長期優良住宅のデメリット|2025年改正で変わった注意点も解説

長期優良住宅のデメリットとは?2025年改正で変わった注意点も解説

ハウスメーカーや工務店から「長期優良住宅にしましょう」と勧められたものの、本当に良いか判断できずに迷っていませんか。

長期優良住宅には税制優遇や補助金などのメリットがある一方で、建築コストの増加や入居後30年以上にわたる維持保全義務など、事前に把握しておかなければ後悔するデメリットも存在します。

そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、長期優良住宅の7つのデメリットを具体的な費用の目安とともに解説します。2025年の制度改正で変わった注意点も併せてご紹介するため、ぜひ参考になさってください。

目次

長期優良住宅とは何か

長期優良住宅のデメリットを正しく理解するには、まず制度の基本を押さえておく必要があります。

はじめに、長期優良住宅がどのような条件を満たした住宅なのか、またどのくらい普及しているのかをご紹介します。

▲ 目次に戻る

認定基準の概要と主な性能要件

長期優良住宅とは、国が定めた「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の基準を満たし、所管行政庁から認定を受けた住宅です。

「所管行政庁」とは、建築基準法に基づき建築物の確認・検査などを行う都道府県や市区町村の行政機関を指します。すなわち、長期優良住宅とは「長期にわたり安全・快適に住み続けられる家」として国が認定した住宅とお考えください。

認定を受けるためには、劣化対策・耐震性・省エネルギー性・維持管理のしやすさなど、複数の性能要件をすべて満たす必要があります。主な基準は以下のとおりです。

長期優良住宅(新築一戸建て)の主な認定基準

項目 内容
劣化対策 数世代にわたり構造躯体が使用できること(劣化対策等級3以上)
耐震性 極めてまれな地震でも継続使用できるよう損傷を低減すること(耐震等級2以上)
省エネルギー性 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を満たすこと
維持管理・更新の容易性 設備配管の点検・清掃・補修・更新が容易にできること(維持管理対策等級3)
住戸面積 75平方メートル以上(少なくとも1階が40平方メートル以上)
維持保全計画 30年以上の定期点検・補修等の計画を策定していること
居住環境 良好な景観や地域の居住環境の維持・向上への配慮があること
自然災害への配慮 災害リスクに応じた措置が講じられていること

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」(令和7年4月)

表中の「断熱等性能等級5」とは、住宅の断熱性能を国が7段階で評価したものであり、等級5はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)と同水準の高い断熱性能を指します。長期優良住宅は一般的な省エネ基準である等級4よりも高い性能が求められるため、断熱材や窓のグレードアップが必要となり、建築コストが増加するのが通例です。

また、表中の「一次エネルギー消費量等級6」とは、冷暖房・給湯・照明などに使うエネルギーの消費量を省エネルギー基準と比較して20パーセント以上削減することを求める基準を指します。よって、長期優良住宅は、高効率の給湯機・換気設備・LED照明などの導入が必要となります。

そして、それらの条件を満たしたうえで、着工前に所管行政庁へ申請し、認定を受けて初めて「長期優良住宅」として認められます。

▲ 目次に戻る

新築一戸建ての4軒に1軒が認定を取得している

長期優良住宅は、2009年の制度開始以来、着実に普及が進んでいます。一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のデータによると、令和5年度末時点で累計159万戸以上が普及しており、現在では新築一戸建て住宅の約4軒に1軒が認定を取得しています。

新築一戸建てにおける長期優良住宅の普及率を示すイラスト(4軒に1軒が認定取得)。

ただし、普及率の高さは「誰にとっても得な制度」を意味するわけではありません。よって、本記事の次項にてご紹介するデメリットを確認し、長期優良住宅がご自身の資金計画やライフプランに合っているかどうかをご判断ください。

▲ 目次に戻る

長期優良住宅の7つのデメリット

長期優良住宅のデメリットは、「費用」「手続き」「入居後の義務」の3つに大きく分類できます。そして、3つのデメリットは、以下のように7つのデメリットに分類されます。

長期優良住宅の7つのデメリット

  1. 建築コストが一般住宅より高くなる(初期費用が100万~200万円以上増加)
  2. 申請費用と手続きに最大30万円程度かかる(建築費とは別に20万~30万円が必要)
  3. 着工前の認定取得で工期が数か月延びる(入居までに半年以上かかることがある)
  4. 設計に制約が生じる場合がある(間取りや建材の選択肢が限られる)
  5. 30年以上にわたる維持保全の義務がある(10年以内ごとの定期点検が必要)
  6. 点検・修繕の記録を長期間保存する必要がある(記録の作成・保管が義務付けられる)
  7. 義務を怠ると認定が取り消される(残りの税優遇が失われるリスクがある)

ここから、上記の長期優良住宅の7つのデメリットを、具体的な金額や期間とともに解説します。ご自身の状況に当てはめながら各デメリットをご確認ください。

▲ 目次に戻る

建築コストが一般住宅より高くなる

長期優良住宅の建築費は、一般住宅より高くなります。建築費が一般住宅より高くなるのは、高い耐震性や断熱性を実現するために、高性能な建材や特殊な工法が必要になるためです。

費用の増加幅は建築会社や仕様によって異なりますが、100万~200万円程度、場合によってはそれ以上の上乗せになることもあり、一般には、以下のように建物の延床面積に比例して費用の増加幅が大きくなります。

建物の延床面積別・建築コスト増加の目安

建物の延床面積の目安 追加費用の目安
100平方メートル未満(約30坪) 80万~150万円程度
100~130平方メートル未満(約30~40坪) 100万~200万円程度
130平方メートル以上(約40坪以上) 150万~250万円以上

建築会社・構造・仕様により大きく異なります。参考値としてご活用ください。

費用の増加分の一部は、税制優遇や補助金などで回収できることもありますが、長期優良住宅を取得するための初期費用が増えること自体は避けられません。よって、長期優良住宅の取得を希望する場合は、資金計画の段階でこの増加分を組み込んでおくことが大切です。

一般住宅と長期優良住宅の建築コスト比較グラフ。高断熱・耐震・申請費用による100万~200万円程度の上乗せ分を可視化。

▲ 目次に戻る

申請費用と手続きに最大30万円程度かかる

長期優良住宅の認定を受けるには、建物の購入費とは別に申請費用が発生します。その内訳は、主に「登録住宅性能評価機関への技術審査費用」と「所管行政庁への認定申請手数料」の2つです。

行政庁への手数料は自治体によって異なりますが、一戸建て住宅の場合、5万~6万円程度が目安です。申請書類の作成には専門知識が必要なため、ハウスメーカーや工務店への代行依頼が一般的であり、その費用を含めると合計25万~30万円程度となります。

長期優良住宅の申請にかかる費用の目安

費用項目 目安金額
設計図書類の作成費用 約15万~20万円
技術審査・認定申請手数料 5万~6万円程度
代行申請料(別途の場合) 建築会社により異なる
合計(目安) 25万~30万円程度

出典:SUUMO「長期優良住宅とは?メリット・デメリットは?」

▲ 目次に戻る

着工前の認定取得で工期が数か月延びる

長期優良住宅の申請は、着工前に完了させなければなりません。登録住宅性能評価機関への申請から所管行政庁の認定が下りるまで、通常は数週間から1~2か月程度かかります。

書類の不備や行政庁の混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。そのため、転勤やお子様の入学などの事情により入居時期に制約がある場合は、一般住宅よりも余裕を持ったスケジュール管理が求められます。

長期優良住宅の申請から着工までのスケジュール図。着工前に数週間の認定期間が必要であることを示した画像

▲ 目次に戻る

耐震・省エネ基準を満たすため設計に制約が生じる

長期優良住宅は市町村役場などの所管行政庁から認定を受けなければなりませんが、認定基準をクリアするためには、耐力壁の配置や窓の性能など、設計上の制約を受ける場合があります。

たとえば、耐震等級2以上を確保するために耐力壁の位置が限定されたり、断熱等性能等級5を満たすために選択できる窓の種類が絞られたりするといった具合です。

「大きな吹き抜けを設けたい」「開口部を多くとりたい」といった要望が、認定基準との兼ね合いで調整を求められることもあるため注意してください。

「一生に一度の新築だから、思い通りのレイアウトにしたい」と願っても、長期優良住宅は希望通りの間取りやデザインが実現できないケースがあります。

長期優良住宅の設計上の制約のイメージ図。耐震基準を満たすための耐力壁の配置や、断熱性能確保のための開口部制限を例示。

長期優良住宅の取得を希望し、デザインや間取りにこだわりがある場合は、設計段階で担当者に希望を伝え、認定基準を満たすこととの両立ができるかを早めに確認しておくのが良いでしょう。

▲ 目次に戻る

入居後も30年以上にわたる維持保全の義務がある

長期優良住宅は、建てた後も「維持保全計画」に基づいた定期的な点検・補修が義務付けられています。

「維持保全計画」とは、認定申請の際に策定が求められる、点検・補修・改良の実施時期や内容を定めた計画書を指します。主なルールは以下のとおりです。

長期優良住宅の維持保全に関するルール

項目 内容
維持保全の期間 30年以上
点検の間隔 10年以内ごと
地震・台風後 臨時点検の実施が必要
点検後の対応 必要に応じて調査・修繕・改良を実施
計画の見直し 劣化状況に応じて維持保全計画を見直す

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」(令和7年4月)

上記に含まれる「地震・台風後」の臨時点検は、震度6弱以上の地震が発生したときや、台風により瓦の飛散が確認されたとき、床下浸水以上の被害が生じたときに行う必要があります。

臨時点検は、基本的にご自身で目視点検を行うことにより完了させることができますが、難しい場合は住宅会社に相談することとなります。

また、10年以内ごとの定期的な点検もご自身で行うことができますが、床下や屋根裏などの専門知識が必要な箇所を適切にチェックする必要があるため、住宅会社やホームインスペクション会社などへ依頼するのが通例です。

大手ハウスメーカーでは無料で定期点検を実施している場合もあるため、契約書類を確認しておくとよいでしょう。

そして、点検の結果メンテナンスが必要となれば、自らが費用を負担しつつ実施しなければなりません。メンテナンスの一般的な実施時期と、その費用の目安は以下のとおりです。

主なメンテナンス項目・実施時期・費用の目安

メンテナンス項目 一般的な実施時期 費用の目安
外壁塗装・シーリング打ち替え 10~15年ごと 70万~150万円程度
屋根塗装・補修 10~15年ごと 50万~100万円程度
給湯器の交換 10~15年ごと 15万~30万円程度
床下・小屋裏の点検 10年ごと 1万~3万円程度
給排水設備の点検・補修 20~30年ごと 50万~100万円程度
内装・建具の補修 状況に応じて 数万~数十万円

:費用は建物の規模・状態・施工会社により大きく異なります。参考値としてご確認ください。

30年間の維持保全費用の合計は、建物の状態や実施工事の内容によって異なりますが、300万~600万円程度になることも想定されます。したがって、入居前から維持費の積み立て計画を立てておくことをお勧めします。

ちなみに、それらの維持保全費用は、長期優良住宅ではない一般の住宅にも必要となるのが通例です。ただし、一般の住宅はご自身のタイミングで点検時期を決定し、メンテナンスを施すことができます。

長期優良住宅の30年間にわたる維持保全スケジュールと費用の目安。10年ごとの点検と修繕工事のタイミングを例示 。

▲ 目次に戻る

点検と修繕の履歴記録を長期間保存し続ける必要がある

長期優良住宅を所有すると、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、維持保全の状況に関する記録の作成・保存が義務付けられます。

保存すべき記録とは、点検の実施日や点検結果、行った修繕の内容、改良の履歴などです。

この記録作業は思いのほか手間がかかります。専門の記録管理サービスを利用することも可能ですが、別途費用が発生する場合がある点に留意しましょう。

長期優良住宅を取得する際は、点検の実施日などを記録する方法や、記録を保管する方法を決めておくことが大切です。

▲ 目次に戻る

義務を怠ると認定が取り消されて税制優遇も失われる

長期優良住宅を取得後に維持保全の義務を果たさなかった場合は、所管行政庁から認定を取り消される可能性があります。

国土交通省のページ「認定長期優良住宅に関する特例措置」によれば、認定が取り消されると、その時点以降の適用期間分の税制優遇は受けられなくなります。

たとえば、固定資産税の軽減期間5年間のうち3年目で認定が取り消されると、残り2年分の軽減は失われるといった具合です。認定を維持するために、以下の3点を実践してください。

  1. 点検スケジュールの管理:維持保全計画に記載された点検時期をカレンダー等に登録し、確実に実施できる体制を整える
  2. 信頼できる点検会社との関係構築:建築した会社や専門の点検業者と長期的な契約を結び、定期点検を委託する
  3. 記録書類の適切な保存:点検・修繕の記録を紙とデジタルの両方で保存し、紛失を防ぐ

長期優良住宅を取得する前は、住宅会社と相談しながら管理体制を整えておくことをお勧めします。

長期優良住宅の認定取り消しまでの流れ。維持保全義務を怠ることで税制優遇が失われるリスクを解説。

▲ 目次に戻る

2025年改正でコストが上がった理由と注意点

2025年4月に長期優良住宅の認定基準が改正され、省エネルギー性の要件が引き上げられました。また、税制優遇には適用期限があり、期限を過ぎると恩恵を受けられなくなります

ここからは改正の内容と税制優遇の期限をご紹介します。

▲ 目次に戻る

省エネ等級6が必須となり建築コストが増加した

2025年(令和7年)4月1日から、長期優良住宅は省エネルギー性の認定基準が変わりました。改正前(令和4年10月~令和7年3月)は「断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級4」が基準でしたが、改正後は「断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6」が必須となっています。

2025年(令和7年)4月改正における省エネルギー性の基準変化(新築一戸建て)

新築時期 断熱等性能等級 一次エネルギー消費量等級
~令和4年9月30日 等級4 等級4
令和4年10月1日~令和7年3月31日 等級5 等級4
令和7年4月1日以降 等級5 等級6(改正)

出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」(令和7年4月)

一次エネルギー消費量等級6とは、省エネルギー基準に比べてエネルギー消費量を20パーセント以上削減することを求める水準を指します。よって、高効率の給湯機・換気設備・LED照明の導入が必要となり、長期優良住宅の建築コストがさらに増加する要因となります。

2025年4月以降に長期優良住宅の認定申請をする場合、改正前の仕様で提示された見積もりや資料をそのまま参考にすると実際の費用と大きな差が生じます。必ず最新の認定基準にもとづいた見積もりを取得してください。

▲ 目次に戻る

住宅ローン控除など税優遇の期限を必ず確認する

長期優良住宅の税制優遇には適用期限があります。以下の表は、2025年4月時点の情報をまとめたものです。

長期優良住宅に適用される税制優遇と適用期限

税制優遇の種類 適用期限(新築の場合)
所得税(住宅ローン控除・投資型減税) 2025年(令和7年)12月31日までに入居
固定資産税の軽減(2分の1減額期間の延長) 令和8(2026)年3月31日までに新築
不動産取得税の控除額増額 令和8(2026)年3月31日までに新築
登録免許税の税率引き下げ 令和9(2027)年3月31日までに新築

出典:認定長期優良住宅に関する特例措置

各税制優遇には適用期限が延長される可能性はありますが、現時点で確定していないため、現行制度の期限を基準に計画を立てることをお勧めします。

なお、2025年12月26日の閣議決定にて、令和8年度税制改正として適用期間の延長方針が盛り込まれています。

ただし、実際の適用には国会での関連法案の成立が前提となるため、申請前に必ず国土交通省や税務署、住宅会社を通じて最新情報をご確認ください。

▲ 目次に戻る

長期優良住宅が向いていない3つのケース

長期優良住宅は、すべての方にとってメリットがある制度ではありません。資金計画やライフプランによっては、認定を取得しないほうが合理的なケースもあります。

ここからは、長期優良住宅に向いているケースと向いていないケースを対比したうえで、特に注意が必要な3つのケースをご紹介します。まず、下表でご自身の状況をご確認ください。

長期優良住宅が向いているケース・向いていないケースの対比

項目 向いているケース 向いていないケース
居住予定期間 10年以上、同じ家に住み続ける予定がある 数年以内の住み替えや売却を検討している
資金計画 初期費用の増加分を吸収できる余裕がある 予算を極力抑えたい・頭金が少ない
設計の希望 標準的な間取りや設備で問題ない 個性的なデザインや自由な間取りを最優先にしたい
住宅ローンの借入額 4,000万円以上借りる予定がある 住宅ローンを利用しない・借入額が少ない
管理への意識 定期点検や記録管理を継続できる 入居後の管理手続きを極力減らしたい

「向いていないケース」に複数当てはまる方は、長期優良住宅を取得することによるデメリットが多くなる可能性があります。

▲ 目次に戻る

数年以内の住み替えや売却を検討している場合

数年以内の住み替えや売却を前提とする場合、長期優良住宅の認定取得は向いていません。

住宅ローン控除は最長13年間、固定資産税の軽減は新築一戸建てで5年間が適用期間です。5年以内に売却した場合、申請費用(約25万~30万円)と建築コストの増加分(100万円以上)を税制優遇で回収できないケースが生じます。

たとえば、住宅ローン控除の控除枠の差額(一般住宅との比較)は5年間で最大約45万円程度です。申請費用と建築コスト増加分の合計が150万円を超える場合、5年での回収は難しい計算になります。

なお、長期優良住宅は資産価値が高いと評価される傾向があり、売却時に有利に働く可能性もあります。ただし、これは市場の状況や立地条件によって左右されるため、確実なメリットとして計画に織り込むことは避けてください。短期間での売却を想定している場合、認定取得の経済的メリットは限定的とお考えになるのが妥当です。

▲ 目次に戻る

初期費用をできるだけ抑えたい場合

建築コストの増加(100万~200万円以上)と申請費用(約25万~30万円)を合計すると、長期優良住宅を取得するためには一般住宅より125万~250万円程度の費用の上乗せが必要です。

これにより住宅ローンの借入額が増えれば、毎月の返済額も増加します。たとえば、借入額が100万円増えた場合、返済期間35年・金利1.5パーセントで試算すると、月々の返済額は約2,400~2,500円程度増える計算です。追加費用全体では月々1万円を超える返済増となるケースもあります。

したがって、頭金を十分に用意できていない段階での長期優良住宅の取得を考えている場合は、この初期費用の増加が大きな負担となる可能性があるため注意してください。

長期優良住宅を取得する際は、税制優遇で長期的に得られる金額と、初期費用の増加分を比較したうえで判断する必要があります。

▲ 目次に戻る

設計の自由度を最優先にしたい場合

長期優良住宅の認定基準を満たすためには、耐力壁の配置や窓の性能など、設計上の制約を受ける場合があります。

「吹き抜けを大きくとりたい」「南面の窓を多くして開放的な間取りにしたい」「個性的なデザインを最優先にしたい」といった希望が強い場合は、認定基準との兼ね合いで思い通りの設計や間取りにできないケースもあります。

設計の自由度と認定取得のどちらを優先するかは、ご自身やご家族の価値観によって異なります。

長期優良住宅の取得を希望し、なおかつ設計や間取りに強いこだわりがある場合は、そのこだわりと認定基準を両立させることが可能かどうか、担当者に設計の段階で早めに確認しておくのが良いでしょう。

ちなみに、私も10年前に一般住宅である注文住宅を新築しました。新築の際は間取りに強いこだわりがあり、南側にカフェスペースを設けるなどしましたが、残念ながら現在はほとんど使用していません。

つまるところ、住宅を新築する際は「せっかくだから間取りにこだわりたい!」と右往左往するものの、それは一過性のものに過ぎない可能性があるというわけです。

▲ 目次に戻る

後悔しないために知っておきたい5つのポイント

ここまでは、長期優良住宅のデメリットなどネガティブな情報ばかりをご紹介しました。

そして、ここからは、これまでにご紹介したデメリットを踏まえたうえで長期優良住宅を検討する方へ向けて、取得後に後悔しないための5つのポイントをご紹介します。

5つのポイントと、そのポイントをクリアするための行動を起こすべき時期、および行動の詳細は以下のとおりです。

後悔しないための5つのポイントと実施タイミング・アクション

ポイント 実施タイミング 具体的なアクション
1. 申請実績が豊富な会社に依頼する 会社選びの段階 申請実績・委託先機関を事前に確認する
2. 補助金と税制優遇の金額を具体的に試算する 資金計画の段階 複数パターンで試算し一般住宅と比較する
3. 維持保全計画の内容を事前に確認する 申請前・契約前 点検費用の見積もりを求め将来費用を把握する
4. 長期居住を前提としたライフプランで判断する 決断前 居住年数・売却の可能性を整理する
5. 令和7年改正後の最新基準で見積もりを取る 見積もり取得時 最新仕様にもとづいた金額を確認する

つづいて、デメリットを乗り越え、長期優良住宅を取得後に後悔しないための5つのポイントの詳細を解説します。

▲ 目次に戻る

申請実績が豊富な会社に依頼してスムーズに取得する

長期優良住宅は市町村役場などの所管行政庁への申請と認定が必要ですが、その手続きに不慣れな会社に手続きを依頼すると、書類の差し戻しや手続きの遅延により着工が大幅に遅れるリスクがあります。

依頼先を選ぶ際は、申請実績の豊富さ、その依頼先が委託する登録住宅性能評価機関などをご確認ください。確認方法としては、商談時に担当者へ直接質問し、申請の実績や知識があるか確認してみるのが良いでしょう。

また、その依頼先の評判を、住宅口コミサイト(e戸建て、みん評など)で検索し、「長期優良住宅」「申請」「遅れ」などのキーワードで絞り込むのも有効です。

▲ 目次に戻る

補助金と税制優遇の金額を具体的に試算して比較する

ハウスメーカーと商談する際は、営業担当者から「長期優良住宅にすると住宅ローン控除の控除額が増えてお得です」などの言葉が出ることがあります。

しかし、それを鵜呑みにせず、ご自身の状況であればいくら得になるか数字で確認することが大切です。

実際の控除額は借入額によって大きく異なり、下表を参考にご自身のケースに近いパターンをご確認ください。

借入額別・住宅ローン控除の最大控除額の比較

借入額(年末残高) 長期優良住宅(13年間・0.7%) 一般の省エネ適合住宅(13年間・0.7%) 差額(目安)
3,000万円 約273万円 約210万円(上限3,000万円) 約63万円
4,000万円 約364万円 約210万円(上限3,000万円) 約154万円
4,500万円 約410万円 約210万円(上限3,000万円) 約200万円

控除対象借入限度額:長期優良住宅4,500万円(子育て・若者夫婦世帯は5,000万円)、一般の省エネ基準適合住宅3,000万円。控除率0.7%、13年間で試算。実際の控除額は年末のローン残高・所得税額等により異なります。令和7年12月31日までに入居した場合が対象。

住宅ローンを4,000万円以上借り入れる予定がある場合は、長期優良住宅の控除枠の恩恵が比較的大きくなります。

一方、借入額が少ない場合は差額が小さいため、追加費用との比較を慎重に行ってください。

試算に不安がある場合は、住宅会社の無料相談窓口やFP協会(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)の無料相談サービスを活用することをお勧めします。

▲ 目次に戻る

維持保全計画の内容を事前に確認しておく

長期優良住宅の認定申請が行われる前に、維持保全計画に記載された「いつ・何を・どのくらいの費用で点検・修繕するのか」を必ずご確認ください。

点検費用の見積もりが示されていない場合や内容が曖昧な場合は、担当者に詳しい説明を求めてください。曖昧なまま長期優良住宅を取得すると、後に思わぬ負担を迫られる可能性があります。

▲ 目次に戻る

長期居住を前提としたライフプランで判断する

長期優良住宅には様々な優遇措置が適用されますが、その恩恵を十分に受けるためには、長く住むことが前提となります。

よって、「この家に何年住むつもりか」「将来的に売却や賃貸に出す可能性はあるか」を整理したうえで、長期優良住宅の取得の是非をご判断ください。

▲ 目次に戻る

令和7年改正後の最新基準で見積もりを取る

2025年(令和7年)4月以降に長期優良住宅の申請を行う場合、改正前とは異なる省エネルギー基準が適用されるため、見積もりを取る際には注意が必要です。

改正前(令和4年10月~令和7年3月)の認定基準は「一次エネルギー消費量等級4」でしたが、令和7年4月以降は「一次エネルギー消費量等級6」に引き上げられています。

等級6を満たすためには、高効率の給湯機・換気設備・LED照明などの導入が必要となる場合があり、建築コストがさらに増加します。

よって、長期優良住宅の取得を希望し、その見積もりを取る際は、必ず2025年(令和7年)4月以降の基準で算定されたものを取るようにしてください。

▲ 目次に戻る

メリットとデメリットを比べて判断するために

本記事では長期優良住宅のデメリットを解説していますが、長期優良住宅には税制優遇をはじめとした無視できないメリットも多く存在します。

ここからは、長期優良住宅のメリットとデメリットを数字で比較できる情報を整理します。長期優良住宅へのこだわりなどに頼らず、数字にもとづいた判断をするための材料としてご活用ください。

▲ 目次に戻る

税制優遇で得られる金額の具体的な試算

長期優良住宅を取得することで受けられる主な税制優遇は、以下のとおりです。

長期優良住宅で受けられる主な税制優遇の概要

優遇の種類 内容 条件・期限
住宅ローン控除(控除対象借入限度額) 4,500万円(子育て・若者夫婦世帯は5,000万円) ※一般の省エネ適合住宅は3,000万円 令和7年12月31日までに入居
固定資産税の軽減期間 1~5年間(一般住宅は1~3年間) 令和8年3月31日までに新築
不動産取得税の控除額 1,300万円控除(一般住宅は1,200万円) 令和8年3月31日までに新築
登録免許税(保存登記) 税率0.1%(一般住宅は0.15%) 令和9年3月31日までに新築

出典:国土交通省「認定長期優良住宅に関する特例措置

住宅ローンを4,500万円以上借り入れ、10年以上居住する予定があり、申請費用と建築コスト増加分の合計が200万円以内に収まるのであれば、税制優遇で費用を回収できる可能性が高まります。

一方、借入額が3,000万円以下の場合は、控除枠の差が小さいため慎重な試算が必要です。

▲ 目次に戻る

所有期間「30年」のトータルコスト

長期優良住宅のメリットとデメリットの比較は、一般住宅を基準として、どれくらい取得や維持にコストがかかるかを計算しながら行う必要があります。

一般住宅、または長期優良住宅を取得しつつ30年間保有した場合のトータルコストの比較は以下のとおりです。

一般住宅と長期優良住宅の30年間コスト比較(目安)

項目 一般住宅 長期優良住宅
建築コストの増加分 基準 +100万~200万円以上
申請費用 0円 +25万~30万円程度
住宅ローン控除の最大控除額(借入4,000万円の場合) 約210万円 約364万円
固定資産税の軽減(評価額3,000万円・2年分追加) 基準 約42万円の追加軽減
30年間の維持保全費用 任意(積み立て不要) 300万~600万円程度(計画的に発生)

建築コストや控除額は住宅の仕様・借入金額・年収・建物評価額などにより大きく異なります。参考値としてご活用ください。

住宅ローンを4,000万円以上借り入れて長期優良住宅に10年以上居住するのであれば、住宅ローン控除と固定資産税の差額だけで200万円程度の税制的な優遇が見込めます。

すなわち、長期優良住宅の建築コストの増加分と申請費用(合計150万~230万円程度)は、この税制的な優遇により回収できる可能性があるというわけです。

一方、長期優良住宅は、30年間で300万~600万円程度の維持保全費用がかかると見込まれます。一般住宅でも同様の費用は発生しますが、長期優良住宅は計画的な支出(半ば強制的な支出)として発生する点が異なります。

長期優良住宅を取得する際は、取得前からこの点を把握しておかなければなりません。

長期優良住宅は半ば強制的なタイミングで維持保全しなければならないが、一般住宅は自分のタイミングで維持保全できる

▲ 目次に戻る

よくある質問

インターネットで長期優良住宅に関することを調べると、様々な質問を見かけます。ここからは、長期優良住宅に関するよくある質問とその答えをまとめましょう。

▲ 目次に戻る

Q1. 長期優良住宅はやめた方がいいですか?

やめた方がよいケースとそうでないケースがあります。数年以内の住み替えや売却を検討している方・初期費用を極力抑えたい方・設計の自由度を最優先にしたい方には、長期優良住宅は向いていない可能性があります。

長期優良住宅は長きにわたり居住することによりメリットを発揮し、一般住宅より取得するためのコストがかかり、基準を満たすために間取りが制限されることがあるためです。

長期優良住宅を検討する場合は、ご自身のケースに当てはめたうえで取得をご決定ください。

▲ 目次に戻る

Q2. 長期優良住宅の認定を自分で取り消すことはできますか?

長期優良住宅の認定は、ご自身で取り消すことができます。ただし、取り消すと、残りの適用期間分の税制優遇は受けられなくなるため注意してください。

なお、認定を取り消しても、それまでにすでに受けた税制優遇による減税分の返還は求められません。詳細は「認定長期優良住宅に関する特例措置」、または認定を申請した所管行政庁(市町村役場など)にてご確認ください。

▲ 目次に戻る

Q3. 長期優良住宅の認定を取得しなかった場合のデメリットはありますか?

認定を取得しない場合、住宅ローン控除の控除対象借入限度額が低くなり(省エネ基準適合住宅は3,000万円、長期優良住宅は4,500万円)、固定資産税の軽減期間も短くなります(一般住宅は3年間、長期優良住宅は5年間)。

また、不動産取得税の控除額も少なくなります。ただし、認定を取得しなければ建築コストや維持コストを抑えられる場合もあるため、メリットとデメリットを比較しつつトータルでご判断ください。

▲ 目次に戻る

Q4. 長期優良住宅の点検は自分で行うことができますか?

維持保全計画で定められた項目の点検は、ご自身で行うことは法律上「可能」ですが、ややハードルが高いというのが実情です。

実際に自分で行う場合は、基礎のひび割れ、屋根の変色や漏水、構造躯体の腐朽など、専門的な知識がないと判断が難しい箇所を点検しなければなりません。

よって、点検は、その長期優良住宅を建築した住宅会社や専門業者に依頼するのが通例となっています。点検コストを抑えたい場合は、複数の業者から見積もりを取るなどして比較するのが良いでしょう。

なお、ご自身で点検をした場合でも、点検の内容・実施日・結果などを記録として作成・保存することが義務付けられています。

▲ 目次に戻る

Q5. 長期優良住宅でも増改築やリフォームはできますか?

増改築・リフォームは可能です。ただし、増改築の内容によっては所管行政庁への変更申請が必要になる場合があるため注意してください。

また、増改築後も長期優良住宅であり続けるためには、その基準を満たし続けることが求められるため、着工前に建築会社や所管行政庁に詳細を確認しておくのが良いでしょう。

▲ 目次に戻る

まとめ - 長期優良住宅のデメリットと判断基準

長期優良住宅のデメリットをご紹介し、2025年改正に基づく注意点、長期優良住宅が向いていないケース、長期優良住宅を取得後に後悔しないためのポイントなどを解説しました。

長期優良住宅のデメリットを整理すると、以下のとおりです。

長期優良住宅のデメリット

  • 建築コストが一般住宅より100万~200万円以上高くなる
  • 申請費用と手続きに25万~30万円程度かかる
  • 着工前の認定取得で工期が数週間~2か月程度延びる
  • 耐震・省エネ基準を満たすため設計に制約が生じる場合がある
  • 入居後も30年以上にわたる維持保全の義務が続く
  • 点検と修繕の履歴記録を長期間保存し続ける必要がある
  • 義務を怠ると認定が取り消されて税制優遇も失われる

長期優良住宅は、借り入れ額を多く設定した住宅ローンを利用しつつ取得し、長きにわたり居住し、なおかつ点検コストなど定期的な費用を負担する経済力がある方にとっては、メリットの多い制度です。

一方、住宅を取得するための初期コストを抑えたい方や、短期間での売却を希望する方、点検コストなど定期的な費用を負担することが望ましくない方にとっては、デメリットの多い制度となります。

長期優良住宅は「勧められたから」ではなく、「自分のケースで本当に得になるか」を数字で確認したうえで、申請や取得をご判断ください。

判断に迷う場合は、長期優良住宅に詳しい建築会社やファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします。ご紹介した内容が、長期優良住宅の申請を検討する皆様に役立てば幸いです。

著者・監修情報
執筆:誰でもわかる不動産売買(fudousan-wakaru.net)編集部。不動産の購入・売却・活用に関する情報を、はじめて不動産を検討する方にもわかりやすく伝えることを目的として運営しています。記事の作成にあたっては、国土交通省・一般社団法人 住宅性能評価・表示協会などの公的機関の情報および信頼性の高い専門サイトの情報を参照しています。

参考資料
国土交通省「認定長期優良住宅に関する特例措置」国土交通省「長期優良住宅のページ」一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 「長期優良住宅認定制度の概要について」(令和7年4月)一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について 新築戸建(木造軸組)版」 / SUUMO「SUUMO「長期優良住宅とは?メリット・デメリットは?減税、住宅ローン金利、補助金など後悔しないために知っておこう!」

注意点
本記事の情報は2026年4月時点のものです。税制優遇の期限・条件は変更される場合があります。最新の情報は国土交通省または税務署にてご確認ください。

記事公開日:2026年4月

▲ 目次に戻る

こちらの記事もオススメです