住宅ローンで中古マンションを購入する流れをわかりやすく解説

住宅ローンで中古マンションを購入する際は、たくさんの行程を乗り越え、複数の契約を結ばなければなりません。
そして、それぞれの行程には様々な注意点があり、綿密なスケジュールを立てつつトライする必要があります。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、住宅ローンで中古マンションを購入したいと希望する方へ向けて、注意点を含めつつその流れをわかりやすくご紹介しましょう。
目次
- 流れ1. 物件探しと住宅ローン探し
- 1-1. 住宅ローンは実は3種類しかない
- 流れ2. 見学と購入申し込み
- 2-1. 値引き交渉は購入申し込みから始まる
- 流れ3. 不動産業者との媒介契約
- 3-1. 住宅ローンの審査に通らない場合の仲介手数料の返還方法
- 流れ4. 重要事項説明
- 4-1. 重要事項説明書は事前に入手しておく
- 流れ5. 売買契約
- 5-1. 住宅ローン特約は付いている?
- 流れ6. 住宅ローンの審査申し込み
- 6-1. 事前審査に通って本審査に落ちることはある?
- 流れ7. 金銭消費貸借契約と融資実行
- 7-1. 諸費用はいつ払う?
- まとめ - 売買契約締結前に銀行と相談するのも悪くない
流れ1. 物件探しと住宅ローン探し
流れ1は、理想の中古マンションと利用する住宅ローン探しです。
理想の中古マンションはアットホームなどのネットの検索サイトを利用しつつ探すのが良いでしょう。
そして、忘れてはいけないのが住宅ローン探しです。
住宅ローンは各銀行から多種多様な商品がラインナップされ、金利や返済方法など様々で、物件と同じくらい探すのに時間と労力を要します。
よって、住宅ローンで中古マンションを購入したいと希望する場合は、物件探しと共に住宅ローン探しも忘れないように注意してください。
1-1. 住宅ローンは実は3種類しかない
住宅ローンは各銀行から多種多様な商品がラインアップされ、商品選びに戸惑いますが、実は以下の3種類しかありません。
その1. フラット35
公的機関である住宅金融支援機構と、民間の金融機関が協力して貸し出す住宅ローンがフラット35です。
フラット35は、日本全国各地の銀行から申し込むことが可能で、金利は高いものの審査が通りやすいのが特徴です。
その2. 各銀行のオリジナル住宅ローン
日本全国各地の銀行は、独自の住宅ローンを商品化しています。
住宅ローンを選ぶ際は多種多様な商品に戸惑いますが、それらの商品の多くは各銀行が商品化したオリジナルの住宅ローンです。
各銀行のオリジナル住宅ローンは商品によって金利が異なり、審査の基準が難しくありつつもフラット35より低金利であることが特徴となっています。
その3. 財形住宅融資
職場で財形貯蓄を契約中の方が利用できる住宅ローンが財形住宅融資です。
財形住宅融資は借り入れできる金額が他の住宅ローンより少な目であるものの公的融資のため審査の条件が比較的穏やかで、フラット35より金利が低いのが特徴となっています。

流れ2. 見学と購入申し込み
理想の中古マンションが見つかり、審査を申し込む住宅ローンの検討が付けば、その中古マンションを仲介する不動産業者を通して売主に購入申し込みを行います。
購入申し込みとは、その物件を購入する意思があることを売主に伝えるもので、購入申込書に購入希望価格などを記入しつつ提出することにより完了します。
2-1. 値引き交渉は購入申し込みから始まる
購入申し込みは売主に購入申込書を提出しつつ行いますが、購入申込書には希望する代金の決済方法などと共に購入希望価格も記載します。
購入希望価格は販売価格である必要はありません。
販売価格から10%引きなどの購入希望価格を記入しつつ購入申込書を提出すれば、価格交渉が可能です。

そして、購入申し込みは無条件でキャンセルすることが可能で、違約金も発生しません。
なお、「誰でもわかる不動産売買」では、中古マンションの価格交渉の秘訣をご紹介するコンテンツ「中古マンションの価格交渉のコツは「基本ほどほど時には大胆」」も公開中です。
お時間のある方はぜひご覧ください。
流れ3. 不動産業者との媒介契約
売主が購入申込書の内容に承諾すれば、その中古マンションを仲介する不動産業者と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、その不動産業者を仲介させつつ中古マンションを購入することを約束するもので、媒介契約書に署名捺印することにより結ばれます。
なお、売りに出されている多くの中古マンションは、個人が不動産業者を仲介させつつ売りに出す物件ですが、不動産業者が直接販売する物件も存在します。
大規模なリフォームが行われたリノベーション物件などは、不動産業者が直接販売する中古マンションです。
そして、不動産業者が直接販売する中古マンションを購入する場合は媒介契約は不要のため留意してください。
3-1. 住宅ローンの審査に通らない場合の仲介手数料の返還方法
不動産業者が仲介する中古マンションを購入する際は、その不動産業者に仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は、購入する中古マンションの価格や不動産業者により異なりますが、国土交通大臣により以下のように上限が定められています。
仲介手数料の上限
中古マンションの購入価格 | 上限 |
---|---|
200万円以下 | 中古マンションの購入価格の5% |
200万円超400万円以下 | 中古マンションの購入価格の4%+2万円 |
400万円超 | 中古マンションの購入価格の3%+6万円 |
そして、必ずではありませんが、不動産業者によっては媒介契約締結時に仲介手数料の半額を請求することがあるため注意してください。
また、住宅ローンで中古マンションを購入する際は、不動産業者と媒介契約を結び、売主と売買契約を締結した後にローンの審査を受ける必要があります。
つまり、住宅ローンの審査に通らない場合は、不動産業者との媒介契約や、売主との売買契約を破棄する必要があるというわけです。
この時点で不動産業者に仲介手数料の半額を支払っていなければ媒介契約を破棄しても問題はありませんが、仲介手数料の半額を支払った場合は、その仲介手数料が返還されるか否かでトラブルになる可能性があります。
そのため、媒介契約の締結と共に仲介手数料の半額を支払う場合は、仲介契約書に住宅ローンの審査に通らない場合の仲介手数料の返還方法が記載されているか必ず確認してください。
流れ4. 重要事項説明
不動産業者との媒介契約が済めば、その不動産業者から重要事項説明を受けます。
重要事項説明とは、購入する中古マンションの傷み具合、毎月支払うべき管理費や修繕積立金の額などに関することが口頭にて説明されるもので、引き渡し後に「聞いた・聞いてない」「言った・言わない」と売主と買主、不動産業者が争うことがないように実施されます。
そして、重要事項説明の内容に納得すれば、内容を書面にまとめた重要事項説明書に署名捺印することにより同説明は完了します。
4-1. 重要事項説明書は事前に入手しておく
重要事項説明では、購入を希望する中古マンションの現状や詳細などが説明されますが、その内容は多岐にわたり、短くても60分程度、長い場合は90分程度にもなります。
そのため、その内容をまとめた重要事項説明書の内容も複雑です。
よって、重要事項説明を受ける際は、その1週間前などに重要事項説明書のコピーを不動産業者から入手しつつ熟読し、重要事項説明の当日に初めて重要事項説明書を見ることがないように注意してください。
重要事項説明書に署名捺印しつつ売買契約を締結すれば、そのマンションの現状を全て把握した上で物件を購入したことになり、後からトラブルが発生しても一部例外を除き取り返しがつきません。
重要事項説明書の見本

出典:国土交通省ホームページ
流れ5. 売買契約
重要事項説明が完了すれば、売主と売買契約を締結します。
売買契約は売買契約書に署名捺印することにより結ばれ、売買契約を締結する際は中古マンションの購入価格の1割程度を手付金として売主に支払うのが通例です。
最近の住宅ローンは住宅の購入代金と共に諸費用も貸し出される商品が増えていますが、手付金だけは借り入れできません。
よって、頭金なしの状態で中古マンションを購入したいと希望する場合でも、手付金だけは用意しておく必要があるため注意してください。
なお、「誰でもわかる不動産売買」では、頭金なしで中古マンションを購入する方法をご紹介するコンテンツ「中古マンションを頭金なしで購入する方法(当たって砕けろ!)」も公開中です。
お時間がある方は是非ご覧ください。
5-1. 住宅ローン特約は付いている?
住宅ローンで中古マンションを購入する際は、手付金を支払いつつ売買契約を締結し、その後に審査に申し込む必要があります。
これは、審査の際に重要事項説明書や売買契約書のコピーの提出を求められることが理由ですが、審査に通らなければ売主に残金を決済できず、売買契約を破棄しなくてはなりません。
そして、買主の都合だけで売買契約を破棄する場合は、手付金が返還されないため注意が必要です。

しかし、売買契約に住宅ローン特約が盛り込まれていれば話は別です。
住宅ローン特約とは、住宅ローンの審査に通らず売買契約が破棄された場合に手付金が返金されることを謳った特約を表します。
そのため、住宅ローンで中古マンションを購入する際は、売買契約に住宅ローン特約を盛り込むことを忘れないように気を付けてください。
ただし、住宅ローン特約は期限が設定されます。
たとえば、「売買契約から5日以内に住宅ローンの審査を受け、通らない場合に限り手付金が売主から買主に返還される」などです。
住宅ローンは多種多様で選択に時間が掛かります。
よって、売買契約を結ぶ際は、事前に審査を申し込む住宅ローンを絞り込み、その上で住宅ローン特約を盛り込みつつ締結してください。
売買契約を締結した後に審査を申し込む住宅ローンを探していては、住宅ローン特約の期限に間に合いません。
流れ6. 住宅ローンの審査申し込み
売主との売買契約が済めば、銀行に住宅ローンの審査を申し込みます。
審査は事前審査(仮審査)と本審査の二段階に分かれ、本審査の合否の判明まで20~25日程度の日数が必要です。
6-1. 事前審査に通って本審査に落ちることはある?
Yahoo!知恵袋を見ると「住宅ローンの仮審査に通りましたが、本審査に落ちることはありますか?」という質問を見かけますが、それは審査を申し込んだ住宅ローンの種類により異なります。
フラット35の場合
フラット35は、日本全国各地の銀行から融資を申し込める、銀行と住宅金融支援機構が連携して貸し出す住宅ローンです。
そのため、事前審査は銀行が行い、本審査は宅金融支援機構が実施します。
つまり、事前審査と本審査の担当者が異なるというわけです。
よって、フラット35は事前審査に通っても本審査で落ちる可能性があります。
各銀行のオリジナル住宅ローンの場合
各銀行が独自に商品化したオリジナルの住宅ローンは、事前審査も本審査もその銀行が実施します。
よって、事前審査に通れば、おおむね本審査も通るのが通例ですが、事前審査で虚偽の申請などを行った場合は、事前審査に通っても本審査で落ちることがあるため注意してください。
流れ7. 金銭消費貸借契約と融資実行
住宅ローンの審査に通れば、銀行と金銭消費貸借契約を締結します。
金銭消費貸借契約とは、住宅ローンを返済することを銀行と約束する契約を表し、金銭消費貸借契約が完了すれば資金が貸し出されます。
資金が貸し出されれば、それを以って売主に残金を決済し、中古マンションの引き渡しを受けます。
7-1. 諸費用はいつ払う?
住宅ローンの融資が実行される際は、銀行に以下の諸費用を支払う必要があります。
- 融資事務手数料(3万円~融資額の1.08%など)
- 金銭消費貸借契約書に課せられる印紙税(1~2万円など)
- 保証人を代行する保証会社へ支払う保証料(15万円からなど)
- 火災保険料(5~25万円など)
- 登記費用(中古マンションの固定資産税評価額により異なる)
- 司法書士への報酬(10~15万円など)
これらの諸費用は、たいてい住宅ローンの融資が実行された直後に支払う、または融資額から差し引かれるのが通例ですが、銀行によっては融資が実行される3~4日前に支払いを請求することがあるため注意してください。
詳細は、住宅ローンを利用する銀行に問い合わせることにより確認できます。
まとめ - 売買契約締結前に銀行と相談するのも悪くない
住宅ローンで中古マンションを購入したいと希望する方へ向けて、その流れをわかりやすくご説明しました。
中古マンションを住宅ローンで購入する際は、3つの契約を交わしつつ7つの行程を乗り越える必要があります。
大変な労力を要しますが、ひとつひとつ焦らず乗り越えてください。
なお、この記事でご紹介したとおり、住宅ローンで中古マンションを購入する場合は、売主と売買契約を交わした後に審査に申し込む必要があり、審査に落ちた場合は売買契約を破棄しなくてはなりません。
しかし、実は売買契約を締結する前でも、銀行の窓口に出向いて事情を話せば審査に通る可能性があるか教えてくれます。
よって、住宅ローンで中古マンションを購入したいと希望する場合は、物件探しと共に各銀行の店頭をまわるなどしつつ、審査に通る可能性があるか「あたり(見当)」を付けるようにしてください。
そうすれば、売買契約を締結したにもかかわらず、審査に落ちて破棄するという残念な事態になる可能性を多少なりとも減らせます。
なお、各銀行の店頭に出向く際は、購入を検討する中古マンションの築年数や間取りなどが書かれた広告などを持参することを忘れないでください。
住宅ローンで中古マンションを購入する際は、そのマンションを担保に入れる必要があり、築年数が35年などを超える中古マンションは担保力が弱いと判断され、住宅ローンの審査に通らないことがあります。
記事公開日:2019年12月
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