中古マンションの減税に関する情報

中古マンションを購入する際は登録免許税や印紙税などが課せられ、購入後は不動産取得税や固定資産税などが課せられますが、一定の条件を満たせば減税されます。
また、一定の条件を満たしつつ住宅ローンを用いて中古マンションを購入すれば、所得税が減税される住宅ローン控除の適用を希望することも可能です。
中古マンションを購入することにより課せられる税金と各税金に適用される減税制度を紹介し、住宅ローン控除の適用条件もご説明しましょう。
目次
- 1. 課せられる税金一覧
- 2. 所有権移転登記にかかる登録免許税の減税
- 3. 抵当権の設定登記にかかる登録免許税の減税
- 4. 売買契約書にかかる印紙税の減税
- 5. 不動産取得税の減税
- 6. 固定資産税の減税
- 7. 所得税の減税
- まとめ - 減税には申告や届け出が必要
1. 課せられる税金一覧
はじめに、中古マンションを購入することにより課せられる税金をご紹介しましょう。
中古マンションを購入することにより課せられる税金は、以下のとおりです。
中古マンションを購入することにより課せられる税金
税金の種類 | いつ払う? |
---|---|
所有権移転登記にかかる登録免許税 | 中古マンションの購入時 |
抵当権の設定登記にかかる登録免許税(現金で中古マンションを購入する場合は課せられない) | 住宅ローンの借り入れ時 |
売買契約書に課せられる印紙税 | 中古マンションの購入時 |
不動産取得税 | 中古マンションを購入後2ヵ月から6ヵ月後など |
固定資産税 | 中古マンションを購入した翌年の4月ごろ |
つづいて、各税金が減税される条件と、中古マンションを購入することにより住宅ローン控除が適用される条件をご紹介します。
2. 所有権移転登記にかかる登録免許税の減税
中古マンションを購入すると一戸部分とその中古マンションが建つ敷地を戸数などで割った面積の土地(以下:土地の持ち分)を取得し、その両方に所有権移転登記を行うのが通例です。
所有権移転登記とはいわゆる名義変更であり、一戸部分と土地の持ち分の所有権移転登記を行う際は、どちらの所有権移転登記にも登録免許税という税金が課せられます。

登録免許税の計算式は、以下のとおりです。
購入した中古マンションの一戸部分、または土地の持ち分の固定資産税評価額×所有権移転登記にかかる登録免許税の税率=登録免許税
式に含まれる固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市町村が評価したその中古マンションの価格であり、売買価格より安くなるのが通例です。
たとえば、一戸部分の売買価格が1,000万円、土地の持ち分の売買価格が500万円の中古マンションであれば、一戸部分の固定資産税評価額は700万円から400万円程度など、土地の持ち分の固定資産税評価額は350万円程度などとなります。
そして、それぞれの登録免許税は減税される制度が設けられ、詳細は以下のとおりです。
一戸部分の所有権移転登記にかかる登録免許税の減税
中古マンションの一戸部分にかかる登録免許税は、以下の式で計算します。
一戸部分の固定資産税評価額×建物の売買による所有権移転登記にかかる登録免許税の税率=登録免許税
式に含まれる税率は2%ですが、以下の条件を満たしつつ令和4年3月31日までに所有権移転登記を行えば0.3%に軽減され、それに伴い登録免許税が減税されます。
- 自らが居住する中古マンションを購入した
- 中古マンションを購入後1年以内に所有権移転登記を行った
- 一戸部分の床面積が50㎡以上の中古マンションを購入した
- 築25年以内の中古マンションを購入した(購入した物件が一定の耐震性を有する場合はこの限りではない)
土地の持ち分の所有権移転登記にかかる登録免許税の減税
中古マンションの土地の持ち分にかかる登録免許税は、以下の式で計算します。
土地の持ち分の固定資産税評価額×土地の売買による所有権移転登記にかかる登録免許税の税率=登録免許税
式に含まれる税率は2%ですが、令和5年3月31日までに中古マンションを購入しつつ所有権移転登記を行えば1.5%に軽減され、それに伴い登録免許税が減税されます。
一戸部分や土地の持ち分の所有権移転登記にかかる登録免許税が減税される条件の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表」の「(1)土地の所有権の移転登記」と「(3)住宅用家屋の軽減税率」の2にて確認することが可能です。
3. 抵当権の設定登記にかかる登録免許税の減税
この記事の「2. 所有権移転登記にかかる登録免許税の減税」にてご紹介したとおり、中古マンションを購入した後は所有権移転登記を行います。
所有権移転登記とはいわゆる名義変更のことですが、住宅ローンを利用しつつ中古マンションを購入した場合は、抵当権の設定登記と呼ばれる登記も必要です。
抵当権の設定登記とは、その不動産の抵当権を有する者に関する情報を登記簿と呼ばれる公の帳簿に記す行為です。
住宅ローンを利用しつつ中古マンションを購入する際は、資金を貸し出した銀行がその物件を担保に取ります。
この状況において資金を貸し出した銀行は、借り主からの返済が滞れば物件を売却しつつ返済金に充当する権利を有し、その権利を抵当権と呼びます。

そして、住宅ローンを利用しつつ中古マンションを購入する場合は、資金を貸し出した銀行が抵当権を有することを登記簿に記さなければなりません。
この銀行が抵当権を有することを登記簿に記す行為が抵当権の設定登記であり、抵当権の設定登記を行う際は所有権の移転登記と同じく登録免許税が課せられ、住宅ローンの借り主が税額を負担することとなります。
抵当権の設定登記にかかる登録免許税額の計算式は以下のとおりです。
資金の借り入れ金額×住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記にかかる登録免許税の税率=登録免許税
式に含まれる税率は0.4%ですが、令和4年3月31日までに以下などの条件を満たせば0.1%に軽減され、それに伴い抵当権の設定登記にかかる登録免許税が減税されます。
- 自らが居住する中古マンションを購入するための資金を借り入れた
- 一戸部分の床面積が50㎡以上の中古マンションを購入するための資金を借り入れた
- 築25年以内の中古マンションを購入するための資金を借り入れた(購入する物件が一定の耐震性を有する場合はこの限りではない)
※ 詳細は「財務省 登録免許税に関する資料」の「住宅に係る登録免許税の軽減措置」にて確認できる
なお、現金で中古マンションを購入する場合は抵当権の設定登記は不要であり、抵当権の設定登記にかかる登録免許税も課せられません。
4. 売買契約書にかかる印紙税の減税
中古マンションを売買する際は、その物件を取り扱う不動産業者が2通の売買契約書を用意します。
そして、売り主と買い主の両者が2通の売買契約書に署名捺印することとなりますが、売買契約書には印紙税という税金が課せられます。
その税額は売買する中古マンションの価格によって異なり、1,000万円超5,000万円以下の物件を売買する際は1通につき2万円ですが、令和4年3月31日までに売買すれば減税され、詳細は以下のとおりです。
印紙税額
中古マンションの売買価格 | 本来の税額 | 令和4年3月31日までに売買すれば… |
---|---|---|
100万円超500万円以下 | 売買契約書1通につき2,000円 | 売買契約書1通につき1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 売買契約書1通につき10,000円 | 売買契約書1通につき5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 売買契約書1通につき20,000円 | 売買契約書1通につき10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 売買契約書1通につき60,000円 | 売買契約書1通につき30,000円 |
※ 正確な税額は「国税庁タックスアンサーNo.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」にて確認できる
なお、先にご紹介したとおり中古マンションを売買する際は売買契約書が2通用意され、売り主と買い主の両者が2通の売買契約書に署名捺印します。
そして、売り主と買い主が折半しつつ2通分の印紙税を納付するのが通例ですが、売り主が原本を必要としない場合は売買契約書を2通作成する必要はなく、売買契約書2通分の印紙税を納める必要はありません。
1通の売買契約書を作成しつつ売り主と買い主が署名捺印し、1通分の印紙税を売り主と買い主で折半してそのコピーを売り主が受け取れば事足ります。
そうすれば、印紙税代を節約することが可能です。

ただし、この方法はあまり現実的ではないため注意してください。
多くの中古マンションの売り主は、万一のことを考慮しつつ売買契約書の原本を欲しがります。
5. 不動産取得税の減税
中古マンションを購入後2ヵ月から6ヵ月程度が経過すると、不動産取得税の納税通知書と納付書が届きます。
不動産取得税とは土地や建物などの不動産を取得した者に課せられる税金であり、中古マンションを購入すると一戸部分とそのマンションが建つ敷地を戸数などで割った面積の土地(以下:土地の持ち分)を取得し、その両方に不動産取得税が課せられます。
不動産取得税は高額になりがちですが、昭和57年1月1日以降に新築された中古マンションを購入するなどすれば減税されます。
ここから、中古マンションの一戸部分と土地の持ち分にかかる不動産取得税が減税される条件をご紹介しましょう。
一戸部分の減税
中古マンションの一戸部分の取得にかかる不動産取得税の計算式は、以下のとおりです。
課税標準×不動産取得税の税率=不動産取得税
式に含まれる税率は原則として4%ですが、令和6年3月31日までに中古マンションを購入すれば3%に軽減され、それに伴い一戸部分にかかる不動産取得税が減税されます。
また、式には課税標準という言葉が含まれますが、課税標準とは主に固定資産税評価額です。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市町村が評価したその不動産の価格であり、固定資産税評価額は売買価格より低くなるのが通例となっています。
たとえば、一戸部分の売買価格が1,500万円の中古マンションであれば、一戸部分の固定資産税評価額は750万円から1,000万円程度などです。
そして、以下の3つの条件を満たせば、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準となり、それに伴い不動産取得税が減税されます。
一戸部分の不動産取得税が減税される条件
- 自らが居住するための中古マンションを購入した
- 購入した一戸部分の床面積と、購入した中古マンションの共用部分の床面積の合計を戸数などで割った面積の合計が50㎡以上240㎡以下である
- 昭和57年1月1日以降に新築された中古マンションを購入した(新耐震基準を満たす物件を購入した場合は築年数は問われない
以上の条件を満たせば、固定資産税評価額から一定額が差し引かれた額が課税標準となります。
条件の2に「購入した中古マンションの共用部分の床面積の合計を戸数などで割った面積」という言葉が含まれますが、共用部分とは主にエントランスや廊下、階段、各戸のバルコニーなどです。
「購入した中古マンションの共用部分の床面積の合計を戸数などで割った面積」は物件によって広さが異なりますが、共用部分の面積が広く戸数が極端に少ない高級マンションなどは同面積が240㎡を超える可能性があるため注意してください。
そして、固定資産税評価額から差し引かれる一定の額は、購入した中古マンションが新築された日によって異なり以下のとおりです。
固定資産税評価額から差し引かれる一定の額
新築された日 | 差し引かれる額 |
---|---|
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 |
平成元年4月1日から平成9年3月31日 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日から平成元年3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日から昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和51年1月1日から昭和56年6月30日 | 350万円 |
固定資産税評価額から上記の額が差し引かれた額が課税標準となれば、課税標準に税率を乗算しつつ税額が決定される不動産取得税が減税されることとなります。
なお、固定資産税評価額から差し引かれる一定の額が固定資産税評価額を超える場合は課税標準が0円となり、一戸部分の不動産取得税はかかりません。
土地の持ち分の減税
中古マンションの土地の持ち分にかかる不動産取得税は、以下の式で計算します。
土地の持ち分の固定資産税評価額÷2×不動産取得税の税率=不動産取得税
式に含まれる不動産取得税の税率は原則として4%ですが、令和6年3月31日までに不動産を取得すれば3%に軽減され、それに伴い土地の持ち分にかかる不動産取得税が減税されます。
また、式に含まれる土地の持ち分の固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市町村が評価したその土地の持ち分の価格です。
土地の持ち分の固定資産税評価額は、土地の持ち分の売買価格の70%程度などであり、売買価格が500万円であればその固定資産税評価額は350万円などになります。
そして、この記事の「一戸部分の不動産取得税が減税される条件」でご紹介した条件を満たせば、土地の持ち分にかかる不動産取得税そのものから一定額が減税されます。
減税される額は、以下の2つのうちの多い方です。
- 45,000円
- 土地の持ち分の1㎡あたりの固定資産税評価額×200㎡を上限とする一戸部分の床面積の2倍×3%
6. 固定資産税の減税
中古マンションを購入しつつ一定の条件を満たすバリアフリーリフォームを実施すれば、リフォームが完了した翌年の一戸部分にかかる固定資産税が3分の2程度に減税されます。
満たすべき主な条件は、以下のとおりです。
- 消費税込み50万円を超える費用をかけつつバリアフリーリフォームを実施した
- 戸内の段差を解消する、戸内に手すりを取り付ける、浴室をバリアフリー仕様にするなどのバリアフリーリフォームを実施した
- 購入しつつバリアフリーリフォームを実施した中古マンションに65歳以上の方、または要介護認定や要支援認定を受けている方、もしくは障がいのある方が居住する
- 築10年以上の中古マンションを購入しつつバリアフリーリフォームを実施した
- 令和4年3月31日までにバリアフリーリフォームを完了させ、リフォーム完了後3ヵ月以内に市町村に申告をした
中古マンションを購入しつつバリアフリーリフォームを実施することにより一戸部分にかかる固定資産税が減税される条件の詳細は、「一般社団法人住宅リフォーム推進協議会の資料 2.バリアフリーリフォーム編」にて確認することが可能です。
7. 所得税の減税
一定の条件を満たしつつ住宅ローンを利用して中古マンションを購入すれば、住宅ローン減税が適用されます。
そして、消費税がかかる中古マンションを購入しつつ住宅ローン減税が適用されれば、最長10年にわたり毎年40万円を上限とする年末のローン残高の1%が所得税から減税されます。
また、消費税がかからない中古マンションを購入しつつ住宅ローン減税が適用されれば、最長10年にわたり毎年20万円を上限とする年末のローン残高の1%が所得税から減税されます。
中古マンションを購入しつつ住宅ローン減税が適用される主な条件は、以下のとおりです。
- 築25年以内、または耐震等級1以上の中古マンションを購入した
- 令和3年12月31日までに中古マンションを購入しつつ入居した
- 戸内の床面積が50㎡以上の中古マンションを購入した
- 返済期間が10年を超える住宅ローンを利用しつつ中古マンションを購入した
- 金融機関や住宅金融支援機構、勤務先、建設業者など、知人や親族以外から資金を借り入れしつつ中古マンションを購入した
- 親族など特別な関係にある者以外から中古マンションを購入した
- 中古マンションを購入した年を含む過去3年間と、中古マンションを購入した年を含むその後の3年間に、長期譲渡所得の課税の特例など住宅を売却することによって生じた利益にかかる所得税が減税される特例の適用を受けていない
住宅ローン減税が適用される条件の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」にて確認することが可能です。
なお、住宅ローン減税は、購入した物件が消費税がかかるか否かによって毎年の減税額の上限が異なりますが、消費税がかかる物件とかからない物件の主な違いは以下のとおりです。
- 消費税がかからない中古マンション
- 個人が売り主であり、なおかつマイホームとして利用していた中古マンションを購入する場合は消費税はかかりません。
- 消費税がかかる中古マンション
- 不動産業者などの事業者が売り主である中古マンションや、売り主が個人であっても事業のために使用していた中古マンションを購入する場合は消費税がかかります。
まとめ - 減税には申告や届け出が必要
中古マンションを購入することにより課せられる税金と、各税金が減税される制度をご紹介しました。
中古マンションを購入する際は登録免許税と印紙税が、購入後は不動産取得税と固定資産税が課せられますが、一定の条件を満たすことにより減税されます。
また、一定の条件を満たせば住宅ローン減税が適用され、最長10年間にわたり所得税が減税されることとなります。
中古マンションの購入をご予定の方がいらっしゃいましたら、是非ご参考になさってください。
なお、売買契約書にかかる印紙税以外は、申告や届け出をすることにより減税されます。
たとえば、所有権移転登記と抵当権の設定登記にかかる登録免許税は、その中古マンションが所在する地域を管轄する市町村役場にて住宅用家屋証明書を取り付け、登記の際に提出することにより減税されます。
また、不動産取得税は、中古マンションを購入後30日以内などに、その中古マンションが所在する地域を管轄する税事務所に売買契約書のコピーなどを添付した申告書を提出することにより減税されます。
さらに、住宅ローン減税を適用するためには、確定申告による届け出が必要です。
よって、ご紹介した減税制度の適用を希望する場合は、中古マンションを購入する前に法務局、税事務所、税務署、市町村役場などに詳細を確認するように注意してください。
申告を忘れたり、添付すべき必要書類が揃わなければ減税制度が適用されません。
ご紹介した内容が、中古マンションの減税に関することをお調べの皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2021年7月
記事公開日:2019年11月
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