土地の贈与税はいくら? 計算する方法と、かからない条件

土地の贈与を受けると贈与税が課せられます。
贈与税は相続税より高いとされますが、いくら位になるのでしょうか。
土地の贈与をご検討される方へ向けて、土地の贈与税を計算する方法や贈与税がかからない条件、いくらから贈与税がかかるかなどご紹介しましょう。
目次
- 1. 土地の贈与税を計算する方法
- 2. 土地の贈与税がかからない条件
- 3. 土地の贈与税はいくらから?
- まとめ - 土地の贈与には不動産取得税もかかる
1. 土地の贈与税を計算する方法
土地の贈与税は、その土地の価格を路線価から計算し、計算した土地の価格に税率を掛け算しつつ控除額を差し引くなどして税額が決定されます。
路線価とは、土地の贈与税や相続税を計算するために、国税庁が毎年公表する日本全国各地の土地の価額(「かがく」と読み、価値から鑑みた価格という意味です)であり、売買価格より安くなるのが通例です。
路線価や価額など難しい不動産用語が続きますが、この時点では理解する必要はないため引き続き気楽にお読みください。
土地の贈与税額を計算する流れをわかりやすく簡単にご説明すると以下のとおりです。
土地の贈与税を計算する流れ
- 手順1. 路線価から贈与される土地の価格を計算する
- 手順2. 計算した贈与される土地の価格から基礎控除額を差し引き、課税価格を算出する
- 手順3. 算出した課税価格に贈与税の税率を掛け算する
- 手順4. 手順3の答えから控除額を差し引き、贈与税が決定される
上記の4つの手順で土地の贈与税は決定されます。
ここから、4つの手順をひとつずつわかりやすく簡単にご説明しましょう。
手順1. 路線価から贈与される土地の価格を計算する
まず、贈与される土地の価格を路線価から計算します。
路線価とは、土地の贈与税額や相続税額を計算するために、毎年7月に国税庁が公表する日本全国各地の宅地(建物を建てるための土地)の1㎡あたりの価額です。
贈与される土地の路線価は、国税庁のサイトに掲載されている路線価図にて確認できます。
国税庁のサイト「路線価図・評価倍率表」をご覧いただくと、以下のような日本地図が表示されます。

上記の日本地図から、贈与される土地が所在する都道府県をクリックすると、以下のような「財産評価基準書目次」というページが表示されます。

上記のページの上部にある「路線価図」というリンクをクリックすれば、以下のようなその地域の市区町村名の一覧が表示されます。

上記の市区町村名の一覧から、贈与される土地が所在する地域をクリックすれば、以下のような「路線価図・町丁名索引」というページが表示されます。

上記の「路線価図・町丁名索引」から、贈与される土地が所在する地名をクリックすれば、以下のようなその地域の路線価図が表示されます。

上記の路線価図から、贈与される土地をお探しください。
贈与される土地が見つからない場合は「路線価図・町丁名索引」に戻り、その地域の別の路線価図をご覧ください。
そして、贈与される土地が見つかれば、その土地を取り囲む道路に以下のような数字とアルファベットが記されていることを確認してください。

上記の数字とアルファベットの数字の部分に1,000円を掛け算した答えが、その土地の路線価です。
たとえば、145Dと記されている場合は「145×1,000円=145,000円」と計算し、贈与される土地の路線価は14万5千円となります。
また、130Dと記されている場合は「130×1,000円=130,000円」と計算し、贈与される土地の路線価は13万円です。
贈与される土地が2つの道路に接し、それぞれの道路に異なる数字とアルファベットが記されている場合は、数字が大きい方の路線価をお選びになれば良いでしょう。
そして、計算された路線価に、その土地の平方メートル単位の広さを掛け算します。
例を挙げると、贈与される土地の路線価が14万5千円であり、広さが100㎡の場合は「14万5千円×100=1,450万円」と計算します。
また、贈与される土地の路線価が13万円であり、その土地の広さが80㎡の場合は「13万×80=1,040万円」と計算します。
この1,450万円や1,040万円という答えが、路線価から計算した贈与される土地の価格です。
なお、誰でもわかる不動産売買では、路線価図の見方や、路線価から土地の価格を計算する方法の詳細をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。
より詳細な路線価図の見方や、贈与される土地の価格を計算する方法をお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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路線価図に路線価が記載されていないときは?
路線価とは、土地の贈与税や相続税を計算するために国税庁が発表する土地の価額ですが、主に市街地の土地のみに付けられています。
そのため、郊外に位置する土地の路線価を調べても、その地域の路線価図自体が掲載されていなかったり、路線価図があったとしても価格が記されていません。
そのような路線価が設定されていない郊外の土地の価格は、その土地の固定資産税評価額に1.1倍などを掛け算しつつ計算します。
固定資産税評価額とは、固定資産税を算出するための不動産の価額であり、その土地の固定資産税評価額は、毎年4~6月ごろなどにご自宅に届く固定資産税の納税通知書などに記されています。
たとえば、固定資産税評価額が500万円の土地の価格は、その1.1倍の550万円などとご計算ください。
また、固定資産税評価額が1,000万円の土地の価格は、その1.1倍の1,100万円などと計算してください。
手順2. 計算した贈与される土地の価格から基礎控除額を差し引き、課税価格を算出する
贈与税には、1年間(1月1日~12月31日)に受けた贈与に対して110万円の基礎控除額が設けられています。( ※ 贈与税の基礎控除額の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.4402 贈与税がかかる場合」の「1 暦年課税」にてご確認いただけます )
よって、手順1で路線価から計算した土地の価格から110万円を差し引いてください。
たとえば、手順1で計算した土地の価格が1,000万円の場合は「1,000万円-110万円=890万円」と計算し、その答えは890万円です。
この答えが、土地の贈与税を計算する基となる課税価格(税金が掛かる価格)となります。
土地の贈与税は、路線価から計算した土地の価格から基礎控除額を差し引きつつ課税価格を算出し、課税価格に贈与税の税率を掛け算して計算します。
基礎控除や課税価格など難しい言葉が出てきましたが、必ずしも理解する必要はなく、ご紹介する手順に沿って計算していただけば大丈夫です。
この後も、土地の相続税を算出する手順を気楽にお読みください。
手順3. 算出した課税価格に贈与税の税率を掛け算する
つづいて、手順2で算出した課税価格に贈与税の税率を掛け算します。
贈与税の税率は課税価格に応じて変動する累進課税方式であり、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」に分類されます。
一般贈与財産用と特例贈与財産用の違いは以下のとおりです。
一般贈与財産用と特例贈与財産用の違い
- 一般贈与財産用
- 一般贈与財産用とは、一般的な贈与が行われた際に適用される税率であり、一般税率とも呼ばれます。
- 特例贈与財産用
- 特例贈与財産用とは、祖父母や父母などから直系尊属で20歳以上の子や孫へに贈与された場合に適用される税率であり、特例税率とも呼ばれます。
一般贈与財産用と特例贈与財産用の税率は以下のとおりです。
贈与税における一般贈与財産用と特例贈与財産用の税率
課税価格 | 一般贈与 | 特例贈与 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 10% |
200万円超 300万円以下 |
15% | 15% |
300万円超 400万円以下 |
20% | 15% |
400万円超 600万円以下 |
30% | 20% |
600万円超 1000万円以下 |
40% | 30% |
1000万円超 1500万円以下 |
45% | 40% |
1500万円超 3000万円以下 |
50% | 45% |
3000万円超 4500万円以下 |
55% | 50% |
4500万円超 | 55% | 55% |
※ 贈与税の税率の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」にて確認できる
以上が贈与税の税率です。
たとえば、課税価格が1,000万円の土地が他人に贈与される場合は「1,000万円(課税価格)×40%(一般贈与財産用の税率)=400万円」と計算し、その答えは400万円です。
また、課税価格が2,000万円の土地が直系尊属で20歳以上の子や孫へ贈与される場合は「2,000万円(課税価格)×45%(特例贈与財産用の税率)」と計算し、その答えは900万円となります。
手順4. 手順3の答えから控除額を差し引き、贈与税が決定される
手順3の答えから控除額を差し引けば、贈与される土地の贈与税が把握できます。
控除額は課税価格によって増減し、一般贈与財産用と特例贈与財産用によって異なり、以下のとおりです。
贈与税の控除額
課税価格 | 一般贈与 | 特例贈与 |
---|---|---|
200万円以下 | 0円 | 0円 |
200万円超 300万円以下 |
10万円 | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
25万円 | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
65万円 | 30万円 |
600万円超 1000万円以下 |
125万円 | 90万円 |
1000万円超 1500万円以下 |
175万円 | 190万円 |
1500万円超 3000万円以下 |
250万円 | 265万円 |
3000万円超 4500万円以下 |
400万円 | 415万円 |
4500万円超 | 400万円 | 640万円 |
※ 贈与税の控除額の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」にて確認できる
以上が贈与税の控除額です。
たとえば、手順3の答えが400万円であり、他人に土地が贈与されるのであれば「400万円(手順3の答え)-25万円(一般贈与財産用の控除額)=375万円」と計算し、土地の贈与税は375万円となります。
また、手順3の答えが900万円であり、土地が直系尊属で20歳以上の子や孫へに贈与される場合は「900万円(手順3の答え)-90万円(特例贈与財産用の控除額)=810万円」と計算し、土地の贈与税は810万円です。
以上で土地の贈与税の計算が完了しました。
高額で驚かれる方がいらっしゃると思いますが、贈与税は相続税より高くなるのが特徴です。
ただし、いくつかの条件を満たせば、土地の贈与税がかからない、または贈与税の支払いを先延ばしすることが可能になります。
引き続き、土地の贈与税がかからない条件をご紹介しましょう。
2. 土地の贈与税がかからない条件
土地の贈与を受けると、多くの場合は贈与税が課せられます。
ただし、以下の条件に合致する場合は、贈与税がかからない、または贈与税の支払いを先延ばしすることが可能です。
土地の価格が110万円以下の場合
この記事の「手順2. 計算した贈与される土地の価格から基礎控除額を差し引き、課税価格を算出する」にてご紹介しましたが、贈与税には毎年110万円の基礎控除額が設けられています。
よって、価格が110万円以下の土地が贈与される場合は、贈与税はかかりません。
なお、110万円という価格は売買価格などの実勢価格ではなく、この記事の「手順1. 路線価から贈与される土地の価格を計算する」にてご紹介した、路線価から計算した土地の価格のため留意してください。
路線価から計算した土地の価格は、売買価格や実勢価格より安くなるのが通例です。
配偶者控除が適用される場合
贈与税には、配偶者控除が設けられています。
贈与税における配偶者控除とは、以下の条件を満たしつつ夫婦間で居住用の住宅や、居住用の住宅が建つ土地の贈与が行われた場合に、贈与された不動産の価格から2,000万円が控除される制度です。
配偶者控除の適用条件
- 婚姻期間が20年を過ぎた後に不動産が贈与された
- 贈与される居住用の不動産に、贈与を受けた者の住居がある
- 贈与される居住用の不動産に、贈与を受けた者が今後も住み続ける
- 過去に同一の配偶者からの贈与に対して配偶者控除が適用されていない
また、この記事の「手順2. 計算した贈与される土地の価格から基礎控除額を差し引き、課税価格を算出する」にてご紹介しましたが、贈与税には毎年110万円の基礎控除額が設けられています。
よって、配偶者控除が適用される条件を満たしつつ、価格が2,110万円までの居住用の住宅が建つ土地を夫婦間で贈与する場合は、贈与税は掛かりません。
なお、2,110万円以下という価格は売買価格ではなく、この記事の「手順1. 路線価から贈与される土地の価格を計算する」にてご紹介した、路線価から計算した土地の価格のため留意してください。
路線価から計算した土地の価格は売買価格より安く、実勢価格の80%などになるのが通例です。
そのため、配偶者控除が適用される条件を満たしつつ、実勢価格が2,600万円程度までの居住用の住宅が建つ土地を夫婦間で贈与する場合は、贈与税はかかりません。
ただし、配偶者控除を適用するためには、申告が必要なため注意してください。
土地の配偶者控除が適用される条件や申告の必要性に関する詳細は、「国税庁タックスアンサーNo.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」にて確認することが可能です。
相続時精算課税を選択する場合
相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母が、20歳以上の直系直属の子や孫に贈与を行う際に、課税価格から2,500万円が差し引かれる制度です。
この相続時精算課税の適用を受け、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の直系直属の子や孫に課税価格が2,500万円までの土地を贈与すれば、贈与税はかかりません。
ただし、相続時精算課税を適用しつつ贈与された土地は、父母または祖父母が亡くなった時点で子や孫が相続したとみなされます。
そして、その土地が贈与された時点における価格に応じて、あらためて相続税が課せられるため注意してください。
相続時精算課税は、父母または祖父母から子や孫に贈与された財産に課せられる贈与税を相続税に置き換える制度であり、贈与税が免除される制度ではありません。
また、相続時精算課税の適用を受けると、その後に行われる贈与に対して、毎年110万円までの基礎控除額が適用されないなどのデメリットがあります。
相続税は贈与税より安くなりますが、相続時精算課税の適用を希望する場合は、慎重にご検討ください。
相続時精算課税が適用される条件の詳細は、「国税庁タックスアンサーNo.4103 相続時精算課税の選択」にてご確認いただけます。
ちなみに、誰でもわかる不動産売買では、相続時精算課税制度をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。
親子間などでの土地の贈与を検討しつつ贈与税が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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相続時精算課税制度とは?わかりやすく解説
3. 土地の贈与税はいくらから?
土地を贈与する際は、いくらから贈与税がかかるか気になりますが、110万円を超える土地を贈与する場合は贈与税がかかるとお考えください。
贈与税には110万円の基礎控除額が設けられ、1月1日から12月31日までの暦年に行われた110万円までの贈与には贈与税がかかりません。( ※ 贈与税の基礎控除額の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.4402 贈与税がかかる場合」の「1 暦年課税」にてご確認いただけます )
よって、110万円を超える土地を贈与する場合は、一部例外を除き贈与税がかかります。
この場合の110万円という価格は、売買価格ではなく路線価から計算した土地の価格であり、路線価から計算された土地の価格は売買価格の80%程度などになるのが通例です。
そのため、売買価格が130~140万円を超える土地を贈与する場合は贈与税がかかります。
ただし、配偶者控除を適用したり、相続時課税清算を選択することにより、110万円を超える土地を贈与する場合でも贈与税がかからない、または贈与税の支払いを先延ばしすることが可能です。
配偶者控除や相続時課税清算の詳細は、この記事の「配偶者控除が適用される場合」と「相続時課税清算を選択する場合」にてご確認いただけます。
まとめ - 土地の贈与には不動産取得税もかかる
土地の贈与をご検討される方へ向けて、いくら贈与税がかかるか計算する方法や贈与税がかからない条件、いくらから贈与税がかかるかなどご紹介しました。
土地の贈与税は、路線価から土地の価格を計算し、計算した土地の価格から基礎控除額を差し引き課税価格を算出し、課税価格に税率を掛け算しつつ決定されます。
また、課税価格が110万円以下の土地が贈与される際や、配偶者控除が適用される場合、相続時課税清算を選択する場合は、贈与税がかからない、または税額を大幅に安くすることが可能です。
ただし、相続時課税清算を選択した場合は、贈与税に代わり相続税が課せられるため注意してください。
なお、土地の贈与を受けた方は、贈与税だけではなく不動産取得税も課せられます。
土地の不動産取得税は、その土地の固定資産税評価額に応じて額が増減します。
固定資産税評価額とは、その土地の固定資産税を算出するために市区町村が評価した価額であり、不動産取得税は安ければ数万円など、高い場合は数十万円以上など様々です。
ちなみに、誰でもわかる不動産売買では、土地などの不動産取得税を計算する方法をご紹介するコンテンツも公開しています。
お時間のある方は、ぜひご覧ください。
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ご紹介した内容が、土地の贈与税をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2020年12月
記事公開日:2018年8月
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