不動産取得税が払えない|軽減・分納・猶予・還付で解決する方法
「不動産取得税の納税通知書が届いたけれど、手元にお金がない……」
家を購入してしばらく経ったある日、見覚えのない封筒が届いた。開いてみると、数十万円の不動産取得税の納税通知書。
住宅ローンの頭金や引越し費用で家計が苦しいタイミングに、追い打ちをかけるような請求。「どうすればいいのか」と頭が真っ白になった方も多いのではないでしょうか。
筆者自身も、初めて不動産を購入したとき、不動産取得税の通知書を受け取り、支払いに苦労した経験があります。
当時は軽減措置という制度があることも知らず、本来であれば減額できたはずの税額を全額払ってしまいました。「もっと早く知っていれば」と悔やんだのを、今でもよく覚えています。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、不動産取得税が払えないときの対処法を解説します。
結論から言えば、不動産取得税が払えない場合でも、次の4つの手段で解決できる可能性があります。
- 軽減措置の申請:そもそも税額を減らす、あるいはゼロにする
- 分納の相談:税事務所に依頼して複数回に分けて払う
- 徴収猶予の申請:一定期間、納付を法律上先延ばしにする
- 還付申請:払いすぎた税額を取り戻す
「払えない」と焦る前に、まず確認してほしいことがあります。
それは、「あなたが受け取った納税通知書の金額は、本当に正しい金額か」ということです。
実は、都道府県が自動で送ってくる通知書には、軽減措置が反映されていないケースがあるのです。
この記事では、不動産取得税が払えないと感じたときに取るべき行動を、「税額を減らす方法」から「払えない場合の猶予制度」まで順を追って解説します。
法律上の根拠も明示しながら説明しますので、はじめて不動産取得税に向き合う方にも安心してお読みいただけます。
目次
- 1. 不動産取得税が払えない場合の結論【まず読んでほしい】
- 2. 不動産取得税が払えなくなる3つの原因
- 3. 対処法①:軽減措置の申請で税額そのものを減らす
- 4. 対処法②:税事務所に「分納」を相談する
- 5. 対処法③:制度的な「徴収猶予」を申請する(土地先行取得の方向け)
- 6. 対処法④:経済的困難による「納税の猶予」を申請する
- 7. 払えない場合に知っておきたいリスク|滞納するとどうなるか
- 8. クレジットカード払いで実質的に分割納付する方法
- 9. 「払えない」状況を未然に防ぐ資金計画のポイント
- まとめ|払えないと感じたら最初にすべき3つの確認
1. 不動産取得税が払えない場合の結論【まず読んでほしい】
不動産取得税が払えないと感じても、すぐにあきらめる必要はありません。
状況によっては、税額そのものを減らせる場合や、納付を先延ばしにできる制度が用意されています。
まずは「自分がどのパターンに当てはまるか」を確認することが、解決への最初の一歩です。
1-1. 払えない場合に取れる手段は3つある
不動産取得税を払えない場合でも、取れる手段は複数あります。
大切なのは、「払えない」と感じた瞬間に放置しないことです。放置すると延滞金(本来の税額に上乗せされるペナルティ)が発生し、最終的には財産を差し押さえられるリスクがあります。
払えないと感じたら、次の3つの手段を状況に応じて選びましょう。
| 手段 | 内容 | こんな人に向いている |
|---|---|---|
| ①軽減措置の申請 | 税額そのものを減らす・ゼロにする | 通知書の金額が高すぎると感じている人 |
| ②分納の相談 | 税事務所に依頼し、複数回に分けて払う | 資金が不足しているが、数カ月以内に用意できる人 |
| ③徴収猶予・納税猶予の申請 | 一定期間、法律に基づいて納付を先延ばしにする | 土地を先に取得した人、または深刻な資金難の人 |
不動産取得税が「払えない」という状態には段階があり、取るべき手段が異なります。
それぞれの詳しい手順は後の章で解説しますが、どの手段も「納期限が来る前に動く」ことが大原則です。
納期限を過ぎてしまうと使えなくなる制度もあるため、通知書が届いたらできるだけ早く行動してください。
1-2. まず「軽減措置の申請漏れ」がないか確認する
不動産取得税が払えないと感じる前に、まず確認してほしいことがあります。
それは、「受け取った通知書の金額は、本当に正しい金額か」という点です。実は、都道府県が自動で送ってくる納税通知書には、軽減措置(税額を減らす制度)が反映されていないケースがあります。
軽減措置とは、一定の条件を満たす住宅や土地の取得について、不動産取得税の税額を大幅に減らせる制度のことです。
たとえば、床面積50㎡以上240㎡以下の新築住宅を取得した場合、建物の課税標準額(税額の計算に使われる金額)から1,200万円が控除されます。
イメージとしては、評価額が1,300万円の新築住宅なら、1,300万円から1,200万円を引いた100万円だけに税金がかかります。
税率3%を掛けると3万円。軽減措置なしなら1,300万円×3%=39万円ですから、36万円もの差が出る計算です。
筆者の場合、初めて不動産を購入したとき、この軽減措置の存在を知らないまま通知書が届いた金額をそのまま払ってしまいました。
2度目の購入時も同様で、合計10万円を超える税額を満額支払った経験があります。
不動産を購入後は何かと物入りで、当時は「なぜこんなにかかるのか」と苦しんだことを覚えています。
そして、後から制度を知り、「申請していれば減額できたかもしれない」と悔やみました。
軽減措置の申請は、自分から動かないと適用されません。「通知書が来た=その金額が正しい」とは限らないことを、まず頭に入れておいてください。
- 軽減措置の申請には期限があります。都道府県によっては期限後の申請も受け付けられますが、やむを得ない理由により申請が遅れたことを伝える必要があるなど手間がかかります。
通知書が届いたらすぐに確認することをおすすめします。
2. 不動産取得税が払えなくなる3つの原因
「不動産取得税が払えない」という状況が生まれる原因は、大きく3つのパターンに分かれます。
原因によって取るべき対処法が異なるため、まず自分がどのパターンに当てはまるかを確認することが大切です。
それぞれの状況を整理しながら、対処法への橋渡しをします。
2-1. 原因①:取得から数カ月〜1年後に突然、高額の通知が届いた
不動産取得税が「払えない」と感じる最も多い原因は、通知書が届くタイミングのズレです。
不動産を購入した直後ではなく、数カ月から1年以上後に突然、納税通知書(税金を払うよう求める書類)が届くことがあります。
この時間的なズレが、「お金を使い果たしたタイミングに請求が来る」という状況を生み出します。
通知書が届く時期は、物件の種類によって異なります。
- 中古住宅・土地の売買:所有権移転登記(不動産の名義を自分に変える手続き)から半年〜1年程度
- 新築住宅(建売・マンション):家屋調査(都道府県が建物の価値を評価する調査)が終わった後で、取得から6カ月〜1年程度、場合によってはそれ以上かかることもある
- 注文住宅(土地を先に購入して新築):土地と建物でそれぞれ別の時期に届く
たとえば、4月に中古住宅を購入した場合、翌年の1月〜2月ごろに突然10万〜20万円規模の通知書が届くことがあります。
住宅ローンの返済も始まり、引越し費用や家具の購入でお金を使い切った後にこの通知が届くため、「払えない」と感じるのは無理のないことです。
ポイントは、不動産を取得した時点で「半年〜1年後に通知が来る」と想定し、あらかじめ資金を確保しておくことです。(対処法は、本記事の「9. 「払えない」状況を未然に防ぐ資金計画のポイント」で解説します。)
2-2. 原因②:軽減措置が適用されておらず、予想より大幅に高い税額だった
2つ目の原因は、「軽減措置(税額を減らす制度)が反映されていない通知書が届いた」というケースです。
不動産取得税には、一定の条件を満たす住宅や土地について、税額を大幅に減らす軽減措置の制度があります。
しかし、この軽減措置は自分から申請しないと適用されません。
都道府県が自動的に送ってくる通知書は、軽減措置が反映される前の「素の税額」が記載されているケースがあります。
イメージとしては、本来なら0円になるはずなのに、通知書には20万円と書かれている、という状況です。
たとえば、一般的な新築住宅(床面積50㎡以上240㎡以下)を取得した場合、建物の課税標準額から1,200万円が控除されます。
評価額が1,200万円以下であれば、軽減措置を適用すると建物分の不動産取得税は0円になります。
軽減措置の申請を忘れると、数万円〜数十万円の「払わなくてよかった税金」を払い続けることになります。
「通知書の金額が高すぎる気がする」と感じた方は、まず軽減措置の申請漏れがないか確認することを最優先にしてください。(具体的な確認方法は、本記事の「3. 対処法①:軽減措置の申請で税額そのものを減らす」で解説します。)
2-3. 原因③:土地を先行取得したため、一時的に税負担が重なった
3つ目の原因は、注文住宅を建てるために土地だけを先に購入したケースです。
注文住宅(土地を自分で購入し、ハウスメーカーや工務店に建築を依頼する住宅)では、土地を先に取得してから、数カ月〜1年以上かけて建物を建てるのが一般的な流れです。
この場合、建物が完成する前に土地の不動産取得税の通知書が届くことがあります。
住宅ローンの返済も始まり、建築費用の支払いが続いているタイミングで土地の税金まで請求されると、手元の資金が一時的に不足しやすくなります。
「土地の税金を今すぐ払わなければいけないのか」と困惑する方も多いのですが、実はこのケースには「徴収猶予(税金の納付を一定期間先延ばしにする制度)」が用意されています。
具体的には、土地を取得した日から3年以内に住宅を新築する予定がある場合、軽減措置の対象となる見込み税額分について、住宅が完成するまで納付を待ってもらえます。
ただし、この徴収猶予の申請は納期限(税金を払う期限)までに行う必要があります。 期限を過ぎてしまうと申請できなくなるため、通知書が届いたらすぐに確認してください。
通知書が届いたら、納期限を確認し、できるだけ早く管轄の県税事務所(東京都の場合は都税事務所)に相談してください。(徴収猶予の詳しい手順は、本記事の「5. 対処法③:制度的な「徴収猶予」を申請する(土地先行取得の方向け)」で解説します。)
ちなみに、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、土地を先に購入して住宅を建て、不動産取得税が還付される流れを解説する記事を公開中です。ぜひご覧ください。
お役立ち記事
土地を先に購入して不動産取得税が還付される流れ
3. 対処法①:軽減措置の申請で税額そのものを減らす
軽減措置の申請は、「不動産取得税が払えない」状況への対処法の中で最も優先すべき手段です。
なぜなら、申請によって税額が大幅に下がる、あるいは0円になるケースがあるからです。まずは自分の物件が軽減の対象かどうかを確認してください。
3-1. 新築・中古・土地それぞれの軽減措置の適用条件
軽減措置の内容と条件は、物件の種類(新築住宅・中古住宅・住宅用土地)によって異なります。
自分が取得した物件がどの区分に当てはまるかを確認することが、最初のステップです。
| 物件の種類 | 主な適用条件 | 軽減の内容 |
|---|---|---|
| 新築住宅 | 床面積50㎡以上240㎡以下(貸家以外)/自己居住用 | 建物の評価額から1,200万円を控除(認定長期優良住宅は1,300万円) |
| 中古住宅 | 床面積50㎡以上240㎡以下/自己居住用/昭和57年1月1日以降に新築されたもの、または新耐震基準適合の証明があるもの | 新築時期に応じて建物の評価額から420万円〜1,200万円を控除 |
| 住宅用土地 | 上記の軽減対象となる住宅と一緒に取得、または一定期間内に取得した土地 | 「45,000円」または「土地1㎡あたりの価格×住宅床面積の2倍(上限200㎡)×3%」のうち高い方の額を税額から減額 |
令和8年4月1日以降に取得した住宅については、一定の条件のもと、床面積の下限要件が緩和される方向で税制改正が行われています。
ただし、適用条件や対象範囲は物件の種類・所在地によって異なる場合があるため、詳細は管轄の県税事務所(東京都は都税事務所)に確認してください。
新築住宅の軽減措置:計算例
たとえば、評価額(固定資産評価額:都道府県、または市町村が定める不動産の価値の目安)が1,500万円の新築一戸建てを取得した場合を見てみましょう。
- 軽減なしの場合:1,500万円 × 3% = 45万円
- 軽減ありの場合:(1,500万円 − 1,200万円)× 3% = 9万円
つまり、軽減措置を申請するだけで、36万円もの差が生まれます。
さらに、評価額が1,200万円以下の新築住宅であれば、建物分の不動産取得税は0円になります。
中古住宅の軽減措置:控除額は新築時期で変わる
中古住宅の場合、控除される金額は「その住宅がいつ建てられたか(新築時期)」によって変わります。
平成9年4月1日以降に新築された中古住宅であれば、新築住宅と同じく1,200万円が控除されます。一方、昭和57年1月1日〜昭和60年6月30日に新築された住宅では控除額が420万円となり、新築時期が古いほど控除額が小さくなります。
- 昭和56年12月31日以前(いわゆる旧耐震基準の時代)に建てられた中古住宅は、原則として軽減措置の対象外です。
ただし、新耐震基準に適合していることが証明されれば対象になります。取得日前2年以内に耐震診断等が行われたことを示す書類が必要です。
3-2. 申請の期限と手続き先
軽減措置の申請期限は、都道府県によって異なります。申請先は、取得した不動産の所在地を管轄する県税事務所(東京都の場合は都税事務所)です。
ポイントは2つです。
- 納期限前に申請するのが原則:多くの都道府県では、通知書の納期限までに申請書を提出する必要があります。
- 納期限後でも申請できる場合がある:都道府県によっては、「課税された日から一定期間内」であれば期限後の申請を受け付けているケースがあります。通知書の納期限が過ぎてしまった場合も、あきらめる前にまず管轄の税事務所に問い合わせてみてください。
申請時に必要な主な書類は以下のとおりです(物件の種類や都道府県によって異なります)。
- 不動産取得税減額等申請書(各都道府県のHPからダウンロード可)
- 建物・土地の登記事項証明書(法務局で取得)
- 住民票(自己居住用であることの確認のため)
- 新築住宅の場合:検査済証など建築に関する書類
ちなみに、当サイト「誰でもわかる不動産売買」では、不動産取得税の軽減措置の申請を忘れた場合の対処法を解説する記事を公開中です。ぜひご覧ください。
お役立ち記事
不動産取得税を軽減する措置の申請を忘れたときの対処法
3-3. すでに払ってしまった場合は「還付申請」ができる
軽減措置を知らずに、すでに税額を全額払ってしまった方もいると思います。しかし、払った後でも状況によっては「還付(払いすぎた税金を返してもらう)申請」ができます。
神奈川県が公開する「県税のしおり」の不動産取得税のページにも、「土地を先行取得して住宅を新築した場合、一旦納税した後に減額の申請をすることで、減額相当額の還付を受けることができる」と明記されています。
ただし、申請には期限があり、「不動産を取得した日(または登記日)から5年以内」です。
「払えない」と感じる前に、あるいはすでに払ってしまった後でも、一度管轄の税事務所に「軽減措置の対象になるか」「還付できるか」を問い合わせてみてください。
問い合わせ自体は無料で、電話でも対応してもらえます。
4. 対処法②:税事務所に「分納」を相談する
分納(ぶんのう)とは、本来一括で支払う税金を、複数回に分けて払えるよう税事務所に相談する対応のことです。
不動産取得税は法律上、一括での全額納付が原則ですが、資金の都合がつかない場合は税事務所に相談することで、分けて支払える可能性があります。
ただし分納は、税事務所が状況を判断したうえで認める「裁量的な対応」である点を理解しておくことが重要です。
4-1. 分納とはどのような対応か(法律上の権利ではなく相談対応)
分納は、税事務所が「やむを得ない」と判断した場合に認められる対応です。
固定資産税(不動産を所有することにより毎年かかる税金)は法律上、年4回の分割払いが制度として定められています。一方、不動産取得税には、そのような分割払いの制度がありません。
つまり、分納ができるかどうかは、税事務所の担当者が状況を聞いたうえで判断することになります。
「法律で保障された権利」ではないため、相談の仕方や状況の説明によって結果が変わることもあります。
「払えないから分割にしてほしい」という言い方より、「こういう理由で一括での支払いが困難ですが、○カ月後には完納できる見込みです」という伝え方が、認められやすい傾向があります。
4-2. 分納が認められる条件
分納が認められるためには、「合理的な理由」と「完納できる見込み」の2点を説明することが重要です。
合理的な理由とは、たとえば次のような状況を指します。
- 住宅ローンの支払いが始まったばかりで手元資金が不足している
- 引越し費用や教育費の支払いで一時的に資金が底をついている
- 勤務先の給与支払いタイミングと納期限がずれている
- 分納が認められても、納期限後の期間に対して延滞金(本来の税額に上乗せされるペナルティ)が発生する場合があります。後述する「4-4.分納中も延滞金はかかるのか」で詳しく説明します。
4-3. 分納相談の具体的な手順
分納の相談は、納期限が来る前に行動することが何より重要です。
納期限を過ぎてから相談するより、期限前に連絡するほうが柔軟に対応してもらいやすくなります。
具体的な手順は次のとおりです。
ステップ①:納税通知書の「問い合わせ先」を確認する
不動産取得税の納税通知書の裏面、もしくは課税明細書の裏面に、担当の税事務所の電話番号と担当課名が記載されています。まずここを確認してください。
ステップ②:納期限前に電話または窓口で連絡する
電話でも相談を受け付けています。「一括での支払いが難しいため、相談したい」と伝えるだけで構いません。
ステップ③:支払えない理由と収入・支出の状況を説明する
「いつごろ資金が用意できるか」「毎月いくらなら支払えるか」を具体的に伝えると、担当者が判断しやすくなります。
ステップ④:分納の計画内容を確認・合意する
税事務所が認めた場合、分納の回数・各回の金額・支払い期日が決まります。合意内容については、税事務所から確認書や案内文書が渡される場合がありますが、対応は都道府県によって異なります。
ステップ⑤:各回の期日に確実に納付する
合意した期日に必ず払うことが前提です。期日を守れない場合、分納の合意が取り消されることがあります。
4-4. 分納中も延滞金はかかるのか
原則として、納期限を過ぎた日から延滞金(えんたいきん)が発生します。
延滞金とは、税金を期限内に払わなかった場合に、本来の税額に上乗せされるペナルティのことです。
延滞金の割合は、原則として次のとおりです。
- 納期限の翌日から1カ月以内:年7.3%(ただし特例基準割合が適用される場合はこれより低くなります)
- 1カ月を超えた後:年14.6%(同様に特例基準割合が適用される場合はこれより低くなります)
特例基準割合(とくれいきじゅんわりあい)とは、毎年財務大臣が告示する金利をもとに決まる実際の延滞金の割合のことです。
令和8年は、1カ月以内は年2.8%、1カ月超は年9.1%が適用されます。原則税率(7.3%・14.6%)より大幅に低い割合です。(出典:「大阪府・令和7年度版 府税のしおり」※令和8年以降の割合は毎年変更される可能性があります。最新情報は各都道府県税事務所または財務省の告示をご確認ください。)
たとえば、税額20万円を6カ月間(180日)滞納した場合の延滞金の目安は次のとおりです。
- 最初の1カ月(30日):20万円 × 2.8% × 30/365 ≒ 460円
- 残り5カ月(150日):20万円 × 9.1% × 150/365 ≒ 7,483円
- 合計:約7,943円
つまり延滞金自体は、税額が数十万円規模であれば数千円〜1万円台程度にとどまるケースが多いというわけです。
「延滞金が怖くて相談できない」と感じている方も、金額の目安を知ったうえで早めに相談することをおすすめします。
なお、延滞金の合計額が2,000円未満の場合は全額が切り捨てとなり、延滞金は発生しません。
ただし、延滞金は日々増えます。相談を先延ばしにするほど負担が増えるため、通知書が届いたらできる限り早く動いてください。
5. 対処法③:制度的な「徴収猶予」を申請する(土地先行取得の方向け)
「徴収猶予(ちょうしゅうゆうよ)」とは、法律に基づいて税金の納付を一定期間先延ばしにできる制度のことです。
前章の「分納(税事務所との相談による裁量的な対応)」とは異なり、一定の要件を満たせば都道府県が必ず認めなければならない、法律上の制度です。
ただし申請には期限があり、対象となるケースも限られているため、自分が当てはまるかどうかをまず確認してください。
5-1. 徴収猶予(地方税法第73条の25)とはどのような制度か
「徴収猶予」は、税事務所への相談で認めてもらう「分納」とは、性格がまったく異なる制度です。
分納はあくまでも「お願いして認めてもらう」行政裁量的な対応ですが、徴収猶予は「一定の要件を満たせば法律上、認められる」制度です。
イメージとしては、「今は払えないから待ってほしい」というお願いではなく、「この制度の要件に当てはまるので、法律に基づいて猶予してください」という申請です。
根拠は地方税法第73条の25で、主に「土地を先行取得して、これから住宅を新築する予定がある」方を対象とした制度です。
また、徴収猶予が認められた期間中は、延滞金(本来の税額に上乗せされるペナルティ)が免除されます。
つまり、猶予期間中は追加コストなしに納付を待ってもらえるという大きなメリットがあります。
5-2. 徴収猶予が適用される主なケース
徴収猶予が認められるのは、すべての「払えない」状況ではありません。
主に「土地を先に取得して、後から住宅を建てる予定がある」という特定のケースに絞られます。自分の状況がどれに当てはまるかを確認してください。
土地を先行取得し住宅を新築予定の場合
最も多いケースです。注文住宅(自分で土地を購入し、ハウスメーカーや工務店に建築を依頼する住宅)の建築予定者が対象になります。
適用の条件は次のとおりです。
- 土地を取得した日から一定期間以内に、その土地の上に住宅を新築する予定があること
- 土地を取得した者が、住宅の新築まで引き続きその土地を所有していること(または、土地をいったん売却した相手方が新築する場合を含む)
- 軽減措置(税額を減らす制度)の対象となる住宅、すなわち特例適用住宅(床面積50㎡以上240㎡以下など一定の要件を満たす住宅)を建てる予定であること
猶予期間については、令和8年3月31日までに土地を取得した場合、最長3年以内とされています。
たとえば、令和7年5月に土地を取得した場合、令和10年5月までに住宅を新築する予定があれば、この制度の対象になる可能性があるといった具合です。(出典:大阪府:府税のしおり・不動産取得税、兵庫県:不動産取得税のあらまし、愛知県:県税のあらまし)
ただし、適用される猶予期間や条件は都道府県によって異なる場合があるため、管轄の都道府県税事務所または最新の都道府県資料でご確認ください。
その他のケース(耐震基準適合既存住宅または未使用の特例適用住宅を取得予定の場合)
「先に土地を取得し、1年以内にその土地の上にある中古住宅(耐震基準に適合していると証明されたもの)または新築後1年を経過した自己の居住用の未使用の特例適用住宅を取得する予定がある場合」も、1年以内の猶予が認められることがあります。(出典:愛知県:県税のあらまし)
このケースは、中古住宅の購入で土地と建物の取得が前後してしまうケースに当てはまります。
5-3. 徴収猶予の申請手順と必要書類
徴収猶予の申請において最も重要なのは、「納期限までに申請する」という点です。
納期限を過ぎてしまうと、この制度は利用できなくなる場合があります。通知書が届いたら、すぐにご自身の状況がこの制度に当てはまるかを確認してください。
| 区分 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 共通(全ケース) | 不動産取得税徴収猶予申告書(各都道府県のHPからダウンロード可) |
| 土地先行取得・住宅新築予定 | 建築確認申請書・建築確認済証(住宅が新築される予定を証する書類)、各階平面図(面積・間取りのわかるもの)、建築工事請負契約書など |
| 土地を第三者に譲渡してその者が新築する場合 | 土地の売買契約書(直接の譲受人を証する書類) |
申請の流れは次のとおりです。
- 通知書に記載の管轄税事務所に電話し、徴収猶予の申請を希望する旨を伝える
- 都道府県のHPから「不動産取得税徴収猶予申告書」をダウンロードして記入する
- 必要書類を添付し、納期限までに税事務所へ提出する(郵送可否は税事務所に確認)
- 猶予が認められた場合、住宅が完成した後に改めて軽減措置の「減額申告(軽減を受けるための申告)」を行う
なお、徴収猶予が認められても、住宅が完成した後に減額申告を忘れると、猶予されていた税額が通常どおり請求されます。
住宅完成後の手続きも忘れずに行ってください。(出典:兵庫県:不動産取得税のあらまし)
5-4. 納期限を過ぎた場合は徴収猶予を申請できないため注意が必要
徴収猶予は「納期限前の申請」が条件です。 納期限を過ぎてしまうと、制度的な徴収猶予は申請できなくなる場合があります。
「通知書が届いたけれど、とりあえず後で考えよう」と放置してしまうと、申請のタイミングを失う可能性があります。
一方、すでに納期限を過ぎて全額を払ってしまった場合でも「還付申請」ができる可能性があります。
神奈川県:県税のしおり・不動産取得税のQ&A(Q2・A2)には、「納期限までに一旦納税した後、住宅が完成した時点で税額の減額を申請すれば、減額相当分の還付を受けることもできる」と明記されています。
つまり、「払ってしまった=終わり」ではないというわけです。まず管轄の税事務所に相談してみてください。
6. 対処法④:経済的困難による「納税の猶予」を申請する
前章の「徴収猶予(地方税法第73条の25)」は「土地先行取得」という特定のケースに限られた制度でした。
一方、この章で解説する「納税の猶予」は、資金難や生活上の困難など、より広い理由で利用できる制度です。
あまり知られていない制度ですが、深刻な資金難に陥った場合の重要な選択肢の一つです。
申請の要件・手続き・延滞金への影響の3点を順に確認してください。
6-1. 「徴収猶予(第15条)」と「換価の猶予(第15条の6)」の違い
地方税法には、経済的困難を理由に納税を猶予する制度として、「徴収猶予」と「換価の猶予」の2種類が規定されています。
名前が似ていますが、使う場面が異なります。
| 徴収猶予(地方税法第15条) | 換価の猶予(地方税法第15条の6) | |
|---|---|---|
| どんな場面で使うか | 税金をそもそも払うことが困難な場合 | 税金を払うと事業継続や生活維持が著しく困難になる場合 |
| 典型的な状況 | 災害・病気・廃業・事業損失など | 一時に払うとキャッシュフローが枯渇するが、分割なら払える |
| 申請のタイミング | 納期限内に申請 | 納期限から6カ月以内に申請 |
| 猶予できる期間 | 1年以内(やむを得ない場合は最長2年まで延長可) | 1年以内(延長により最長2年まで) |
| 延滞金の扱い | 猶予期間中、一定割合で免除 | 猶予期間中、一定割合で免除 |
イメージとしては、「徴収猶予」は「資金に余裕がなくて払えない」状況、「換価の猶予(かんかのゆうよ)」は「一括では払えないが、分割なら何とかなる」状況に向いている制度です。
換価の猶予とは、差し押さえた財産の換価(売却して現金化すること)を一定期間待ってもらえる制度のことです。
6-2. 申請できる主な条件
徴収猶予(地方税法第15条)が認められるのは、一定の事実に基づいて「一時に払えない」と認められる場合です。
地方税法第15条が定める主な認定事由は以下のとおりです。
- 震災・風水害・火災などの災害を受けたとき、または盗難にあったとき
- 本人または同一生計の親族が病気・負傷したとき
- 事業を廃止または休止したとき
- 事業について著しい損失を受けたとき
「資金が足りない」「ローンの支払いが重なっている」という理由だけでは、認められないケースがあります。上記の事由に該当するかどうかを確認したうえで申請してください。
一方、換価の猶予(地方税法第15条の6)は「税金を一時に払うことによって事業の継続または生活の維持が著しく困難になるおそれがある」と認められる場合に申請できます。
こちらは事業廃止や病気といった特定の事由がなくても、生活・事業への影響を理由に申請できる点が徴収猶予と異なります。
6-3. 申請の手順・提出先・必要書類
申請先は、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所(東京都の場合は都税事務所)です。
申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 徴収猶予申請書(各都道府県のHPからダウンロード可)
- 財産収支状況書(猶予を受けようとする金額が100万円未満の場合)または財産目録・収支の明細書(100万円以上の場合)
- 猶予を受けたい理由を証する書類(例:診断書・廃業届の写し・被災証明書など)
- 担保の提供に関する書類(下記の「担保不要の条件」に当てはまらない場合に必要)
担保が不要となる条件は次の3つです。
①猶予を受けようとする金額が100万円以下、②猶予を受けようとする期間が3カ月以内、③担保として提供できる財産がないなど特別な事情がある場合、のいずれかに当てはまれば担保は不要です。
不動産取得税の場合、税額が数万円〜数十万円であれば①に該当するケースがほとんどです。(出典:愛知県:県税における納税の猶予制度について)
たとえば、不動産取得税が30万円で「病気による収入減」を理由に申請する場合、診断書と財産収支状況書を添付した申請書を、納期限までに管轄の税事務所に提出することになります。
税額が100万円以下のため、担保も不要です。
電話で事前に相談してから書類を整える流れが一般的です。「申請を考えているが、必要な書類が何かわからない」という状態でも、まずは電話で問い合わせることができます。
6-4. 猶予が認められた場合の延滞金の取り扱い
猶予が認められた場合、猶予期間中の延滞金は一定割合で免除されます。
これが、放置した場合と猶予申請した場合の大きな差です。
たとえば、税額20万円を1年間放置した場合の延滞金は、令和8年の特例基準割合(1カ月以内:年2.8%、1カ月超:年9.1%)を使うと次のように計算されます。
- 最初の1カ月(30日):20万円 × 2.8% × 30/365 ≒ 460円
- 残り11カ月(335日):20万円 × 9.1% × 335/365 ≒ 1万6,712円
- 合計:約1万7,172円
一方、猶予が認められれば、この期間に対応する延滞金が免除されます。
つまり、猶予申請をするだけで約1万7,000円超の延滞金の負担を避けられる可能性があります。
「どうせ払えないから」と放置するより、申請して猶予を得るほうが経済的に大きなメリットがあります。
なお、延滞金には端数処理のルールがあります。
滞納額に1,000円未満の端数がある場合はその端数を切り捨て、計算結果の合計額が2,000円未満の場合は延滞金は発生しません。
7. 払えない場合に知っておきたいリスク|滞納するとどうなるか
不動産取得税を滞納すると、法律に基づく手続きが段階的に進み、最終的には財産が差し押さえられます。
ただし、この章のリスクをここで読む方は、すでに前の章で「対処法」を把握しているはずです。
「こういうリスクがあるから、早めに行動しよう」という確認として読んでください。具体的な流れと延滞金の計算方法を順に説明します。
7-1. 滞納が確定してから差し押さえに至るまでの流れ
不動産取得税を滞納すると、法律上、都道府県は一定の手続きを経て強制的に財産を差し押さえることができます。
「少し遅れて払えばいい」と考える方もいるかもしれませんが、督促状(とくそくじょう)が届いた後の展開は思ったよりも早く進みます。
滞納後の流れは以下のとおりです。
- ステップ①:督促状が届く(納期限後20日以内)
- ステップ②:電話・文書などによる催告
- ステップ③:財産調査
- ステップ④:差し押さえ(督促状発送から10日後が法律上の根拠)
- ステップ⑤:公売・換価(こうばい・かんか)
- ステップ⑥:滞納税に充当
なお、法律上は「督促状発送から10日で差し押さえ可能」と規定されていますが、実務上はすぐに差し押さえが執行されるわけではありません。
ただし、放置していると手続きが進みます。督促状が届いた時点で、すぐに対処することが重要です。
7-2. 延滞金の計算方法|特例基準割合と原則税率の違い
延滞金(えんたいきん)とは、税金を期限内に払わなかった場合に、本来の税額に上乗せされるペナルティのことです。
「延滞金は年14.6%では?」と思った方もいるかもしれません。
実はこれは「原則税率」であり、実際には「延滞金特例基準割合(えんたいきんとくれいきじゅんわりあい)」という、より低い割合が適用されます。
延滞金特例基準割合とは、毎年財務大臣が告示する「平均貸付割合(国内銀行の短期貸出金利の平均)」に1%を加算した割合で、毎年1月1日に改定されます。
インターネットの多くのサイトは「年7.3%・年14.6%」という原則税率のみ記載していますが、実際の負担はこれより大幅に低くなります。
| 納期限翌日から1カ月以内 | 納期限翌日から1カ月超 | |
|---|---|---|
| 原則税率 | 年7.3% | 年14.6% |
| 令和4〜7年の特例基準割合 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和8年の特例基準割合 | 年2.8% | 年9.1% |
つまり、令和8年の実際の負担は「最初の1カ月は年2.8%、以降は年9.1%」です。原則税率(7.3%・14.6%)より大幅に低いことがわかります。
7-3. 延滞金の具体的な計算例
延滞金の計算は「税額 × 年率 × 滞納日数 ÷ 365」で求めます。
令和8年の特例基準割合(1カ月以内:年2.8%、1カ月超:年9.1%)を使って、税額30万円を滞納した場合の延滞金を計算してみましょう。
2カ月(約60日)滞納した場合
- 最初の1カ月(30日):30万円 × 2.8% × 30/365 ≒ 691円
- 残り1カ月(30日):30万円 × 9.1% × 30/365 ≒ 2,244円
- 合計:約2,935円
6カ月(約180日)滞納した場合
- 最初の1カ月(30日):30万円 × 2.8% × 30/365 ≒ 691円
- 残り5カ月(150日):30万円 × 9.1% × 150/365 ≒ 1万1,219円
- 合計:約1万1,910円
1年(365日)滞納した場合
- 最初の1カ月(30日):30万円 × 2.8% × 30/365 ≒ 691円
- 残り11カ月(335日):30万円 × 9.1% × 335/365 ≒ 2万5,068円
- 合計:約2万5,759円
なお、延滞金の合計額が2,000円未満の場合は切り捨てとなり、延滞金は発生しません。また、税額に1,000円未満の端数がある場合も、その端数は切り捨てて計算します。(出典:大阪府・令和7年度版 府税のしおり)
つまり、1カ月程度の遅延であれば延滞金は数百〜千円台に収まることが多いというわけです。もっとも、放置するほど日々増えていきます。
「延滞金が怖くて相談できない」という方も、まず金額の目安を知ったうえで税事務所に相談してください。
ポイントは、延滞金そのものより「差し押さえ」という手続きに至ることのほうが、実害として大きいということです。
延滞金の金額が小さくても、手続きが進んでしまうリスクは変わりません。
8. クレジットカード払いで実質的に分割納付する方法
クレジットカードによる不動産取得税の納付は、税事務所への相談が不要で、手続きがシンプルという点で使いやすい方法です。
ただし、全都道府県で対応しているわけではなく、手数料が発生する点にも注意が必要です。利用条件・手数料・注意点の3点を確認してください。
8-1. クレジットカード払いに対応している都道府県の確認方法
クレジットカードによる不動産取得税の納付は、「地方税統一QRコード(eL-QR)」が印刷された納付書が届いた都道府県であれば利用できます。
地方税統一QRコード(eL-QRとは、地方税の納付書に印刷されたQRコードのことで、このコードを読み取ることでインターネット上の「地方税お支払サイト」から納付できます)への対応は、令和5年4月以降、全国に広がっています。
神奈川県では、令和5年4月から不動産取得税の納税通知書にeL-QRが記載されており、地方税お支払サイトからクレジットカードや各種決済で納付が可能です。
大阪府でも、不動産取得税はクレジットカード納付の対象税目に含まれており、eL-QRが印刷された納付書を使って地方税お支払サイトから手続きできます。
ご自身が居住する都道府県が対応しているかどうかは、次の方法で確認できます。
- 方法①: 届いた納税通知書の表面に「eL-QR」または「地方税統一QRコード」の印刷があるか確認する
- 方法②: 管轄の都道府県税事務所のHPで「不動産取得税 クレジットカード」と検索する
- 都税事務所・金融機関等の窓口やコンビニエンスストアではクレジットカードは利用できません。
クレジットカード払いは、スマートフォンまたはパソコンの「地方税お支払サイト」からのみ手続きできます。
8-2. クレジットカード払いの手数料と注意点
クレジットカードで不動産取得税を払う場合、税額に応じた「システム利用料(手数料)」が別途かかります。
神奈川県の案内によると、システム利用料は、納付額1万円までが40円(税込)、以降1万円増えるごとに82円または83円(税込)ずつ加算されます。
たとえば税額3万9,500円の場合のシステム利用料は288円で、合計支払額は3万9,788円です。税額20万円の場合は約1,608円が目安です。
この手数料はカード会社の分割払いとは別に発生する点に注意が必要です。また、クレジットカード払いには次の注意点があります。
- 領収証書が発行されない:クレジットカードで納税した場合、領収証書は発行されません。カード会社の請求書で納付の確認が必要です。領収証書が必要な場合は、金融機関またはコンビニエンスストアで支払う必要があります。
- 納付書発行当日は利用不可:納付書発行当日はクレジットカードで納付できません。急ぎの場合は金融機関窓口を使ってください。
- 取り消しができない:支払い手続きが完了すると、取り消しはできません。
8-3. カードの分割・リボ払いを活用する際の考え方
クレジットカードで不動産取得税を支払った後、カード会社の「分割払い」や「リボ払い」に設定することで、実質的に複数回に分けて支払うことができます。
この方法のメリットは、税事務所への分納相談が不要で、即日手続きできる点です。ただし、カード会社の分割払い・リボ払いには金利手数料がかかります。
なお、多くのカードでは2回払いまでは手数料無料に設定されています。3回払い以上から手数料が発生するのが一般的です。
手数料率はカード会社によって異なりますが、分割払い・リボ払いともに年15〜18%前後が現在の目安です。
2025年以降、複数の主要カード会社が手数料率を引き上げており、ご利用前に必ず各カード会社の公式サイトで最新の手数料率をご確認ください。
たとえば、税額20万円を6回払いで支払った場合のカード手数料の目安(年15%・6カ月)は次のとおりです。
- 20万円 × 15% × 6/12 ≒ 約1万5,000円
この金額と、税事務所に分納相談した場合の延滞金(「7-3.延滞金の具体的な計算例」の計算例参照)を比べると、カード分割払いの手数料のほうが高くなるケースがあります。
資金的な余裕がある場合はクレジットカードの一括払いを選び、資金が不足している場合は税事務所への分納相談を検討するのが賢明です。
ポイントは、クレジットカード払いは「手続きの手軽さ」を優先する場合に向いており、コストを最小化したい場合は分納相談と比較したうえで選択することです。
9. 「払えない」状況を未然に防ぐ資金計画のポイント
「不動産取得税が払えない」という状況は、事前の知識と準備があれば多くの場合に避けられます。
払えなくなる原因は、主に「通知書が届くタイミングを知らなかった」「税額の目安を把握していなかった」「軽減措置の申請期限を見逃した」の3つです。
これらのリスクをあらかじめ防ぐための実践的なポイントを整理します。
9-1. 取得前に税額の目安を試算しておく
不動産取得税の大まかな金額は、取得前でもご自身で試算できます。
「いくら準備すればいいかわからない」という方も、計算の仕組みを知っておくだけで安心感が大きく変わります。
計算式は基本的に次のとおりです。
- 不動産取得税の計算方法
- 不動産取得税 = 課税標準額(固定資産評価額)× 税率3%
固定資産評価額(こていしさんひょうかがく)とは、都道府県が定める不動産の評価上の価格のことで、実際の売買価格とは異なります。一般的に、売買価格の5〜7割程度が目安とされています。
また、土地については令和9年3月31日までの取得に限り、固定資産評価額の1/2が課税標準(税額を計算する元になる金額)となる特例が適用されています。
たとえば、売買価格3,000万円の中古住宅(土地1,500万円・建物1,500万円)を取得した場合を考えてみましょう。
- 固定資産評価額の目安(売買価格の60%):土地 900万円・建物 900万円
- 課税標準額:土地 900万円 × 1/2 = 450万円、建物 900万円
- 軽減措置なしの場合の税額:(450万円+900万円)× 3% = 約40万5,000円
- 軽減措置あり(建物から1,200万円控除・土地は税額控除)の場合:大幅に減額または0円になる可能性あり
この試算はあくまで目安ですが、「軽減措置なしで数十万円規模の請求が来る可能性がある」と知っておくだけで、資金計画が大きく変わります。
9-2. 軽減措置の申請期限を物件種別ごとに確認しておく
軽減措置の申請を忘れると、本来払わなくてよかった税金を払うことになります。これは、筆者も経験済みです。
申請の期限と方法は物件の種類によって異なるため、取得前に確認しておくことが大切です。
| 物件の種類 | 軽減措置の種類 | 申請のタイミング | 備考 |
|---|---|---|---|
| 新築住宅 | 建物:評価額から1,200万円控除 | 取得後(登記後)早期申請が原則。多くの都道府県で取得から数十日以内 | 納税通知書の納期限前まで受け付けるケースも多い |
| 中古住宅 | 建物:新築時期に応じた控除 | 同上 | 昭和57年以降新築または耐震基準適合が要件 |
| 住宅用土地(新築同時取得) | 税額控除 | 同上 | 住宅と同時または前後1年以内の取得が条件 |
| 住宅用土地(新築予定・先行取得) | 徴収猶予 → 後日軽減 | 納期限前に申請が必須 | 納期限後は申請不可の場合が多い |
ポイントは、「通知書が届いてから申請する」では遅い場合があるという点です。
特に土地の先行取得で徴収猶予を希望する場合は、通知書が届いたらすぐに税事務所に連絡してください。
申請を忘れて払いすぎてしまった場合でも、不動産を取得した日(または登記日)から5年以内であれば還付申請できます。
「もう手遅れだ」とあきらめる前に、まず税事務所に問い合わせてみてください。
9-3. 通知が届く時期を把握して資金を確保しておく
不動産取得税の納税通知書が届く時期を把握しておくことが、「払えない」状況を防ぐ最も効果的な手段です。
物件の種類によって、通知書が届く時期は大きく異なります。
物件種別ごとの目安は次のとおりです。
- 中古住宅・土地(売買):登記から6〜12カ月ごろ
- 新築住宅・建売マンション:登記から6カ月〜1年以上かかる場合もある
- 注文住宅(土地先行):土地分の通知書が登記から6〜12カ月ごろに届き、建物分は完成後別途届く
これらの時期の目安を知っておけば、「不動産を取得した月から積み立てを開始して、通知書が届く前に必要な金額を確保しておく」という計画が立てられます。
たとえば、中古住宅を4月に取得した場合、10月〜翌年4月ごろに通知書が届く可能性があります。
税額の試算が18万円であれば、毎月3万円ずつ6カ月間積み立てれば備えられます。
ポイントは、不動産の購入手続きが終わった段階で「不動産取得税の準備を開始する」という意識を持つことです。
購入後の引越し費用や家具の購入が落ち着く前に積み立てを始めることが重要です。
まとめ|払えないと感じたら最初にすべき3つの確認
不動産取得税が払えないと感じても、放置だけは避けてください。
放置すると延滞金が積み上がり、最終的には財産が差し押さえられるリスクがあります。
一方で、この記事で紹介した手段を使えば、多くの場合は問題を解決できます。
最後に、「払えない」と感じた瞬間に確認すべき3つのポイントを整理します。
確認①:まず「軽減措置の申請漏れ」がないかを確認する
最初に確認すべきことは、「通知書の金額が本当に正しいか」です。
自動的に送られてくる納税通知書に、軽減措置(税額を減らす制度)が反映されていないケースがあります。
軽減措置は自分から申請しないと適用されないため、「高すぎる」と感じたらまず税事務所に確認してください。
たとえば、評価額1,200万円以下の新築住宅であれば、軽減措置の申請により建物分の不動産取得税は0円になります。
「払えない」と思っていた税金が、実は払わなくてよかったというケースは珍しくありません。
また、すでに払いすぎてしまった場合でも、不動産を取得した日から5年以内であれば還付申請(払いすぎた税金を返してもらう申請)が可能です。
確認②:納期限はまだ来ていないかを確認する
納期限が来る前に動けるかどうかで、使える手段の幅が大きく変わります。
納期限前であれば、次の3つの手段を使えます。
- 分納の相談:税事務所に連絡して、合理的な理由があれば最長6カ月程度の分割払いが認められる場合があります
- 徴収猶予(地方税法第73条の25):土地を先行取得して新築予定がある場合、法律に基づいて納付を先延ばしにできます
- クレジットカード払い:eL-QRコード対応の都道府県であれば、カードの分割払いで実質的に分けて支払えます
ポイントは、通知書が届いたらその日のうちに「自分の状況がどれに当てはまるか」を確認することです。
迷ったらまず税事務所に電話してください。電話での相談は無料で、担当者が状況に応じた手段を案内してくれます。
確認③:納期限を過ぎてしまった場合もあきらめない
納期限を過ぎてしまった場合でも、活用できる制度があります。
「もう手遅れだ」とあきらめて放置することが、最も避けるべき行動です。
納期限後でも次の手段が残っています。
- 換価の猶予(地方税法第15条の6):一括払いが困難で事業や生活への影響が大きい場合、差し押さえた財産の換価(売却)を一定期間待ってもらえる制度。納期限から6カ月以内に申請できます
- 督促状が届いた段階での相談:督促状(税金を払うよう求める書類)が届いた時点でも、税事務所に相談することで解決できる場合があります
- 還付申請:軽減措置を知らずに払いすぎていた場合は、取得日から5年以内であれば還付申請が可能です
令和8年の延滞金の割合は1カ月以内が年2.8%、超過後が年9.1%です。
税額30万円を6カ月放置した場合の延滞金は約1万1,900円程度にとどまります。
「延滞金が怖い」という理由で相談をためらう必要はありません。まず税事務所に連絡することが解決への第一歩です。
ただし、不動産取得税は、取得した不動産の種類・時期・都道府県によって、適用できる制度や手続きの詳細が異なります。
よって、この記事の内容を参考にしたうえで、具体的な手続きについては必ず管轄の都道府県税事務所(東京都は都税事務所)にご確認ください。
本記事の内容が、不動産取得税についてお調べの皆様のお役に立てれば幸いです。最後に、不動産取得税が払えないことに関するよくある質問とその答えをまとめます。
- 不動産取得税が払えない場合、どうすればよいですか?
- まず軽減措置の申請漏れがないか確認してください。申請により税額がゼロになるケースがあります。それでも払えない場合は、管轄の都道府県税事務所に分納を相談するか、要件を満たせば徴収猶予・納税猶予を申請できます。
- 不動産取得税を滞納するとどうなりますか?
- 滞納すると延滞金が加算されます。令和8年の割合は1カ月以内が年2.8%、超過後が年9.1%です。督促状が届いた後も放置が続くと、預貯金や不動産などの財産が差し押さえられるリスクがあります。
- 不動産取得税は分割で払えますか?
- 不動産取得税は法律上、一括払いが原則です。ただし、資金不足などの合理的な理由がある場合は、税事務所に相談することで最長6カ月程度の分納が認められることがあります。納期限前に連絡することが重要です。
- 不動産取得税の軽減措置を申し忘れた場合、あとから申請できますか?
- 申請を忘れて払いすぎた場合も、不動産を取得した日から5年以内であれば還付申請が可能です。まず管轄の都道府県税事務所に問い合わせてください。「もう手遅れだ」とあきらめずに確認することが大切です。
- 土地を先に買って住宅をこれから建てる予定ですが、土地の不動産取得税は払わなくてよいですか?
- 土地取得後3年以内(令和8年3月31日までの取得)に住宅を新築する予定がある場合、一定の要件のもと「徴収猶予」を申請できます。ただし申請は納期限前に行う必要があります。住宅完成後に軽減措置を申請すれば、還付を受けられるケースもあります。
- 著者・監修情報
- 誰でもわかる不動産売買(fudousan-wakaru.net)編集部。不動産の購入・売却・活用に関する情報を、はじめて不動産を検討する方にもわかりやすく伝えることを目的として運営しています。記事の作成にあたっては、国土交通省、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会などの公的機関の情報、および極めて信頼性が高い専門サイトの情報を参照しています。
- 参考資料・参考サイト
- 地方税法 / 大阪府・令和7年度版 府税のしおり / 大阪府:府税のしおり・不動産取得税 / 兵庫県:不動産取得税のあらまし / 愛知県:県税のあらまし / 神奈川県:県税のしおり・不動産取得税 / 横浜市:延滞金の割合について / 三郷市:令和8年中における延滞金・還付加算金の割合について
- 注意点
- 本記事の内容は令和8年5月時点のものです。最新の情報は各都道府県の税事務所などにてご確認ください。
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