登記簿謄本とは?|法務省の見本付きで読み方を完全解説
不動産の売買や相続の手続きを進めていると、「登記簿謄本(とうきぼとうほん)を取得してください」と言われることがあります。
でも、登記簿謄本がどんな書類なのか、どこで手に入れるのか、何が書いてあるのか——はじめて耳にした方にとっては、わからないことだらけではないでしょうか。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、登記簿謄本をわかりやすく簡単に解説します。
結論から言うと、登記簿謄本とは不動産の「所有者」や「権利関係(その不動産を誰が所有し、誰がどのような権利を持っているかを示す情報)」が記録された、法務局が発行する公的な書類のことです。
法務局とは、登記や戸籍などを管轄する国の機関を指します。そして、この記事を読むと、以下のことがわかります。
- 登記簿謄本と「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」の関係と違い
- 土地・建物・マンション、それぞれの記載内容の読み方(法務省の公式見本付き)
- 登記簿謄本が必要になる場面(売買・相続・住宅ローン・確定申告など)
- 窓口・郵送・オンラインの取得方法と、最新の手数料(令和7年4月改定版)
- 「証明書を提出しなくて済む」照会番号(しょうかいばんごう)の活用法
難しそうに感じるかもしれませんが、登記簿謄本の基本的な仕組みはとてもシンプルです。
実際、筆者も法務局の窓口で登記事項証明書(登記簿謄本)を幾度も取得していますが、申請書に必要事項を記入して提出するだけで、手続きそのものは拍子抜けするほど簡単です。
この記事では、法律の知識がゼロの方でも理解できるよう、わかりやすく登記簿謄本を解説します。
不動産の手続きで「登記簿謄本」という言葉に出会ったとき、この記事が頼れる一冊になれば幸いです。
目次
- 1. 登記簿謄本とは何か――不動産の「履歴書」とも呼ばれる公的書類
- 2. 登記事項証明書(登記簿謄本)の種類と選び方
- 3. 法務省の公式見本で読み解く――土地・建物・マンション別の記載内容
- 4. 登記簿謄本(登記事項証明書)が必要になる場面
- 5. 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法と費用――最新手数料一覧付き
- 6. 登記簿謄本(登記事項証明書)を取得・利用する際の注意点
- まとめ - よくある質問
1. 登記簿謄本とは何か――不動産の「履歴書」とも呼ばれる公的書類
登記簿謄本とは、土地や建物に関する情報を法務局が公的に記録・証明した書類です。不動産の所有者が誰か、どんな権利が設定されているかが一目でわかるため、不動産取引や相続の場面で欠かせない存在です。
登記簿謄本の名称や制度の背景を知ることで、手続きへの不安がぐっと和らぎます。
1-1. 登記簿謄本の意味をわかりやすく解説――不動産の権利を「公示」する仕組み
登記簿謄本は、不動産の「公的な履歴書」です。
土地や建物には、所有者や担保(たんぽ)——借金の保証として差し入れる財産のこと——などの権利関係が生じます。
しかし、それが書面で公開されていなければ、関係のない他の人はその不動産を安全に取引できません。
そこで日本では、不動産に関する権利関係を法務局に登録し、誰でも確認できる状態にする「登記(とうき)」という制度が設けられています。
登記とは、不動産の権利関係を公の帳簿に記録して公開する手続きのことです。
この登記の内容を証明した書類が、登記簿謄本(現在の正式名称は「登記事項証明書」)です。
ポイントは、登記しなければ権利を他の人に主張できない、という点です。
たとえば、不動産を購入したとします。でも、登記をしないままでいると、同じ不動産を別の人に売った売主が先に登記をしてしまった場合、法律上は「先に登記した人が所有者」とみなされてしまいます。
つまり、登記は「自分がこの不動産の権利者である」と世の中に宣言する行為であり、その宣言の証拠書類が登記簿謄本です。
ちなみに、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、登記をわかりやすく解説する記事を公開中です。登記がよくわからないという方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
登記とは?費用・義務化・手続きを図解でわかりやすく解説
1-2. 「登記簿謄本」と「登記事項証明書」の違いをわかりやすく解説
結論から言うと、登記簿謄本と登記事項証明書は、内容はまったく同じです。名称が違う理由は、管理方法の変化にあります。
かつて登記情報は紙の帳簿(登記簿)で管理されており、その原本を転写(謄写)した書類を「登記簿謄本」と呼んでいました。
謄本(とうほん)とは、原本の内容をすべて書き写した文書のことです。
登記情報のコンピュータ化は、昭和63年(1988年)の法改正を機に始まりました。
移行作業が完了した法務局から順次切り替えが進められ、平成16年(2004年)公布・平成17年(2005年)3月7日施行の不動産登記法の全面改正により、コンピュータ管理を前提とした新たな制度が正式に整備されました。
コンピュータ上のデータを印刷して発行する書類は、紙の原本を「転写」したものではないため、名称が「登記事項証明書」に改められました。
とはいえ、「登記簿謄本」という呼び名は今も広く使われています。法務局の窓口で「登記簿謄本をください」と言っても通じますし、インターネット上の解説記事でも両方の表現が混在しています。
つまり、「登記簿謄本=登記事項証明書」と覚えておけば問題ありません。
本記事でも以降は「登記事項証明書」を正式名称として使いながら、必要に応じて「登記簿謄本」と併記します。
| 名称 | 正式/通称 | 発行元 | 証明書として使えるか | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 正式名称 | 法務局(登記官) | ◎使える | 売買・相続・融資・確定申告など |
| 登記簿謄本 | 通称(旧称) | 法務局(登記官) | ◎使える(同一書類) | 同上 |
| 登記情報(登記情報提供サービス) | サービス名 | 一般財団法人民事法務協会 | △条件付き※ | 内容確認・照会番号の取得 |
1-3. 登記事項証明書(登記簿謄本)の3部構成をわかりやすく解説
登記事項証明書は、大きく「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」という3つのブロックに分かれています。
どのブロックに何が書いてあるかを先に把握しておくと、実物を見たときに迷いません。詳しい読み方は本記事の「3.登記事項証明書(登記簿謄本)の記載内容と読み方――法務省の見本付きで解説」で解説しますが、まず全体の「地図」を頭に入れておきましょう。
① 表題部(ひょうだいぶ)
表題部とは、その不動産の「物理的な情報」が書かれた部分です。土地であれば所在・地番・地目・地積(面積)、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積が記載されています。
② 権利部(甲区)(こうく)
権利部の甲区とは、所有権(その不動産を所有する権利)に関する情報が書かれた部分です。誰がいつ所有者になったか、過去の所有権の変遷が時系列で記録されています。
③ 権利部(乙区)(おつく)
権利部の乙区とは、所有権以外の権利——代表的なものは抵当権(ていとうけん)——が書かれた部分です。
抵当権とは、住宅ローンなどの借金の担保として不動産に設定される権利のことです。
乙区に何も書かれていない場合は、その不動産には抵当権などが設定されず、借金の担保に入っていないことを意味します。
1-4. 不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本の違い
「登記簿謄本」という言葉は、不動産だけでなく会社(法人)にも使われます。
不動産登記簿謄本は、土地や建物の権利関係を証明する書類です。一方、法人登記簿謄本(ほうじんとうきぼとうほん)とは、会社の名称・所在地・役員・資本金などを証明する書類のことです。
両者は名前が似ていますが、まったく別の書類です。本記事で扱うのは「不動産登記簿謄本(登記事項証明書)」のみです。
会社に関する手続きで登記簿謄本が必要な場合は、別途「法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」を取得する必要があります。
- 会社設立や法人手続きで「登記簿謄本」を求められた場合は、不動産の登記事項証明書ではなく、法務局で「履歴事項全部証明書(りれきじこうぜんぶしょうめいしょ)」を取得してください。
1-5. 登記事項証明書と間違えやすい2つの書類
登記事項証明書と混同されやすい書類が、大きく2つあります。
手続きの場面でこの2つを取り違えると、書類の再取得や手続きのやり直しが発生します。事前に違いを把握しておきましょう。
① 登記識別情報通知(とうきしきべつじょうほうつうち)——いわゆる「権利証(けんりしょう)」
「権利証」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
権利証とは正式には「登記識別情報通知」と呼ばれ、登記が完了した際に登記名義人(不動産の所有者として登記された人)に交付される書類です。
登記識別情報通知には、12桁の英数字からなる「登記識別情報」が記載されています。
イメージとしては、銀行のキャッシュカードの暗証番号に近いもので、「自分がこの不動産の所有者本人である」ということを証明するためのパスワードのような役割を果たします。
登記事項証明書と登記識別情報通知の違いは「誰のための書類か」という点です。
- 登記事項証明書:他の人が不動産の情報を確認するための書類(誰でも取得可能)
- 登記識別情報通知:所有者本人が「自分が名義人である」ことを証明するための書類(名義人のみに交付)
なお、不動産を購入した方には、登記の手続きを担当した司法書士から、後日郵送などで登記事項証明書および登記識別情報通知が届くのが一般的です。
私も職業上幾度となく不動産を購入していますが、手続き完了後には司法書士から登記事項証明書、および登記識別情報通知を受け取ります。
つまり、所有する不動産の登記事項証明書は、すでに持っている可能性があるというわけです。もし、心当たりのある方がいらっしゃいましたら、金庫など大切なものを保管している場所をご確認ください。
ちなみに、平成17年(2005年)3月7日施行の不動産登記法改正以前は、紙の「登記済証(とうきずみしょう)」が権利証として交付されていました。
これは、現在は「登記識別情報通知」に変わっていますが、旧来の登記済証も引き続き有効です。
- 登記事項証明書は何度でも交付を請求できますが、登記識別情報(権利証)は一度紛失すると再発行されません。大切に保管してください。
② 登記情報提供サービスで取得した「登記情報」
登記情報提供サービスとは、一般財団法人民事法務協会が運営するインターネット上の有料サービスで、法務局が保有する登記情報をパソコンやスマートフォンで閲覧できます。
登記情報は、登記事項証明書と同じ内容を確認できますが、登記官(とうきかん)——登記を担当する法務局の職員——による証明文が付いていないため、原則として証明書としての法的効力を持ちません。
ただし、照会番号(しょうかいばんごう)という仕組みを使えば、一部の行政手続きで登記事項証明書の提出を省略できます。
この点については、本記事の「照会番号を使えば登記事項証明書の提出を省略できる場合がある」で詳しく解説します。
2. 登記事項証明書(登記簿謄本)の種類と選び方
登記事項証明書には、記載される情報の範囲によっていくつかの種類があります。種類が複数あると聞くと「どれを取ればいいのかわからない」と感じる人もいるかもしれませんが、実際の不動産取引や相続・融資の場面では、選択肢はほぼ一択です。
まず全体像を把握したうえで、自分のケースに合う種類を選べるようになりましょう。
2-1. 登記事項証明書の4種類をわかりやすく比較
登記事項証明書は、大きく4種類に分類されます。
それぞれ「どこまでの情報が記載されるか」と「どんな場面で使うか」が異なります。名称だけ見ると難しく感じますが、表で整理すると違いはシンプルです。
| 種類 | 記載される情報の範囲 | 主な用途 | 手数料(書面請求) |
|---|---|---|---|
| 全部事項証明書(ぜんぶじこうしょうめいしょ) | 現在有効な登記+過去の抹消済み登記をすべて記載 | 不動産売買・住宅ローン・相続・確定申告など、ほぼすべての場面 | 600円 |
| 現在事項証明書(げんざいじこうしょうめいしょ) | 現在有効な登記のみ記載(抹消済みは非表示) | 現在の権利関係だけを手早く確認したい場合 | 600円 |
| 一部事項証明書(いちぶじこうしょうめいしょ) | 特定の権利者に関する登記のみ記載 | 大規模マンションなど共有者が多い物件で、自分の持分だけを確認したい場合 | 600円 |
| 閉鎖登記簿謄本(へいさとうきぼとうほん) | コンピュータ化以前の古い登記記録 | 旧来の権利関係や滅失した建物の情報を調べたい場合 | 600円 |
つまり、4種類の違いは「どこまで遡(さかのぼ)って記録を見るか」という点に集約されます。
過去の登記も含めてすべて見たいなら「全部事項証明書」、現在の状態だけ確認したいなら「現在事項証明書」、という整理で問題ありません。
2-2. 迷ったら「全部事項証明書」を選ぶべき理由
結論から言うと、どの種類を取ればよいか迷ったときは「全部事項証明書」を選んでください。
なぜなら、不動産売買・住宅ローンの融資審査・相続登記・確定申告のいずれの場面でも、金融機関・行政機関・司法書士が求めるのはほぼ例外なく「全部事項証明書」だからです。
たとえば、住宅ローンの審査で金融機関から「登記事項証明書を用意してください」と言われた場合、指定がなければ全部事項証明書を取得するのが実務上の標準です。
ポイントは、全部事項証明書は「過去の記録も含めてすべて」が載っているため、現在事項証明書や一部事項証明書よりも情報量が多く、どんな場面でも対応できる点です。
現在事項証明書や一部事項証明書は、全部事項証明書の「情報の一部」しか含んでいません。
提出先から「現在事項証明書で構いません」と明示された場合を除いて、全部事項証明書を選んでおけば間違いありません。
2-3. 過去の登記を調べたいときは「閉鎖登記簿謄本」
閉鎖登記簿謄本(へいさとうきぼとうほん)とは、コンピュータ化される以前の古い登記記録を証明した書類のことです。
通常の全部事項証明書には、コンピュータ化後の登記記録しか含まれていません。
そのため、それ以前の権利変遷(けんりへんせん)——誰がその不動産を所有してきたかの変遷——を調べたい場合や、すでに取り壊されて存在しない建物の登記記録を確認したい場合に、閉鎖登記簿謄本が必要になります。
ただし、閉鎖登記簿謄本が必要になるケースは限られており、一般的な不動産売買や相続では使わないことがほとんどです。
閉鎖登記簿謄本が必要になる主なケース
- 相続に際して、亡くなった方が数十年前に取得した不動産の昔の権利関係を確認したい
- 隣地との境界問題で、過去の地番変更や分筆(ぶんぴつ)——1つの土地を複数に分けること——の履歴を調べたい
- 滅失(めっしつ)した建物——すでに取り壊されて存在しない建物——に関する記録が必要
閉鎖された登記記録の取得方法は、コンピュータ化の前か後かによって異なります。
コンピュータ化以前に紙の帳簿で保管されている「閉鎖登記簿謄本」は、その記録が保管されている管轄法務局の窓口または郵送でのみ取得できます。オンライン申請には対応していません。
一方、コンピュータ化以降に合筆・滅失などにより閉鎖された「閉鎖事項証明書(へいさじこうしょうめいしょ)」は、全国の法務局の窓口・郵送・オンラインのいずれでも取得できます。
手数料は書面請求が600円、オンライン請求+郵送受取が520円、オンライン請求+窓口受取が490円です。
自分が必要とする記録がどちらに該当するか不明な場合は、管轄法務局に事前に問い合わせることをお勧めします。
3. 法務省の公式見本で読み解く――土地・建物・マンション別の記載内容
登記事項証明書の記載内容は、土地・建物(戸建て)・マンション(区分所有建物)の3種類で構成が異なります。
「実物を見てもどこに何が書いてあるのかわからない」という方のために、法務省が公開している公式の見本を使いながら、各欄の意味を順番に解説します。
土地・建物・マンションの順に読み進めることで、どの種類の不動産を持つ方にも対応できる内容になっています。
3-1. 土地の登記事項証明書の読み方(法務省見本付き)
土地の登記事項証明書には、「その土地がどこにあり、どんな状態か」という物理的な情報と、「誰が所有し、どんな権利が設定されているか」という権利関係の情報が記録されています。
大きく3つのブロック(表題部・権利部甲区・権利部乙区)に分かれており、それぞれが異なる種類の情報を担っています。
以下の法務省の公式見本を参照しながら、各欄の意味を確認しましょう。
※ 出典:法務省
表題部(土地の表示)――所在・地番・地目・地積の見方
表題部(ひょうだいぶ)とは、その土地の「物理的な情報」が記録されたブロックです。
土地の表題部には、以下の4つの情報が記載されています。
- 所在(しょざい):都道府県・市区町村・字(あざ)までの場所。住所の「丁目」までに相当します。
- 地番(ちばん):その土地を特定するための番号。住居表示(いわゆる「住所」)とは異なります。
- 地目(ちもく):土地の用途を示す区分。「宅地」「田」「畑」「山林」などがあります。
- 地積(ちせき):土地の面積(単位:㎡)。
ポイントは「地番」と「住所(住居表示)」は別物、という点です。
たとえば、住民票に記載された住所が「○○市南町一丁目1番1号」であっても、登記事項証明書の地番は「南町一丁目101番」のように異なる表記になっている場合があります。
法務局の窓口で登記事項証明書を申請する際には「住所」ではなく「地番」が必要になるため、事前に固定資産税の納税通知書や権利証で地番を確認しておくことをお勧めします。
地番の調べ方の詳細は、本記事の「6-2.「地番」は「住所」と異なる――取得時の最重要注意点」にて解説しています。
登記事項証明書を取得する際、一般の方が最も迷いやすいのが『地番』の調べ方です。実務に携わる私自身も、慣れるまでに時間を要したポイントですので、ぜひ参考にしてください。
また、地目に「田」や「畑」と記載されている土地でも、実際には住宅が建っているケースがあります。
地目が実態と異なる場合、売買・融資の際に手続きが複雑になることがあるため注意が必要です。
権利部(甲区)――所有権の変遷を読む
権利部(甲区)(こうく)とは、その土地の「所有権」に関する情報が記録されたブロックです。
甲区には、土地が登記された最初の時点から現在まで、所有権がどのように移り変わってきたかが時系列で記録されています。
甲区に記載される主な情報は以下のとおりです。
- 順位番号(じゅんいばんごう):登記された順番。数字が大きいほど新しい登記です。
- 登記の目的:「所有権保存(しょゆうけんほぞん)」「所有権移転(しょゆうけんいてん)」など、どのような登記が行われたかを示します。
- 受付年月日・受付番号:法務局がその登記を受け付けた日付と番号。
- 権利者その他の事項:現在の所有者の住所・氏名、および所有権が移転した原因(売買・相続・贈与など)。
「所有権保存」と「所有権移転」の違いは、以下のように整理できます。
「所有権保存」は、その不動産に初めて所有者を登記する際に行われる登記です。新築建物を建てた際に最初に行う登記がこれにあたります。
一方「所有権移転」は、売買・相続・贈与などによって所有者が変わった際に行われる登記です。
甲区に複数の行が並んでいる場合、最も順位番号が大きい行が現在の所有者を示しています。
不動産を購入する前に甲区を確認し、売主として名乗っている人物と登記上の所有者が一致しているかどうかを必ずチェックしましょう。
権利部(乙区)――抵当権・根抵当権の有無を確認する
権利部(乙区)(おつく)とは、所有権以外の権利——代表的なものは抵当権——が記録されたブロックです。
乙区に記載される主な内容は以下のとおりです。
- 登記の目的:「抵当権設定(ていとうけんせってい)」「根抵当権設定(ねていとうけんせってい)」など。
- 受付年月日・受付番号:その権利が登記された日付と番号。
- 債権額(さいけんがく):担保されている借金の金額。たとえば「金4,000万円」と記載されていれば、4,000万円の借入れに対して抵当権が設定されていることを示します。
- 債務者(さいむしゃ):借金をしている人(通常は所有者本人)。
- 抵当権者(ていとうけんしゃ):担保権を持っている人または機関(通常は金融機関)。
乙区が空欄(何も記載されていない)の場合は、その土地に担保権が設定されていないことを意味します。
不動産を購入する際、乙区に抵当権が記載されていれば、売買代金でローンが完済されるとともに抵当権が抹消(まっしょう)されるかどうかを確認することが重要です。
抵当権が残ったまま所有権が移転すると、最悪の場合、新しい所有者がその土地を失うリスクがあります。
また、住宅ローンを完済した後でも、金融機関が抵当権抹消の手続きをしない限り、乙区には抵当権の記録が残り続けます。
ローン完済後は司法書士に依頼して抵当権抹消登記を行うことをお勧めします。
下線が引かれた事項が意味すること
登記事項証明書の中で、一部の記載に下線が引かれていることがあります。これは「すでに効力を失った登記(抹消された登記)」を意味します。
たとえば、かつて設定されていた抵当権がローンの完済によって抹消された場合、その抵当権に関する記載全体に下線が引かれます。
下線が引かれた事項は過去の記録として残されているだけで、現在は効力を持っていません。
ポイントは「下線なし=現在有効、下線あり=すでに効力なし」という読み方です。
現在の権利関係だけを確認したい場合は、下線が引かれていない行だけに注目すれば問題ありません。
この仕組みは土地だけでなく、建物・マンションのすべての登記事項証明書に共通するルールです。
3-2. 建物(戸建て)の登記事項証明書の読み方(法務省見本付き)
建物(戸建て)の登記事項証明書は、土地の登記事項証明書と基本的な構造(表題部・甲区・乙区)は同じですが、表題部に記載される情報が異なります。
また、建物固有の記載として「附属建物(ふぞくたてもの)」の欄があり、物置や車庫が登記されているかどうかを確認できます。
土地と建物は別々の登記事項証明書として発行されるため、不動産取引の際は両方を取得することが原則です。
法務省が公開する建物の登記事項証明書の見本は、以下のとおりです。
※ 出典:法務省
表題部(建物の表示)――種類・構造・床面積の読み方
建物の表題部には、その建物の「物理的な状態」が記録されています。
建物の表題部に記載される主な情報は以下のとおりです。
- 所在・家屋番号(かおくばんごう):建物の所在地と、その建物を特定するための番号。
- 種類(しゅるい):建物の用途。「居宅」「共同住宅」「事務所」「店舗」などがあります。
- 構造(こうぞう):建物の建て方と屋根の材質。「木造かわらぶき2階建」「鉄筋コンクリート造陸屋根2階建」などと記載されます。
- 床面積(ゆかめんせき):各階ごとの床面積(単位:㎡)。
注意が必要なのは、登記上の床面積と実際の広さが異なる場合がある点です。
不動産の広告やパンフレットに記載される面積は「壁芯(へきしん)計算」——壁の中心線を基準に測る方法——で算出されることが多いのに対して、登記事項証明書の床面積は「内法(うちのり)計算」——壁の内側を基準に測る方法——で記録されています。
そのため、広告の面積より登記上の面積のほうが小さく記載されることが一般的です。
附属建物の表示――物置・車庫が登記されているかを確認する
附属建物(ふぞくたてもの)とは、主である建物に付属する別棟の建物のことで、物置・車庫・倉庫などが該当します。
法務省の見本を見ると、「表題部(附属建物の表示)」という欄が設けられており、附属建物がある場合はその種類・構造・床面積が記録されています。
附属建物がない場合は、この欄自体が存在しないか空白になっています。
不動産売買の際に附属建物の登記確認が重要な理由があります。
物置や車庫が登記されている場合、その附属建物も含めて所有権移転登記の対象となります。
売買契約書に附属建物が記載されていないと、所有権移転登記の際に漏れが発生し、手続きのやり直しが必要になることがあります。
物置や車庫がある物件を購入・売却する際は、附属建物の登記の有無を事前に確認しましょう。
権利部(甲区・乙区)の見方――土地との対応関係を確認する
建物の権利部(甲区・乙区)の読み方は、土地の場合と基本的に同じです。
ただし、建物固有の注意点として「共同担保目録(きょうどうたんぽもくろく)」があります。
共同担保目録とは、住宅ローンを組む際に土地と建物の両方に同時に抵当権が設定された場合、その担保の対象となっている不動産の一覧が記載された欄のことです。
たとえば、法務省の見本では乙区に「共同担保 目録(あ)第2340号」と記載されており、同じ抵当権が土地にも設定されていることがわかります。
住宅ローンが残っている建物を購入する際には、建物だけでなく土地の乙区にも同じ抵当権が記載されていないか、必ず確認することが重要です。
3-3. マンション(区分所有建物)の登記事項証明書の読み方(法務省見本付き)
マンションの登記事項証明書は、土地・戸建てと比べて構造が大きく異なります。
一棟のマンション全体に関する情報と、自分が所有する部屋(専有部分)に関する情報が分けて記載されているうえ、土地の持分を示す「敷地権(しきちけん)」という独自の記載欄が加わります。
初めて見ると複雑に感じますが、3層構造として整理すると理解しやすくなります。以下が法務省が公開するマンションの登記事項証明書の見本です。
※ 出典:法務省
「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」の違い
マンションの登記事項証明書では、「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」が別々に記載されます。
「一棟の建物の表示」には、マンション全体(一棟)の情報が記載されています。具体的には、建物の名称・所在・構造・各階の床面積合計が記録されています。法務省の見本では「鉄筋コンクリート造陸屋根2階建」のマンションの構造が記載されています。
「専有部分の建物の表示」には、自分が所有している部屋(101号室など)の情報が記載されています。部屋ごとの家屋番号・種類・構造・床面積が記録されており、これが自分が登記上所有しているマンションの部屋そのものの情報です。
つまり、「一棟の建物」はマンション全体の外枠を示し、「専有部分」は自分の部屋だけの情報を示している、と整理できます。
戸建ての場合は建物全体が1つの登記記録になっているのに対して、マンションは「一棟全体」と「自分の部屋」が分けて記録されている点が大きな違いです。
「敷地権の表示」――マンションの土地の持分を確認する
敷地権(しきちけん)とは、マンションの区分所有者(くぶんしょゆうしゃ)——マンションの各部屋を所有する人——が、そのマンションが建っている土地に対して持っている権利のことです。
法務省の見本では「敷地権の種類:所有権」「敷地権の割合:4分の1」と記載されており、この部屋の所有者が敷地全体の4分の1の持分を持っていることがわかります。
マンションの敷地権の種類には、主に以下の3つがあります。
- 所有権:マンションの敷地を区分所有者全員で共有している最も一般的なケース。
- 地上権(ちじょうけん):土地の所有者から地上権の設定を受けて建物を建てているケース。
- 賃借権(ちんしゃくけん):土地を借りて建物を建てているケース。
なお、昭和58年(1983年)以前に建てられた古いマンションの中には、建物と土地の登記が別々になっており、敷地権の記載がない物件が存在します。
この場合、売買の際に建物の所有権移転登記とは別に、土地の持分移転登記を行う必要があり、手続きが複雑になります。
中古マンションを購入する際に敷地権の表示がない場合は、必ず司法書士に相談することをお勧めします。
権利部(甲区・乙区)の見方――区分所有権の確認
マンションの権利部(甲区)には、その専有部分(部屋)の所有権の変遷が記録されています。
読み方は土地・建物と同じで、順位番号が大きいほど新しい登記です。
マンションの場合、甲区に「所有権保存:株式会社○○不動産」という記録から始まり、「所有権移転:売買 ○○一郎」という形で、デベロッパー(マンションを建設・販売する会社のこと)から最初の購入者への所有権移転が記録されているケースが多く見られます。
乙区には、住宅ローンに対応した抵当権が記載されることが一般的です。
マンションを住宅ローンで購入した場合、乙区に金融機関を抵当権者とする抵当権設定の記録が入ります。
ローンが完済されれば抵当権抹消登記が行われ、その記録には下線が引かれます。
中古マンションを購入する際は、乙区に有効な抵当権(下線のない記録)が残っていないかを必ず確認し、売買代金の決済と同時に抵当権が抹消されることを確認してから手続きを進めることが重要です。
4. 登記簿謄本(登記事項証明書)が必要になる場面
登記事項証明書が必要になる場面は、不動産の売買や相続だけではありません。
住宅ローンの融資審査・確定申告・登記内容の変更など、不動産に関わる多くの手続きで提出が求められます。
「急に登記事項証明書が必要だと言われて慌てた」という経験をする前に、どんな場面で使うのかを把握しておきましょう。
| 場面 | 主な目的 | 確認すべき主な記載箇所 |
|---|---|---|
| 不動産を売る・買う | 売主の確認・権利関係の調査 | 甲区(所有者)・乙区(担保権) |
| 相続が発生した | 現在の登記内容の確認・相続登記の申請 | 甲区(現在の所有者)・表題部 |
| 住宅ローンを組む | 金融機関による担保評価 | 表題部・甲区・乙区 |
| 確定申告(住宅ローン控除など) | 税務署への添付または省略手続き | 表題部(不動産番号) |
| 登記内容を変更する | 現在の登記内容の確認 | 表題部・甲区 |
4-1. 不動産を売るとき・買うとき
不動産の売買では、売主・買主の双方が登記事項証明書を確認することが欠かせません。
売買は金額が大きい取引です。登記内容を確認しないまま契約を進めると、「所有者ではない人から買ってしまった」「担保権が残ったまま所有権が移転した」といった深刻なトラブルに発展する可能性があります。
不動産会社や司法書士が確認することがほとんどですが、売主・買主それぞれが何を確認すべきかを知っておくと安心です。
売主が確認すべきこと
- 甲区の現在の所有者が自分(売主)の氏名・住所と一致しているか
- 過去に所有権が移転している場合、その原因(売買・相続など)が正しく記録されているか
買主が確認すべきこと
- 甲区の所有者が、売主として名乗っている人物と一致しているか
- 乙区に抵当権(ていとうけん)——住宅ローンなどの担保として不動産に設定された権利——が残っていないか。または、売買代金の決済と同時に抵当権が抹消(まっしょう)されることが確認できているか
- 表題部の所在・地番・面積が、売買契約書の記載と一致しているか
ポイントは、売買契約書に署名・捺印する前に必ず登記事項証明書を取得して確認することです。
「不動産会社が確認してくれているはず」と思う人もいるかもしれませんが、自分の目で確認する習慣が、後のトラブルを防ぐ最大の防御策になります。
4-2. 相続が発生したとき――令和6年4月から義務化された相続登記との関係
親族が亡くなり不動産を相続する場合、まず現在の登記内容を確認するために登記事項証明書の取得が必要になります。
相続登記(そうぞくとうき)とは、亡くなった方(被相続人)名義の不動産を、相続した方(相続人)の名義に変更する手続きのことです。
令和6年(2024年)4月1日から、この相続登記が法律上の義務になりました。相続登記をしないまま放置すると、10万円以下の過料(かりょう)——行政上のペナルティ——が科される可能性があります。
相続登記の期限は「相続の開始および自分がその不動産を相続したことを知った日から3年以内」です。
なお、令和6年4月1日以前に発生した相続についても義務化の対象です。その場合の期限は「令和6年4月1日から3年以内(令和9年3月31日まで)」か「相続を知った日から3年以内」のいずれか遅い日までとされています。
相続登記の手続きで登記事項証明書が必要になる主な場面は以下のとおりです。
- 現在の登記名義人(被相続人)の氏名・住所を確認するため
- 相続対象の不動産の地番・家屋番号・地積・床面積を確認するため
- 乙区に担保権が設定されていないかを確認するため
余談ですが、筆者も20代の頃に自力で相続登記を試みたことがあります。当時は専門知識が乏しく、慣れない手続きに奔走した結果、心身ともに疲弊して2週間で5kg以上も体重が減少してしまいました。
結局、手続きを完遂することはできませんでした。
相続登記は戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など、不動産以外の周辺実務が非常に煩雑です。スムーズかつ確実な手続きのためにも、専門家である司法書士への依頼を強くお勧めします。
4-3. 住宅ローン・融資を受けるとき
住宅ローンや不動産を担保にした融資を申し込む際、金融機関は必ず登記事項証明書を取り寄せて担保評価(たんぽひょうか)を行います。
担保評価とは、融資の担保とする不動産がどれだけの価値を持つかを金融機関が審査することです。
登記事項証明書は、金融機関が「その不動産が本当に申請者の所有物か」「他に担保権が設定されていないか」を確認するための基本書類です。
金融機関が登記事項証明書で確認する主なポイントは以下のとおりです。
- 表題部の地積・床面積(担保価値の算出に使用)
- 甲区の所有者が融資申請者本人と一致しているか
- 乙区に既存の抵当権や根抵当権(ねていとうけん)——繰り返し借入ができる融資枠に対して設定される担保権、住宅ローンでは通常の抵当権が使われ、根抵当権は事業用融資で多く使われる——が設定されていないか
住宅ローンが実行(融資が実際に行われること)されると、それと同時に金融機関を抵当権者とする抵当権設定登記が行われます。
つまり、住宅ローンを利用して購入した不動産の乙区には、必ず金融機関名の抵当権が記録されることになります。
4-4. 確定申告で税務上の特例を受けるとき
住宅ローン控除(じゅうたくローンこうじょ)や贈与税の非課税特例など、不動産に関わる税務上の特例を受ける際に、登記事項証明書の提出が必要になるケースがあります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで自宅を購入・新築した場合に、一定の金額が所得税から控除される制度です。初年度は税務署に確定申告書を提出する必要があり、その際に登記事項証明書が必要とされてきました。
ただし、令和3年(2021年)7月1日以降、税務関係の手続きでは登記事項証明書の添付を省略できるケースが増えています。
省略の方法は2つあります。
① 不動産番号(ふどうさんばんごう)を申告書に記載する方法
不動産番号とは、登記記録ごとに付けられた13桁の番号のことです。
登記事項証明書の表題部、または権利証(登記識別情報通知)に記載されており、確定申告書の所定の欄に記入することで、登記事項証明書の添付を省略できます。
なお、固定資産税の納税通知書には不動産番号は記載されていないため、ご注意ください。
② 照会番号(しょうかいばんごう)を提出する方法
照会番号とは、登記情報提供サービスで登記情報を取得した際に発行できる番号のことです。
行政機関(税務署など)はこの番号を使って登記情報提供サービスのシステムに直接アクセスし、登記内容を確認できます。
そのため、登記事項証明書の紙を提出しなくても手続きが完了します。
照会番号は1件の登記情報ごとに発行され、取得翌日から100日間有効で、1回しか使用できません。
注意点として、すべての行政機関・手続きで照会番号が使えるわけではありません。
提出先によって対応状況が異なるため、事前に「登記事項証明書と照会番号のどちらで対応できるか」を確認することをお勧めします。
4-5. 登記内容を変更するとき(建物滅失・地目変更・住所変更など)
不動産に関する情報が変わった場合、登記内容を正しく更新するための変更登記(へんこうとうき)が必要になります。
その際も、現在の登記内容を確認するために登記事項証明書を取得することが一般的です。変更登記が必要になる主な場面は以下のとおりです。
- 建物滅失登記(たてものめっしつとうき):建物を取り壊した場合、登記上の建物を消す手続きが必要です。取り壊してから1か月以内に申請する義務があります。
- 地目変更登記(ちもくへんこうとうき):田や畑として登記されている土地に住宅を建てた場合など、実際の用途と地目が変わった際に行う手続きです。
- 住所変更登記(じゅうしょへんこうとうき):所有者の引っ越しにより住所が変わった場合、登記上の住所も更新する手続きです。令和8年(2026年)4月1日から義務化されています。
「建物を取り壊したのに登記をそのままにしている」というケースは、実は珍しくありません。
登記上は建物が存在しているにもかかわらず、現地には建物がないという状態を放置すると、固定資産税が誤って課税され続けたり、売買・相続の際に手続きが複雑になったりします。
心当たりがある場合は、登記事項証明書を取得して現在の登記内容を確認することから始めましょう。
ちなみに、筆者は住所変更登記を自分で行った経験があります。登記簿上の住所から1回引っ越しただけであったため、手続きは簡単でした。
法務局のホームページ等で指定の「登記申請書」を作成し、住民票を添付して登録免許税(収入印紙)とともに郵送し、2~3週間程度で手続きが完了しました。
5. 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法と費用――最新手数料一覧付き
登記事項証明書は、窓口・郵送・オンラインの3つの方法で取得できます。
どの方法を選ぶかによって、手数料・受取までの時間・手続きの手間が異なります。
ご自身の状況に合った取得方法を選べるよう、まずは以下のフローチャートで全体像を確認してください。
5-1. 法務局(登記所)の窓口で取得する方法
窓口取得は、その場で証明書を受け取れる最もシンプルな方法です。
申請書に必要事項を記入して窓口に提出し、手数料(1通600円)を支払えば、その場で登記事項証明書を受け取れます。
申請書(「登記事項証明書 登記簿謄本・抄本 交付請求書」)は法務局の窓口に備え付けられているほか、ウェブサイトからも事前にダウンロードできます。
窓口取得で最も重要な注意点は「住所ではなく地番(または家屋番号)が必要」という点です。
申請書には、土地であれば「地番」、建物であれば「家屋番号」を記載する必要があります。
日常で使っている住所(住居表示)では申請できないため、事前に権利証(登記識別情報通知)や過去に取得した登記事項証明書で地番・家屋番号を確認しておきましょう。
筆者も幾度となく法務局の窓口で登記事項証明書を取得していますが、いつも拍子抜けするほど簡単です。
申請書に地番などの必要事項を記入して窓口に出すだけで、数分後には証明書を受け取れます。
ただし、年度末(3月)や相続登記の義務化後は混雑することもあるため、時間に余裕を持って訪れることをお勧めします。
窓口取得の概要
- 手数料:1通600円(収入印紙で納付)
- 受取:申請当日、その場で受取
- 開庁時間:平日8時30分〜17時15分(土日祝日・年末年始は休業)
- 申請に必要なもの:申請書・地番または家屋番号・手数料分の収入印紙
- 法務局は全国どの窓口でも全国の不動産の登記事項証明書を取得できます。自宅や職場の最寄りの法務局を利用して問題ありません。
5-2. 郵送で取得する方法
郵送取得は、法務局に出向く時間がない場合に便利な方法です。
申請書・手数料分の収入印紙(600円分)・返信用封筒(切手を貼付し、返送先の宛先を記載したもの)の3点を同封して、管轄の法務局または最寄りの法務局へ郵送します(参考「法務局:登記事項証明書の交付を請求するには、どうしたらよいのですか?」)。
証明書が手元に届くまでの日数は法務局の混雑状況や郵便の配達状況によって異なるため、提出期限が迫っている場合は窓口またはオンラインを選ぶことをお勧めします。
郵送取得の概要
- 手数料:1通600円(収入印紙を申請書に貼付して同封)
- 受取:返信用封筒への郵送受取(日数は状況により異なる)
- 送付先:管轄の法務局または最寄りの法務局(全国どこでも可)
- 必要なもの:申請書・収入印紙(600円分)・返信用封筒(切手貼付・宛先記載)
申請書は法務省のウェブサイトからダウンロードできます。地番・家屋番号の記載が必要な点は、窓口の場合と同じです。
5-3. オンライン(登記ねっと)で取得する方法――証明書として使える
登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム)を使えば、自宅のパソコンやスマートフォンから登記事項証明書を申請できます(参考「法務局:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」)。
登記ねっととは、法務省が運営するオンライン申請システムのことです。「かんたん登記・供託申請」という機能を使えば、専用ソフトのインストール不要で、Webブラウザ上で申請が完結します。
証明書は郵送で自宅に届けることも、最寄りの法務局窓口で受け取ることもできます。
オンライン取得が最もお得な理由は、手数料が窓口より安くなるからです。同じ登記事項証明書でも、取得方法によって手数料が異なります。
窓口での書面請求が1通600円であるのに対して、オンライン請求+窓口受取は490円、オンライン請求+郵送受取は520円です(参考「法務省:不動産登記、商業・法人登記における主な登記手数料」)。
オンライン取得の概要
- 手数料:オンライン請求+窓口受取490円、オンライン請求+郵送受取520円
- 利用時間:平日8時30分〜21時00分
- 受取:郵送(自宅・会社)または最寄りの法務局窓口
- 必要なもの:利用者登録・地番または家屋番号・電子納付(インターネットバンキングまたはATM)
5-4. 登記情報提供サービスとの違い――用途に応じた使い分けを解説
登記情報提供サービスとは、一般財団法人民事法務協会が運営するインターネット上の有料サービスで、法務局が保有する登記情報をパソコンやスマートフォンで閲覧・取得できます。
登記ねっとと名前が似ているため混同されやすいのですが、発行元・法的効力・利用できる時間帯がまったく異なります。2つの違いを正しく理解して使い分けることが重要です。
| 比較項目 | 登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム) | 登記情報提供サービス |
|---|---|---|
| 運営者 | 法務省 | 一般財団法人民事法務協会 |
| 取得できるもの | 登記事項証明書(法的な証明書) | 登記情報(閲覧用データ) |
| 証明書としての効力 | ◎あり | △原則なし(照会番号の活用で一部省略可) |
| 手数料 | 490〜600円(取得方法により異なる) | 全部事項330円(令和8年4月1日〜) |
| 利用可能時間 | 平日8時30分〜21時00分 | 平日:8時30分〜23時00分、土日祝:8時30分〜18時00分 |
| 休業日 | 土日祝・年末年始は利用不可 | 年末年始(12月29日〜1月3日)のみ休業 |
| 向いているケース | 金融機関・行政機関・司法書士へ提出が必要なとき | 内容確認・売買前の事前調査・土日や平日夜間に確認したいとき |
登記情報提供サービスが向いているケース
登記情報提供サービスは「証明書として提出する必要はないが、内容をすぐに確認したい」場面に向いています。
たとえば、購入を検討している不動産の所有者や担保の状況を事前に調べたいとき、相続した不動産の地番や構造を把握したいとき、平日の夜間(23時まで)や土日(18時まで)に確認したいときなどが代表的な活用場面です。
法務局が発行する登記事項証明書(1通600円〜)と比べて、登記情報提供サービスの手数料(全部事項1件330円・令和8年4月1日〜)のほうが安く、利用登録さえ済んでいればすぐに閲覧できる手軽さが利点です。
なお、土日祝の利用は18時までと、平日(23時まで)より短い点には注意が必要です。
登記情報提供サービスが向いていないケース
登記情報提供サービスで取得したデータは、登記官(とうきかん)——登記を担当する法務局の職員——による証明文が付いていないため、原則として証明書としての法的効力を持ちません。
金融機関への住宅ローン申請、不動産売買の決済手続き、法務局への登記申請の添付書類など、「証明書として提出が求められる場面」では使用できません。
これらの場面では、必ず登記ねっとまたは窓口・郵送で取得した登記事項証明書を使用してください。
照会番号を使えば登記事項証明書の提出を省略できる場合がある
登記情報提供サービスには「照会番号(しょうかいばんごう)」という仕組みがあり、これを活用することで一部の行政手続きで登記事項証明書の提出を省略できます。
照会番号とは、登記情報提供サービスで登記情報を取得した際に発行できる番号のことです。
行政機関(税務署など)はこの番号を使ってシステム上で登記内容を直接確認できるため、紙の登記事項証明書を提出しなくても手続きが完了します。
照会番号の主な特徴は以下のとおりです。
- 有効期限:取得翌日から100日間(100日目が休日でも、その日で失効)
- 使用回数:1件の登記情報につき1回限り
- 発行上限:同一登記情報に対して1回の請求で最大10個まで取得可能
照会番号が使える主な行政手続きには、国税関係の申告手続き(住宅ローン控除の確定申告・相続税申告・贈与税申告など)があります。
本記事の「4-4.確定申告で税務上の特例を受けるとき」で解説した「不動産番号の記載による省略」と並んで、手続きの手間を減らすための有効な方法です。
ただし、すべての行政機関・すべての手続きで照会番号が使えるわけではない点に注意してください。
申請先によって対応状況が異なるため、「照会番号で対応できるか、それとも登記事項証明書の原本が必要か」を事前に提出先へ確認することをお勧めします。
5-5. 取得費用の一覧(令和7年4月1日改定・最新版)
| 取得方法 | 手数料(1通あたり) | 受取方法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 窓口(書面請求) | 600円 | 当日窓口 | 収入印紙で納付 |
| 郵送(書面請求) | 600円 | 郵送 | 収入印紙+返信用封筒が必要 |
| オンライン請求+郵送受取 | 520円 | 郵送 | 電子納付(インターネットバンキング・ATM) |
| オンライン請求+窓口受取 | 490円 | 最寄りの法務局窓口 | 電子納付後に受取 |
| 登記情報提供サービス(全部事項) | 330円 | オンライン閲覧のみ | 令和8年4月1日〜。証明書としての効力なし |
ポイントは、オンライン請求+窓口受取の490円が最も安い取得方法という点です。
ただし、電子納付の手続きや利用者登録が必要なため、「急いでいる」「初めてで手順がわからない」という場合は、窓口での書面請求(600円)を選ぶほうがシンプルです。
6. 登記簿謄本(登記事項証明書)を取得・利用する際の注意点
登記事項証明書は取得方法がシンプルな書類ですが、知らずにいると「取り直しが必要になった」「手続きが止まった」といったトラブルにつながる落とし穴がいくつかあります。
取得前・提出前に確認しておくべき4つの注意点を整理しましょう。
6-1. 「有効期限」は法律上ないが、提出先によって実質的な制限がある
登記事項証明書には、法律上の有効期限は定められていません。
これは「いつ取得したものでも法的には有効」という意味ですが、実務では話が変わります。金融機関・不動産会社・行政機関など、登記事項証明書の提出を求める機関の多くが、独自に「発行から○か月以内のもの」という基準を設けているからです。
たとえば、住宅ローンの融資審査では「発行から3か月以内」を求める金融機関が多く、法務局への登記申請の添付書類として使う場合は、制度上の期限はないものの「できるだけ直近のもの」を用意するのが実務上の慣習です。
つまり、「法的に有効かどうか」と「提出先が受け付けるかどうか」は別の問題です。
提出先から「登記事項証明書を用意してください」と言われたら、「いつ発行のものが必要ですか」と事前に確認することを習慣にしましょう。
すでに手元にある登記事項証明書がある場合も、発行日を確認したうえで提出先に使用可能かを問い合わせることをお勧めします。
6-2. 「地番」は「住所」と異なる――取得時の最重要注意点
登記事項証明書を取得する際、法務局に伝えるのは「住所」ではなく「地番(ちばん)」です。
地番とは、不動産登記において土地を特定するために付けられた番号のことで、住民票や郵便物に使われる「住居表示(じゅうきょひょうじ)」とは別の番号体系です。たとえば、住居表示が「○○市南町一丁目1番1号」であっても、地番は「南町一丁目101番」のようにまったく異なる場合があります。
「住所を伝えれば取れるはず」と思う人もいるかもしれませんが、地番がわからないと窓口でもオンラインでも申請できません。
地番の調べ方は主に3つあります。
- 権利証(登記識別情報通知)または過去に取得した登記事項証明書:表題部に地番・家屋番号が記載されています。すでに不動産を取得している方は、まず手元の書類を確認しましょう。
- 法務局の窓口で案内してもらう:住居表示を伝えれば、窓口で地番を調べてもらえます。
- 登記情報提供サービスの「地番検索サービス」:ログイン後の請求画面から、住居表示をもとにおおよその地番を検索できます(サービス提供エリア内に限ります)。
- 固定資産税の納税通知書に記載されているのは「地番・家屋番号」ですが、必ずしも登記上の地番と完全に一致しているとは限りません。
確認できない場合は法務局の窓口に問い合わせることをお勧めします。
6-3. マンション(区分所有建物)取得時の注意点――「敷地権なし」の物件に要注意
中古マンションの登記事項証明書を取得した際に「敷地権の表示」の欄が空欄または存在しない場合、その物件は「敷地権なし」の状態である可能性があります。
敷地権なしとは、建物と土地の登記が一体化されておらず、別々に管理されている状態のことです。「3-3. マンション(区分所有建物)の登記事項証明書の読み方」で解説したとおり、昭和58年(1983年)以前に建てられた古いマンションに多く見られます。
敷地権なしのマンションを売買する際は、通常より手続きが複雑になります。
通常のマンションでは建物の所有権移転登記を行うだけで土地の持分も同時に移転しますが、敷地権なしの物件では建物と土地の持分を別々に移転登記する必要があります。
つまり、登記申請の手間と費用が2倍近くかかる可能性があります。
たとえば、司法書士への報酬も建物・土地それぞれに発生するケースがあり、事前に見積もりを確認しておかないと想定外の費用が生じることがあります。
中古マンションを購入する前に登記事項証明書を取得して「敷地権の表示」欄を確認し、敷地権がない場合は必ず司法書士に相談してから手続きを進めましょう。
6-4. 登記情報は「取得した時点」のスナップショット――直前に再確認する習慣を
登記事項証明書に記載されているのは、あくまで「取得した時点」における登記内容です。写真のように、ある一瞬の登記内容を切り取って記録したものだと考えるとわかりやすいでしょう。
不動産の登記情報は日々更新される可能性があります。たとえば、売買交渉中に売主が別の金融機関から新たに借入れをして抵当権が追加設定されることや、相続が発生して所有者が変わることが、理論上はあり得ます。
1か月前に取得した登記事項証明書と現在の登記内容が異なっている可能性はゼロではありません。
ポイントは、重要な手続きの直前に改めて登記事項証明書を取得する、という習慣です。
特に、不動産売買の決済日(代金を支払い、鍵を受け取る日)の直前には必ず最新の登記事項証明書または登記情報を確認することをお勧めします。
登記情報提供サービスを利用すれば330円(令和8年4月1日〜)で即時確認できるため、確認のハードルは高くありません。
また、登記事項証明書は「取得した時点の情報」を証明するものであるため、売買の直前に取得したものほど証明力が高いと言えます。
「以前に取得したものがあるから」と省略せず、節目ごとに取得し直す習慣を持つことが、不動産取引のリスク管理につながります。
まとめ - よくある質問
登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の所有者・権利関係・担保の状況を記録した公的な書類です。不動産の売買・相続・住宅ローン・確定申告など、不動産に関わるあらゆる場面で必要になります。
記事の内容を振り返ると、押さえておきたいポイントは以下の5つです。
- 名称について:「登記簿謄本」は通称で、正式名称は「登記事項証明書」。内容はまったく同じです。
- 種類について:迷ったら「全部事項証明書」を選べば、ほぼすべての場面に対応できます。
- 読み方について:「表題部(物理的な情報)」「権利部甲区(所有権)」「権利部乙区(担保権)」の3ブロック構成で、下線が引かれた事項はすでに効力を失った記録です。
- 取得方法と費用について:窓口600円・オンライン請求+窓口受取490円・登記情報提供サービス330円(令和8年4月1日〜)の3つの方法があり、目的に応じて使い分けできます。
- 注意点について:法律上の有効期限はないものの提出先の基準に注意が必要で、取得時には住所ではなく「地番」が必要です。
また、令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化されました。
相続の開始および所有権取得を知った日から3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。
「まだ大丈夫」と思っているうちに期限が近づくケースも多いため、相続が発生したら早めに動き出すことをお勧めします。
登記事項証明書の取得そのものは、法務局の窓口で数分・600円で完了するシンプルな手続きです。
「難しそう」と感じて後回しにするより、まず1通取得して実物を手に取ってみることが、不動産手続きへの理解を深める一番の近道です。
ご紹介した内容が、不動産の売買・相続・融資など、あなたの大切な手続きを進めるうえでのお役に立てば幸いです。最後に、登記簿謄本に関するよくある質問とその答えをまとめます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)は誰でも取得できますか?
- 登記事項証明書は所有者以外でも誰でも取得できます。申請時に身分証明書の提示や取得理由の説明は不要です。不動産取引の安全を守るため、権利関係を広く公開する「公示の原則」に基づいた制度設計によるものです。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)はコンビニで取得できますか?
- 不動産の登記事項証明書はコンビニでは取得できません。コンビニのマルチコピー機で取得できるのは住民票・戸籍謄本など市区町村が管理する書類のみです。登記事項証明書は法務局の窓口・郵送・登記ねっと(オンライン)で取得してください。
- 「登記事項要約書」と「登記事項証明書」は何が違いますか?
- 登記事項要約書は登記内容の概要を確認するための書類で、登記官の認証文がなく証明書としての法的効力がありません。手数料は500円で管轄法務局の窓口のみで取得可能です。金融機関や行政機関への提出には必ず登記事項証明書(600円〜)を使用してください。
- 相続登記はいつまでにしなければなりませんか?
- 令和6年4月1日施行の法改正により、相続登記が義務化されました。相続の開始および所有権取得を知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく期限を守らなかった場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
- 抵当権が残ったままの不動産はどうなりますか?
- 抵当権が残ったままでも直ちに問題は生じませんが、不動産の売却や新たな融資の際に障害になります。住宅ローン完済後も抵当権は自動的に消えないため、金融機関から送られてくる書類を使って司法書士に抵当権抹消登記(報酬目安1〜2万円)を依頼することをお勧めします。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)に有効期限はありますか?
- 登記事項証明書に法律上の有効期限はありません。ただし金融機関など提出先によって「発行から3か月以内」などの独自基準を設けているケースが多くあります。手元にある場合も発行日を確認し、提出先に使用可能かを事前に確認することをお勧めします。
- 著者・監修情報
- 誰でもわかる不動産売買(fudousan-wakaru.net)編集部。不動産の購入・売却・活用に関する情報を、はじめて不動産を検討する方にもわかりやすく伝えることを目的として運営しています。記事の作成にあたっては、国土交通省、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会などの公的機関の情報、および極めて信頼性が高い専門サイトの情報を参照しています。
- 参考資料・参考サイト
- e-Gov:不動産登記法 / 法務省:新不動産登記法Q&A / 法務省:QRコード(二次元バーコード)付き書面申請の開始と登記事項証明書(不動産登記)の様式変更について / 法務省:登記手数料について / 法務局:登記事項証明書の交付を請求するには、どうしたらよいのですか? / 法務局:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です / 登記情報提供サービス:登記情報提供サービスの利用料金の改定について
- 注意点
- 本記事の内容は令和8年5月時点のものです。最新の情報は法務省や法務局の公式ホームページなどでご確認ください。
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