの売り主が負う責任のことです。
そもそも中古マンションの買い主は、民法の第五百六十二条により追完請求権を有しています。
中古マンションの買い主が有する追完請求権とは、購入した物件に雨漏りなどの欠陥があった場合に売り主に修繕などを請求できる権利です。
この買い主が有する追完請求権を果たす責任が、契約不適合責任です。
しかし、売買契約書に売り主が契約不適合責任を免れるとの記述がある場合は、買い主は追完請求権を行使できません。
たとえば、以下のような記述が売買契約書に含まれている場合です。
売り主は買り主に対し、契約不適合を理由とする追完請求などの責任を負わない
また、売買契約書に以下のような記述がある場合は、買い主がその期限までに売り主に雨漏りがあることを通知した場合に限り追完請求権を行使できます。
買い主が契約不適合を発見した場合は、物件の引き渡し日から3カ月以内に売り主に通知した場合に限り追完請求できる
よって、中古マンションを購入しつつ雨漏りが見つかった場合は、売買契約書に記されている契約不適合責任に関する記述を確認してください。
売買契約書に売り主が契約不適合責任を免れるとの記述がある場合は、買い主が雨漏りに対応することとなります。
売買契約書に売り主が契約不適合責任を負う期限が記され、なおかつ雨漏りを発見したときがその期限内であれば、速やかに売り主に雨漏りがあることを通知しつつ修繕を請求してください。
そうすれば、売り主が修繕を手配しつつその費用も負担することとなるでしょう。
雨漏りを発見したときがその期限を過ぎている場合は、買い主がご自身で雨漏りに対応することとなります。
具体的には、管理組合に雨漏りがあることを連絡します。
連絡を受けた管理組合は原因を調査し、雨漏りの原因が専有部分である場合は中古マンションの買い主が費用を負担しつつ修繕することとなります。
雨水が侵入する箇所が共用部分である場合は、管理組合が費用を負担しつつ雨漏りが修繕されます。
なお、売買契約書に契約不適合責任に関する記述が一切ない場合は、速やかに売り主に雨漏りがあることを通知し、修繕を請求してください。
修繕を請求した日が雨漏りを発見した日から5年、なおかつ中古マンションの引き渡しを受けた日から10年が経過していなければ売り主が雨漏りに対応することとなります。
4. 不動産業者が売主の場合の対処法
中古マンションの購入者は、民法の第五百六十二条により追完請求権を有します。
追完請求権とは、購入した中古マンションが売買契約にそぐわない品質である場合に売り主に修繕などを請求できる権利です。
雨漏りがある場合は、売買契約にそぐわない品質に該当します。
したがって、不動産業者が販売する中古マンションを購入しつつ雨漏りが見つかれば、速やかに不動産業者に通知しつつ修繕を依頼してください。
ただし、中古マンションの買い主が追完請求権を行使できるのは、物件が引き渡された日から2年以内などに雨漏りがあることを不動産業者に通知した場合に限られるため注意してください。
中古マンションが引き渡された日から2年などを過ぎた後に雨漏りがあることを不動産業者に通知しても、一部例外を除き不動産業者が修繕を請け負うことはありません。
2年などというとあいまいですが、正確な期間は売買契約書に記されています。
よって、中古マンションに雨漏りが発見された場合は売買契約書の内容を確認し、不動産業者が雨漏りがあることなどの通知を受け付ける期間を確認してください。
たとえば、売買契約書に以下のような記述がある場合は、不動産業者が雨漏りがあることなどの通知を受け付ける期間は中古マンションが引き渡された日から2年です。
売主は、本物件が品質に関して契約の内容に適合しない場合、物件引渡しの日から2年を経過する日までに通知を受けたものに限り契約不適合責任を負う
なお、宅地建物取引業法の第四十条により、不動産業者が通知を受け付ける期間は最低でも2年と定められています。
そのため、売買契約書に2年より短い期間に限り通知を受け付けた場合に限り修繕を行うなどの記述がある場合は、それは不動産業者によるミスです。
公に営業する不動産業者がそのようなミスを犯すことは滅多にありませんが、念のため気を付けてください。
また、物件が引き渡された日から2年などを過ぎた後に雨漏りがあることを発見した場合は中古マンションの買い主が修繕することとなりますが、まずは管理組合に雨漏りがあることを報告してください。
報告を受けた管理組合は雨漏りの原因を調査し、専有部分から雨水が侵入する場合は中古マンションの買い主が費用を負担しつつ修繕することとなります。
雨水の侵入箇所が共用部分である場合は、管理組合が費用を負担しつつ修繕されます。
専有部分とは各戸の室内などであり、共用部分とは専有部分に該当しない屋根、屋上、外壁、階段、エレベーター、バルコニーなどです。
購入した中古マンションの専有部分と共用部分の正確な定義は、そのマンションの管理規約に記されています。
まとめ - 負担すべき修繕費用はさほど高くはない
中古マンションを購入しつつ雨漏りが見つかった方へ向けて、その対処方法をご紹介しました。
中古マンションの購入者は、民法の第五百六十二条により追完請求権を有し、行使することにより売り主に修繕などを請求できます。
よって、中古マンションを購入しつつ雨漏りが見つかれば、速やかに売り主に通知しつつ修繕を請求するのが良いでしょう。
ただし、修繕を請求できるのは、中古マンションの引き渡しを受けた日から一定期間内に売り主に雨漏りがあることを通知した場合に限られるため注意してください。
期間は、売り主が個人である物件を購入した場合は3カ月など、売り主が不動産業者である物件を購入した場合は2年などであり、正確な期間は売買契約書に記されています。
また、売り主が個人である中古マンションを購入し、その売買契約に売り主が契約不適合責任を免れることの特約が含まれている場合は修繕を請求できず、買い主が修補を手配することとなります。
中古マンションを購入しつつ雨漏りを発見した方がいらっしゃいましたら、是非ご参考になさってください。
なお、売り主に修繕を請求できない場合は管理組合に雨漏りがあることを報告し、その原因が専有部分にある場合は買い主が修繕費用を負担することとなりますが、修繕費用はさほど高くなることはありません。
その理由は、修繕費用が高くなるのは主に外壁や屋上などの共用部分からの雨漏りであるためです。
共用部分からの雨漏りを修繕するためには比較的大がかりな工事が必要ですが、共用部分からの雨漏りの修繕費用は管理組合が負担します。
一方、専有部分からの雨漏りの原因といえば、主にマンションの躯体とサッシの隙間を埋めるコーキング材の劣化によるものです。
窓枠の隙間を埋めるコーキング材

コーキング材の寿命は5年から10年などであり、劣化するとマンションの躯体とサッシの間に隙間が生じ、そこから室内に雨水が侵入します。
雨漏りの原因がこれに該当する場合の修繕費用は、せいぜい2万円から3万円程度です。
雨漏りの修繕費用を負担することとなれば高額になるのではと心配になりますが、さほど案ずる必要はありません。
それより厄介なのは、雨漏りの原因が雨漏りではなく上階からの漏水の場合です。
マンションは築年数が経過すると給排水管が老朽化しつつひび割れし、下階に水漏れすることがあります。
水漏れの原因が真上の階であれば発見が容易ですが、場合によっては2階上の斜めの部屋などの場合があります。
この場合は原因の特定が困難であり、何度も検査を繰り返し、場合によっては検査時の在宅を求められることもあります。

私も過去に中古マンションを購入しつつ上階からの水漏れを経験しましたが、管理組合が上手く機能していないこともあって原因の特定に半年を要しました。
原因が特定するまでの半年の間、私の部屋の天井からは雫がたれ続けていたのです。
今思えば良い経験になりましたが、当時は決して快適ではありませんでした。
ご紹介した内容が、中古マンションの雨漏りの対処方法をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2021年6月
記事公開日:2019年10月
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